グループB


オーストリア 1−0 クロアチア
 [得点] 4分PK:モドリッチ

オーストリア
 マホ
 プレドゥル、シュトランツル、ポガテツ
 シュタントフェスト、アウフハウザー、ゾイメル(61分:ヴァスティッチ)、ゲルカリウ(69分:コルクマツ)、イヴァンシュイッツ
 ハルニクリンツ(73分:キーナスト)

クロアチア
 プレティコサ
 コルルカ、R・コヴァチ、シムニッチプラニッチ
 スルナ、N・コヴァチ、モドリッチ、クラニチャール(61分:クネゼヴィッチ)
 オリッチ(83分:ヴコイェヴィッチ)、ペトリッチ(72分:ブダン)

イングランドから2連勝で予選突破したダークホース筆頭のクロアチアと、参加国中最低人気のオーストリアの一戦は、戦前の予想とは違った試合展開となった。


オーストリアホームの期待を受けて気持ちが入りすぎたのか、試合開始早々にペナ内でのハードタックルであっさりPK献上。その後もクロアチアの前線からのハイプレス、モドリッチを中心にしたパスワークに手も足も出ず、大敗の予感が漂う序盤だった。


一方的な序盤から、徐々にオーストリアは落ち着くと、豊富な運動量を活かしたスペースメイクとパスワークを交えた好感が持てるスタイルでクロアチアを押し始める。序盤にサイドの攻防で主導権を握られて、3バックの裏を突かれまくったのが、終盤は逆にクロアチアの攻撃的SBプラニッチの穴を突いて押し返す場面も。ただし、アタッキングサードでの精度に欠けるため、なかなか決定的チャンスを作り出せない。数回あった決定機も決めきれず。この辺は日本と少し被るところもある。


オーストリアは欧州主要リーグでプレーしている選手も少なく、予選免除で試合自体も見れてなかったので、自分の中ではノーマークに近かったのだが、予想外の良いサッカーを展開していた。良くも悪くも経験不足による若さが目立つチームで、試合中に別人のような顔を見せる。勢いに乗るとかなり面白い。


選手個々の能力もなかなかで、以前にオシムジャパンと対戦した時よりは主力も揃って見違えるほど*1Jリーグで活躍したハースやヴァスティッチといった技巧派FWを排出した国だけあって、スキルの高い良い若手も多かった*2。そのFWのヴァスティッチ、持ち前の視野の広さやキック精度を活かして、途中出場すると中盤でゲームメイクを司る司令塔の役目を担っていた。オーストリアリーグでプレーする宮本の解説によるとリーグでもそんな感じで大活躍らしい。奥が深いね。


クロアチアは序盤から飛ばしすぎたのかスタミナ切れを起こし終盤は防戦一方。期待のモドリッチは実況・解説からべた褒めであったが、個人的には好調時の半分のプレーに見えた。クラニチャルは守備では苦手の献身的に頑張ったものの、攻撃面ではいまいち。要所要所を押さえる守備で何とか1点を守りきって開幕戦を飾ったが、この時点ではダークホース筆頭の前評判ほどの強さは感じさせなかったクロアチア、真価を発揮するのはドイツ戦までお預けとなる。




◇ドイツ 2−0 ポーランド
 [得点] 20、72分:ポドルスキ

◇ドイツ
 レーマン
 ラーム、メッツェルダーメルテザッカーヤンセン
 フリッツ(56分:シュヴァインシュタイガー)、フリンクスバラックポドルスキ
 ゴメツ(75分:ヒッツルスペルガー)、クローゼ

ポーランド
 ボルツ
 ヴァシレフスキ、ゼヴラコフ、ボンク、ゴランスキ(75分:サガノフスキ)
 ウォボジニスキ(65分:ピスチェク)、ドゥドゥカ、ジュラフスキ(46分:ゲレーロ)、レヴァンドフスキ、クジヌヴェク
 スモラレク


ドイツは懸念されたFWポドルスキーとSBフリッツの急造両SHが機能した。ポドルスキーは2得点に絡む大活躍を見せ、フリッツは持ち前の運動量やSB経験を活かしたラームとのポジションチェンジでシュナイダーとは違った特色を見せる。ただ攻撃的SBヤンゼンと本来FWのポドルスキーの左サイドは守備面で大きな不安があり、そこをポーランドに狙われるシーンも目立った。


堅守速攻のイメージが強いポーランドだが、べた引きカウンターからは程遠い積極的なラインコントロール、攻撃ではカウンター頼みではなく小気味良いビルドアップからの展開を見せ、ドイツと真っ向勝負を演じた。ただドイツ相手にポゼッションで主導権を握るにはまだまだ力不足で、ラインを高く押し上げる割に、簡単に相手に前を向かれて裏を疲れるなどの脆さを見せ、それが失点を生んでしまった。ただし前時代的なリアクションサッカーからの決別し、アクションサッカーを志向する姿勢には好感が持てた。


