インド戦


インド 0 - 3 日本

日本:
川口能活水本裕貴(46分長谷部誠)、阿部勇樹今野泰幸駒野友一鈴木啓太山岸智三都主アレサンドロ中村憲剛巻誠一郎(67分我那覇和樹)、播戸竜二(71分佐藤寿人

結果は出たけれど、内容的にはガーナ戦より悪い。過密日程、時差、環境、予期せぬアクシデントなど、仕方なかった部分はあるにしろ、課題は沢山残りましたな。まあ、この経験を糧に、この先如何に克服していくかが重要で、現段階で過剰に悲観したり批判する必要はないと思うけどね。



悪い所は見たままで、選手個々のトラップミスやパスミスが多すぎ。連携以前に、止める・蹴るの基本技術がここまでしっかりしていないのは代表選手としてどうなのかと*1。ミスの多さは技術的なことだけではなく、チームとしての狙いや約束事を意識する余り、それに囚われ過ぎて、状況に応じたプレーの取捨選択が出来ていなかった事も関係している。


ピッチ状態の良く、相手がラインを上げて前からプレスに来るガーナ戦では、素早いダイレクトパス主体で相手の裏を狙う速攻が効果的だったけれど、今日は相手の特徴や、ピッチ状況も違うんだから、別のやりようはあったはず。無為に急いでミスしたり、前線は飛び出しへの意識が強すぎて、安易にオフサイドに引っかかるなど、状況にそぐわないプレーが多かったと思う。


この劣悪なピッチ状況でダイレクト主体でパスを捌くのは技術的に無理があるし、ガーナのような一対一やプレスの強さはないんだから、ファーストタッチでボールを止めて落ち着いてパスを繋げたり、個人で体を当ててキープするのも必要。カウンターのチャンス時以外、無理に縦へ急ぐ必要はない。中盤でボールを落ち着けるプレー、個人の突破やシュートなどのアクセント、攻めの緩急がほとんどなかった。急いでばかりでミスが多発すると、選手は上下動を強いられ、スタミナ面での消耗は激しい。現に終盤はばててしまった。2点リードしていた後半は、意図的に試合を落ち着かせる必要がある。


連携がないのは仕方ないとして、これまでと同じで、チームの中にボールの収まり所がないのがつらい。効果的なタメの作れて、そこから次の展開に繋げられる選手が少ないので、中盤の構成力に欠ける嫌いがある。そして状況に応じた判断力、個人としてのリスクチャレンジと言う相変わらずの課題。ミドルシュートやスペースへボールを運ぶ意識が少なすぎる。


やはり中盤かポスト役のどちらかに、もう少しタメの作れる選手が欲しい。もしくはチームとしての構成力*2。数的優位を作るための後方からの追い越しを推奨するにしろ、タメがなければ実行力は伴わない。個人としての突破やミドルももっと有効なはず。現状でオシムの要求するサッカーをこなすには、走る事だけではなく、技術も状況判断も不足している。今後の課題ですな。



良かった点としては、代表初スタメンの播戸と中村の活躍。


播戸はFWとして2ゴールという結果が素晴らしい。精力的なフリーランでボールを引き出したり、ニアへの飛び込んだりする意識が実を結んだ。難しい体制でも慌てずシュートを枠に飛ばしたのは、ストライカーの証明だろう。チェイシングにも献身的。一気にレギュラー奪取したかもね。こういうピッチコンディションだと、播戸のように泥臭くメンタルで負けない選手が心強い。


中村は持ち前の視野の広さ、パスの狙いの良さ、素晴らしいミドルシュートを見せてくれた。弾丸ミドルは精度も素晴らしかったけれど、ファーストタッチでしっかりボールを収めたからこそ。彼はこれまで年代別代表にも入ったことのない国際経験のない選手。初スタメンの緊張や、不慣れな環境への適応不足もあったのか、ミスも散見されたけれど、チームの中心になってゲームメイクしていたと思うし、ミドルシュートでゴールという結果も出した。ガーナ戦でも積極果敢にミドルを打っていたし、この試合でもゴールの前にもミドルを打っていて、そういうリスクチャレンジの姿勢が結果に繋がったと思う。現状では守備面などに課題はあるけれど、今後に期待が持てる選手。


この2人はJリーグで結果を残していたし、とりわけWC中断明け以降はそれぞれのポジションで最も活躍していた選手だと思う。ここでも何度かプッシュしてきたし、非代表の中で最も待望論のあった選手達。

そういう選手がリーグ戦の活躍を評価されて順当に代表に呼ばれて、親善試合で途中起用されて、その試合である程度の出来を見せたので今度はスタメンに抜擢されて、そこできっちり結果を出した。これは当たり前のようで、これまでは中々見られなかった事。これは他のJリーガーにも励みになると思う。抜擢したオシムもグッジョブ。



