準決勝第1戦
メッシ、ラーション、デコ、シャビを欠くバルサに対し、ミランは発熱のピッポを欠く以外はほぼベストメンバー。
[ミラン 4-3-1-2]
GK:ジダ
DF:スタム(77分カフー)、カラーゼ、ネスタ、セルジーニョ
MF:ピルロ(67分マルディーニ)、セードルフ、ガットゥーゾ(73分アンブロジーニ)、カカー
FW:シェフチェンコ、ジラルディーノ
[バルセロナ 4-1-2-3]
GK:バルデス
DF:プジョル、マルケス、ファンブロンクホルスト、オレゲール(75分モッタ)
MF:エジミウソン、ファンボメル、イニエスタ
FW:エトオ(89分マキシ・ロペス)、ロナウジーニョ、ジュリ(70分ベレッチ)
序盤はミランの守備が機能し、うまく攻撃に移行出来ていた。厳しいマークで前線に楔を入れさせず、コンパクトな中盤での素早いチェックで自由を封じ、カウンター気味にサイドの裏を突くという対バルサの定石通りの攻め。
中盤にデコとシャビを欠くバルサは、代えのファン・ボメルが安定したポゼッションに貢献できず、引いてボールを受けにくるエトーとロナウジーニョにも厳しいチェックが入り本領発揮できず。
だがミランは、4分にスローインからジラルディーノのシュート、15分にカウンターからシェフチェンコのヘッドと決定的チャンスを活かせない。
時間が経つに連れて徐々にバルサが落ち着きを取り戻しだす。楔のパスに固執せず、前線に飛び出すエトーやジュリに、中盤から一気にDFラインの裏のスペースを狙う。前線ののスピードを警戒したミランは徐々にラインを下げざるを得なくなり、コンパクトな中盤が維持しづらくなる。中盤にスペースが空きだすと、イニエスタやロナウジーニョが輝きだす。イニエスタ*1はデコやシャビの穴を感じさせないボール捌きを見せ、ロナウジーニョは圧倒的なキープ力で猛威を振るい出した。
試合を通じてバルサとミランの攻守の駆け引きは熾烈だったけど、ミランがラインを上げるとバルサが裏のスペースを狙ったスルーパス、ラインを下げると中盤にスペースが生じるといった具合に、全体的にバルサが主導権を握っていたと思う。それに加え、普段ならボール奪取に成功するような場合でも、それを許さないロナウジーニョの存在はミランにとって脅威だった。エトーらの飛び出しで中央に空いたスペースに進入してから本領発揮。
先制点はそんなロナウジーニョから。57分、中盤でロナウジーニョが変態キープでガットゥーゾを転ばしてから、振り向き様にDFもGKも届かない絶妙なスペースへ、ジュリにしか反応できないタイミングで浮き球のピンポイントのキラーパス。斜めに走りこんだジュリがダイレクトでニアに突き刺しバルサが先制。
メッシ、ラーションと前線に怪我人が続出したバルサだけど、代役となったジュリが優るとも劣らない活躍を見せた。カラーゼとネスタの間に割って入るダイアゴナル・ランのタイミングとスピードは流石。メッシの台頭で今シーズンは例年に比べ影が薄かったけど、やはりボールを引き出すオフ・ザ・ボールの動きは世界最高峰。攻めだけでなく献身的な守備での貢献で、対面のセルジーニョの攻撃参加も牽制。ハイペースで飛ばし過ぎて途中交代となったけど、実力を改めて証明した格好*2。
先制した後は、バルサが今シーズン身に付けたアウェーモードで試合を進める。守備面では試合を通じてエジミウソンがカカーをよく押さえ込み*3、中盤でピルロに自由なスペースも与えない。DFラインも不用意に高くは保たず、危険なスペースを消す事を最優先にし、SBも攻撃参加を自重する。攻撃時も相手陣形が整っている時は無駄に攻め急がず、安定したポゼッションでボールを落ち着けて、機を見ると素早いカウンターでミランに脅威を与える。昨シーズンからは想像も出来なかった大人の試合運び。組織的なプレッシングも試合を通じて機能していた。
ミランの攻撃も悪かったわけではないけど、バルサのカウンターの脅威もあり、攻めにだけ集中するわけにも行かず。ピッポを発熱で欠き、試合の流れを変えるような攻撃のオプションが存在しなかったのも痛かった*4。不調だったピルロに代える駒がマルディーニしかいないのでは。アンブロジーニやジラルディーノの決定機逸も痛い。ここまでチームを引っ張ってきたピッポ不在の大きさを感じた。
ゴールを決めたジュリを称えるのは当然として、やはりMOMはロナウジーニョでしょうね。けして万全な状態ではない中、中盤での圧倒的なキープ力は相手に脅威を、味方に落ち着きを与えていた。現代サッカーに置いて普通なら持ち過ぎになるようなプレーでも、それをタメに変えてチャンスを作り出してしまうのは凄い。ガットゥーゾを置き去りにした跨ぎフェイントからのドリブル突破、相手を嘲笑うかのようなシャペウ*5、やりすぎの感もある密集地でのリフティング。惜しくもポストに当たったシュートシーンも素晴らしかった。
主力数名を欠きながらサン・シーロで1-0という結果はバルサにとって理想的な展開。アウェーでの巧みな試合運びでミランを一歩上回った。ただミランも決定機を多く作り出しており、両チームの実力差はそこまでない。結果的には決定力の差が明暗を分けた。次戦の舞台はカンプノウ、バルサ有利は揺ぎ無い。大逆転を引き起こすとしたら、やはりミランはピッポの復活ゴールか。
[アーセナル 4-5-1]
GK:レーマン
DF:エブエ、トゥーレ、センデロス、フラミニ
MF:リュングベリ(80分ファンペルシー)、ジウベルト・シルバ、セスク、フレブ、ピレス
FW:アンリ
[ビジャレアル 4-4-2]
GK:バルボサ
DF:ハビ・ベンダ、キケ・アルバレス、アルアバレナ、アルソ
MF:ソリン(72分ホシコ)、マルコス・セナ、タッキナルディ、リケルメ
FW:フォルラン(90分カジェハ)、ホセ・マリ(55分フランコ)
リス(笑)
*1:スペインの新星というと最近はセスクだけが騒がれがちだけど、84年生まれの彼もまた素晴らしい逸材。今シーズンはアンカーもこなすなど幅を広げている。2010年のスペインの中盤は、シャビ・エルナンデスとシャビ・アロンソも残るだろうし、若手のセスク、イニエスタ、ラウール・ガルシアも加えて熾烈な争いが予想される。
*2:ドメネクもフランス代表に召集すべきですな。フランスはアンリの1トップ、両サイドのジュリとリベリのスピードとテクニックのある選手を配して、アーセナルのようなサッカーをやれなかなりおもしろいと思うんだが。二人とも呼びもしないなんて信じられない。
*3:流石に終盤はバテテ、カカーにやられていたけど。今年のCLでのカカーは、バイエルンのデミチェリス、リヨンのディアッラ、そしてバルサのエジミソンと、優秀なアンカーとのマッチアップに苦労している印象。
*4:ピッポがいればジラの途中出場で3トップに出来たし、本来切り札だったセルジーニョもこの試合はスタメン。そして元々アンチェロッティは積極的な采配で試合の流れを代える事に関しては苦手。
*5:敵の頭越しにボールを浮かせてかわすロナウジーニョの得意技。「Chapeu=帽子」が語源。若手の頃にブラジルでドゥンガにこれを決めて一躍名を売った。