後半から途中投入されたポーランドリーグ最高のOMFとの前評判のロジェール・ゲレーロ、ブラジルから帰化した彼は一人だけ違ったリズムでプレーしていてかなり目立っていた。ポーランドどころか、相手の大国ドイツにもこれほどのテクニシャンはいないだろう。世界中の各リーグ最高のブラジル人は、代表暦がなくても誰もが凄いんだろうね。日本にだってポンテがいるわけだし。ブラジル恐るべし。


  • 第二節

クロアチア 2−1 ドイツ
[得点]24分:スルナ、62分:オリッチ、79分:ポドルスキ(ド)

クロアチア
 プレティコサ
 シムニッチ、R・コヴァチ、コルルカプラニッチ
 ラキティッチ、N・コヴァチ、スルナ(80分:レコ)、モドリッチ、クラニチャール(85分:クニシェヴィッチ)
 オリッチ(72分:ペトリッチ)

◇ドイツ
 レーマン
 ヤンセン(46分:オドンコル)、メルテザッカーメッツェルダー、ラーム
 ポドルスキバラックフリングス、フリッツ(82分:クーラニー)
 クローゼ、ゴメス(66分:シュヴァインシュタイガー

ダークホース筆頭のクロアチアが真価を発揮。優勝候補筆頭のドイツを下した。スコアは一点差だが、完勝といって良いのでは。


両チームの差を一番に感じたのは中盤の構成力。予選でも中心として活躍したクロアチアが誇るモドリッチクラニチャルに、シャルケでブレイクした第3の男ラキティッチ。この大一番でビリッチは、システムを初戦の2トップから1トップの4-5-1に変更し、このテクニシャン3人を共存させてきた。ドイツはこの3人の技巧を活かしたポゼッション、流動的なポジションチェンジに守備では翻弄される事となる。


4-4-2のドイツは中盤で数的不利に陥り、バラックフリングスの中盤センターは、相手の3センターのクラニチャルモドリッチコバチに押さえられる。、左サイドはラキティッチのキープやパス、右サイドはスルナの上下動で劣勢。DFもビルドアップ面で中盤を助けられず、オリッチを中心とするクロアチアのハードワークに手を焼いた。


中盤で数的不利な分、2トップにしているため前線のチェックでは分があるはずだが、この日はクロアチアの1トップ・オリッチの献身性の方が目立つくらいで、攻撃でのコンビネーションも初戦に比べていまいち。ゴメツもクローゼも決定機を与えてもらえなかった。


初戦では良かった急造両SHも、構成力の不足や守備面が穴となって現れた。フリッツもポドルスキも中盤としては構成力の面で物足りず、ポドルスキは強烈なシュートで一矢報いたものの、SBヤンゼンと構成される左サイドの守備の穴になっていた。後半にはフリッツを本職のSBに下げ、SHにオドンコールを投入したものの、スピード以外は平凡な彼では起爆剤にはならず。シュバインシュタイガーの復活が待たれるが、退場しちまったよ。


ドイツは中盤の構成力で勝る相手に、正直に挑みすぎた印象。というかクロアチアの中盤がここまでではないと思っていたかもしれない。ラキティッチが加わった分、イングランドを撃破した時よりもその構成力はさらに増していた。中盤で真っ向勝負せずに、シンプルにサイドに展開して、高さ・強さのある2トップに放り込んでいって、相手のラインが下がって中盤にスペースが空いた際に、そこを利用するようなサッカーに徹するのも一つの手だったと思う。最近は中盤の構成力を重要視するモダンなサッカーが良い方が出ていたドイツだが、この試合では原点回帰した方が良かったかもね。シンプルにFWの強さを活かしていけば相当強いと思うんだが。


クロアチアはウェンブリーでイングランドを撃破した強さを遺憾なく発揮。モドリッチクラニチャルラキティッチ共存による中盤の構成力上昇が良い方に出たのが勝因。リード後は攻め込まれる時間帯があったものの、引いた位置からでもビルドアップで徐々に押し上げていく構成力があるし、カウンターで常に脅威を与えていた。初戦ほどバテて押し込まれなかったのは、この3人を中心としたポゼッションで、要所で休息も与えられたからだろう。


モドリッチラキティッチは、パスセンスに優れたテクニシャンでありながら、攻守の切り替えも抜群で守備にもハードワークという現代的MFの最先端ともいえる存在*3で、単にビルドアップに優れたパサーでは収まらないトータル性がある。この二人に比べるとややオールドスクールクラニチャルも、初戦のサイド起用ではなくトップ下に位置して、決定機は外したものの持ち前の攻撃性をより発揮していた。


