第九節

今節は録画放送も含めればかなり見ましたよ。
マスコミでは未だにJリーグは3バックが主流だからSBが育たないとか書かれているけど、実際はJ1も4バックが主流になってきている。今節ではっきりと3バックだったのは、浦和、ガンバ、大分、広島の4チームだけ。残りは4バックだった*1。全試合見たわけではないけど、たぶん間違っていないと思う。
基本的に3バックが多いチームの内、ジェフは1トップのジュビロが相手だったので2バック気味の変則4バック*2、川崎は玉田の1トップに合わせて寺田をアンカーに上げてサイドを下げる4バック*3マリノスセレッソも4バックにシステムチェンジしてきた。逆に広島が4バックから3バックに変えていた。
まあ、相手によって変則的なジェフと川崎が1トップのチームと当たった今節は例外的だったとしても、J1の主流が4バックに映ってきているのは間違いないでしょう*4。明神が怪我するまでの開幕数戦はガンバも4バックが多かったわけだし、大分もナビスコで4バックを試していた。
だからマスコミはJ1が3バック主流とか書くのはいい加減もう古い。


ちなみにFSは今シーズン始めて失敗した。ノルマの80いかなかった。資金は8億超えたけど。

◇清 水 2−1 浦 和
[得点]23分:マルキーニョス、25分:チョ・ジェジン、43分:ワシントン(浦)

前半は清水ペースで2点を奪取。清水は激しい組織守備で楔のパスを容易に入れさせず、サイドの裏のスペースを狙った早い攻め。攻守の切り替えの速さでレッズを上回り、外人2トップが2点奪取と理想的な流れ。PKで同点にされるも、優位を保ったまま前半終了。

後半はレッズが内館をCBに投入して、トゥーリオボランチ、というより前線に上げる時間帯を増やして、いきなりスクランブル体制でのパワープレー。トゥーリオは不用意な上がりでピンチを招く事もあるけど、パワープレー時の高さは圧倒的。これでオーバーラップの判断が絶妙になればフル代表に定着するポテンシャルはある。
これが思いのほか効力を発揮していたわけだけど、健太監督が経験豊富な斉藤をトゥーリオにつける対応策が効果を発揮し、選手の粘り強い守備もあって何とか凌ぎきった。スピード不足で若手に先発を奪われた斉藤だけど、高さに優るトゥーリオ相手にしっかり身体をつけて自由にさせない老練なプレー流石だった。健太監督の後半の守備固めは露骨すぎる様な気もしたけど、結果的にはこれが正解。もし負けていたら消極的すぎると叩かれただろうから、逆にあそこまで徹底した勇気はかなのものだ。

この試合で個人として目立ったのはやはり長谷部。何度も言うけど、彼の素晴らしい所は自分でボールを前に運んで局面を打開できるところ。ラン・ウィズ・ザ・ボールの能力は日本のCMFの中で一番。中盤でパスを捌くだけなら、パサーの多い日本には長谷部と同等もしくは上の選手は結構いる。この点では代表常連の遠藤や小笠原の方が上でしょう。
でも長谷部は前にスペースがあったらドリブルでボールを運んで、相手を引きつけてより効果的なパスで打開したり、そのまま相手陣内深くまで抉って決定機に絡むことも出来る。パス精度や視野の広さがあるだけでなく、自分でボールを運んで相手を引き付けることにより、味方選手のマークを引き剥がす事が出来るわけだから、中盤でのパス回しはよりスムーズになる。これは膠着状況では特に際立つ。この試合でも何度か決定機を作っていたし、守備でもかなり貢献していた。今シーズンの活躍度はチームメイトの小野より上だと思う。
今年になってようやくフル代表に呼ばれたわけだけど、はっきり言って遅すぎる。WY・五輪代表の候補にすらならなかったのも疑問。もっと早くに国際経験を積ませて上げたかった。WCに行って欲しいけど、国際経験の少なさとジーコジャパンでの貢献度の低さからメンバー外はほぼ確定的。残念だ。


