ガーナ戦プレビュー


ガーナ代表来日メンバー

さて、イタリア、チェコアメリカと同居する激戦区を突破し、ベスト16になった強豪ガーナとの対戦ですね。ベストメンバーといわれているが、そのうちのどれくらいの人がガーナのベストメンバーを知っているんだろうか。俺も知らない。
とりあえずWCレギュラーからはFWのアモアー、SBのパントシルとバブーが来ていないようですね。まあ、中心選手は来ているようだ。

  • WCでのガーナ代表

        ギャン  アモアー
ムンタリ              アッピアー(アッド)
   アッド(アッピアー) エッシェン
バブー(モハメド)           パントシル
       イリアス  J・メンサー
           キングストン


状況に応じて流動的になる傾向が強いとはいえ、基本的には4-4-2フラットの布陣を敷いていた。
特長としてはSHに典型的なサイドアタッカーはおかず、センターでプレーできる運動量豊富なダイナモタイプ*1の選手を中盤に配置している所だろうか。2センターのアッド(アッピアー)とエッシェンの関係は、主にエッシェンが前に出る前後関係。ただし2人ともボール奪取後は積極果敢に飛び出してくる。


非常に高いラインでコンパクトに守り、積極的にラインを押上げ、運動量とフィジカルに優れた中盤の強烈なプレッシングで相手を自由にさせない。攻守の切り替えは非常に速く、ボール奪取後には素早く前にショートパスを繋ぎ、後方から次々と選手が飛び出してくるシュートカウンターを得意とする。SBのオーバーラップも積極的。


WCでも攻撃面では良く機能しており、強豪相手に決定的なシーンを何度も作り出した。ただフィニッシュ部分でのシュートやクロスの精度に欠け、数多く放ったシュートはほとんど枠に飛ばなかった。また、中盤でボール奪取後の攻撃は良くても、後方からのビルドアップではパスミスが多く、ミスからカウンターを浴びるシーンも目立った。


FWには典型的なポストプレーヤーをおかず、スピードタイプが裏のスペースを狙っていく。裏への飛び出しで相手ラインを押し下げて、バイタルエリアが空くと、そこでパスを繋いだり、MF陣の得意とする強烈なミドルシュートを売っていく。ラインを押し上げてプレスを掛けて来るチェコ相手には、快速アタッカー陣の裏への攻撃、またロクベンツへの楔を狙った後のカウンターが嵌り、何度もゴールを脅かしていた*2。大黒柱のCFコラーを欠いたとはいえ、チェコに完勝する実力は本物だろう。


一方で、ハイライン+プレッシング戦術の為、裏のスペースへの対応に課題があり、老獪なイタリアや、リードしてカウンター狙いとなったブラジルには、高いラインの裏を突かれまくっていた。攻守の切り替えの早さを活かしたショートカウンター主武器で、相手に引いて守られる状況で、裏へのカウンターのリスクを軽減しながら、ポゼッション主体で攻め崩せるような柔軟性は欠いていた。


自分たちの型に嵌ったときには凄まじい破壊力を見せる一方で、弱点を突かれると脆さの出るチームという印象。前者がチェコ戦とアメリカ戦、後者がイタリア戦とブラジル戦だろうか。柔軟性はそれほどなく、特にリスク管理の部分で課題を残していた。


攻守の切り替えの部分で、対カウンターの部分でのファーストチェックの徹底以外では、リトリート主体でラインを低めにとり、後方のスペースを消して、低い位置に守備ブロックを作ってからカウンターを狙う傾向が強く、攻撃では人数を掛けずに個人技主体でリスクを負わず攻め切るというような、守備重視の戦いをするチームが決勝ラウンドの多く勝ち残ったのが今回のWCだったと思うが、ガーナはその傾向からは外れた面白味のあるチームだった。


監督が代わった新チームで、どこまでその路線をどこまで踏襲しているかは未知数。過密日程と長距離移動を伴なうコンディション不良で、中盤のプレスは減退している可能性が高い。親善試合のためどこまで本気でやるのか、欧州トップクラブ所属の主力を使うかも分からない。まあ、僅かな練習期間でチームを作り変えるのは無理なので、WCと余り代わらないのではと予想して考えたい。保障は出来ませんが。

  • 日本代表

恐らくガーナは2トップで来ると思うので、阿部がリベロに下がって、相手2トップに2ストッパーをマンマークさせる3バックが濃厚だろう。勿論、状況に応じて互いにシステムは流動的になると思いますが。