干渉したクロアチアだが、まだまだ穴は多い。体力面で不安は大きいし、DFの個人能力にも不安が残る。ただこの中盤は魅力的だ。それにしてもWCのスコアレスドローから早2年、日本とは随分差がついてしまったなあ。日本の長所である中盤の構成力だけ見ても、もはや相手にならないかもしれない。



オーストリア 1−1 ポーランド
[得点]30分:ゲレイロ、90+3分:ヴァスティッチ(オ)

オーストリア
 マチョ
 ガリクス、プロドル、ストランツル、ポガテツ
 ライトゲープ、アウフハウザー(74分:ソーメル)、イヴァンシヴィッツ(64分:ヴァスティッチ)、コルクマズ
 ハルニクリンツ(64分:キーナスト)

ポーランド
 ボルツ
 ワジレヴスキ、ジョプ(46分:ゴランスキ)、バク、ゼヴタコフ
 クルジノヴェク、レヴァンドウスキ、ドゥドゥカ、ゲレイロ(85分:ムラヴスキ)
 スモラレク、サガノフスキ(83分:ロボジンスキ)


試合の入り方に失敗した初戦と違い、オーストリアペースで進む。ポーランドは初戦同様、積極的にラインを上げるのだが、簡単にプレスを交わされて相手に前を向かれてしまうため、一発でライン裏を突かれてピンチを招いてしまう。しかし何度もあった決定機を、ボルツの好セーブもありオーストリアは決めきれない。チャンスに多く絡んだ87年生まれの長身FWハルニクは、裏を抜けるタイミングやスピードはかなり良いものを持っているだけに、シュート精度が改善されれば大化けしそう。


そんなこんなでポーランドに先制されると、若いオーストリアは一気にリズムを崩して、ポーランドにペースを握られてゲレーロ中心に攻められる。とにかく若い。何とかポーランドの攻撃を一点で凌いで、ホームの後押しを受けて攻め込み、コルクマズの切れの良いドリブル突破からチャンスを掴むも決めきれず。絶体絶命のロスタイム、PK奪取に成功して何とかドロー。最終戦に望みをつないだ。

最後のPKは明らかなホーム効果によるものだが、ポーランドの先制点もオフサイドっぽかったのでトントンか。開催国が二カ国とも早々に敗退決定とならなかったのは良かったかもしれない。最終戦はドイツ。かなり厳しいことは間違いないが、ホームらしい積極的な試合を期待したいね。



次はC組・D組1〜2節の雑感。明日になるかも。

*1:一方の日本代表はあのスイス遠征の時と比べてチーム力は下降線だが……

*2:大柄ながら裏に抜け出すタイミングとスピードに優れるFWハルニク、ドリブル突破に秀でたサイドアタッカーのコルクマツ、左足のキック精度の高い古典的な潤・0の香りのするトップ下のイヴァンシュイッツ。正直言って日本の若手よりスケールが大きいよ。

*3:一昔前なら2人とも守備免除されたプレーエリアの狭いトップ下を得意とするテクニシャンとして育成されたはず。そういうテクニシャンが多い日本にも、早くこういうニュータイプが出てきてほしいね。それにしてもモドリッチが37億でスパーズでしょ。彼より3歳若いラキティッチにも相当値がつきそうだ。

グループA

  • 第一節

ポルトガル 2−0 トルコ
 [得点] 61分:ペペ、90+3分:メイレレス 
 

ポルトガル 4-3-3
GK:リカルド
DF:ボシングワ、ペペ、カルヴァリョ、フェレイラ
MF:ペティート、デコ(90分:メイラ)、モウティーニョ
FW:ロナウドヌーノ・ゴメス(69分:ナニ)、シモン(83分:メイレレス

トルコ 4-4-2
GK:ヴォルカン
DF:ハミト・アルティントップ、セルヴェト、ギョクハン(エムレ・アシュク)、ハカン・バルタ
MF:カズム、エムレ・ベゾロギュ、メフメト・アウレリオトゥンジャイ
FW:ニハト、メヴリュト(46分:サブリ)、


クローズな開幕戦とは違い、オープンな試合展開になった。こういう試合展開にはめっぽう強いポルトガルチェコの積極的な守備に苦しむ場面はあり、決定機の割りの得点を決めきれない悪癖を覗かせたものの、前線の流動性、後方からの攻撃参加、リード後の相手を呼び込んでからのカウンターと、現代サッカーのトレンドを体現しての快勝。


ポルトガルのようにポゼッションで相手を押し込むチームは、どうしても前が詰まってしまう。そのときに効果的なDFからの攻撃参加。カルバーリョ、ペペの両CBはスペースを見つけると効果的なオーバーラップで攻め込む能力を有し、その能力を活かしたペペの先制点は見事だった。共にビルドアップ能力が高く、守備面でのバランスも抜群。アタッカー陣の華やかさに隠れがちだが、守備陣のトータル的能力の高さもポルトガルの大きな魅力。


