決勝1日目

両者の間には点差以上の実力差があったと感じた。

オランダは相変わらず攻撃が単調。大会ベストチームと謳われた前回大会とは、比べ物にならない出来に終始。お家芸であるサイド攻撃も、無難に繋いでからサイドに預けて個人技に頼るのみ。

それでもロッベンのセンス溢れる局面打開や、とオーフェルマウスのスピードを活かした突破は効果的で、サイド攻撃は最低限の形にはなっていた。中盤の選手の技術レベルは高いから繋ぐことは出来るし、トップのファン・ニステル・ローイに当てれば楔になってサイドに捌いてくれるくれるので、サイドまでボールは辿り着く。

でもその過程がゆっくりしすぎで、ポルトガルのDF陣は既に守備体系を整えている。いくら突破力のあるウインガーでも、整った守備網を引いてくるチームを相手にして、常時チャンスを演出するのは難しい。ポルトガルはサイドで数的有利を保って上手く対処していた。

オランダも周りの連動したフォローがあれば打開できるんだろうけど、他の選手は一旦サイドに預けたら任せっぱなし。中盤センターのセードルフダービッツは、前線に積極的に飛び出して攻撃に絡んでいかないので、どうしても攻撃に厚みが出てこない。本来は攻撃的な役割を担うセードルフがもう少し頑張らないといけないんだけど、今日もイマイチだった。

ダービッツが左サイドに絡んでのクロスから、オーフェルの惜しいシュートも見られた。このシーンのように、中盤から前線に絡んだ攻撃が欲しかったところ。オランダはサイド攻撃も中央突破も効果的に機能しなかったから、1トップのニステルが孤立してシュートまで結びつかない。

ポルトガルはDFラインを上げてFCポルト勢中心に素早いプレス。ポゼッションサッカーのスペインを圧倒したプレッシングは、オランダにも当然のように通用した。コスチーニャマニシェ、デコの運動量は驚異的で、相手の中盤に自由を与えないし、攻撃の局面ではパスコースに常に顔を出してくる。特にデコとマニシェの前線への飛び出しは凄く効果的。CHの出来がオランダとは段違いだった。

サイドアタッカーフィーゴC・ロナウドも攻守に献身的に走り回り、得意の個人技で局面を打開。フィーゴのドリブルは相変わらずキレキレで、周りと息が合わずに攻撃を遅らせる場面もあるんだけど、それを帳消しにする圧倒的な個人技でドリブル、クロス、シュートと次々チャンスを演出していた。

中盤の守備組織でもポゼッション能力でもポルトガルがオランダを上回った。序盤はオランダ相手にポゼッションを勝ち取ったため、オランダの攻撃の威力は半減。オランダには一発で局面を打開するような展開力もないから、素早いカウンターも仕掛けられない。

前半はコーナーキックからロナウドのヘッドでポルトガルが1点リード。これは守備が甘すぎ。この前半の内容からしアドフォカートは何かしら手を打つべきだった。

相手のプレスに苦しみ中盤は機能せず、F・デブール不在の展開力不足も影響してか、パスが前線に早いタイミングで効果的に渡らない。中盤で攻撃を組み立てられないんだから、ここは中盤の底から正確なパスを供給できるスナイデルが必要だったはず。ラトビア戦でも彼が入ってから攻撃はより活性化した。彼を起用すれば守備の不安は増すけれど、ボールをキープする時間を増やして攻めに行かない限りオランダに勝ち目はなかったはず。

アドフォカートスナイデルではなく、サイドからスピードを生かして攻撃を仕掛けていたオーフェルマウスを下げて、なぜかウイングのポジションにCFのマカーイ投入。中盤が機能していないんだから、サイドに本職でない選手を入れても攻撃が劇的に良化するはずもなく。ニステルを下げずにマカーイを入れるなら、2トップにした方がまだ良かった。これでサイド攻撃はさらに影をひそめた。

当然後半もポルトガルペース。CKの素早いリスタートからマニシェが追加点。相手の隙を突いた素晴らしいロングシュートだった。攻守に献身的な彼はこのチームの心臓。

もうこれで勝負は決したと思いきや、オランダが運良くオウンゴールで1点差に詰める。ポルトガルは無理して攻める必要がもないから、オランダが見かけ上は圧倒して攻める。でも単調すぎて得点の匂いは感じられない。ボウマに代えたファン・デル・ファールトもイマイチ機能しない。逆に前掛かりになったことでカウンターから危ない場面も。ポルトガルの決定力のなさに助けられた。

最後はサイドのロッベンに代えて、CFのファン・ホーイ・ドンクと総攻撃。サイド攻撃が出来るウインガーロッベンを捨てて*1、長身FWのドンク投入でパワープレイに賭けて来た。自分達が一番嫌っているようなドイツのようなサッカー。オランダらしさの欠片もなかった*2

結局オランダ怒涛の放り込み作戦は報われず、2-1のままポルトガルが勝利。最後のパワープレーで奪ったドンクのFKが決まっていれば、アドフォカードの采配は賞賛されたんだろうけど、自国のアイデンティティを捨てて、そううまく事が運ぶはずなかった。フェリペも消極的な守備固めに奔走していたので、何か起こりそうな気配もしないではなかったけど、オランダはその隙を付け込めなかった。

*1:今日は不調だったけど周りのフォローも少なすぎ

*2:別にこの状況でパワープレー中心になるの仕方がないけど、サイドからの崩しを捨ててまで、パワープレーに頼るところがオランダらしくない。ドイツ戦ではパワープレーが効を奏して終盤に追いつけたけど、ゴールをアシストしたのは右サイドのファン・デルメイデからの崩しだった