ドイツ代表メンバー雑感

大会最弱とも思えた前回大会でのグループリーグ最下位、自国開催の06WCでの3位躍進を経て、予選でも好調を維持し、優勝候補筆頭との評価を得て大会の臨むドイツ。それにしては、不安も多いようように見受けられるが。

ゴールキーパー
1 イェンス・レーマン*1
12 ロベルト・エンケ
23 レネ・アドラー

正GKのレーマン、今シーズンはアーセナルでのミス連発で控えに降格し、試合勘に不安が残る。後継者候補筆頭と目されていたヒルデブラントも、崩壊中のバレンシアで精彩を欠いた。エンケ、新星アトラーには国際経験が圧倒的に不足している。CL経験を積んで一回り大きくなった若手のノイアー、そしてバイエルンで有終の美を飾ったカーンら、落選メンバーの充実が目立つくらいだ。

ディフェンダー
2 マルセル・ヤンセン
3 アルネ・フリードリヒ
4 クレメンス・フリッツ
5 ハイコ・ベスターマン
16 フィリップ・ラーム
17 ペル・メルテザッカー
21 クリストフ・メッツェルダー

実は世界屈指のSB王国ドイツ、やはりSBの充実が目立つ。これまでは左に比べて右の攻撃力に問題があったが、左SBヤンゼンの成長により、ラームを右SBにコンバートする余裕が生まれた。ヴェスターマン、フリートリヒといったSB・CBを兼任できるマルチロールの存在も大きな強みだ。

ただしセンターには若干の不安も。ドイツWCでもコンビを組んだメツェルダーメルテザッカーは健在だが、怪我明けのメツェルダーはコンディションと試合勘に問題を抱えている。またDFラインを高く押し上げる傾向が強い割りに、DF陣のスピードは不足している。自国開催のWCのようにイケイケにいければいいが、そうでないと思わぬしっぺ返しを受ける事になりそうだ。

ミッドフィルダー
6 シモン・ロルフェス
7 バスティアン・シュバインシュタイガー
8 トルステン・フリンクス
13 ミヒャエル・バラック
14 ピオトル・トロコフスキ
15 トーマス・ヒツルスペルガー
18 ティム・ボロウスキ

バラックフリンクスの中盤センターは大会屈指。チェルシーで新境地を開拓した大黒柱バラックの充実は大きい。ロルフェスの成長でバックアッパーも充実。所属のバイエルンでスランプに陥ったシュバインシュタイガーが不動の左サイドは気がかりだが、ドイツ代表での実績からも計算は立つし、バックアッパーにトロホウスキやヒツルスベルガーといった彼に続く有望な若手も台頭してきた。
とにかく痛いのは右SHシュナイダーの離脱。ドイツ代表で最も周囲を活かす能力に長けたチャンスメイカーの離脱は、得点力に大きな影響を及ぼしそう*2。右サイドを本来SBのフリッツ、スピード馬鹿のオドンコールに頼らざるを得ないのは大きな不安。充実している左SHや、FWで居場所のないポドルスキのコンバートも一考の余地が残される。

フォワード
9 マリオ・ゴメス
10 オリバー・ノイビル
11 ミロスラフ・クローゼ
19 ダビト・オドンコール
20 ルーカス・ポドルスキ
22 ケビン・クラニ

近年のドイツ代表で最も充実した構成となった。エースのクローゼ、復活したクラーニ、そして超新星ゴメツの存在。スペインとドイツのハーフであるゴメツは、高さや強靭フィジカルを活かしたコンタクトプレーからゴールを狙うだけでなく、スピードや足元のテクニックにも定評のある新世代の大型CF。初の国際舞台で大ブレイクが期待される。これでバイエルンで不振を極めたポドルスキが復活すれば完璧だ。



監督は代わったがアシスタントコーチの昇格であり、システム、戦術、レギュラーの殆どをWCドイツ大会から継続している強みがあり、それぞれがより経験を積んで逞しくなっている。死のC組勢と決勝まで当たらない組み分けにも恵まれた。

確かに優勝候補筆頭に押されるのも分かるが、そういう立場に相応しくない穴も散見される。EURO2000前のフランス代表とは明らかに違い、本命国不在ゆえの本命の色が強い。まあでも、4年前の惨状からよくここまで持ち直したものだよ。これがサッカー大国の底力か。

*1:レギュラー候補

*2:ミドルシュートや中盤のプレスといったトレンド面では参加国屈指ながら、攻撃の変化に乏しいというドイツの欠点は、シュナイダーの離脱でさらに深刻になった