相手が2トップで来るなら阿部をリベロに置いて、水本と今野をストッパーにします。だが相手が1トップだと攻撃に出る選手が少なくなってしまう。両方の事態に対応できる選手を招集したつもりです。
http://www.jsgoal.jp/japan/news/a/article/00038794.html


マンツーマンに付く選手は一対一で負けないのは必須、DFライン入ると予想されるボランチの阿部と今野が、どれだけ状況に応じて中盤をフォローできるのか。

     巻  寿人(播戸)
        羽生
サントス          駒野
     鈴木  遠藤

   水本  阿部  今野

        川口


スタメン布陣はこんな感じなのかな。


個人が一対一で勝負するのは分が悪いので、如何に攻守で数的優位を作れるか。そのためには、オシムの重要視する判断を伴なった走りが、質の面でも量の面でも必要とされる。


日本としては、不用意なパスミスは絶対に避けたい。高速カウンターを喰らうと決定機を作られる可能性大。ただ決定力はないので、何度目までかはミスには猶予が与えられるかもしれない。下手に中盤で繋ぐよりは、手数をかけない素早い攻め、守備ブロックの熱い中央を避けて、プレスの弱まるサイドを経由したサイド攻撃、またはライン裏を狙う大きな展開を主軸とした方が良いかもしれない。

Q:サイドからの攻撃に対して細かな指示を出していたが、これはガーナを意識したものか?
「(サイド攻撃は)世界のサッカーのトレンドです。中央にペネトレイト(突破)できないようにするのが世界のスタンダードであり、サイドから攻めるのは私だけでなくどの監督でもやっています」
http://www.jsgoal.jp/japan/news/a/article/00038794.html


攻撃では中盤から選手が飛び出してくるので、攻守の切り替えの部分でしっかり対応して、相手が飛び出した後のスペースを突いていきたい。また、ラインを高く押し上げてプレッシングを仕掛けてくる傾向が強いので、そこを突く為のFWやOMFの裏を狙う動きと、後方からの裏のスペースへのパス精度が重要になりそう*3


現にオシムはカウンター狙いの練習をやっているようだ。

オシム監督 「横パスはなし。外にボールを散らすな。相手はボランチアッピアとエシアンが出てくるから中盤にスペースができる。中盤でしっかりブロックを作って、できるだけ手数をかけずに速く攻めよう。相手が戻る前にカウンターを仕掛けよう。」
最初の練習も速攻を15分以上繰り返した。MF遠藤は「昨日(2日)ビデオを見ながらカウンターのことを何度も言われた。日本人は速攻にあまり慣れてないけれど、羽生とか飛び出してくれるからできると思う」と話した。
http://www.nikkansports.com/soccer/japan/p-sc-tp2-20061004-99048.html


練習でやった事をどれだけ試合で活かせるのか、その部分に注目してみたら面白いんじゃないだろうか。
あとは、ガーナ相手に国際経験の浅い選手達がどれくらい対応できるのか。今後の選手召集の見極めになるかもしれない。両チームともチームは作り始めの時期だろうから、対個人の部分に注視したいですね。

  • ガーナの中心選手

マイケル・エッシェン
昨シーズン、チェルシーに破格の移籍金で加入したCH。驚異的な運動量とフィジカルの強さを活かした、中盤でのボール奪取能力が凄まじい。前線への飛び出しやミドルの意識も高く、最注意人物の一人だろう。日本の中盤が一対一で対処するのは難しいので、如何に数的優位を作って対応出来るか。出てきて欲しいですね。

アサモア・ギャン
ガーナの若きエースストライカー。180㎝という大柄な体格から想像しづらい俊敏性を誇る。ポストプレーヤーというよりも前を向いて打開するタイプ。極端に決定力に欠けるのが弱点。ちなみにまだ85年生まれの北京世代である。


他にはムンタリアッピアーが要注意。とにかく全員がアフリカらしい身体能力に恵まれていて、WC見た限りではアフリカらしくない規律もしっかりした好チームでした。

*1:そしてこの分野の選手で、エッシェンは世界最高峰、ムンタリアッピアーも世界屈指のクラスに位置する。

*2:チェコにGKチェフがいなかったら大勝していたはず。

*3:そういう意味では、FWに播戸か寿人のような裏を狙うのが巧いタイプ、2列目に埴生のような飛び出しの巧い選手、ダブルボランチの一角には中村憲剛のようなスルーパスの名手の配置を期待したい。