グループB初日

イングランド 1-0 パラグアイ

ENG 1-0 PAR:試合レポート(FIFAworldcup.com)
行列のできるイングランド戦 宇都宮徹壱(スポーツナビ)

イングランド
P・ロビンソン;G・ネヴィル、R・ファーディナンド、テリー、As・コール、ベッカムランパード、ジェラード■、J・コール(82分ハーグリーヴス)、オーウェン(56分ダウニング)、クラウチ

パラグアイ
ビジャル(8分ボバディジャ);カニサ、C・ガマッラ、J-C・カセレス、トレド(82分J・ヌニェス)、ボネ(68分クエバス)、R・アクーニャ、パレデス、リベロス、N・H・バルデス■、サンタクルス

気温の高い日中、ただでさえ慎重な試合になりがちな初戦*1、固いサッカー*2同士の対戦という事もあって、全体的にリスクを抑えた試合展開になった。

試合の趨勢は開始早々のオウンゴールで決まってしまった。先制した事によって、イングランドは慎重な試合運びに終始。攻撃はカウンターを受けるアリスクのないクラウチへのロングボール主体。SBはほとんど攻撃参加せず、ランパードとジェラードの攻撃的なCHもバランスを重視して、クラブでのようにFWを追い越して攻撃参加を控えるなど、攻めに人数を掛けない。パラグアイも点差を広げられるリスクを考えて、無理には攻めにいかない。前半はイングランドがゲームの主導権を握った。

後半はパラグアイが攻撃にある程度人数をかける様になって、ボールを支配して攻め入るようになったけど、イングランドの守備ブロックを崩すまでには至らない。パラグアイは基本的にカウンター攻撃を得意とするリアクション型のチームなので、引き気味に守る相手に対し、主体的なポゼッションから崩していく事は巧くない。先制点は痛すぎた。攻撃はバルデス鋭い突破からの単発的なもので、復帰明けのエース・サンタクルスはまだまだ本調子でなく影が薄かった。

イングランドは守備を重視して引いたため、中盤と前線が間延びしてしまい、攻撃は散発的なカウンターしか出来なくなってしまった。日中の熱さで運動量も減退。後述する選手交代とシステム変更で流れを変えようとするも、思うように機能しない。ただし守備は磐石、ハーグリーブス投入でさらに守備的に。お世辞にも良い内容とは言えないけれど、結果的には危なげなく逃げ切った。


いかにもエリクソンイングランド代表*3らしい試合だった。期待外れの退屈な試合と言われるだろうけど、元々こういう試合が多いチーム。

初戦は勝利こそ最重要。しかも相手は難敵パラグアイ。これで次のトリニダートに勝てば突破はほぼ確定。消極策はけして間違いではない。初戦での常套策でしょうな。でもまあ、これだけ他国が羨む攻撃的タレントを揃えていて、何でこういう試合が多いのかね、エリクソンよ。といつも思ってしまう。タレントを活かしきっていない点が好きになれない。

イングランドの試合でおもしろくなるのは、相手が堅守を崩せる攻撃力を有している場合が多い。EUROのポルトガル戦しかり、親善マッチのアルゼンチン戦然り。似たような堅守が売りのパラグアイ相手、しかも開始早々に先制してしまえば、エキサンティングな試合になる余地はなかった。そういう試合はトーナメントで期待ですな。グループリーグ最終戦スウェーデンにも何とか頑張って欲しいけど。

4-4-2

       クラウチ    オーウェン

  J・コール               ベッカム

       ジェラード   ランパード

A・コール                 G・ネビル
     ファーディナンド   テリー

            ロビンソン

56分 オーウェン→ダウニング、82分 J・コール→ハーグリーヴス

結局、得点はセットプレーからのオウンゴールだけ。やはり前線と中盤との掛け橋となるルーニーの不在は痛い。オーウェンクラウチもエースの器ではない。他に攻撃に変化をつけられる選手が少ないので、どうしても単調になってしまう。後半はダウニングを左、Jコールをトップ下に置いたけど、イマイチ機能していなかった。組み立てに貢献できて、独力でゴールに絡めるルーニーの復帰が今後の鍵を握るでしょう。

