グループB


オーストリア 1−0 クロアチア
 [得点] 4分PK:モドリッチ

オーストリア
 マホ
 プレドゥル、シュトランツル、ポガテツ
 シュタントフェスト、アウフハウザー、ゾイメル(61分:ヴァスティッチ)、ゲルカリウ(69分:コルクマツ)、イヴァンシュイッツ
 ハルニクリンツ(73分:キーナスト)

クロアチア
 プレティコサ
 コルルカ、R・コヴァチ、シムニッチプラニッチ
 スルナ、N・コヴァチ、モドリッチ、クラニチャール(61分:クネゼヴィッチ)
 オリッチ(83分:ヴコイェヴィッチ)、ペトリッチ(72分:ブダン)

イングランドから2連勝で予選突破したダークホース筆頭のクロアチアと、参加国中最低人気のオーストリアの一戦は、戦前の予想とは違った試合展開となった。


オーストリアホームの期待を受けて気持ちが入りすぎたのか、試合開始早々にペナ内でのハードタックルであっさりPK献上。その後もクロアチアの前線からのハイプレス、モドリッチを中心にしたパスワークに手も足も出ず、大敗の予感が漂う序盤だった。


一方的な序盤から、徐々にオーストリアは落ち着くと、豊富な運動量を活かしたスペースメイクとパスワークを交えた好感が持てるスタイルでクロアチアを押し始める。序盤にサイドの攻防で主導権を握られて、3バックの裏を突かれまくったのが、終盤は逆にクロアチアの攻撃的SBプラニッチの穴を突いて押し返す場面も。ただし、アタッキングサードでの精度に欠けるため、なかなか決定的チャンスを作り出せない。数回あった決定機も決めきれず。この辺は日本と少し被るところもある。


オーストリアは欧州主要リーグでプレーしている選手も少なく、予選免除で試合自体も見れてなかったので、自分の中ではノーマークに近かったのだが、予想外の良いサッカーを展開していた。良くも悪くも経験不足による若さが目立つチームで、試合中に別人のような顔を見せる。勢いに乗るとかなり面白い。


選手個々の能力もなかなかで、以前にオシムジャパンと対戦した時よりは主力も揃って見違えるほど*1Jリーグで活躍したハースやヴァスティッチといった技巧派FWを排出した国だけあって、スキルの高い良い若手も多かった*2。そのFWのヴァスティッチ、持ち前の視野の広さやキック精度を活かして、途中出場すると中盤でゲームメイクを司る司令塔の役目を担っていた。オーストリアリーグでプレーする宮本の解説によるとリーグでもそんな感じで大活躍らしい。奥が深いね。


クロアチアは序盤から飛ばしすぎたのかスタミナ切れを起こし終盤は防戦一方。期待のモドリッチは実況・解説からべた褒めであったが、個人的には好調時の半分のプレーに見えた。クラニチャルは守備では苦手の献身的に頑張ったものの、攻撃面ではいまいち。要所要所を押さえる守備で何とか1点を守りきって開幕戦を飾ったが、この時点ではダークホース筆頭の前評判ほどの強さは感じさせなかったクロアチア、真価を発揮するのはドイツ戦までお預けとなる。




◇ドイツ 2−0 ポーランド
 [得点] 20、72分:ポドルスキ

◇ドイツ
 レーマン
 ラーム、メッツェルダーメルテザッカーヤンセン
 フリッツ(56分:シュヴァインシュタイガー)、フリンクスバラックポドルスキ
 ゴメツ(75分:ヒッツルスペルガー)、クローゼ

ポーランド
 ボルツ
 ヴァシレフスキ、ゼヴラコフ、ボンク、ゴランスキ(75分:サガノフスキ)
 ウォボジニスキ(65分:ピスチェク)、ドゥドゥカ、ジュラフスキ(46分:ゲレーロ)、レヴァンドフスキ、クジヌヴェク
 スモラレク


ドイツは懸念されたFWポドルスキーとSBフリッツの急造両SHが機能した。ポドルスキーは2得点に絡む大活躍を見せ、フリッツは持ち前の運動量やSB経験を活かしたラームとのポジションチェンジでシュナイダーとは違った特色を見せる。ただ攻撃的SBヤンゼンと本来FWのポドルスキーの左サイドは守備面で大きな不安があり、そこをポーランドに狙われるシーンも目立った。


