ミラノダービー


サマータイム前、最後の大一番。マテラッツィ劇場が面白かったので雑感を残しておく。次はバルサvsチェルシー中心にUCLか、U-19グループリーグ総括か、ナビスコ決勝か、先週のJリーグか、他のサマータイム前の欧州ビッグマッチのどれか。予定は未定。ようやく時間が取れるので、どれかは必ずやる。


インテル 4-3 ACミラン
50分セードルフ 76分ジラルディーノ 91分カカー
17分クレスポ 22分スタンコヴィッチ 47分ズラタン 68分マテラッツィ

今シーズン大量補強したインテル。予想通りのインテルクオリティー発動で、そのポテンシャルを発揮してはいない。補強と放出を繰り返して、毎シーズンチームを作り直す羽目になり、継続性に欠けて波に乗れない仕様は、インテル・シンドロームというべきか。


ベーロンという稀代のレジスタを軸に据えて、4-4-2フラットでサイドを広く使うサッカーは、そのベーロンを放出し、控えレジスタピサロもローマに放出してしまったため崩壊。司令塔不在で攻撃の構成に苦しんでいる。
マンチョはフィーゴをトップ下にした4-4-2ダイヤを試すなど試行錯誤を繰り返しているけれど、これまでの所あまり余り機能していない。自慢の大補強で得た豪華絢爛FW陣も、コンディションの上がらないアドリアーノは帰国し、ズラタンも不調、控えのクルスとレコバの2トップの方が今のところは出来が良い。

        クレスポ   ズラタン
          スタンコビッチ
    サネッティ        ヴィエラ
            ダクール
 グロッソ               マイコン
      マテラッツィ   コルドバ
         ジュリオ・セーザル

交代:61分グロッソ→ブルティッソ、ダクール→フィーゴ、83分ズラタン→サムエル

今シーズン導入した4-3-1-2を継続。トップ下はフィーゴではなくスタンコビッチ。出来も本来は攻撃的なセンターハーフだけれど、中央を主戦場にしている分、サイドアタッカーのフィイー後をトップ下に置くよりは理に適っている。苦労人サネッティは、慣れない3センターの一角で予想以上に奮闘。影でチームを支えている。

エース・シェフチェンコチェルシーに移籍し、今シーズンはピッポジラルディーノの2トップで戦っているのだけど、これが機能しない。2トップはその能力の他にも、プレースタイルやプレーエリアに相互補完性があることが重要。
この2トップはどちらも裏を狙ってゴールする事を最優先するストライカータイプで、プレーエリアも被りまくる。どちらかというと多様性のあるジラルディーノは、インザーギと被らないように楔に入ったりスペースを空けたりと周囲を活かす事に苦心しているため、本来の点取り屋としての持ち味が減退してしまい、いまだ無得点と苦しんでいる。新戦力オリベイラもまだフィットせず。トマソンのような利他的なアタッカーが懐かしい所。

            ピッポ
        セードルフ   カカー
   アンブロジーニ    ガットゥーゾ
            ピルロ
ヤンクロフスキー           カフー
         ネスタ  カラーゼ
            ジーダ

交代:46分ピッポジラルディーノアンブロジーニオリベイラヤンクロフスキマルディーニ

アンチロッティは不調の2トップを諦めたのか、この大一番に4-3-2-1、いわゆるクリスマスツリー型を選択した。これはシェフチェンコやルイコスタ健在の時は機能した事もあったのだけど、今の陣容では向いていないシステムだと思う。



この場合、1トップがポストプレーやスペースメイクで2シャドーを活かす事が必要。ストライカーながら楔を受けたりスペースを作る動きも出来る多様性のあったシェヴァと違い、典型的ボックス型ストライカーのピッポは、常にゴールを意識してラインと駆け引きを繰り返すため、2シャドーを活かすようなスペースをつくる動きやポストプレーは得意としていない。
また、点をとる事に専念させる事によって持ち味を発揮する為、最初からその他の仕事を期待すべきでもない。裏を狙うプレーの得意なピッポに、楔に入らせ続けても持ち味は消えてしまう。本質的に2トップ向きのストライカー。


また、2シャドーに起用されたカカーとセードルフは、同じ列に起用するとどうしてもかぶってしまう。キープ力とパスセンスのあるルイコスタがためて、カカーが飛び出すといった役割分担は期待出来ない。この試合では後半に4-3-1-2に戻すまで、お互いが持ち味を消しあってしまった。


セードルフを一列上げて中盤を厚くしたため起用されたアンブロジーニも、攻撃面でビルドアップに貢献できるタイプでもなく、試合勘の不足から得意の守備でもポジショニングに精彩を欠き、インテルに中盤で主導権を握られてしまった。別にインテルの調子が良いわけでもないのに、アンチェロッティが中盤を厚くして1トップしたのには疑問が残った。

  • 試合雑感

案の定、ミランは新システムが噛み合わず、試合はインテルペース。先制点はそのインテルスタンコヴィッチフリーキックに、ピッポのマークを外したクレスポが合わせた。今シーズンのミランはセットプレーの守備が甘い。


その後も試合はインテルペース。スタンコヴィッチ、ダクール、ヴィエラクレスポマイコンと、素早い展開でサイドに開き、空いた中央にスタンコビッチが進入し、素晴らしい無回転シュートをゴールに突き刺す。ゴールもそこに至るまでの流れも完璧だった。これで2点差。その後も試合はインテルペースで前半終了。


