凄く面白かった。K-1はMAXがあれば満足。判定には不満があるけど、選手達の頑張りは賞賛に値する。むしろあの判定は選手達に失礼。

○ブアカーオ(延長判定 3-0)魔裟斗×

パンチ全盛のK-1MAXムエタイ復権。こういった化け物が存在するムエタイ恐るべし。前蹴りと首相撲の有効性というのものがK-1のリングで改めて証明された。
ブアカーオは遠距離では前蹴りで牽制。いや、牽制と形容するにはそぐわない切れ味を秘めた顔面への前蹴りが凄まじい。あれだけ反応速度に優れた魔裟斗が交わしきれない。あんな軌道の前蹴りを喰らったのは初めてだったんでしょう。ジャブより速度は遅いけど、軌道の違いで対応し切れなかった。
魔裟斗はパンチで自分と同等以上の相手には、効果的に前蹴りを使うことによって主導権を握っていたんだけど(主にボディへの)、今回は逆にそれをやられてしまった(しかも顔面へまで)。前2試合で抜群の切れ味で攻撃の出発点となっていたジャブだけど、ブアカーオの前蹴りとはリーチ差がありすぎて届かない。魔裟斗は踏み込んでいくタイミングが全くとれず、本来のリズムを崩されてしまった。
パンチが届く中距離に入ろうとしても膝が待っている。ブアカーオは中間距離での殴り合いには応じず、遠距離の攻防から中距離になると組み付きに来る。1度組み付かれてしまうと、ブアカーオの首相撲は引き付けの力が凄まじく、魔裟斗は振りほどくことが出来なかった。組みのテクニックも凄く上手で、近距離での攻防ではムエタイ戦士の方が何枚も上だった。
しかも前蹴りと首相撲に終始するだけでなく、強烈なハイとミドルも積極的に出し、パンチへの対応力も過去のムエタイ選手の比ではない。いつものようにジャブやローでリズムをつくれず、前蹴りと首相撲で距離を殺され、相手より上回っているボクシングテクニックで優位に戦うことも出来なかった。自分の間合いで戦うことが出来なかった魔裟斗が敗れるのは必然でしょう。延長戦は蛇足もいいとこ。
見事に優勝したブアカーオ。開幕戦でチャップマンやザンビディスに勝っているJ・タイを圧倒してるんだけど、この試合はダイジェストで放映されたんでいまいち実力を把握していなかった。トーナメント初戦は実績№1のジョン・ウェインで、流石に優勝は厳しいと思ってたんだけど、なんとウェインに勝ってしまった。これもダイジェストだったんで詳細は不明だけど、物凄いハイレベルな戦いといった様相で、ぜひフルで観たかった所。延長ということで拮抗した試合だったんだろうけど、その後もダメージある素振りを見せない所も化け物だ。ムエタイ選手には不利なルール(肘なし)で優勝してしまうんだから凄い。しかも本来の階級はライト級で、-70kgのK-1ミドル級より下。そうなると-70kgのムエタイトップを参戦させたらK-1ムエタイ王国になってしまう。
敗れた魔裟斗も素晴らしかった。難敵2人との2試合(好勝負)を乗り越え、決勝でも最後まで諦めることなく戦った。勝った試合では鋭いジャブで機先を制し、主導権を握れたのが大きい。クラウスとの試合は両者が噛み合った名勝負。キックでは中々見れないようなハイレベルのパンチの攻防は見応えがあった。ナラントンとの試合も良かった。ナラントンは相変わらずのナチュラルな強さ。パンチをスウェーで交わすタイミングが上手いし、体幹が強いのでバランスを崩すことなく攻撃が出来る。終始積極的な姿勢も素晴らしい。判定は僅差で、延長でも良かったかもしれない。
他の試合も振り返ってみる。鍵は如何に自分の間合い・リズムで戦えるかでしょう。
コヒは強豪ザンビディスに勝利。ザンビディスはボクテクだけなら今大会№1。パンチで打ち合ったら勝ち目はないので、リーチ差を生かして蹴り中心に上手く戦い、懐に入られたら組み付いて首相撲からの膝。ザンビディスの弱点を上手く突き、自分の土俵で試合を出来たことが勝因。ただガードを固めるだけでなく、積極的に膝を出す姿勢も良かったと思う。ザンビディスはパンチ主体の相手とは噛み合うけど、自分の距離を殺されてしまうと予想外の諸さを見せてしまった。
2回戦、コヒはブアカーオに完敗。コヒは遠距離からの蹴りや首相撲からの膝でリズムを創るタイプのファイターなのに、その得意とする局面でブアカーオに何枚も上回られてしまった。こうなるとパンチが苦手なコヒに勝ち目はない。このままでは本場ムエタイ戦士に勝つことは困難でしょう。1度劣勢になると弱気になってしまう精神面の弱さも相変わらず。マサトとの差は歴然。