スイスvsチェコ

[得点] 71分:スヴェルコシュ


どちらもが組織的な堅守を持ち味とし、初戦ということもあって慎重な試合運びを選択したため、静かな開幕戦となった。

チェコ:4-1-4-1
GK:P・チェフ
DF:ヤンクロフスキロゼフナルウイファルシグリゲラ
MF:プラシル、ポラーク、ガラーセク、ヤロリーム(87分コヴァーチ)、シオンコ(84分ヴルチェク)
FW:コラー(56分スヴェルコシュ)

チェコは、ロシツキーの負傷、ネドベド、ポボルスキの代表引退などで、間違いなくチーム力は下がっていて、特に長所だった中盤の構成力の低下は致命的なのだが、代わって入る中盤の労働者達によるハードワークでは優っている面もある。中盤の創造者達を失った名将ブルックナーが、WCでは戦術的キーマンの負傷後も理想に殉じて美しく散ったチームを率いた彼が、最後の大舞台で理想を捨ててリアリスティックなチームを作り上げてきた。ラインの高さ、プレス位置、攻撃に掛ける人数など、以前のチェコの特徴とは明らかに違っている。

序盤はスイスの得意とするハイプレスをかわすためにコラーへのロングボールを多用してリスク回避*1、後半に勝ち点3の欲しい開催国が前掛りになってきた所で、コラーに代えて裏を狙えるスベルコスを投入。そのスベルコスがワンチャンスを生かして決勝点と、采配が見事に当たった。

予選で僅か5失点のチェコの守備組織は完成されていて、特にリード後のリトリートによるスペースを消した守備は隙がなかった。守護神チェフも相変わらず安定。以前より守備的にいく分、1トップが孤立する傾向が強く、以前のような低い位置からの巧みなビルドアップ*2もなく、守から攻の切り替えの速さを活かして次々と選手が飛び出してくるリスクをかけた速攻もなく、以前のように試合の主導権を掌握して攻めるのは難しいため、如何に先制して守り切るかが鍵となるだろう。

スイス:4-4-2→4-2-3-1
GK:ベナッリョ
DF:リヒトシュタイナー(75分フォンランテン■)、ミュラーセンデロス、マニャン■
MF:ベーラミ(85分デルディヨク)、インレル、G・フェルナンデス、バルネッタ
FW:フライ(46分ヤキン)、シュトレラー

スイスは堅固な守備組織を持つ好チームだが、攻撃面での課題は相変わらず。引いたチェコ相手にミドルはよく打てたが、チェフの堅守は崩せず、数少ないこぼれ球の決定機も活かせなかった。元々引いた相手を崩すのは苦手とするため、得意とする組織的なハイプレスから相手守備陣形が整う前に速攻を仕掛けたかったはずが、チェコが中盤でのビルドアップを半ば放棄して、中盤を飛ばしてコラーの頭にロングボールを多く合わせてきたため、ゲームプランが崩れてしまった印象がある。

後半はヤキンを中心に攻撃を組み立て、サイドからのクロスでチャンスをつくったが、シュートは枠に行かず。終盤に相手のミスから決定機を掴むも、フォンランテンがそれを生かせず。ワンチャンスを生かしたチェコとは対照的。攻撃の中心のSHバルネッタが負傷明けのため本調子には程遠く、唯一得点力の高いエースFWフレイも負傷交代、ハンドを見逃されるなど運もなかった。

前半の4-4-2より、創造性のあるヤキンをトップ下に入れた4-2-3-1の方が攻撃の可能性は感じられたので、次からは守備やスタミナ面で不安があっても彼をスタメンで起用した方が良いかもしれない。彼を起点にサイドに散して、SHとSBの連動でクロスを上げていくのが良作か。ただ1トップを務めるCFがポルトガル以上に頼りないのだよな。ホスト国は早くも追い詰められている。

*1:この試合のコラーは攻撃面で思うように起点になれなかったが、リスク回避戦法が取れるという点で彼の存在は大きい

*2:4-1-4-1は1トップが孤立する傾向の強いシステムで、そのためには後方から丁寧にビルドアップして全体を押し上げていく事が重要だが(同システムのスペインならこれが出来る)、今のチェコの中盤では難しい。ブルックナーは始めからそれを放棄して、中盤を飛ばしてコラーの頭を狙うロングボールを多用。