ミドル級トーナメント

試合の雑感。結果は割と順当で番狂わせなし。上山がヤヒーラ相手に寝技勝負で判定まで粘ったのと、KIDの秒殺には驚いたが。

山本“KID”徳郁 vs 宮田和幸

KIDが跳び膝で秒殺KO。何あのシャイニング・ウィザードみたいなの。別にKIDは特別好きな選手じゃないけど、ここまでされると脱帽ですよ。
宮田はレスリング力でKID以上という評価で、相性的にはHERO'Sの中でもかなり分の悪い選手と見られていた。KIDの勝ちパターンは、その驚異的な立ちレスの強さを活かしたスタンド維持での打撃勝負や、グラウンドでトップキープしてのパウンドで、グラウンドで下の状態になった時の対処に不安があるわけだ。そのため宮田にテイクダウンされて塩漬けにされるという可能性も少なからずあったわけだが、そんな不安を一蹴する劇的KO劇。
これは出会い頭の一撃というところで、本当の意味での2人の実力差というのは見えなかった。ただまあ、あんな勝ち方されてはKIDに文句のつけようもないでしょう。
やはりKIDには運も見方にする天性のスター性がある。そして宮田にはそれがなかった。これは案外大きな差かもしれない。

宇野薫 vs オーレ・ローセン● (一本)

宇野がチョークで一本勝ち。苦しみながらも、最後に極めきるところは流石。実力的にもグランプリ優勝候補の一人でしょうね。ただ相性的にKIDとは分が悪い。KIDのテリトリーであるスタンドの維持に徹された時にどう打開するのか。今回のミドル級トーナメントは宇野に頑張って欲しいなあ。とりあえず元気戦が見たい。

ローセンは寝技が下手なのは相変わらずだけど、まだ総合僅か2戦目。その経験値で須藤、宇野といったトップクラスの選手とここまで出来れば上等でしょう。パワーだけであそこまで凌げる身体能力はかなり高い。
今の総合のトレンドは打撃優位。グラウンドで極める技術に比べ、凌ぐ技術は習得しやすい。
打撃技術はムエタイ王者なので問題ないし、スタンド維持力とグラウンドで凌ぐ技術さえ身に付ければ、総合格闘家としてけっこう期待出来ると思う。

所英男 vs ブラックマンバ○ (KO)

番狂わせ的な扱いだけど、所はパブリックイメージと実際の実力との剥離が凄まじい選手で、元々の実績・実力は-70kgのトップクラスではない。ZSTの戦績を見ても、こういう打撃のうまい総合ファイターは得意としていない。少し前にも、前回のHEROSで宮田にボロ負けした相手に打撃でKOされたばかり。
所は寝技が武器で技術も確かだけど、その寝技に持ち込む為のテイクダウン力に欠けているのがネック。マンバは前回大会で秒殺した極新空手家と違って、それなりに総合での実績もある選手。これは妥当な結果でしょうね。
所は打撃がうまくないので、もう少しテイクダウンを磨かないと先は望めない。安易にタックルに行くだけでなく、打撃である程度渡り合ってから隙を突くだとか、足へのタックルではなく組み付いて倒すなどといった工夫が必要。実力的にマンバと再戦すれば、テイクダウンに成功さえすれば勝てる可能性は高いだろうけど、トップクラスのストライカー相手には厳しいでしょうね。例えばKIDや高谷にはまず勝てない。
ブラックマンバもトップクラスのストライカーでないのは明白だし、宇野や元気などのグラップラーと当たったら、打撃を当てる前にテイクダウンされて劣勢になる可能性が高い。ミドル級トーナメント優勝争いには割って入れないでしょう。

門馬秀貴 vs J.Z.カルバン○ (KO)

門馬は過酷な減量が逆に仇になったのでは。コンディションも悪そうだったし、動きがかなり悪かった。PRIDEで-73の方がまだ減量が楽だったろうに。まあPRIDEに出るのは色々あって無理なんだろうけど。
ジェシアス・カバウカンチはギロチンに代表される極めのイメージがあったけど、予想以上にパウンドが強力だった。まだ若いし、アメリカン・トップチーム所属だし、先が楽しみですな。

上山龍紀 vs ハニ・ヤヒーラ○ (判定)