ところでFSで今シーズン大人気のレッズ。この試合では清水が強いと読んで、FSでレッズをスルーしたのは正解だったわけだけど、他の試合で思わぬ落とし穴が。

他の試合はあとで追記していきます。雑感だけ。

◇広 島 1−1 C大阪
[得点]00分:佐藤寿人、50分:徳重隆明(C)

一躍注目を集める事になった解任ダービー。広島が3バックにチェンジ、一方のセレッソは4バックにチェンジ。

セレッソは4-1-4-1、今年のレアル・マドリーと同じシステム。このシステムは1ボランチだけでなく、前方の中央2人にも守備的な資質が要求される。でそこには森島と徳重というアタッカー色の強い選手。これはバイタルエリアがスカスカになって守備崩壊思想と思ってたら、案の定試合開始9秒に寿人のゴールで失点。急造4バックでマークの受け渡しが曖昧になっていた。
でもそれ以降は消極的な広島を押し込んで、サイドから良い所まで攻め込めていた。4バックにして今まで孔だったサイドの裏のスペースを埋められていたし、相手が受けに回ったので、中央守備での構造的な欠陥が表面化しない格好。トップ下のウェズレイに個人技でシュートを打たれた以外は、危なげない場面はあまりなかった。
4バックにしてサイドの攻防が大分良くなっていたし、右SB起用の山田もかなり嵌っている。ただこれは広島だから功を奏しただけで、攻守がしっかりしているチーム相手では崩壊する恐れがある。コンパクトにして全選手が守備を頑張らないと、中盤で下村が過労死する。

  • 広島

4バックが崩壊していた広島は、2人のストッパーに、真ん中の一人が余る3バックで守備の役割をはっきりさせる狙いか。開始早々先制したこともあり、相手のサイド攻撃に押し込まれるた形でWBもかなり低い位置取りを取り、実質的には5バックという守備的布陣。
守備では全体がリトリートして、DFラインも低め、まずはゴール前を固める事を優先する。そのため高い位置でのプレスからショートカウンターという、昨年好調だった広島の攻撃パターンがほとんど見られなかった。ただゴール前での守備だけは修正されていた。
攻撃パターンは、ロングボールを上野に当てるか、SBのアーリークロスウェズレイの個人技以外ほとんどない。まずは守備を立て直す為の守備的な戦い方と思うけど、それにしてもチーム全体が消極的すぎた。寿人は相変わらず孤立して、そうなると怖さがほとんどなくなってしまう。*5。復調の気配が見えたウェズレイが攻撃での唯一の光だった。前俊はまた使われないんだろうか。技巧派セカンドトップがいないチームにレンタル移籍して欲しいな。

この試合に関してはセレッソの方が希望が見えた。元々守備が崩壊していたわけではないし、サイドを厚くしたことで攻撃にも好影響が出ていた。ただ結果的には責めきれずドロー。この試合を見る限り両チームとも今後はかなり苦労しそう。特に広島は得点の匂いが感じない。寿人の苦労は続きそうだ。

◇甲 府 1−0 横浜FM
[得点]89分:バレー

マリノスはまさかの4バック。栗原が控えだなんて、聞いてないよ岡ちゃん。FSでもろに使ってました。しかもイエロー貰ったマグロンまで。
甲府が侮れないというのは分かっていて、それでも個々で上回るマリノスは負けないと踏んだわけだけだけど、読みは甘かった。というかマリノスが予想以上に不振。ブラジリアン・トライアングルが猛威を振るった開幕数戦とは見違えるよう。

甲府は相変わらず良質なサッカー。ボールも人も良く動くし、空いたスペースに人がどんどん飛び出してくる。豊富な運動量もそうだけど、選手が自分達のサッカーの自信を持ってやっているのも大きい。迷いがない。
ジュビロ出身の倉貫と藤田も頑張っていた。藤田のSBを追い越す動きが勝ち越しゴールに繋がった。この二人の走る姿勢は今のジュビロ勢にも見習ってもらいたい。