後半アンチェロッティは機能していなかった4-3-2-1を諦め、インザーギヤンクロフスキアンブロジーニを下げてジラルディーノオリヴェイラマルディーニを投入し、4-3-1-2にシステム変更。慎重な彼にしては非常に珍しい積極策だけれど、このタイミングでの3人同時交代が、自身の失策を証明している。


本来のシステムになり、ここから巻き返したいミランだけれど、これが効果を発揮する前に、後半開始早々ズラタンに追加点を決められて3-0。好調時を想起させる超絶技巧でネスタを翻弄して決めた。これで勝負は決まりかと思いきや、その後のマテラッツィ劇場が試合を面白くした。


ミランは連係の良くなったカカーとセードルフが良く絡み、トップのジラルディーノへも楔が入るようになる。コンビネーションから抜け出したセードルフがシュートを打つと、それがマテラッツィに当たりゴール。


選手交代とシステム変更で息を吹き返したミランに対し、マンチーニはダクールを下げてフィーゴを、カフーに押され気味だった守備に難のあるグロッソを下げてブルディッソを投入。カウンターからファウルを貰うと、マテラッツィがヘッドで合わせて再びミランを突き放した。


直後、喜ぶマテラッツィは、既に一度警告を貰っているのにも拘らず、ユニフォームを脱いで2枚めのイエローを貰い、退場となってしまった。3点差になったと同時に数的不利になってしまったインテル。試合を面白くしたマテラッツィ劇場は、奇妙な余韻を残してここに閉幕した。


退場でCBを一枚欠いたインテル、ここはマンチーニの交代策で修正したい所。リードした状況を踏まえると、アタッカーに変えてCBを一枚投入する事が定石。なのになぜかマンチーニはフリーズしてしまう。そうこうする内にヴィエラが負傷し*1、誰を代えるべきかさらに悩んだマンチーニはフリーズ継続。


数的優位を活かして攻勢に出るミラン。慣れないサイドの守備に回ったズラタンの穴をカカーとセードルフが突き、サイドから効果的に攻めていく。前述したように今シーズン不調のジラルディーノだけれど、この日は出来がよく、マルディーニのクロスをヘッドであわせるもオフサイドで幻のゴールも、その後にカフーのクロスをきっちり頭で合わせてゴール。この日だけでなく、開幕から数試合を見ても、2トップにすると被るインザーギとの併用より、どちらかをスーパーサブにした方が良いと思う。


2点差に追い上げられ、その後も攻められまくるインテルジュリオ・セーザルの好セーブを中心に何とか凌いでいると、83分にようやくマンチーニは交代を決断。ズラタンに代えてCBサムエルを投入し、守備を固める策に出る。この後も攻めるミラン、守るのインテルの構図がさらに明確になる。


ミランが攻め、インテルが耐える展開で迎えたロスタイム、GKが弾いたボールをカカーが見事なループシュートで1点差に追い上げるも、ここまで。インテルが何とか逃げ切ってミラノダービーを制した。


今シーズンはどちらも不調の中で迎えたミラノダービーインテル3-0リードという展開も意外だったけれど、マテラッツィ劇場とマンチーニのフリーズ発動で、試合は予想以上に面白くなった。まあ、審判の酷さは気になったが。この審判は数日後のUCLのバルセロナvsチェルシーでもゲームコントロールの不味さを発揮。

冬に向けてミランは、補強するとしたらFWが必要でしょうね。ピッポ、ジラとはタイプの違う、彼らと相性の良いFWが理想的。ポスト型かセカンドトップか。これ以上ゴレアドールは要らない。
まあ、補強よりも、アンチェロッティ継続路線の限り、このまま熟成の4-3-1-2を継続して、最適の組み合わせを模索すべきか。主力のコンディションがまだ上がっていないようだけど、カカーの絶対的存在がある限りは強豪であり続けると思う。ただ、今の状態でカカーが負傷したら終わりでしょうね。今週のUCLでもカカーは凄かったなあ。カカー劇場。
あと、せっかくレンヌから強奪したんだから、もう少しグルキュフを使って育てて欲しい。あの子は出来る子よ。


インテルはベーロン、ピサロの抜けた穴を埋めるレジスタタイプのCHが必要。どうやらアルミロン、レデスマあたりを狙ってるみたいだけど、同じアルゼンチン人なら、インテルのことだから奮発してボカのガーゴを獲りに行きそうだ。この子も出来る子だけど、インテル・シンドロームに耐え切る力ままだないと思う。
このまま4-3-1-2を継続するなら本職トップ下も必要。この試合では出来が良かったけれど、デキはトップ下が本職ではないし、フィーゴもサイドが適職。昨シーズンの4-4-2フラットの方が良いと思うけどねえ。来シーズンあたり、金にモノを言わせて好調ジエゴアイマールあたりを狙いにいきそうだ。
FWも同タイプが多くて、組み合わせの妙に欠ける。今のところ、一番相性の良さそうなのは控えのクルス+レコバかな。FWの層が異常に厚いインテル・クオリティー。ブラジル・バカンス中の元怪物は冬にどっか移籍しそうだね。



ユベントスのいない今シーズンのセリエAは、ローマが素晴らしいサッカーして、パレルモも調子は良いけど、戦力的にやはりミランインテルが優勝を争うと思う。そうなるとノーハンディのインテルがやはり本命。これでスクデット獲れなかったら完璧にネタでしょうな。

*1:代えられなかった為、試合後はミハと喧嘩。