中盤のメンツも凄いけど、攻撃構成力だけは物足りなく*4、バランスや相互補完性の面でもまだ万全ではない。

課題のジェラード&ランパードの攻撃的CHの共存は、お互いがバランス取りに苦心していて、各々の良さを最大限に発揮するには至らない。所属クラブでプレーする時のようなダイナミックな攻撃参加が見れない*5。この2人の世界最高峰CHが噛み合った時、イングランドは真の力を発揮すると思う。

それにしても本当に守備は堅固。DFは高くて強くて、ドイツとは対照的にチャレンジ&カバーも巧い。「カテナチオ」の冠は、もはやイタリアではなくイングランドのモノですな。中盤も運動量豊富でボールを拾う能力が高い。パラグアイって普段はここまで攻撃が稚拙に見えるチームではないよ。この守備力とベッカムのセットプレーがあれば、上位進出は間違いないでしょう。



スウェーデン 0-0 トリニダート・トバゴ
TRI 0-0 SWE:試合レポート(FIFAworldcup.com)
困難に立ち向かう無名の選手たち トリニダード・トバゴvs.スウェーデン(中田徹)

トリニダード・トバゴ
ヒズロップ;A・ジョン■■(46分 退場)、サンチョ、ローレンス、グレイ、バーチャル、エドワーズ、セオバルド(66分ワイトリー)、サムエル(53分グレン)、S・ジョン、ヨーク■

スウェーデン
シャーバン;メルベリ、ルチッチ、エドマン、リンデロート(79分シェルストレーム)、ユングベリ、アレクサンデション、A・スヴェンソン(62分アルベク)、ウィルヘルムソン(78分ヨンソン)、イブラヒモヴィッチラーション

今大会最初の波乱。まさかこの試合とはね。これがワールドカップの怖さか。
スウェーデンは痛恨のドロー。典型的な格下相手に決定力を欠いた試合。これだけ決定機を外したら勝てるものも勝てなくなる。特にアルバックズラタンも相変わらずゴールに嫌われている。あと、少し綺麗な崩しに拘りすぎている気がした。イングランドなら単純にクラウチに放り込んで、こぼれ球をミドルで詰めるなりして勝ち切っただろう。
これで次戦のパラグアイ戦には何としても勝たなくてはならない。相手は典型的な堅守速攻のチームで、相性はけして良くない。タフな試合になりそうだ。贔屓チームなので本当に頑張って欲しい。
トリニダード・トバゴは10人で良くやった。全員サッカーで最後まで集中力を切らさず守り抜いたのは見事。GKヒズロップが大当たり。数的不利のためドロー狙いの守備的ゲームプランの中、攻撃的なグレンを投入してカウンターの脅威を残しておくベーンハッカーの攻撃的采配も見事。そのグレンのポストに弾かれたシュートが入っていればれば神だった。
でもこの攻撃力だと良くて3引き分けでしょうな。この堅守速攻グループBでゴールを奪うのは困難。

*1:パラグアイは中盤にバレットやドス・サントスなど攻撃的選手を使わず、サイドにも守備的選手を置くドロー狙いの布陣。

*2:どちらも4-4-2。高い位置で奪えると判断した場合は前からプレスするけれど、それ以外はディレイしながらリトリートして陣形を整え、3ラインの形成で相手の攻撃に対処する守備戦術。攻撃はそこからカウンター主体。

*3:何かマスコミに持上げられて過大なパブリックイメージが付いているけど、元々慎重で固いチームですからね。強いのは間違いないけれど、攻撃より守備が売りのチームです。

*4:攻守にアグレッシブで、ロングフィードミドルシュートの精度は素晴らしく、ダイナミックな攻撃は大得意だけれど、効果的にタメを作って、状況に応じてゲームを動かせる選手がいない。そこはコールの調子次第か。

*5:チェルシーマケレレリバプールではアロンソシッソコが後方でうまくバランスを取ってくれるからね。