アブダビ準優勝、ノーギ世代のトップ柔術家が遂にメジャーデビューですよ。その割には注目度ないし、テレビでの扱いも悪かった。試合はカットされすぎで分からず。

寝技劇場も見られなかったし、上山を極められなかったのも期待外れというところ。やはりグラップリングMMAでは具合が違うのか。矢野や太陽に一本勝ちしてたから期待していたけど、直前での試合決定で調整不足影響したのかもね。
一発の極めがあるから番狂わせの期待はできるけど、現状ではグランプリでは苦戦するんでないか。KIDと当たってもスタンド維持されたら勝ち目ないし。五味vsアウレリオのように、うまくテイクダウンに成功したら番狂わせもあるかもしれない。まだ総合キャリアは始まったばかりだし、今後に期待ですな。相性的に悪そうなストライカーとの試合より、ミドル級トーナメントでは宇野や元気との試合の方がおもしろそう。

上山はPRIDEに参戦したらいきなりシャークと当てられて、HERO’Sでは当初メレンデス、そして直前にヤヒーラに変更と、つくづく相手に恵まれていない。所あたりとやらせてあげてはどうか。ヤヒーラとそこそこ渡り合ってアームロックを極めかけたようだし、ヤヒーラ圧勝を予想した大方の格闘技ファンは過小評価してたかもね。

●中原太陽 vs アイヴァン・メンジバー○

これカットされてた。

アントニオ・シウバ vs トム・エリクソン● (KO)

以前から「未知の強豪*1」として噂されていたペザォンが遂にメジャーデビューですよ。でもK-1側よりはPRIDEに参戦して欲しかった所。HERO’Sでは総合ルールで相手があまりいないので、その内にチェ・ホンマン、サップ、プレデターらとK-1ルールで戦わされそうだ。総合ルールなら問題なく勝つだろうけど、K-1ルールで噛ませ犬にされそうなのがつらい。
総合での実力もまだ未知数だけど、レスリングの猛者であるトムエリからテイクダウンを奪うのは簡単なことではないし、パウンドも切れはないけどかなり重そう。戦績も悪くないし、素材としてはかなり期待出来る。今までのK-1のガタイだけのゲテモノ達とは一味違うと思う。今後に期待。


秋山成勲 vs 永田克彦● (KO)

打撃で秋山が上回るだろうと思ってたけど、まさかの回し蹴り決着。
体重差もあるし、それ以前に総合格闘家としての打撃スキルに差がありすぎた。秋山は総合転向からそれなりに時間が経っているので、打撃スキルはもはや柔道家のそれではない。対する永田さん弟は総合転向後間も無く、いまだアマレスラーに毛が生えた程度。これを以って柔道>レスリングと序列付けるのには無理があるでしょうね。
永田は打撃で腰が引けすぎていて、あれではタックルも有効ではない。そしてたとえタックルでテイクダウンに成功したとしても、まだ上になってからの極め手もないと思う。まず打撃をもう少し磨かないて、有効なパウンドも打てるようにならないと。同じアマレス五輪代表の宮田も総合に適応するまでけっこうかかったから、永田もかなりかかりそうだ。
鮮烈なKO勝利を飾った秋山だけど、まだ同階級の総合格闘家とは戦っていなく、この階級でどのランクに位置しているかは不明。ただ打撃はかなり向上しているし、それなりの実力はありそうだ。次は同階級のしっかりとした総合格闘家との試合を見てみたい。でもプロテクトされるんだろうなあ。

●曙 vs ドン・フライ○ (KO)

曙さんはまだ総合やってたのね。相変わらずやせるつもりもないようだし、技術的にも成長していない。とりあえず突進して、ロープ際に追い詰めて休んでいるだけ。こかされた時点でジ・エンド。
もう一生困らないほどの金は稼いだだろうから、そろそろ格闘技は引退した方が身のためだと思う。せっかくプロレスやって再生できたいたんだから、その路線で行けばいいものを。


  • ミドル級トーナメント展望

今日勝った、宇野、ヤヒーラ、マンバ、メンジヴァー、カルバンの6人が次ラウンドに進出決定か。シードのKIDと須藤元気も決定だから、残る枠は一つ。ここには高谷かシャオリンが来てほしいところだけど、恐らく所が推薦枠で出るんじゃなかろうか。
所では優勝争いに絡む見込みはないので、実力者に出てもらいたいところ。所は別枠で他の選手とやらした方が、女性ファンが喜ぶ試合を見せられると思うよ。あ、別に所が嫌いなわけではないからね。むしろ好きな選手。短所を克服して頑張って欲しい。
けっこうハイレベルなトーナメントになりそうで楽しみ。

*1:数年前に未知強だったリッチ・フランクリンが、今や階級最強との呼び声高いUFC王者ですからな。時が経ったものだ。