堅守速攻のイメージが強いポーランドだが、べた引きカウンターからは程遠い積極的なラインコントロール、攻撃ではカウンター頼みではなく小気味良いビルドアップからの展開を見せ、ドイツと真っ向勝負を演じた。ただドイツ相手にポゼッションで主導権を握るにはまだまだ力不足で、ラインを高く押し上げる割に、簡単に相手に前を向かれて裏を疲れるなどの脆さを見せ、それが失点を生んでしまった。ただし前時代的なリアクションサッカーからの決別し、アクションサッカーを志向する姿勢には好感が持てた。


後半から途中投入されたポーランドリーグ最高のOMFとの前評判のロジェール・ゲレーロ、ブラジルから帰化した彼は一人だけ違ったリズムでプレーしていてかなり目立っていた。ポーランドどころか、相手の大国ドイツにもこれほどのテクニシャンはいないだろう。世界中の各リーグ最高のブラジル人は、代表暦がなくても誰もが凄いんだろうね。日本にだってポンテがいるわけだし。ブラジル恐るべし。


  • 第二節

クロアチア 2−1 ドイツ
[得点]24分:スルナ、62分:オリッチ、79分:ポドルスキ(ド)

クロアチア
 プレティコサ
 シムニッチ、R・コヴァチ、コルルカプラニッチ
 ラキティッチ、N・コヴァチ、スルナ(80分:レコ)、モドリッチ、クラニチャール(85分:クニシェヴィッチ)
 オリッチ(72分:ペトリッチ)

◇ドイツ
 レーマン
 ヤンセン(46分:オドンコル)、メルテザッカーメッツェルダー、ラーム
 ポドルスキバラックフリングス、フリッツ(82分:クーラニー)
 クローゼ、ゴメス(66分:シュヴァインシュタイガー

ダークホース筆頭のクロアチアが真価を発揮。優勝候補筆頭のドイツを下した。スコアは一点差だが、完勝といって良いのでは。


両チームの差を一番に感じたのは中盤の構成力。予選でも中心として活躍したクロアチアが誇るモドリッチクラニチャルに、シャルケでブレイクした第3の男ラキティッチ。この大一番でビリッチは、システムを初戦の2トップから1トップの4-5-1に変更し、このテクニシャン3人を共存させてきた。ドイツはこの3人の技巧を活かしたポゼッション、流動的なポジションチェンジに守備では翻弄される事となる。


4-4-2のドイツは中盤で数的不利に陥り、バラックフリングスの中盤センターは、相手の3センターのクラニチャルモドリッチコバチに押さえられる。、左サイドはラキティッチのキープやパス、右サイドはスルナの上下動で劣勢。DFもビルドアップ面で中盤を助けられず、オリッチを中心とするクロアチアのハードワークに手を焼いた。


中盤で数的不利な分、2トップにしているため前線のチェックでは分があるはずだが、この日はクロアチアの1トップ・オリッチの献身性の方が目立つくらいで、攻撃でのコンビネーションも初戦に比べていまいち。ゴメツもクローゼも決定機を与えてもらえなかった。


初戦では良かった急造両SHも、構成力の不足や守備面が穴となって現れた。フリッツもポドルスキも中盤としては構成力の面で物足りず、ポドルスキは強烈なシュートで一矢報いたものの、SBヤンゼンと構成される左サイドの守備の穴になっていた。後半にはフリッツを本職のSBに下げ、SHにオドンコールを投入したものの、スピード以外は平凡な彼では起爆剤にはならず。シュバインシュタイガーの復活が待たれるが、退場しちまったよ。


ドイツは中盤の構成力で勝る相手に、正直に挑みすぎた印象。というかクロアチアの中盤がここまでではないと思っていたかもしれない。ラキティッチが加わった分、イングランドを撃破した時よりもその構成力はさらに増していた。中盤で真っ向勝負せずに、シンプルにサイドに展開して、高さ・強さのある2トップに放り込んでいって、相手のラインが下がって中盤にスペースが空いた際に、そこを利用するようなサッカーに徹するのも一つの手だったと思う。最近は中盤の構成力を重要視するモダンなサッカーが良い方が出ていたドイツだが、この試合では原点回帰した方が良かったかもね。シンプルにFWの強さを活かしていけば相当強いと思うんだが。