ポルトガルの予選との大きな違いは3センターの構成。守備面やバランス取りに長けたヴェローゾやぺティートとダブルボランチ気味の構成で、トップ下のデコの攻撃面での負担が大きかったのが、アンカーのヴェローゾをベンチにし、本来はデコの控えと見られていたモウチーニョが先発し、ぺティートの前方にデコと並ぶ3センターの布陣。攻撃センスに長けたモウチーニョのフォローは、攻撃面において確かな効果を発揮していた。鮮やかなターンからの2点目のアシストはみごと。これでマニシェの穴は埋まった格好か。デコの実力は文句ないだけに、新鋭モウチーニョの奮起に期待がかかる。


エースのロナウドはマークも厳しくまだまだ本領発揮とは行かず。ただ周りを活かすプレーでチームを助けていた。CFを務めるヌーノ・ゴメス*1の得点力に大きな期待が持てないだけに、得点源としてロナウドにかかる期待は大きい。ここから徐々にギアを上げていきたい。



トルコはテリム*2のチームらしく、ポルトガル相手に真っ向勝負。このトルコの姿勢が、オープンな好ゲームを生んだ。勝負論を考えれば格上相手にこのゲームプランは微妙だが、自分達のサッカーを貫いたのには好感が持てる。CBに怪我人が出るなどの不運もあって、守備面での不安は大きいが、攻撃面ではポルトガルを脅かす場面も見られた。このオープンなサッカーが、開幕戦でクローズな試合運びを見せたチェコとスイスにどう出るか。

初日から対照的なサッカーを見せるAグループの2試合、大会の趨勢を占う意味でも興味深かった。


  • 第二節


チェコ 1−3 ポルトガル
 [得点] 8分:デコ、17分:シオンコ(チ)、63分:ロナウド、90+1分:クアレスマ

チェコ 4-1-4-1
 ツェフ
 グリゲラウイファルシロゼフナルヤンクロフスキ
 シオンコ、マテヨフスキー(68分:ヴルチェク)、ガラセク(73分:コラー)、ポラクプラシル(20分:ヤロリム)
 バロシュ

ポルトガル 4-3-3
 リカルド
 ボシングワ、ペペ、カルヴァリョ、フェレイラ
 ペティート、デコ、モウティーニョ(75分・メイラ)
 シモン(90分:クアレスマ)、ロナウドヌーノ・ゴメス(79分:アウメイダ


開催国スイス相手に、超リアリズムなサッカーで勝ち点3を得たチェコ。策士ブルックナーが、優勝候補ポルトガル相手にどう対するか注目したが、初戦の超リアリスティックなサッカーは封印。その姿勢が好ゲームを呼び込んだ。


チェコの初戦、コラーへのロングボール中心の試合運びは、コラーの不調もあって攻撃面ではあまり機能しなかったが、スイスのゲームプランを狂わすなど一定の効果を発揮していた。ポルトガル戦でも序盤はリスクを廃したその作戦でくるかと思ったが、ブルックナーはコラーに変えてバロシュを1トップで先発起用。パサーのマテヨフスキーとの併用で攻撃的なポルトガルの裏をカウンターで狙う作戦。


チェコは初戦同様に中盤でハードワークを仕掛けて、ポルトガルを苦しめる。バロシュにもそこそこボールは収まり、得意のドリブルで局面の打開を図る。ただ中盤に変化を付けられる選手がいないため、攻撃はショートカウンターや単発の個人技でどうにも苦しい。セットプレーからの1得点が精一杯か。終盤にコラーを投入し局面打開を図るが、フェリペがそれに呼応しメイラの投入でパワープレー対策でシャットアウト。


ポルトガルはデコを中心にプレスを交わしポゼッション。ロナウドも片サイドには留まらない現代的なサイドアタッカーらしい流動性チェコの守備組織をかき回した。序盤はチェコのハードワークに苦しんだものの、中盤以降に疲れが見えてからはポゼッションでリズムを掴む。チャンスメイカー不在のチェコとは違い、デコとロナウドの格の違いを見せるチャンスメイクと決定力で得点を奪い快勝。


一級品の攻撃性を持ちながら、守備でのハードワークも厭わない現代的なOMFの象徴的な存在でもあるデコの存在感が際立った試合だった。チェコの選手にはハードワークがあっても、攻撃面での物足りなさは否めない。ハードワーク一辺倒では90分間持つはずもなく、緩急巧みなポルトガルにいなされる格好となった。


これでポルトガルのA組首位通過決定。スイス戦で主力を休められるのは大きい。ロナウドも徐々に調子を上げてきているし、トーナメントに向けて視界良好といったところか。




スイス 1−2 トルコ
 [得点] 32分:ヤキン(ス)、57分:セミフ、90+2分:アルダ

◇スイス
 ベナリオ
 リヒトシュタイナーミュラーセンデロス、マニャン
 ベーラミ、ヤキン(85分:ギガックス)、インレル、バルネッタ(66分:フォンランテン
 ギガックス、デルディヨク

