準決勝第2戦

やはりトーナメント第2戦は独立した一つの試合と大きく異なる。一週間挟んだ90分ハーフの後半という側面が強い。両チームともこの試合単体で如何こうではなく、第1戦の結果が大きく試合内容に影響してくる。それは両チームのゲームプランだったり、モチベーションの差だったり……。

バルセロナ 0-0 ミラン 
※2試合合計1-0でバルセロナが決勝進出

バルセロナ 4-1-2-3
GK:バルデス
DF:ベレッティ、プジョルマルケスファン・ブロンクホルスト
MF:エジミウソン、デコ、イニエスタ
FW:ロナウジーニョエトー(89分ファン・ボメル)、ジュリ(68分ラーション

ミラン 4-3-1-2
GK:ジーダ
DF:スタム、カラーゼコスタクルタ(64分カフー)、セルジーニョ
MF:ガットゥーゾ(68分ルイ・コスタ)、セードルフピルロ、カカ
FW:シェフチェンコインザーギ(80分ジラルディーノ

やはりアウェーを1-0でモノにしたバルサのアドバンテージが大きかった。バルサはホームといえど無理に攻める必要はない。スコアレスドローで勝ち抜けるわけだから、まずは失点を許さないゲームプラン*1。普段よりカウンターの比重が多い。こうなると攻撃一辺倒ではない柔軟性を身に付けた今年のバルサは固い。

攻めではロナウジーニョの圧倒的なキープ力が効いていた。バルサロナウジーニョにボールを集める事は明白だから、そこでミランがボール奪取できれば速攻のチャンス。でもロナウジーニョは簡単にはボールを奪われない。下手にボールを獲りに行くと交わされる恐れが大きいし、間合いを空けると必殺のスルーパスが出てきてしまう。ミランはかなり手を焼いていた。

そしてエトーやジュリも快速を活かして裏へ飛び出すものだから、スピードに難のあるミランDF陣は速攻を恐れ中々ラインを上げられない。そういった脅威だけでなく、試合展開に合わせていつもより引き気味でボールを受けてキープと、試合を落ち着かせる役目も兼ねていた。ゴールに絡む決定的な仕事はなかったけれど、速攻と遅攻を一人で使い分ける圧倒的な存在感は際立っていた。

  • 状況に応じた効果的なポジションチェンジ

ミランが試合途中に攻撃的なカフーを右SBに投入して勝負に出た時間帯では、バルサは左のロナウジーニョと中央のエトーをポジションチェンジさせ、より守備意識の高いエトーカフーにぶつける事によってサイド攻撃に備える。圧倒的な走力を誇るエトーは尽きる事のないスタミナで攻守に大貢献。カフーのサイド攻撃は不発に終わった。エトーロナウジーニョのポジションチェンジは、今シーズンのバルサが終盤に逃げ切る為の常套策で、それが今回も見事に嵌った格好。試合中に交代策なしで、相手の采配に対応するバルサの柔軟性は素晴らしい。

  • 第1戦でのアドバンテージとビハインド

ミランは試合単体で見ればバルサに何ら劣らない印象を残したけれど、2戦トータルで見れば少なからず差があったと思う。初戦のアドバンテージで攻める必要はないバルサは、リスクを最小限抑えた試合運びで常に試合の主導権を握っていた。ビハインドを負ったミランはゴールを奪う事でしか主導権争いで優位に立つ策はなかった訳だし、その意味では完敗と言える*2

  • 第1戦の結果が及ぼした影響

やはりミランは初戦ホームで負けてしまったのが痛すぎた。あれだけあった決定機を一つでも決めて、せめてドローにしていれば、この試合の展開も大分変わったはず。第2戦を見越してアンチェロッティもそれほどリスクを犯す采配には出なかった*3けれど、今考えると勝負に行くべきだったと思う*4。イタリアのチームがアウェイで得点を奪わなければならない状況になっていた、という時点でスコア差以上のビハインドがあったと思う。カンプノウで守備も堅固なバルサから逆転するのは困難だった。

第1戦のビハインドを受けて、流石に第2戦は勝負に行くと思ったけど、サイドからの組み立てやクロス精度に長けるカフーは控え*5。CBではネスタの欠場が決定していたのに、スピード難のコスタクルタを先発に抜擢して*6、本職CBのスタムをSBに配置しロナウジーニョを消す事を優先した。

