ガーナ戦
日本 0 - 1 ガーナ
73' ドラマニ
とりあえず適当に雑感。後でまたまとめるかも。負けはしたものの、親善試合の意味を考えるとけして悪くなかったと思う。
日本:
川口能活;三都主アレサンドロ(86分二川孝広)、駒野友一、水本裕貴、遠藤保仁(75分中村憲剛)、鈴木啓太(79分長谷部誠)、阿部勇樹■、今野泰幸、山岸智(68分播戸竜二)、巻誠一郎(72分我那覇和樹)、佐藤寿人(63分羽生直剛)
ガーナ:
R・キングストン;サルペイ、イリアス、メンサー、モハメド■、L・キングストン、アッピアー、エッシエン、ムンタリ(68分ドラマニ)、アゴゴ、ギャン(67分ピンポン)
- ガーナ代表
WCからのスケールダウンと多少の親善試合モードはあったにしろ、ガーナはオシム体制になって最強の相手だった。現状で結果はそこまで重要なものではないでしょう。
個々の身体能力の強さ、特に前への速さ、決定機でのフィニッシュ精度のなさ*1、と思ったら難度の高いゴール決めたり、WC時の前からのプレッシングの片鱗を見せるものの、ライン裏のリスク管理の甘さなど、長所も短所も相変わらずの感じだった。WCを参考にプレビューで書いた事は、そんなに外れてなかったね。リフティングに興じていたエッシェンなど*2、一部選手は、本気時のプレーに比べると抜いている感はあったものの、それでもJリーグでは味わえないような個力は良い経験になったと思う。
- 日本代表
日本はというと、格上ガーナ相手に、今日のメンバー構成で良くやったと思う。僅かな練習期間と、代表初キャップや初先発の選手、普段のクラブとは違うポジションをやっていた選手が多い割には、それなりの機能性を発揮していた。チームの目指す方向性の部分でも、進歩の兆しは見えたし、収穫もある。ただし、色々な面で課題も残る試合だった。
巻
山岸 寿人
サントス 駒野
鈴木 遠藤水本 阿部 今野
川口
基本布陣は3-4-3(3-4-2-1)だろうか。これまでのようにオースドックスな2トップではなく、巻を真ん中に、寿人が右、山岸が左に位置する事が多かった。ただし、状況やマンマークする相手の出方によって非常に流動的に動くため、初期配置以上の意味はない。システムだけでサッカーを語るのは無理が多いだが、オシムの目指すサッカーにおいて特にそれは顕著である。オシムの言うように「システムは保障でしかない」
- 守備面
水本と今野の2人のストッパーが2トップをマークするのは予想通りだったけれど、山岸と寿人が2シャドー気味になって、相手SBを見る形となっていたのが興味深かった。この2人が相手SBを見て*3、サイドのオーバーラップを規制し、サントスと駒野のアウトサイドも相手SHを良く見て、ガーナに中央から攻撃を仕向けるようにしていた。中央はマンマークの2ストッパーと一人余った阿部、ボランチの選手で分厚く守り、そこから相手の攻め出たスペースにカウンターを仕掛けるシーンが目立った。ただボールサイドと逆のサイドの選手が中に絞る事が多く、空いた逆サイドのスペースを突かれる危険性も感じた。
相手サイドへのプレス徹底で攻撃参加を規制し、相手の攻撃を中央に寄せて、ぶ厚くした中でカットしてからのカウンター狙いの戦略はある程度機能。この試合では、ガーナ相手にオシムが講じたであろう戦略部分で、興味深い試みが多かった。練習で狙いを持ってやっていた事を、試合にある程度出せていたと思う。
急造DFラインの出来もまずまずで、強烈な身体能力を誇るガーナの相手に、タイトにマークに付けいた。今野と水本は軽率なミスもあったが、及第点を与えられる。阿部も及第点だけれど、もっと状況に応じて前に出てきたり、ビルドアップに関与しても良いと感じた。ジェフでリベロを務めるストヤノフのように。
- 攻撃面
攻撃面では、これまでおぼろげだったチームの意図する方向性が、徐々に具現化されてきた印象。前半はガーナの中盤プレスも甘かったため、中盤でパスを繋いで、オフサイドやパスミスで失敗したものの、裏を突きかけるシーンも目立った。ガーナの中盤プレスとラインコントロールの連動性は悪く、裏への対応はお粗末だった。
ただし、後半はガーナがプレスを強めてきたため、余り中盤でパスをつなげなくなり、時間が経つに連れ自陣に押し込まれた結果、攻守に悪影響が出て、ガーナに主導権を握られてしまった。低い位置からのビルドアップに問題を抱える中、間延びして選手間の距離が広がったため、フォローが遅れ、ダイレクトパスでの崩しは難しくなった。こうなると個人でタメの作れる選手が必要。ボールスキルの高い選手を複数投入した後の終盤は多少は盛り返したが。
オシムの推奨する攻撃パターンである、攻守の切り替えの際の素早い攻め、楔を当ててからの第3の動きを利用し、素早いダイレクトパスの交換でライン裏を突くシーンなど、可能性を感じるシーンは何度か見えた。遠藤の飛び出しなど、このチームでの役割をよく理解した好プレーもあった。守備戦術同様、不用意にラインの高いガーナ対策として、練習から狙ってきたパターンだろう。ただし、要所要所で精度不足なのは相変わらずの課題。
