第10節

◇浦 和 2−0 大 宮
[得点]32分:ワシントン、89分:永井雄一郎

熱かったね。土屋へのブーイングは凄まじかった。あれはメンタル的に相当タフでないとプレーしづらいでしょう。
復帰した小野は中々の出来。もう怪我はしないでね。

横浜FM 2−1 広 島
[得点]40分:佐藤寿人(広)、81分:松田直樹、89分:吉田孝行

監督交代後は5バックで完全なリアクションサッカーの広島で、ゴールを決め続けている寿人は正直凄い。ジュビロ戦を見た印象では今後得点するのは厳しいと思っていたんだが。このままJリーグで継続してゴールを奪って、キリンカップでゴールを量産するようなことがあれば、いくら序列が後ろでもWCメンバーに入れなきゃ駄目だと思う。

◇鹿 島 4−1 福 岡
[得点]11分:城後寿(福)、26,34分:アレックス・ミネイロ、48分:田代有三、80分:野沢拓也

野沢のダイレクトボレーが美しかった。昨シーズン数少ない出場機会でゴールを量産した野沢が控えとは贅沢ですな。前田と野沢がアテネ世代の立ち上げ時期のユース代表のエース候補だったんだよなあ。SBSカップでは野沢が一番良かったし。二人ともアテネ五輪にはいけなかったけど、着実にサッカー選手として成長を遂げている。ただ年齢的にももう若くないんだし、野沢にはレギュラー取れるクラブでプレーして欲しい。勿体無い。


◇川 崎 2−2 清 水
[得点]02分:斉藤俊秀(清)、21分:ジュニーニョ、63分:マルクス、86分:チョ・ジェジン(清)

ジュニーニョのロングシュート凄いね。
清水は2年目でDFの要になった青山が怪我したのが痛い。

C大阪 2−2 京 都
[得点]47分:柿本倫明、66分:中払大介(京)、73分:アレモン(京)、82分:森島寛晃

試合とは関係ないけど、噂の柿谷がアーセナルインテルに練習参加だってね。海外移籍はJリーグである程度活躍してからの方が見る機会が増えて嬉しいけど、本人の為にはレベルの高い環境で育成してもらった方が良いかもしれない。ただし、もし本契約を求められてもインテルは辞めておくように。

◇大 分 0−3 千 葉
[得点]12分:羽生直剛、35分:佐藤勇人、54分:阿部勇樹

シュート4本で3ゴールとは効率が良い。巻はゴールこそなかったけど、ポストワークや守備での貢献が素晴らしい。ナビスコではゴール量産しているし、代表呼ばれてから1皮向けた印象。でも代表入りは厳しいでしょうな。

◇磐 田 2−0 甲 府
[得点]11分:ファブリシオ、14分:前田遼一

倉貫一毅の怪我は左膝前十字靭帯損傷で全治約6ヶ月かよ。彼は静学で坂本とのコンビで鳴らしていた頃から好きだったし、ジュビロ出身という事もあってかなり応援している。プレースタイル的にも、インタビューなどから窺い知る人柄も好き。早期復帰を願います。福西はしっかり見舞い行けよ。試合前の整列で談笑してたように仲は良いんだろうし。

◇新 潟 1−0 G大阪
[得点]43分:中原貴之

新潟の組織守備がかなりいいね。疲れの見えるガンバはその術中にはまってしまった。ACLの洗礼を浴びてるね。一昨年・昨年のジュビロマリノスを見れば分かるように、本当にコンディションおかしくなるから。
中原の強烈ミドルは凄かった。J2の仙台で構想外になってレンタルされた選手がJ1のレギュラーとして活躍。分からないもんだ。

FC東京 2−1 名古屋
[得点]14,17分:ルーカス、88分:吉村圭司(名)

次節のジュビロの対戦相手の名古屋の試合。

名古屋はようやく玉田の1トップが機能しない事に気付いたのか、2トップが玉田と杉本*1の4-4-2。ただ玉田も杉本も前を向いて持ち味を発揮するタイプのFWで、2トップを組むのに相性*2が良いとは思えない*3。そして2人とも得点力のあるタイプではない。名古屋は監督の母国オランダから、DFを背負ってポストプレーができ、決定力も水準以上のCFを獲得すべきと思う。

藤田が控えというのも疑問。自分が今シーズンの名古屋を見た数試合は藤田が孤軍奮闘している印象だった。常に味方の視野に入る動きを繰り返し、フリーでボールを受ける中継地点になって、そこから確実な繋ぎでボールを動かせる彼がいるのといないのとでは、名古屋のボール運びには雲泥の差があると思う。

