アルゼンチンvsプラーヴィ

未消化試合が溜まっているけど、とりあえず昨日の試合から。

アルゼンチン 6-0 セルビア・モンテネグロ
[得点] 6分:ロドリゲス、31分:カンビアッソ、41分:ロドリゲス、78分:クレスポ、84分:テベス、88分:メッシ

アルゼンチン:4-4-2
アッボンダンシエリ;ブルディッソアジャラエインセ、ソリン、マクシ・ロドリゲス(74分メッシ)、マスケラーノ、ルイス・ゴンサレス(16分カンビアッソ)、リケルメサビオラ(58分テベス)、クレスポ

セルビア・モンテネグロ:4-4-2
イェヴリッチ;ガヴランチッチ、クルスタイッチ■、ドラグティノヴィッチ、ドゥリャイ、コロマン■(49分リュボヤ)、スタンコヴィッチ、ナジ■(46分エルギッチ)、P・ジョルジェヴィッチ、ケジュマン■■(65分退場)、ミロシェヴィッチ(69分ヴキッチ)

アルゼンチン強すぎという試合でした。個人での崩しだけでなく、組織としての崩しも巧い。絶妙なパスコンビネーション。そして攻撃だけでなく、守備にも連動性がある。攻守の切り替えが速い。
プラーヴィは欧州予選で僅か1失点、スペインがどうやっても切り崩せなかった堅守のチームですよ。けして弱いチームではないんだが。死のC組に入った事が不運すぎた。

4-4-2
     クレスポ   サビオラ
          リケルメ
  マキシ          ルーチョ
        マスチェラーノ
ソリン
     エインセ  アジャラ  ブルディッソ


       アポンダンシエリ

ダブルボランチの4-4-2ボックスだったコートジボアール戦とは違い、カンビアッソout→ルーチョinで3ボランチ気味の4-4-2ダイヤ。左SBソリンが頻繁に上がって、右SBブルディッソが絞って3バック気味になる変則的な構造は同じ。まあアルゼンチンのシステムは流動的なので、上記は基本配置以上の意味はないです。

オランダ戦でも崩されていた急造的な右サイドをプラーヴィの弱点とみたのか、ソリンの存在でただでさえ攻撃的な左サイドに、象牙戦で右サイドだった攻撃的なマキシを起用して、徹底して左サイドから崩して行く。前半6分にその左サイドからサビオラ→マキシのゴールで先制。

プラーヴィは左サイドからの崩しに全く突いていけない。高い位置でボールを奪えず、パスワークにより押し込まれてしまった結果、有効なショートカウンターも封じられてしまった。アルゼンチンはリケルメを中心とした落ち着いたパス回し、老獪なポゼッションで試合をコントロール。堅守速攻のリアクション型チームが、アルゼンチン相手にリードを許してしまっては厳しい。試合の主導権を完全に握られてしまった。

2ゴール目の崩しは素晴らしかった。テレビでも流れるだろうから詳細は省くけど、ゴールまでの過程で何本のパスが繋がっていたのか数え切れないほど。左サイドからの崩しで、プラーヴィの選手はそちらばかりに注意が向いてしまい、右に流れたカンビアッソをフリーにしてしまっていた。それでもまだ中央には人数が揃っていたのに、カンビアッソがダイレクトでエリア内のクレスポに当てて、クレスポがヒールで落とし、走りこんでいたカンビアッソがシュート。プラーヴィのDF陣がついていけない完璧な崩し。


浮き足立った相手のミスを逃さず、ボールを奪ったサビオラがドリブルシュート、こぼれ球をマキシが押し込んで3点目。勝負あり。後半はケジュマンの退場でプラーヴィは10人。どうしようもない。



キープ力とパスによるゲームコントロールに優れたリケルメを中心としたアルゼンチンのパスワークは芸術の域。ボールを動かすだけでなく、人もフリーでボールを受ける為に動いている。人もボールも良く動くと喩えられる所以。リード後のパス回しにもそつがない。
ただし、そのリケルメが機能すれば無類の強さを誇る反面、コンフェデ決勝の時のように不調だったり、ハードマークで消されると勝てないのがペッケルマン作った「リケルメのチーム」。まだリケルメの存在を消せるチームと当たっていないので*1、そうなった場合の対応策に不安が残る。