クロアチアはウェンブリーでイングランドを撃破した強さを遺憾なく発揮。モドリッチクラニチャルラキティッチ共存による中盤の構成力上昇が良い方に出たのが勝因。リード後は攻め込まれる時間帯があったものの、引いた位置からでもビルドアップで徐々に押し上げていく構成力があるし、カウンターで常に脅威を与えていた。初戦ほどバテて押し込まれなかったのは、この3人を中心としたポゼッションで、要所で休息も与えられたからだろう。


モドリッチラキティッチは、パスセンスに優れたテクニシャンでありながら、攻守の切り替えも抜群で守備にもハードワークという現代的MFの最先端ともいえる存在*3で、単にビルドアップに優れたパサーでは収まらないトータル性がある。この二人に比べるとややオールドスクールクラニチャルも、初戦のサイド起用ではなくトップ下に位置して、決定機は外したものの持ち前の攻撃性をより発揮していた。


干渉したクロアチアだが、まだまだ穴は多い。体力面で不安は大きいし、DFの個人能力にも不安が残る。ただこの中盤は魅力的だ。それにしてもWCのスコアレスドローから早2年、日本とは随分差がついてしまったなあ。日本の長所である中盤の構成力だけ見ても、もはや相手にならないかもしれない。



オーストリア 1−1 ポーランド
[得点]30分:ゲレイロ、90+3分:ヴァスティッチ(オ)

オーストリア
 マチョ
 ガリクス、プロドル、ストランツル、ポガテツ
 ライトゲープ、アウフハウザー(74分:ソーメル)、イヴァンシヴィッツ(64分:ヴァスティッチ)、コルクマズ
 ハルニクリンツ(64分:キーナスト)

ポーランド
 ボルツ
 ワジレヴスキ、ジョプ(46分:ゴランスキ)、バク、ゼヴタコフ
 クルジノヴェク、レヴァンドウスキ、ドゥドゥカ、ゲレイロ(85分:ムラヴスキ)
 スモラレク、サガノフスキ(83分:ロボジンスキ)


試合の入り方に失敗した初戦と違い、オーストリアペースで進む。ポーランドは初戦同様、積極的にラインを上げるのだが、簡単にプレスを交わされて相手に前を向かれてしまうため、一発でライン裏を突かれてピンチを招いてしまう。しかし何度もあった決定機を、ボルツの好セーブもありオーストリアは決めきれない。チャンスに多く絡んだ87年生まれの長身FWハルニクは、裏を抜けるタイミングやスピードはかなり良いものを持っているだけに、シュート精度が改善されれば大化けしそう。


そんなこんなでポーランドに先制されると、若いオーストリアは一気にリズムを崩して、ポーランドにペースを握られてゲレーロ中心に攻められる。とにかく若い。何とかポーランドの攻撃を一点で凌いで、ホームの後押しを受けて攻め込み、コルクマズの切れの良いドリブル突破からチャンスを掴むも決めきれず。絶体絶命のロスタイム、PK奪取に成功して何とかドロー。最終戦に望みをつないだ。

最後のPKは明らかなホーム効果によるものだが、ポーランドの先制点もオフサイドっぽかったのでトントンか。開催国が二カ国とも早々に敗退決定とならなかったのは良かったかもしれない。最終戦はドイツ。かなり厳しいことは間違いないが、ホームらしい積極的な試合を期待したいね。



次はC組・D組1〜2節の雑感。明日になるかも。

*1:一方の日本代表はあのスイス遠征の時と比べてチーム力は下降線だが……

*2:大柄ながら裏に抜け出すタイミングとスピードに優れるFWハルニク、ドリブル突破に秀でたサイドアタッカーのコルクマツ、左足のキック精度の高い古典的な潤・0の香りのするトップ下のイヴァンシュイッツ。正直言って日本の若手よりスケールが大きいよ。

*3:一昔前なら2人とも守備免除されたプレーエリアの狭いトップ下を得意とするテクニシャンとして育成されたはず。そういうテクニシャンが多い日本にも、早くこういうニュータイプが出てきてほしいね。それにしてもモドリッチが37億でスパーズでしょ。彼より3歳若いラキティッチにも相当値がつきそうだ。