ドイツ戦

ドイツ 2−2 日本
[得点] 57分、65分:高原直泰、76分:クローゼ、80分:シュヴァインシュタイガー

日本 3-5-2
GK:川口能活
DF:中澤佑二宮本恒靖坪井慶介
MF:三都主福西崇史中田英寿加地亮(39分:駒野友一)、中村俊輔
FW:高原直泰(78分:大黒将志)、柳沢敦(81分:玉田圭司

ドイツ 4-1-3-2
GK:レーマン
DF:ヤンセンメルテザッカーメッツェルダー(55分:ノヴォトニー)
MF:シュヴァインシュタイガーフリンクスバラックボロウスキ(63分:オドンコール)、シュナイダー
FW:クローゼ、ポドルスキ(70分:ノイヴィル)


この試合単体で見ると、単純に楽しい試合でしたよ。日本がドイツを翻弄する時間帯は痛快だった。空気読まないラフプレーは頭に来たから、出来れば勝って欲しかったんだが。斜陽のドイツ相手だから特に。前に日本でドイツに惨敗した試合は最悪の気分だったので、この試合で多少は溜飲を下げられたのは良かった。

欲を言えば勝てた試合だった。サッカーの質でも、崩しての決定機の数でも日本の方が上だったし、セットプレーで2失点は勿体なさすぎ。まあこれが国内での強化マッチに来る中堅国2軍相手なら駄目だけど、欧州中堅レベルの1軍相手にアウェーでこれだけやれたのは収穫でしょうね。しっかり課題も出たわけだし。

  • ラインの位置とプレスタイミング

試合前に焦点となっていたラインの位置やプレスのタイミング。状況に応じたラインコントロールとプレッシングの連動性は悪くなかった。ラインを下げずに前からボールを奪って*1ショートカウンターもあったし、押し込まれてラインを上げられない際には前線も下がるなど、これまでよりコンパクトな布陣を維持できていた*2。ドイツのサイド攻撃の拙さ・局面打開力のなさもあるにしろ、弱点のサイド裏もそこまで突かれなかった。
守備組織が崩れたり、中田と周囲の意思疎通が乱れたり、前後分断して間延びが目立つ時間帯もあったけど、これまでに比べると上出来でしょう。コンフェデ後の一年間は本当に酷かったから。中田ら海外組みが入って、まとまった期間一緒に練習できた効果が如実に現れた。

  • 2ゴールの攻撃面

2トップの動き出しと、中盤での素早いパスワークで裏を突く攻撃も良かった。ドイツはコンタクトが激しいだけで、組織的プレスはイマイチというのはあったけど、これも国内組み主体の試合とは歴然の差があった。ドイツのお粗末なラインコントロールを突き、何度も決定機を演出できた。中田や俊輔のサイドチェンジも有効だった。

欲を言えば状況に応じて得意のポゼッションをもっと有効活用して欲しかった。速攻は良かったけど、リードした状況ではもっと落ち着いてボールを回して、ドイツを焦らした方が良かった。

  • 高原・復活か?

MOMは決定機を確実に決めた高原。壮行試合キリンカップで最も足りなかったピース。中田のチームの核になるプレー、柳沢の動き出しと周囲を活かすプレー、俊輔の調子は悪いながらもツボを押さえたタメも流石だった。

この4人が絡んだ57分の先制点はカウンターのお手本だった。柳沢がヘッドでクリアーして、ボールを拾った俊輔が細かいドリブルで2人を交わしてタメを作って、上がって来た柳沢にパス。(間に中田英がスルーでDFの注意を引き付けて)、柳沢がダイレクトの浮き球パスで高原がフリーで抜け出す。長い距離のドリブルの後、レーマンとの1対1を落ち着いて決めた。

65分の高原の個人技による追加点は圧巻。中田と俊輔がサイドで起点を作って、ボールを受けた駒野がエリア内にハイクロスを上げると見せかけて、マイナス気味のグランウンダーパスを高原へ。高原は鋭利な切り替えしでノヴォトニーとバラックの2人を完全に抜き去さって、落ち着いてファーサイドにゴール。04-05シーズン後半戦の高原が戻ってきた感じ*3

  • セットプレーによる失点

課題も相変わらずだけど、それは想定の範囲内。セットプレーでの1対1の弱さはどうしようもない。クローゼに簡単に薙ぎ倒された一失点目はお粗末過ぎるけど、宮本の身長や身体能力が突然向上する事はないからね。集中力を切らさない事、そしてゴール前でファウルを与えない事が何よりの解決策でしょうね。

1失点に繋がったファウルは、ボールを奪われた高原が後ろから一発で行ってしまった。ミスを取り返そうとする姿勢は評価できるけど、ドイツの攻撃力であの状況から決定機を作られる事はまずないし、近くに中田もいたから無理せずプレッシャーを掛ける位で良かった。2失点目のファウルは全くいらない。ああいう状況では数的優位を保って墨に追い込んだ方が良い。CKも少し与えすぎ。