東京は4-3-1-2。今シーズンはポゼッション色がかなり強い。梶山を中心に中盤でゲームを組み立て、SBの攻撃参加を中心としたサイド攻撃が主体。トップ下に位置したルーカスが、攻撃時はFWのようにエリア内に侵入してくる。このルーカスを名古屋は全く捕まえられない。

序盤の名古屋は前から果敢にプレスをかけていたけど、ラインコントロールとの連動性や、スペースの埋め方が曖昧。東京の裏へのロングボールで、DFラインも押し下げられてしまった。そうためバイタルエリアが空くシーンが目立ち、そこをルーカスに突かれて、中央から簡単にサイドに展開され、サイドからのクロスにヘッドで飛び込まれ2失点。流石にここまでルーカスをフリーにしたらやられる。

名古屋はサイドの攻防でも後手を踏む事が多く、2トップがサイドに流れて、SBが積極的に上がってくる東京のサイド攻撃に押し込まれる。名古屋はサイドの守備でSB以外に誰が対応するか曖昧だった。

特に徳永のサイドで東京は優位に立ち、名古屋はフィジカルの強い本田が戻って対応した時でないと勝負にならない*4。そのため本田はサイドの高い位置で起点を作る機会が減ってしまった。これはポストプレーヤー不在で前線で起点の作れない名古屋にとって誤算だったと思う。

このままだとワンサイドゲームになると思いきや、名古屋のコーチが指示したのか、ボランチの一枚がルーカスを見るためバイタル近辺に位置するようになり、SBだけでなくSHもサイドの守備をケアするようになった。後半には中盤の底に吉村を投入して3ボランチ気味の3-5-2にし、ルーカスをケアするためバイタルエリアを厚くした。これでかなりマシになったと思う。監督不在の状況でこの修正は的確だと感心したい所だけど、東京のサッカーを分析して始めから3-5-2にすべきだったのでは。
4バックで重要なSBにしても、左SBで先発した阿部は守備力がなさすぎだし、後半途中に左WBに入った片山も守備が得意には見えなかった。守備力のない左とは対照的に、先発右SBの大森や控え角田は攻撃面で物足りなくCBの方が向いていそう。チームも試合途中に3バックにしてからの方が機能していたし、攻守にバランスのとれたSBがいないのなら3バックの方が良いと思う。


後半は一進一退。スコアの影響上、名古屋が攻めて東京がカウンターという構図が目立った。はお互いに決定機何度かあったけど、どちらも決定力不足とGKの好セーブがあってスコアに反映されず。名古屋が終盤に吉村のミドルで一矢報いるも、東京がリードを守り抜きそのまま試合終了。名古屋は藤田を投入するのが遅すぎ。


気になった選手評。まずは代表以外。

東京は2ゴールのルーカスが良かった。前線で張ったりサイドの流れる機会の多いFWより、前を向いてプレーしやすいトップ下の方が向いているかもしれない。中盤でサイドに展開して、前を向いてゴール前に突っ込む形の方が合っている。サイドに流れるなら快速・川口の方が良いし。川口はイキイキしてるね。1トップのジュビロにいても使い所はなかっただろうから、東京への移籍は正解だったかな。献身的なチェイシングやボールを引き出す動きなど、ジュビロ出身のFWらしさが目立つ。

そして良くも悪くも目立ったのは梶山陽平。彼は人によってかなり評価の分かれる選手。試合毎の波が激しすぎるから、良い時を見た人は絶賛するだろうし、悪い時を見た人はなんで将来を渇望されているのか疑問に思う。そして試合中でも波は激しく、強烈な低空ミドルシュートや、ジダン張りの変態トラップを見せたかと思えば、何でもない状況でボールロストしたり、攻守に軽いプレーが散見されるなどかなり癖がある。今日は割と良い日で、中盤でゲームメイクの役割をこなし、持ち前のキープ力やボールテクニックの非凡さも見せていた。2度あった決定機を確実に決めていればなお良かった。


完敗した名古屋で良かった選手を見つけるのは難しいけど、あえて選ぶなら2年目の本田圭介。彼の正確な左足が名古屋の攻撃の中心だった。今シーズンの出来でいえば、よく代表入りが待望される事の多い中村より、本田の方がポテンシャルは上だと思う。