まあそれは良いとして*7、終盤に負けているのにピッポを下げたのには失望させられた。ピッポは試合から90分間消えていても、最後のワンタッチで仕事をする男。そして今シーズン不調だったミランをここまで引っ張ってきたのもスーペル・ピッポ。ジラを投入したいなら一か八か3トップにすれば良いのに。スコア上はドローでも、アドバンテージがあるのはバルサで、ミランは絶対に点を取る必要がある。ここは勝負に出て欲しかった所。

  • 明暗を分けた疑惑のゴール

シェヴァの疑惑のゴールについて。もしゴールが認められていれば、バルサは勝ちに行くために本来のアタッキングマインドを爆発させただろうし、ミランの高速カウンターの有効性も高まって、この試合はさらにスリリングになったと思う。そういう意味で個人的にはスコアが動いて欲しかった。残念だけど、まあ仕方ない。

バルサの強さは文句なしでしょう。CL全体を通してもその強さは一枚抜けている印象。昨シーズンは攻めの意識が強すぎて、どこか危うい面を持ち合わせていたけど、今シーズンに限っていえば守備も堅固。組織と個を対立概念としてではなく、個を最大限生かすための組織力を有している。戦術の浸透度も素晴らしい。
プレッシングとリトリート、ポゼッションとカウンターなどを展開に応じて使い分ける戦術的柔軟性が秀逸。ポゼッション一つとっても、相手の守備を切り崩して得点を奪うため、中盤で主導権を握るため、リードして迎えた終盤に時間を稼ぐためと、状況に応じた使い分けが素晴らしい。圧倒的な攻撃力で試合の流れを壊すだけでなく、守備を意識した試合運びで試合の流れを消すことも覚えてしまった。チェルシーとの事実上の決勝を制した優勝候補筆頭に恥じないチーム力。

決勝は攻めるバルサと守るアーセナルの構図でしょうね。ポゼッションを軸に攻め込むバルサに対し、アーセナルはスペースを消して1トップのアンリのカウンター狙い。ただアーセナルも元々は攻撃的なチームなので、コンディションさえ戻ればビジャレアル戦のように引き篭もる事はないと思う。序盤は膠着するだろうけど、早い時間帯にスコアが動けば打ち合いになる予感もする。とにかくおもしろい試合になって欲しい。

ヴィジャレアル0-0アーセナル 
※2試合合計1-0でアーセナルが決勝進出

ヴィジャレアル
GK:バルボーザ
DF:ハビ・ベンタアルバレスアルアバレーナ(82分ロヘル)、ペニャ
MF:ソリン、ホシコ(63分ホセ・マリ)、センナ、リケルメ
FW:フォルランフランコ

アーセナル
GK:レーマン
DF:エブエ、トゥーレ、キャンベル、フラミニ(9分クリシー
MF:リュングベリ、G・シウヴァ、レジェス(69分ピレス)、フレブ、セスク
FW:アンリ

これもまた第1戦の試合結果が大きな影響を及ぼした試合だった。

途中。

*1:ラインも極端に高く上げず、SBのオーバラップは控えめで、相手前線3人を自由にさせず、特にエジミウソンは相手キーマンのカカーをしっかり見る。

*2:昨シーズンのグループリーグで当たった時は一勝一敗、試合内容も五分に近かったけど、1年経ってバルサが上回った印象。ミランのチームのピークは一昨年から昨年で、今年は少々停滞気味。

*3:カフーが控え。交代策もピルロに代えてマルディーニだもんね。

*4:まあ元々リスクを犯す采配が大の苦手とする監督。ピルロ・システム大成功させたチーム作りは素晴らしいと思うけど、試合の流れを変える采配だけは標準以下。シルバーコレクターと呼ばれた当時と変わっていない。だからこれだけ実績があるのに未だに「チキン」と揶揄される事が多い。完璧な監督なんていないんだし、そこまで臨むのも酷か。基本的には世界屈指の名将だと評価している。

*5:ミランの攻撃は中央突破主体で、バルサの固い中央守備との相性は良くない。中央集中の攻撃を分散させる為に、カフーのサイドでの組み立てへの貢献や、オーバーラップからの正確なクロスが必要。バルサの守備の弱点は守備意識の低いロナウジーニョのいる左サイドという事は明白で、序盤からカフーが右SB先発でここを狙って行くのも一つの策だったと思う。結果的に終盤に投入してもエトーとのポジションチェンジで効果はなかった。

*6:逆転する為には、ある程度ラインを上げて積極的に戦う必要があるので、この試合に関して先発CBはビリーよりスタムだったと思う。

*7:スタムも悪かったわけではないし。