と思いきや、ベンチに控える切り札が凄いからね。前の象牙戦ではクレスポを代えてパラシオを投入すると謎のペッケルマン采配も、この試合では希望通りの交代策を見せてくれた。そして象牙戦の戦評で期待した通りの展開になった。

4-3-3
          クレスポ
    テベス          メッシ
       リケルメ
             カンビアッソ
      マスチェラーノ

ソリン
     エインセ  アジャラ  ブルディッソ


        アポンダンシエリ

安全圏に入った終盤は3トップを試してきた。メッシとテベスを活かすならこの布陣がベストかな。先発はリケルメと相性の良いボールレシーブや運動量に優れた選手を使って、切り札としてボールを持った時の局面打開に優れた2人を使えるのは強み。

とにかくメッシが入ると、それまでリケルメ中心のチームが、メッシ中心のチームになってしまう。直前のアンゴラとの親善マッチもそうだった。リケルメが黒子役になってボールを捌いて、メッシが局面打開していく。こうなると単にリケルメを消せばいいというものではないから、並大抵のチームでは止められない。メッシの投入で変化したアルゼンチンのリズムに、プラーヴィは全く付いていけなかった。

とにかくメッシは速くて巧い。独力でも崩せるし、周りを使うのも巧く、アシストもゴールも出来る。、そしてリケルメよりボールレシーブの動きもうまい。自ら貰ったファウル*2でのリスタートから、相手の隙を突いたボールの貰い方で左サイドを抜け出し、股抜きの折り返しで4点目のクレスポのゴールをアシスト。最後は右サイドで巧くボールを引き出して駄目押しの6点目を自ら決めた。

まあ、勝負が決まってプラーヴィの気持ちが切れてからの活躍だし、「マラドーナを超えた」とかはまだ早計過ぎると思うけれど、初出場して僅かの時間で1ゴール1アシストは驚異的。スーパーサブとしても良いけど、今度は先発でも見てみたいですな。

テベスも負けじと2人を交わして5点目を決めた。メッシ、テベスという、ボールを持って独力で打開できる二人を前線に並べた布陣はかなりの破壊力がある。ただこの2人を活かす4-3-3だと、アイマールの出番はなさそうで残念。

ただこのチームにアイマールを入れたら、攻守のバランスがおかしくなると思うので仕方ないかな。リケルメに何かあった時の代役としてペッケルマンは計算してるんでしょう。でも始めから共存をさせない現実策に出れるのがアルゼンチンの強みなのかも。

もしこれがブラジルだったら、リケルメ、メッシ、テベスアイマールの新旧「マラドーナの後継者」達を同時起用せざるを得ないムードになると思う。ブラジルも「カルテット・マヒコ」よりも、動けないデブを外した方が強そうだけど*3、それは許されないチームなんでしょうな。ペッケルマンの先発メンバーは、攻守のバランスに気を使っていてとにかく現実的。


とにかくアルゼンチンは優勝候補に相応しい実力を見せた。攻撃だけに目を奪われがちだけど、組織的な守備力もかなりある。攻守の切り替えの速さ、個と組織のバランス。まあ課題もあるけれど、今後の試合も期待したいです。トーナメント進出決定は嬉しいけど、オランダ戦が消化試合になったのは少し残念だったり。

6月16日:死のグループ、第2章
ARG6-0SCG(マッチ21):試合レポート
さよなら、セルビア・モンテネグロ

*1:次に当たるオランダもオープンなチームだし、どちらもトーナメント進出決定しているので、相手の光を消しあうガチンコ試合にはならない。

*2:直前のGKアポンダンシエリのピンポイントのパントキック精度も素晴らしかった。

*3:1トップとガウショ+カカーにして、中盤に攻守に貢献できるジュニーニョを加えるとか。