磐田vs甲府

他の試合は明日。

ジュビロ磐田 2-0 ヴァンフォーレ甲府
得点者:'11 ファブリシオ(磐田)、'14 成岡→前田遼一(磐田)

今日も妥当なスタメン・選手配置。試合前に一安心。始めからそうやってればなあ。交代策も普通だったよ。

       前田
 村井   成岡   太田
   ファブリ 福西
服部  田中  金  茶野
       川口

ジュビロにとって運が良かったのは、バレーがいない事で甲府が本来の姿ではなかった事。甲府は組織的な全員サッカーのイメージが強いけど*1、高さ・パワー・スピードを兼ね備えたバレーという傑出した個を最大限活かすため*2の組織作りをしていて*3、そのバレーいないとやはりサッカーの質は下がってしまう。その上、代役は本職がDF・ボランチの守備的ユーティリティプレーヤーである鶴見。これは苦しい。

まずバレーの楔を受けるプレーや最前線でのキープがなくなったことで、甲府は後方から次々と選手が飛び出してくる時間が作れず、フリーでボールを受けるシーンが激減していた。ラインを下げるのに有効なバレーへのロングボール*4もなくなり、ジュビロは中盤を間延びせず試合を進められた。CBが1トップの鶴見を抑えたのも大きい。

前線で起点となる選手が不在だった甲府は、後方から攻撃を組み立てていくしかない。その中心となる中盤の底のレジスタ林を、ジュビロは前田を中心に前線から献身的にチェックし続けた。その影響で、林を中心とした甲府のパスワークはいつもより影を潜めたし、高い位置でボール奪取も増えジュビロショートカウンターも機能した。

この試合の前半は、前線からのチェイシング、ラインコントロールの連動性、空いたスペースのカバー、対人マークなど、守備面での出来が良く、前半に相手に押し込まれる事の多いこれまでのジュビロとは大きく違った。


そんな良い流れの前半で先取点奪えたのは大きい。林のパスをカットしたファブリシオが、自らドリブルで仕掛けて2人交わしてからミドルシュート、それが相手DFに当たってコースが変わりGKの手を掠めてゴールマウスに吸い込まれた。ファブリは大宮戦のスーパーミドルに続く2試合連続ゴール。

ファブリシオボランチとしての総合力がかなり高い*5。今日は積極性が目立ち、強烈な無回転ミドルシュートで何度か甲府ゴールを脅かしていた。今のジュビロには中距離砲を得意とする選手がいないので、彼の存在は大きい。精神的に切れる事があるのと、軽率なミスがけっこうあるのは欠点だけど、日本のサッカー・判定基準に馴染めばさらに期待が出来ると思う*6。とりあえず近距離の直接FKは、金でなくファブリに蹴らせて欲しい。

そして3分後に間髪いれず2点目と理想的な流れ。前田が待望の復帰後初ゴール。得点場面の直前、前田が良い守備からボールを奪って、自らドリブルで前にボールを運んでから村井に展開して、その流れからCKがとれた。そしてCKの縺れからこぼれたボールを見事なボレーシュート

前田は持病の股関節痛が全治不明*7で、コンディション的にまだ半分程度しか戻っていない印象。フル出場も無理。それに今のジュビロの1トップは、攻撃の起点・潰れ役としての側面が大きく、守備面での負担もかなり大きいので、得点の量産は望めない。そういう状況で、復帰してから天職とはいえない1トップを見事にこなしてチームを好調に導いた原動力*8である前田には、得点はなくても個人的に不満はなかったんだけど、FWとしてノーゴールが続くと否が応でも雑音が多くなってくる。これは本人にとって嬉しいでしょうね。前田贔屓の自分としても嬉しかったよ。
得点以外にも、前を向いてドリブルで仕掛けてシュートコースを作ってからのミドルが素晴らしかった。惜しくもポストに当たったけど、低く抑えてコースを狙った絶妙なシュート*9。前田が得意とするこのプレーを見ると、徐々に体調は戻ってきたと感じる。今後に期待したい。*10


そんな感じで前半は良かったのに、後半はグダグダの時間帯が多かった。良い流れを持続できないのが今のジュビロの問題。

決定機は外してしまうし、軽率なミスでピンチを招く。運動量の低下でプレスがかからない。ゴール付近のスペースと相手選手を気にしてしまい、目の前のボールホルダーにチェックしに行かない。その影響で何度フリーでクロスやパスを通された事か。プレッシングも弱いし、人も捕まえられないから、DFラインがズルズル下がってしまう。甲府のボックス内での個の弱さや決定力に助けられたけど、上位チーム相手ではまず逃げ切れない内容だった。バレー、そして負傷退場した倉貫がフル出場していたら、この試合も危なかったでしょう。甲府のハンドの判定*11がゴールと認められていたら、試合はどう転んでいたか分からない。