◇トルコ
 ヴォルカン
 ハミト・アルティントップ、セルヴェト、エムレ・アシュク、ハカン・バルタ
 ギョクデニス(46分:セミフ)、アウレリオ、テュメル(46分:トパル)、トゥンジャイ
 ニハト(85分:カズム)

スイスはエースFWのフレイ、トルコは中盤の要の司令塔エムレが初戦で負傷。両チームのキーマンを欠いた豪雨の中の因縁の一戦は、劇的な試合展開を呼び込んだ。


序盤はトルコがパスワークやドリブルでリズムを掴んで攻勢に出るも、試合途中からの豪雨が試合展開を変えた。


豪雨にいち早く対応したのはスイス。濡れたピッチを見越して、グラウンダーのショートパスやドリブルを封印し、トップや裏のスペースへのロングボール中心の攻撃を仕掛けてチャンスを生む。その流れでヤキンが先制点を奪い、試合の流れを掴んだかに見えた。ただ先制点直後にもあった似たような決定機をヤキンが決めきれず、後に響くことになった。


トルコは豪雨中も愚直にショートパスやドリブルを繰り出してボールを逸するなどし、スイスのカウンターに何度もゴールを脅かされた。ただ雨が弱まった後半は何度か良いシーンを作り、ニハトのクロスからセミフが豪快なヘッドで同点に持ち込む。スイスはベーラミのドリブルと目立つものの、キーマンのフレイがスタミナ切れで苦しくなってきた。


その後は両チームと持ち合いになったが、打ち合いはトルコの得意とする展開。スイスがカウンターからの超決定機を決め切れなかった直後にカウンター発動、この日先発に抜擢された新鋭アルダ*3が、ロスタイムにハーフライン付近から独力でボールを持ち込んでドリブルシュート。DFに当たりコースが変わったボールはゴールに吸い込まれ、トルコが劇的な逆転勝利。開催国スイスはまさかの2連敗でグループリーグ敗退決定。


スイスは2戦とも特別内容が悪かったわけではない。決定機は何度も作ったが、それを決め切れず。初戦でエースFWフレイを負傷で欠いた影響は大きかった。結果論だが、ホームにしては慎重すぎる試合運びで初戦に入ったのが良くなかったかもしれない。フレイの代わりに入ったヤキンが良かっただけに、WCでのように2人を併用していればどうだったか。


スイスはWCで若手主体で無失点・ベスト16の成績から、開催国で迎えるEUROではダークホースとして期待されたが、まさかの2連敗で初戦敗退。アンカーのフォーゲル代表引退でシステム変更を余儀なくされたことや、当時U-21でフル代表昇格が期待されていた二人の超逸材*4が、母国の代表を選択してしまったのも痛かったなあ。ただ移民が多い多言語国家なので、今後もスタイルの異なる良い若手を輩出するだろうし、まだ現代表の主力も若いので、今後に期待だね。そのために最後のポルトガル戦は、ただの消化試合ではなく次に繋げるためにも全力で挑んでほしいね。


これで勝ち点3のトルコとチェコが、第3戦目でトーナメント進出を争う直接対決を迎える。リアリズムのチェコか、イノセントなトルコか。楽しみな一戦だ。

*1:ポストプレーのワンツーなんかに独特のセンスがあって、2列目の得点力を活かす意味では良いプレーを持っているけど、決定機に決めきれないのは相変わらず。

*2:ヴィクトル・フェルナンデス、ゼーマンと並ぶ、欧州サッカー界随一の攻撃サッカー信望者。守備全盛の90年代のセリエAで2-3-3-2の超攻撃的婦人とか無茶な事をやってた。

*3:こういう日本では無名の存在のブレイクがEUROの楽しみでもあったり。得意のドリブルも突破とためを使い分けられるし、エリア内に飛び込んでポスト直撃のチャンスも生んだ。この87年生まれの逸材は、近いうちに欧州主要リーグで見られそうだ。

*4:WC後に台頭してきた若手CHのインレル、フェルナンデスも悪くないけど、ラキティッチ、クズマノビッチに比べるとスケールが違う

どうにか土日で各グループ2戦目までの全試合観戦を消化。
現代サッカーの現実的な部分を集積したかのような開幕戦の前半を見た時はどうなることかと思ったけど、ここまでは攻撃的な好ゲームが多く見られてかなり楽しい*1。ただグループリーグは攻撃的な傾向が強くても、トーナメントで守備的な試合が増えるのは良くあること*2。さて、今大会はどうなるでしょう。
それでは各グループごとの2節目までの雑感をグループAから順に出来るところまで。試合のペースに更新が追いつかない傾向は今後も続きますのでご了承を。日本のフル代表や五輪代表はEURO後にでも。水色のチームは……