気になるのはこちらの決定的なセットプレーがないこと。俊輔が直接FKを狙えるシーンは皆無。これは裏抜けFWやパサーはいても、粘り強いキープやドリブルによる仕掛けでファウルを貰える選手がいないから。唯一の先発ドリブラーのサントスは、相変わらず国際舞台では不発だった。

  • 采配

采配はもう少し工夫してもらいたい。スーパーサブとして大黒*4の投入は良いと思うけど、柳沢か高原のどちらかは残しても良かった*5。2トップ同士の交代だけでは工夫が足りない。過去のWCを振り返っても、監督の采配というのはかなりの鍵を握っている。

  • 加地の怪我

一番の誤算だったのは加地の怪我。シュバインシュタイガーの悪質なバックチャージで右足捻挫。オーストラリア戦も微妙とのこと。少なくとも万全では迎えられないでしょう。救いは代役の駒野が計算以上のプレーを見せた事。自信あるプレーでサイドの主導権を渡さなかった。左の選手より遥かに良い出来。

  • 本大会に向けて

まあ親善試合一試合で喜んでもいられない。ドイツが下手なパスを繋いでオープンに攻めて来てくれたから、守ってボール奪取後の速攻が嵌ったのであって、日本を研究してパワープレー主体できたら同じような展開にはならなかったはず。この試合を見たオーストラリアやクロアチアは、中盤での繋がずロングボールを宮本目掛けて放り込んでくるかもしれない。そうなった時はこの試合より難しい展開になりそう*6

日本からするとは、FWが飛び出すスペースを引き気味の守備で消されて、サイド裏にカウンターを狙われた方が嫌。まあクロアチアは日本相手にそこまでリアクションに徹しないと思うけど、ヒディンクは確実に日本の弱点を突いてきそう。中盤でもしっかりプレスを掛けてくるだろうし、中田と俊輔は確実にハードマークされるでしょう。そうなった時の対応はまだ未知数だし、課題もまだまだ多いけど、本大会に向けて希望も見えた試合でした。ノルマであるグループリーグ突破は簡単ではないと思うけどね。

コンディション的にも、欧州でフルシーズン戦っているブラジル、クロアチア、オーストラリアの方が消耗度はあると思う。日本は疲労があるのは俊輔くらいで、控え扱いだった中田も高原も休養十分、国内組みはシーズン中。

何だかんだ言って盛り上がってきましたな。

  • ドイツ代表

これは深刻ですな。ホームで日本に押され気味。あのDFラインはヤバイ。プレスがかかっていないのにラインを上げようとするし、スピードもないので、ライン裏への対応がお粗末過ぎる。まあブンデスの強豪チームのCBの大半が外国人なので仕方がないか。そして所属クラブでサイドのフリングスに1ボランチ、MFのシュナイダーに右SBをやらせるか、クリンスマン

今年に入って、イタリアに4失点とボコされたり、スコアとは逆に内容が悪かったアメリカ2軍戦だったり、チームとしてまるで機能していない。個で傑出しているのがバラック位しかいないから、チーム力で勝負するしかないのに。そのバラックも怪我明けでコンディション最悪。他の好選手もクラブでの活躍とは別人。キープ力や局面打開力に優れた選手が極端に少ない。及第点は好セーブを見せたレーマンくらいか。開催国アドバンテージしか好材料が見当たらない。ただそのアドバンテージはけして小さくない*7

過去のWCの結果から、期待されない時のドイツは本番で強い、とよく言われる*8。あの捏造グループは突破するだろうけど、このままでは上位進出は危うい。まあドイツには鼻から期待していないけど*9、開催国が弱いままだと大会の盛り上がりに欠ける。意地を見せてくれ。


ということで今日はアンチ・クリンスマンかな。

*1:福西は中盤で相手の攻撃の芽を摘んで攻撃に繋げていた。マッチアップのバラックとも互角以上に渡り合った。

*2:オフサイドも何度かとれた。

*3:ブンデスを見てない人はジュビロ時代とか言うだろうけど。でも一試合だけでは手放しで褒められない。本番で何をするかが重要。確かヘルタ戦でコバチシムニッチ相手に2ゴールしてたと思うので、クロアチア戦は特に期待したい。

*4:ドイツが付いて行けないオフザボールの動きは良かったけど、決定機は確実に決めたかった。

*5:まあ勝敗の重要性ない試合だし、本番に向けての温存というなら問題ないですが。

*6:そもそも親善試合数試合を比べてみても、ドイツよりクロアチアの方が強いような。守備とサイドは明らかにクロアチアの方が上。右サイド、オドンコー&シュナイダーより、スルナ一人の方が遥かに怖いよ。

*7:そもそも組み合わせ自体がアレだし。

*8:EURO2000&2004では前評判通りグループリーグ惨敗でしたけど。

*9:ブンデスは好きなリーグだけど、活躍している選手の大半は外国人。一番面白いサッカーやってる2位ブレーメンの主力ドイツ人を外したり、違うポジションで使ったり。