他選手の評も。

川口
ピンチは少なく、無難な出来。攻撃の一歩目しての工夫は見てとれた。GKとして合格点ですね。


水本
守備では良かったけれど、ビルドアップには課題。負傷は不運。お大事に。


阿部
ピッチ状況を考え、正確なロングフィードを中心に、後方からのビルドアップにも貢献した。守備面も問題なし。状況に応じてもう少し前に出るシーンがあってもいいと思うけど、良い出来だったと思う。同じボランチを本職とする今野や鈴木よりも、DFとしての成熟度は数段上。


今野
守備では良く頑張ったけれど、ビルドアップに課題を残す。ただ攻撃参加や相手への寄せなど、持ち味を考えるとボランチ起用の方が向いていると思う。CB起用はトゥーリオ、坪井負傷の暫定措置だろうから、次は本職のポジションでも見てみたい。


鈴木
中盤での献身的な守備に奮闘し、前線への飛び出しにも精力的だった。水本交代後にDFに下がってから、中盤でバランスや守備力が低下したのを見ても存在は大きい。ただし、DFとしてもボランチとしてのビルドアップに課題。DFになってからは攻守に不慣れな感じが見て取れた。


駒野
スペースのあるサイドで良くボールに絡んでいて、守備でも貢献したけれど、もっとできるはずという思いはある。クロスの正確性を欠くなど実行性は薄かった。前半見せた突破などをもう少し見せられたら良かったのだけど。広島で見せる寿人へのピンポイントクロスが見たい。


三都主
仕掛けの意識はこのチームでは貴重で、アシストという結果も残した。ただミスが多いのはいただけない。サントスは経験豊富だし、既に完成されていて計算も出来ると思うので、今後は他の選手も試して欲しい。


山岸
トラップミスが多すぎ。前線でボールが落ち着かず、決定的なシュートシーンでもトラップミスで自ら状況を難しくした。スペースへの飛び出しなど良い部分もあったけれど、起用置や相手との力関係を考えると、もっと個人で違いを作り出して欲しい。このポジションならJリーグで他に活躍している選手はいるような。現状でジェフ所属でオシムサッカーへの理解度以外の傑出したアドバンテージを探すのは難しい。まあ、まだ若いので将来性重視で使ってるのかもしれないけど。
個人的には、この位置なら松井。彼は他の海外組みと違ってフル代表での国際経験が少ないので、来年初頭にはぜひ試して欲しい。山岸はサントスの代わりとして左アウトサイド使ってもおもしろいかもしれない。ジェフではそのポジションだし。



アシストは結果オーライだったけれど、前線でボールが余り収まらなかったし、シュートも枠に飛ばず、インド相手に得意の空中戦でも競り勝てなかった。Jリーグでも調子を落としていたし、代表戦とリーグ戦の往復で完全にコンディションを崩している。今回は連戦なのでサブスタートさせて、我那覇先発でも良かったかもしれない。今後も復調しないなら一度休ませても良いかもね。

名前 得点 試合 出場時間 得点率
我那覇和樹 13 25 1795 0.65
巻誠一郎 12 25 2184 0.49
前田遼一 11 19 1501 0.65
高松大樹 10 22 1827 0.49

代表外でポストプレーの得意なFWとなると、Jリーグで結果を出しているのは前田と高松。他の選手は匹敵する結果を出せていないので候補外だろう。前田は怪我持ちだし、調子落としたらジュビロが崩壊するので、今は呼ばれなくて良いや。


長谷部
投入さらた直後、独力でスペースにボールを運ぶ姿勢は良かった。力強いボール奪取から、攻撃の始発点にもなった。ただ試合が進むにつれて存在が薄くなった。中盤で守備を担ってくれる鈴木がポジションをDFに下げたので、攻撃参加が持ち味の中村とのバランスに苦心した。この辺は連携不足なので仕方ないかな。


那覇
巻よりボールを収めてはいたけれど、日本が中盤で構成できない時間帯の投入で本領は発揮できなかった。イエメン戦ではゴールという結果も出したし、一度はスタメンで見てみたい。


寿人
チームが悪い状況で投入されたので見せ場はなし。やはり良いボールが着てこそ輝くタイプの選手だし、今日の状況では厳しい。



選手起用・選出について、現段階でオシムサッカーの理解度の高いジェフの選手を優遇するのは間違っていないと思う。ただし、Jリーグでの調子を考えると、もう少し幅広く他の選手も試して欲しいと思ったりする。ジェフの選手がオシムの元でどの程度やれるかは計算できるだろうし、上積み要素もそこまで大きくない。今は見極めの時期だと思うので、ジェフ以外の選手達がオシムのサッカーに触れて。どんな化学変化を起こすのかの方が興味深い。まあ、現状で阿部はスタメンに必須な選手だと思うけど。




色々課題は残ったけれど、代表経験の浅い選手にはいい経験になっただろうし、今後にどう繋げていくのか。重要なのはそこ。こういう内容では懐疑論も出てくるだろうけど、まだ進退を問うのは早すぎると思う。とりあえずベストメンバーである程度の練習期間が取れてからの試合が見て見たいですな。

*1:まあ、ピッチ状態が最悪なのは割り引く必要があるけれど。

*2:これは連携を磨くしかないと思うけど。