「死のグループ」とは

ワールドカップに関連した小ネタのコーナー。需要があればテーマ別に色々と書きます。

早くも本大会の組み分けが気になるわけですが、その中でも気になるのは“死”と形容されるような激戦グループに入ってしまう不運な国はどこなのか。「死のグループ」に入ってしまうと、グループリーグ突破が困難になるだけではなく、その消耗度の大きさから決勝ラウンドにも影響を及ぼしてしまう。番狂わせが起きやすいため、見てる我々にとってはおもしろい。
定義としては、4チームが一定のレベル以上で実力伯仲であること。強豪国が同居しても、実質的に2強2弱であったり、勝ち点0で食い物にされるような弱小チームを含むグループは“死”とは形容されません。
という事で過去の事例を振り返って見ます。

フランス98・グループD
スペイン、ナイジェリア、パラグアイブルガリア

98年のワールドカップ・フランス大会の最激戦区。

欧州予選でユーゴスラビアチェコと同居する死の組を無敗で乗り切り、無敵艦隊と呼ばれていたスペイン。2年前のアトランタ五輪の金メダリストであり、当時アフリカ最強で優勝候補の一つだったのナイジェリア。ストイチコフやバラコフといった前回大会4位の主力が残るブルガリアチラベルト擁する堅守パラグアイ。この4ヵ国の内どこが抜けるか全く予想がつかなかった。

本命スペインの初戦の相手はナイジェリア。ラウールの華麗なボレーで一時は2-1とリードするも、GKスビサレッタの痛恨のミスで同点に追いつかれ、オリセーの伝説のスーパーミドルにより2ー3の逆転負け。続くパラグアイ戦ではチラベルトの牙城を崩せず0-0の引き分けで勝ちきれず。最終日のブルガリア戦は6-1と大勝するも、ナイジェリアがパラグアイに1ー3で敗れたため、20年振りのグループリーグ敗退。試合中に他会場の結果が入ってしまったため、ロスタイムのキコのゴールに喜ぶスペインの選手は一人もいなかった……。

勝ち抜いたのは、初戦でスペインに逆転勝ちし勢いに乗ったナイジェリアと、堅守を武器に3戦中1失点の1勝2分けで乗り切ったパラグアイ。スペイン戦での劇的勝利で一躍優勝候補に踊り出たナイジェリアは、デンマークの組織サッカー*1の前に守備が崩壊し、決勝ラウンド1回戦で1-4とまさかの大敗。パラグアイジダンを出場停止で欠くフランスを堅守で苦しめるも、ペースが落ちた延長後半にゴールデンゴールを許し1回戦敗退。はからずも、死のグループの消耗度を印象付ける結果となった。

日韓02・グループF
アルゼンチン、イングランドスウェーデン、ナイジェリア

記憶に新しい02年のワールドカップ日韓大会の最激戦区。

南米予選を圧倒的な強さで1位突破し、開幕前は優勝候補筆頭だったアルゼンチン。予選でドイツに大勝した、堅守を誇るサッカーの母国イングランド。予選を無敗で1位突破したダークホースのスウェーデン。チームとしてのまとまりには疑問符もタレントが豊富なナイジェリア。大会史上屈指の最激戦区となったが、それでもアルゼンチンの1位突破は固いと思われていた。

本命アルゼンチンはナイジェリアを1-0で下す順調なスタート。対抗イングランドスウェーデンに引き分けと先行き不安なスタート。続くアルゼンチンとイングランドの因縁の大一番。初戦ドローのため勝利が必要なイングランドは、PKでの1点を決死の守備で守り抜き見事1-0で勝利。決勝点となるPKを決めたベッカムは4年越しのリベンジに成功。敗れたアルゼンチンは最終日に勝ち点3獲得が必須になった。

波乱の主役となったのはダークホースのスウェーデン。2戦目でナイジェリアを2-1で下し、3戦目には勝利が必須のアルゼンチン相手にドロー、見事1位突破を果たした。イングランドは最終日のナイジェリア戦をドローで終え2位突破。大会史上屈指の激戦区は、優勝候補筆頭のアルゼンチンがグループリーグ敗退という意外な結果で幕を閉じた。

続く決勝ラウンド、イングランドは1回戦でデンマークを3-0と危なげなく下すも、準々決勝でブラジルに敗北。スウェーデンの1回戦の相手は優勝候補フランスを下したセネガル。大会屈指の名勝負となった一戦は、両チーム一進一退の攻防で延長突入。A・スヴェンソンの華麗なルーレットからのシュートはポストに弾かれ*2、10分後のアンリ・カマラのドリブルシュート*3に力尽きた。

04年のEUROで「チェコ、ドイツ、オランダ、ラトビア」が死のグループと騒がれていましたが、これは開幕前の成績を鑑みて2強2弱との評価もあったので該当しません。結果的に、決勝に進出した2チームを含んだ「ポルトガル、スペイン、ギリシャ、ロシア」が最激戦区でしたが、開幕前はそこまでの評価はなかったです。

グループA
イングランド、ドイツ、ポルトガルルーマニア

EURO2000の激戦区その1。
ポルトガルルーマニアが突破し、伝統の強豪国2チームがまさかの敗退。ポルトガル3-2イングランドは大会ベストバウト。新興国ポルトガルの躍進、イングランドとドイツの凋落のコントラストが印象的なグループだった。特に3連敗のドイツは悲惨で、当時は2年後のWCでドイツが準優勝するとは夢にも思わなかった。

グループD
オランダ、チェコデンマーク、フランス

EURO2000の激戦区その2。
2強がすんなり突破したけど、オランダとフランスが強すぎただけで、チェコデンマークも他組に入れば突破できる位の力はあった。2強2弱ではなかった。この大会は近年のオランダとフランスの絶頂期。

これらは詳細を書くと長くなりすぎるので省略。機会があったら後日また書いてみるつもり。
UCLは03-04シーズンから2次リーグが廃止されたため、もう当時のような激戦区が作られる事はないでしょう。今シーズンの最激戦区と言われた「チェルシーリバプールベティスアンデルレヒト」も、当時の組み合わせと比べれば厳しくないと思う。

グループB 
レバークーゼンデポルティボアーセナルユベントス

01-02シーズンの2次リーグ。これはUCL史上に残る最激戦区だったと思う。結果はビッグクラブのユベントスアーセナルが敗退し、ダークホースの2クラブが突破した。レヴァークーゼンは勢いに乗り、華麗なアタッキングサッカーで決勝まで上り詰めてしまった。

グループB
バレンシアアヤックスアーセナル、ローマ

02-03シーズンの2次リーグ。大混戦の末、バレンシアアヤックスが突破。

グループD
マンチェスターUユベントスバーゼルデポルティボ

02ー03シーズンの2次リーグ。伏兵バーゼルが予想以上に強く、最終節まで縺れる大混戦となった。

ビッグクラブ相手に強かったデポルの入る組みが「死のグループ」になり易かったんですな。


04ACL・グループE
ジュビロ磐田(日本)、BECテロ・サーサナ*4(タイ)、全北*5(韓国)、上海*6(中国)

実力伯仲の中、1チームしか勝ちあがれない厳しさ。そして何よりも、過酷な移動距離とスケジュールが“死”を連想してしまう。アウェーはどこも劣悪な環境。

*1:ラウドルップ兄弟の華麗な共演

*2:このシュートが決まってゴールデンゴールになっていたら、WC史上に残るベストゴールになったと思う。

*3:ポストに当たるもゴールに吸い込まれた

*4:前回大会準優勝クラブ

*5:韓国カップウィナーズ杯優勝

*6:中国リーグチャンピオン