日本のFWの決定力を考えると、決定機を数多く創らなければならない。フィニッシュに到るまでの過程の微妙なズレで、作りかけた決定機を逸してしまったりしては、数多くの決定機は望めない。また、決定機は少なくても、確実に決めないようだと上は目指せない。チャンスには積極的にシュート打つ事も重要。一部で消極的なシーンも散見された。
- 日本選手の課題
チームの戦術・戦略以前の問題で、日本人選手の課題である、プレッシャーの中での技術の精度、状況に応じたプレー選択、チャレンジ精神の欠如も感じた。シュートを打てる場面で打たなかったり、高い位置での一対一で勝負を避けたり、縦パスを入れられるシーンでも、消極的な横パス・バックパスが目立った。
そんな中、初代表の中村は、緊張からか普段は少ないミスが目立つものの*4、攻撃をスピードアップさせる縦へのチャレンジパスを果敢に入れていた。終盤に彼が中盤の底へ入ってビルドアップの起点になる事で、ボールの回りも良くなった。守備能力を考えると、一人で中盤の底を担わせるのは無理があるけれど、ダブルボランチなら相互補完性のある守備的な選手と組み合わせて、一度は先発で見てみたい存在。走る選手、守る選手も必要だし、中村のような選手もまた必要だろう。守備でボールウォッチャーになるシーンも散見されたので、そこは要反省。
途中出場の長谷部も、独力でボールを運んで打開しようとする意思は良く見えた。シュートは枠に飛ばせなかったけれど、自ら打開して打った事は評価したい。次はもう少し長い時間見てみたい。試合時間が短すぎて真価を発揮し切れなかった二川も、クラブで相性の良い播戸とセットで見てみたい存在だ。
終盤の、中村と長谷部の縦の関係には可能性を感じた。多少はミスがあってもチャレンジする選手には、個人として今後の伸び代を感じる。
ただし、左サイドに位置したサントスは、アクセントとなってチャンスを作る反面、無謀すぎるチャレンジでボールを失うなど、年齢的なものと合わせて伸び代をあまり感じない。ハイリスク・ハイリターンで、評価が難しい選手だ*5。右サイドの駒野は安定した出来。一度見せた股抜き突破からのシュート、このリスクチャレンジは非常に良かった。やはり、これまでの左サイド起用より右の方があっている。活動量ならこの2人を遥かに上回る隼磨も見てみたいね。
FWに関しては、果敢にスペースへのランを繰り返した播戸はもう少し長く見てみたい。プレーに気持ちがこもっていたと思う。佐藤寿人は、もう少し守備負担の軽い役割の方が本領発揮しそう。今日の彼は、右サイドでの守備の負担が大きく、得意エリアであるボックス内に位置することが少なかった。やはり彼を起用するなら、守備のタスクを過度に背負わせるより、得点に専念できるポジションに置きたい。
当たり前の事だけれど、親善試合で数多くの選手を試したオシム采配には、これまでを思うと新鮮に感じた。そう考えると、あまり高望みは禁物ですな。期待しているから、ついつい要求水準は高くなってしまうのだけど。
- タメや緩急の不足
中東遠征からの課題としては、効果的なタメの作れる選手が少ない為、中盤の構成力に欠ける嫌いがある。ダイレクト主体の素早い攻めは良いと思うけれど、ワンパターンになると相手に読まれやすい。時には中盤でボールを落ち着けることや、攻めの緩急も大切だし、急いでばかりだとスタミナ面での消耗は激しい。現に終盤はこれまで同様ばててしまった。中盤かポスト役のどちらかに、もう少しタメの作れる選手がいれば、後方からの攻撃参加を促す追い越し攻撃がさらに良くなると思う。現状では技術とアイディアが不足している。
これは絶対能力上位の海外組みの選手の合流で、多少は解決されると期待する。ただ全員を使うとバランス的に崩れる恐れがあるので、既存選手との組み合わせとバランスを考慮する事が重要でしょう。
個人的には、特に松井か俊輔、どちらかはいずれ試して欲しい。UCLレベルでボールキープしてからの展開で緩急を付けられる俊輔、今日のガーナが普通に見えるリーグアンのブラック・アフリカン相手に、キープだけでなく独力でのドリブル突破からアシストを得意とする松井。彼らを使わない手はないし、オシムならきっと使いこなしてくれる事を期待したい。守備も言われてるほどサボってないし、普通に考えて走ってるよ。どちらも癖はあるので、共存は難しいかもしれないが。まあ、まだ先の話ですが。
まあ、これからですね。ずっとこのままでは問題だけれど、まとまった練習期間とフルメンバーでやるまでは、まだ結論を出すのは早計かと。先に繋がる物は見えたし、課題を一つづつ克服し、次に活かして欲しい。格下のインド戦では、今日のようなリアクション的な布陣を敷く必要性は薄いので、選手本来の攻撃性を活かすサッカーも見てみたい。