◇千 葉 0−0 磐 田

関係ないけど、サカダイに「3年目体制の理想と現実」みたいな特集で、ジュビロと川崎と大宮が取り上げられていた。躍進・低迷の理由についての分析記事。この中でジュビロに対する論評が酷かった。

買うのもアホらしく立ち読みで済ませたので詳細まで覚えてていないけど、ジュビロの低迷は若手が育っていなくてベテランがいまだ健在、目立った新鮮力は北京世代のカレンだけみたいな扱い。記事を書いているスポニチの記者によると、ジュビロは北京世代の若手の育成を理想に掲げているのに、カレン以外の北京世代の台頭がない現実から苦戦しているらしい。同じ若手でもアテネ世代の菊地、太田、成岡の成長は無視。

ジュビロの試合を見ていれば、若手の太田や菊地の活躍がチームを救っているのは明らかだし、成岡や船谷も安定感はないながらもゴールという結果でチームの勝利に貢献している。4-2-3-1が徐々に噛み合って来たのも、ベテランの力だけでなく、1トップで楔をしっかり落とせる前田と、トップ下でシャドープレーをする成岡の影響が大きい。83・84年組みの選手の成長を無視して、北京世代がレギュラーでないから若手が成長していないなんておかしすぎる。ベテランへの依存は守備陣だけで、攻撃陣はむしろ若手中心。

この記者は北京世代がベテランを超えられていないのを問題視しているようだけど、カレンや岡本は81年生まれの前田、上田や中村は84年生まれの菊地や成岡を超えられないから試合に出れないだけで、ベテランが健在だからという理由だけではない。以前に比べて、中山や名波への依存度はかなり少なくなってきている。サイドで藤井が出れないのも83年生まれの太田がいるから*6

低迷の理由は北京世代の伸び悩みにするのは的外れ。ジュビロの低迷は若手が成長していないからではなく、監督がシステムを開幕1試合で変更してぶっつけ本番で試合に挑んだり、新システムのポジションに必要とされる資質と選手の特徴を見極められず、適正外のポジションで選手を起用し続けていた事が大きい。他には攻守に渡る組織力のなさ、戦術の浸透度、選手の運動量のなさとか。

大宮と川崎については、ピッチ上の問題について書いているのに、ジュビロについては北京世代を低迷の理由にした的外れな意見が大半。ピッチ上のチームの機能性には一切触れていない。サカダイは見る目のないスポ新記者に特集記事など書かせない様お願いしたい。

◇名古屋 0−2 川 崎
[得点]16分:谷口博之、56分:我那覇和樹

玉田の1トップは明らかに向いていないと思うんだが。

◇京 都 1−2 鹿 島
[得点]10分:青木剛、84分:田代有三、89分:松田正俊(京)

◇G大阪 1−0 F東京
[得点]35分:マグノ・アウベス

◇福 岡 2−0 新 潟
[得点]41分:グラウシオ、89分:アレックス

◇大 宮 2−2 大 分
[得点]14分:小林大悟(宮)、31分:トゥーリオ、36分:森田浩史(宮)、89分:オウンゴール

*1:まあBS1いわくセ……6バックだったとこもあるけど。

*2:1トップを一人のCBがマークして、もう一枚は余る。サイドは相手SHに合わせる変則的SB。

*3:これは1トップのジュビロ戦の途中にも似た様な4バックにして、その後に相手の監督の対応力のなさもあって見事に逆転した。

*4:この傾向について思い当たる理由は幾つかあるけど、それはまた後日。

*5:逆にこのチーム状況でワンチャンスをモノにして一点取った決定力は凄い。

*6:監督は太田を干して藤井をサイドに使うことも当初あったけど、全く機能していなかった。