そして広島戦と同じように、リードした後の試合運びに問題がある。2点のリードがあるんだから、前半と同じように戦う必要はない。相手陣営に人数が揃っている場面では、リスクを犯して縦に早く攻め込む必要もない。急ぎすぎてミスを誘発し、逆にカウンターを貰う場面が目立った。1トップへの楔のパスが攻撃の始発点になってるとはいえ、不用意な楔のパスはいらない。終盤はスペースが空きだしているんだから、もっと落ち着いて後方からビルドアップして、中盤でポゼッションしながら隙を伺えば良いはず。監督の志向する縦に早く攻めるダイレクトサッカーをやる意識が強すぎる。もっと速攻と遅攻を状況に応じて使い分ける柔軟性が欲しい。

今日は基本的に選手の出来は良かったけど、唯一駄目だったのは船谷。期待してるからこそ厳しく書くけど、全体的にプレーが軽すぎる。この出来では今後は名波の途中投入の方が優先されると思う。昨日のFC東京vs名古屋で、同じ北京世代の本田と梶山が中盤の軸としてプレーしていたけど、はっきり言って船谷との差は歴然だった。五輪代表で司令塔の座を担うならこの2人に勝たなくてはならない。要精進。


あと、今日はジーコが珍しく磐田に試合観戦しに来ていたらしい。

そこで代表選手の出来。メンバー入りがほぼ確定している川口とマコは問題なし。福西はミスもあったけど、選出に影響するほどではないでしょう。ただ当落線上の村井は微妙。

個人的には、これまでのサイド専門職人から脱皮しようと奮闘していてかなり好印象。右サイドから縦横無尽に動き回る太田*12に影響されたのか、持ち場の左サイドだけでなく、1トップをフォローする為にゴールエリアにもかなり侵入していた。右SBの茶野のクロスに村井が飛び込むというシーンも見られた。逆サイドのクロスに対し、高頻度でペナ内に侵入していたのは評価できる。クロスだけでなく、中に入ってのシュートもあった。攻撃だけでなく守備でも頑張っていた。甲府の武器である右SB杉山新のオーバーラップをかなりケアしたと思う。
ただし、ゴールやアシストという目に見える結果は残せなかった。特に前田のシュートがポスト当たったこぼれ珠は、確実にゴールマウスに押し込んで欲しかったところ。積極性は目立ったけど、疲れが見えた後半はミスも多かった。

代表の左サイドの枠は恐らく2つ。サントスは好調だし、ジーコにとって中田コの方が序列は上。それにジーコの求める左サイドはSB・WBで、今日の4バック前方のSHのポジションではない。現状で23人に入るのは微妙なところだ。でも何が起きるか分からないので、諦めず頑張って欲しい。個人的に今日のプレーの幅を広げようとする積極的なプレーはかなり評価できる。

*1:それはけして間違っていないけど。

*2:そしてバレーに他の選手も活かされる。

*3:バレー頼みのワンマンチームとはまた別物。

*4:普段はこれの多用で中盤にスペースを作ってから、追い越しを連鎖させたパスワークや、サイドからフリーでアーリークロスを上げてる。

*5:傑出した点はないけど、守備での対人プレーは強いし、スペースの埋め方もうまいし、攻守に運動量はあるし、パスもそれなりに捌けるし、効果的なサイドチェンジも出来るし、前方スペースにドリブルでボールを運ぶ積極性もあるし、ミドルシュートも強烈。

*6:実はまだ23歳と若い。フリーで出ていかれたら勿体無いので、フロントは契約延長しておく事。

*7:ゴンも以前は一年以上もかかった。

*8:前田が復帰してからボールが前線で納まるようになり、攻撃の欠陥はかなり解消された。

*9:村井がごっつぁんゴールに成功していれば3点差で勝負を決められた。

*10:前田は昨年怪我で長期離脱するまで、日本人FWとしては代表入りした巻や寿人に負けない位Jリーグで活躍していた。FWとしてゴール以外の貢献度は傑出しているし、ゴール数は12ゴールとけして多くはないけど、負傷欠場さえなければ日本人得点王も狙えた。もうジーコジャパン入りは無理だけど、ドイツ後にはその座を狙って欲しい。それ位のポテンシャルはある。まずはフル出場できるコンディションを戻す事が目標ですな。

*11:この場面を演出した藤田のループパスは見事だった。ジュビロユース出身なので直接対決以外では応援するよ。

*12:今日は逆に動きすぎなくらい動き回っていた。週2試合の過密日程でこの運動量は驚異的。後半のフリーのヘディングシュートを決めていれば最高だった。