*1:現代サッカーのトップモードに照らし合わせて大会の傾向を考えても、かなり興味深い部分が伺える。各ポジションに必要とされる選手の特性も進化してるしね。DFのビルドアップ、前線のチェイシング、CHのトータル性、サイドの流動性なんかより顕著。

*2:攻撃サッカーにリアクション一辺倒の守備的なチームが淘汰された後、トーナメントでバランスの取れたチーム同士の対戦になった場合、より守備力のあるチームがカウンターを駆使して勝ち進んでくるという最近の傾向。

オランダ代表メンバー雑感

他の列強に比べ選手層は薄い。

ゴールキーパー
1 エドウィン・ファン・デル・サール
13 ヘンク・ティメル
16 マールテン・ステケレンブルフ

いまだにファンデルサール頼み。彼の引退後には大きな不安が残る。

ディフェンダー
2 アンドレ・オーイエル
3 ヨン・ハイティンガ
4 ヨリス・マタイセン
5 ジョバンニ・ファン・ブロンクホルスト
12 マリオ・メルヒオット
14 ビルフレト・バウマ
15 ティム・デ・クレル
21 ハリド・ブラルズ

ヘイティンガの成長はあるが、どうにも他の列強に比べると緩さを感じてしまう。CBは高さや強さにかけ、SBも一対一に強くない。ポゼッションで極力守備時間を減らし、攻め勝つしかないだろうね。

ミッドフィルダー
6 デミー・デ・ゼーウ
8 オルランド・エンヘラール
10 ベスレイ・スネイデル
11 アリエン・ロッベン
17 ナイジェル・デヨング
20 イブラヒム・アフェライ
23 ラファエル・ファン・デル・ファールト

直前でセードルフが召集辞退をしたりなど、お家芸の内紛は相変わらず。戦力的には痛手だが、大会前に膿を取り除く事が出来たと考えれば悪くないかもしれない。

オランダは予選後から伝統の4-3-3から4-2-3-1にシステム変更*1。そのため中盤の構成はアンカーを底に据えた逆三角形ではなく、ダブルボランチ+トップ下の形に近くなった。ダブルボランチにはフィルターとしての役目だけではなく、攻撃の起点としても期待されるが、デ・ヨン、エンゲラール、ジオ、デゼーウの誰もがその部分に課題を抱える。スナイデルはSH起用が濃厚だが、多少の守備不安はあっても、一列下げて中盤の底で起点にするオプションがあってもいいように思うが。

4-2-3-1の恩恵を最も授かるのが二列目を得意とするファン・デル・ファールトスナイデル。特にラフィは、オランダ伝統の4-3-3のセントラルMFやウイングでは持ち味を活きない典型的なホールプレーヤーであり、そういう意味でオランダ人らしくない彼が、オランダを勝利に導けるのか。彼が輝けないなら、ウインガー復帰次第4-3-3に戻す方が得策だろうし、栄冠からは遠くなる。スター候補として迎えた前回大会で期待を裏切った彼が、4年越しのリベンジを果たせるのか。

フォワード
7 ロビン・ファン・ペルシ
9 ルート・ファン・ニステルローイ
18 ディルク・カイト
19 クラース・ヤン・フンテラール
22 ヤン・フェネホール・オブ・ヘッセリンク

オランダ伝統のウインガー。バベルの負傷離脱で、攻撃のオプションを一枚失ったのは痛い。負傷明けのファンペルシもベストコンディションではなく、こうなるロッベンも負傷で初戦の欠場が決定的。自慢の両翼をもがれたオランダはかなり苦しい。SH起用が濃厚なスナイデル*2、カイトにかかる期待は大きい。

  • CF

1トップは絶対的エースのファンニステルローイ、控えにもその後継者である新星フンテラールと、ボックス内で無類の強さを発揮するフィニッシャーを揃えた陣容は強力。パワープレー要員としてフェネホールも控える。ニステルの決定力に疑いの余地はないだけに、如何に決定機に繋がるボールを供給できるかが鍵を握る。両翼のファン・ペルシロッベンの復帰が間に合わないようなら、2トップにするのも一つの手かもしれない。




死のグループC、WCファイナリストのイタリアとフランス、予選G組でオランダに1勝1分け首位通過のルーマニアの3強、そしてダークホースのオランダでしたっけ。それは冗談にしても、日本の報道ほど、オランダに往年の強さは感じられない。守り切って勝てるチームではないだけに、攻撃陣に集中するタレントの爆発次第でしょうね。負けるにしても美しく散ってもらいたい。前回大会もWCも、それさえも叶わなかったのだから。