本田の左足から放たれるピンポイント・クロスは東京に最も脅威を与えていた。左では対面の徳永とのマッチアップに苦戦していたけれど、後半途中に右サイドに移動してからはかなり自由にプレーしていた。東京は徳永のいる右サイドに比べてノリカルのいる左サイドの守備が弱いので、最初から本田を右に置いた方が攻撃面では良かったかもしれない*5。本田のように走力がなく縦に抉るようなタイプでない選手は、利き足と逆サイドに置いた方がうまくいったりする*6

気になるのはポジション。サイドで起用されているのは正確なクロスを買われているんだろうけれど、サイドをアップダウンする走力やドリブル突破力は足りないので、本質的には視野の広さを活かせる中央の選手だと思う。名古屋はボランチからの組み立てが雑なので、守備負担が分散される3ボランチなら本田を置いても面白いかもしれない。


この梶山と本田。どちらもテクニックの高さ、抜群のキープ力、視野の広さ、正確なキック精度、フィジカルの強さという長所があって、スピードとスタミナ、オフ・ザ・ボールの質・量、守備意識に短所がある。キック精度では本田、足元のテクでは梶山が上かな。色々な発言を見る限り、メンタル面では本田の方が強そう。本田の向上心はかなり凄い。梶山はやる気があるのかないのかよく分からない。
2人ともプレースタイルや役割的に被る点が多いから、北京五輪代表で熾烈なレギュラー争いを繰り広げそう*7。どちらもユース代表の枠だけでなく、「中田・俊輔・小野・小笠原」以後のフル代表の司令塔を担わなくてはならない逸材だと思う。スケールはかなり大きい。


代表組み。ちなみにジーコの御前試合だった。
土肥と楢崎のGKは良かった。どちらも失点を喫したけれど、あれはノーチャンス。好セーブで失点を減らしていた側面の方が大きい。楢埼は怪我で離脱中に川島*8にレギュラーを奪われていたけれど、これ位できれば代表入りに問題はないでしょうね。

茂庭と今野はそこそこ。今野は昨シーズンとは対照的なガーロの志向するポゼッションサッカーにまだ完全にフィットしていない。ボール奪取後すぐに前に飛び出していく勢いも影を潜めている。守備面では流石だけど、層の厚い中盤でジーコの序列を崩すのは難しそう。

問題は玉田。チャンスは作っているけど、何度かあった決定機を全て外してしまったのは大きなマイナス。立場の同じ代表当落線上のFW、大不振の広島でワンチャンスをモノにしている寿人や、得点だけでなくポストや守備面での貢献度も大きい巻と比べると、今シーズンの活躍度の差は歴然。ジーコの目の前でこの出来では、メンバー入りはかなり厳しいと思う。

*1:快速を活かしてルーキーイヤーは活躍していたけど、研究されてきて早くも2年目の壁にぶつかっている。快速選手にありがちなトップスピードでのボールコントロールの拙さも目立ち、決定機をファーストタッチのミスで不意にする事が多い。

*2:あくまで戦術・システムや中盤との兼ね合いを無視した一般論としてだけど、プレーエリア、プレースタイル、ボールの受け方、身体的特徴などのどれかが被るFW同士は、2トップを組むのに相性が良くない。逆に特徴の異なった2人の方が攻撃の幅が広がるし、お互いを相互補完できれば相乗効果も生まれる。2トップの組み合わせにつての考察は機会があったら書きたい。

*3:キープ力のある玉田は厳しいマークにあってどうしても下がって来てしまうから、最前線で起点を作る事ができなくなっている。杉本は元々ボールが収まるタイプではない。そのため今の名古屋は前線でボールが収まらず、攻撃の起点が作れない。

*4:この本田vs徳永の肉弾戦は一試合通してかなり見応えがあった。まだプロ入り1年目と2年目の選手だけど、フィジカルの強さでは既にJ屈指。それと、なぜMFの本田が何試合かSBをやらされていたか少し分かった。名古屋の左SB阿部の守備がザル。同じ大卒ルーキーの徳永に全く対応出来ていなかった。

*5:まあ、そうすると徳永に左サイドを蹂躙され続けた可能性もありますが。

*6:俊輔もセルティックでは右SHだし。

*7:司令塔タイプとしてはこの2人に期待を込めて船谷、攻守に運動量豊富なダイナモとしては清水の枝村と鹿島の増田、守備的なタイプとしては川崎の谷口、東京の伊野波、広島の高柳、サイドはガンバの家長やジェフの水野など。北京世代のMFはかなり層が厚い。

*8:彼は将来有望な若手GK。楢崎がいる名古屋で常時出場は難しいから、レギュラーGKになれるクラブに移籍した方が良いと思う。控えGK扱いは勿体無い。