*1:これによりウインガーを活かしたサイド攻撃は以前に比べおとなしくなったが、2列目のペルシ、ラフィ、スナイデルらテクニシャン達の流動的なアタックが効果的に。

*2:2列目でのラフィとのポジションチェンジはこのシステム特有の魅力

フランス代表メンバー雑感

選出メンバーだけでなく、落選メンバーの豪華さ*1を鑑みても、全体な選手層では欧州潤・のフランス。そして、それをとても活かしているとは思えない監督がどうにも気になってしまう。

ゴールキーパー

1 スティーブ・マンダンダ
16 セバスティアン・フレイ
23 グレゴリー・クペ

経験豊富なベテランのクペ、ヴィオラで好調の中堅フレイ、成長著しい若手のマンダンダと、充実したポジション。ただしクペが衰え始めている不安もある。

ディフェンダー
2 ジャン・ アラン・ブームソン
3 エリック・アビダル
5 ウィリアム・ギャラス
13 パトリス・エブラ
14 フランソワ・クレルク
15 リリアン・テュラム
17 セバスティアン・スキラッチ
19 ウィリー・サニョール

メクセスエスキュデクリシー、サニャといった強豪国の4バックとして通用する選手達が落選している事からも、メンバーの充実がわかるというもの。所属クラブでは不振のテュラムサニョルといったベテランがレギュラー候補という、現状より経験を重視した人選がどうでるか。
CBギャラスは問題ないとして、衰えの顕著なチュラムには不安も残る。左SBはエブラ、アビダルで充実しているが、サニョルとクレルクの右SBにも不安があり、ユーティリティ性の高いディアッラの起用もありそうだ。

ミッドフィルダー
4 パトリック・ビエラ
6 クロード・マケレレ
7 フローラン・マルダ
11 サミル・ナスリ
20 ジェレミー・トゥララン
21 ラサナ・ディアラ
22 フランク・リベリ


マケレレヴィエラという経験豊富なダブルボランチに、リベリー、マルダの両サイドは安定感抜群。ジダンというレジェンドが引退したあとどうなるかと思われたが、リベリーの存在感がそれを感じさない*2トゥララン、ゴブのリヨン勢もクラブでは好調、4-2-3-1時には新星ナスリをトップ下に据えるオプションもあり、手駒は豊富だ。

不安点は、ヴィエラが負傷で出遅れている事。ここも代役のトゥラランディアッラが一気にレギュラー奪取する活躍を見せてくれれば面白いんだが。大会中の世代交代に成功したチームは一気に波に乗れるからね。

フォワード
8 ニコラス・アネルカ
9 カリム・ベンゼマ
10 シドニー・ゴブ
12 ティエリ・アンリ
18 バフェティンビ・ゴミス

アンリの1トップ、もしくはパートナーをアネルカベンゼマが争う。サプライズ選出として新鋭ゴミスが、シセやトレゼゲといったビッグネームを制して代表入り。大会後の代表引退を仄めかすエースのアンリは、大舞台に弱いというレッテルを返上したいだろう。
注目はベンゼマ。パワー、スピード、技巧の3拍子を備え、両足から強烈なシュート、高さを活かしたヘディングでもゴールを狙える新世代の万能FW。現在最も市場価格の高いFWと言われている。ドイツのゴメツと共に、ブレイクが期待されるスター候補である。



とにかく個々の選手の能力や選手層は大会潤・であり、若手、中堅、ベテランのバランスも悪くない。本来なら優勝候補筆頭となるべきチームのはず。ただ保守的な監督がどうにも評価できない。ピークを過ぎた感のあるベテランがレギュラーに多いので、前回大会のポルトガルのように若手が大会中のレギュラー奪取して波に乗っていければよ面白いんだが。ドメネクにそれが出来るかどうか。窮地を救ってくれたジダンはもういないよ。

*1:トレゼゲ、シセ、ピレス、ヴァルビュエナ、フラミニ、ボドメル、クリシー、サニャ、メクセスエスキュデ、ヨリスで、EUROに出てもダークホースになりうる。

*2:移籍したバイエルンでリーグMVP級の大活躍。サイドアタッカーといっても、サイドだけでなく、中央や逆サイドにまで進出するモビリティー、フリーランや守備でのハードワークも厭わず、チャンスメイクや得点力もハイレベルなど、新世代のサイドアタッカーを象徴する存在

イタリア代表メンバー雑感

ゴールキーパー
1 ジャンルイジ・ブッフォン
14 マルコ・アメリア
17 モルガン・デ・サンクティス


世界最高のGKブッフォンで万全。セビージャでサブのデ・サンクティスはサプライズ選出だが、第3GKなので問題ないだろう。ブッフォンが健在の限り国際経験を積めないアメリアは少し気の毒。

ディフェンダー
2 クリスティアン・パヌッチ
3 ファビオ・グロッソ
4 ジョルジョ・キエリーニ
5 アレッサンドロ・ガンベリーニ
6 アンドレア・バルザリ
19 ジャンルカ・ザンブロッタ
23 マルコ・マテラッツィ

WCを制覇した4バックで挑むはずが、守備の要カンナバーロの離脱は大きな誤算。ベテランのマテラッツィはWC時のコンディションを維持しておらず、キエッリーニバルザーリは国際経験に欠ける。リッピが退任した唯一の利点といわれる*1パヌッチの経験は買えるが、果たしてどこまでやれるか。ネスタが代表復帰してくれればと、イタリア国民は思っているでしょう。

ミッドフィルダー
8 ジェンナーロ・ガットゥーゾ
10 ダニエレ・デロッシ
13 マッシモ・アンブロジーニ

20 シモーネ・ペロッタ
21 アンドレア・ピルロ
22 アルベルト・アクイラーニ

ミランの3センターと、ローマの3センターを揃えた中盤センターは強力。WCと同じほぼ陣容だが、デロッシアクイラーニといった技巧とダイナミズムを備えた若手の成長で、さらにスケールアップしている。中盤の底のピルロからのゲームメイクが中心になるのは変わらないが、ピルロ以外は誰が出ても遜色なく、状況に応じて使い分ける事が出来る。

フォワード
7 アレッサンドロ・デル・ピエロ
9 ルカ・トニ
11 アントニオ・ディ・ナターレ
12 マルコ・ボリエッロ
15 ファビオ・クアリアレッラ
16 マウロ・カモラネージ
18 アントニオ・カッサーノ

  • サイド

トッティ代表引退のため、トップ下を廃した4-3-3へのシステム変更により、最も変化のあったポジションがサイドの役割。攻守に幅広く働けるカモラネージは不動の存在だが、アタッカー色の強いディナターレ、本来セカンドトップだが柔軟性のあるクアリラレッラといったウディネーゼ陣が予選では重用されてきた。高い位置からのサイド攻撃を重視する新しいイタリアが見れるはず。

そしてリーグでの好調を買われて代表復帰を果たしたデル・ピエロカッサーノも、起用ポジションはサイドになるだろう。予選ではWC時と比べて小じんまりとしたチームに感じられたが、この2人のファンタジスタ復帰で、攻撃陣に華やかさが増した*2。起用法*3や周囲に与える影響など*4、問題も多くあるが、攻撃の切り札としてこの2人が控えるのは大きな武器にもなりうる。似たよな状況でラウールを外したスペインとは対照的な選択がどう出るか。

  • CF

ジラルディーノの大スランプ、ヤクインタも負傷で、攻撃の基準点となりうるCFとしてトニにかかる期待は大きい。今シーズンブレイクを果たしたボリエッロも、初の大舞台でどこまで出来るか未知数。エースであり戦術上のキーマンでもあるトニに何かあったら、チームそのものに大きな影響が出てしまう。




ネスタトッティの代表引退、カンナバーロの負傷離脱で、WCに比べるとスケールダウンした感はあるが、やはり個々のメンバーは充実している。チームスタイルも伝統の堅守速攻頼みではなく、状況に応じて前線からのプレスと連動したコンビネーションによるアクションサッカーと、リトリートしてのカウンター中心のリアクションサッカーとを使い分けるWC仕様も継続中。いざという時にはカテナチオという帰るべき家も残している。

ただ欧州王者になるには不安点も多い。WC制覇にはリッピの采配面の力も大きかったが、ドナドーニにそこまでの期待はできないし、やはりトッティネスタカンナバーロを欠く精神的な穴は大きいはず。切り札になりうるデル・ピエロカッサーノのどちらかが、救世主的な活躍をするかどうか。やはりファンタジスタが輝かなければイタリアらしくない。そこにも期待したいね。

*1:リッピとパヌッチ犬猿の仲

*2:この2人の選出は嬉しかったけど、ジュゼッペ・ロッシの落選は残念だ。イタリアは国外組に厳しいからなあ。

*3:2人ともセカンドトップがベストポジションだが、現代表は1トップのためそのポジションは存在しない。

*4:スターであるデルピエロがベンチに座り続けるとメディアは騒ぎ出すし、悪童カッサーノは存在自体が諸刃の剣だ

流石にEURO、負けたチームのレベルも高い*1。それに比べアジアは世界の潮流から乗り遅れすぎだな*2
そしていよいよ死のC組。ここでは取り上げなかったけど、ルーマニアも侮れないからね。

*1:オーストリアポーランドと、従来のイメージを良い意味で裏切るサッカーを志向していて好感が持てた。ポルトガル相手に真っ向勝負を挑んだテリムは相変わらずだが(笑)各試合の雑感は週末にでも。

*2:日本についての更新はEUROが終わってからだね。