準々決勝セカンドレグ

予告した準々決勝の戦評は、1度書いたのにエラーで全て消えてしまったのと、週末の人間力ショックで更新できませんでした。すみません。とりあえず雑感だけでも。
準決勝はちゃんとやりたい。


ユヴェントス 0−0 アーセナル
2試合合計2−0でアーセナルが準決勝進出

アーセナルの守備が良かったのもあるけど、ユーベの攻撃に迫力がなさすぎ。ヴィエラを出場停止で欠いて、ゲームをコントロールする事が全く出来ていなかった。そして引き気味の相手の相変わらずの工夫のない攻め。ほんとがっかりさせられた。まあ、一回戦のブレーメン相手に内容的には負けていたのでこの結果は妥当か。フィジカルサッカーの限界だ。

ユーベは強烈なプレッシングからのショートカウンターが機能しているうちは強いけど、フィジカルコンディションが落ち込むと単に守備が強いチームに過ぎない。セリエAでは開幕ダッシュのアドバンテージを活かして圧倒できるけど、ここ数年はシーズン終盤になるといつもコンディション低下の影響が大きくでCLで勝てない。主力のコンディション不良や怪我で情けなく敗退するのは、デポルやリバプールに完敗したここ数年のCLと流れはほとんど同じ。

工夫のない攻撃が、相手の組織化されたラインコントロールに苦しめられるのも同じ。アーセナルオフサイドトラップに何度引っ掛ったのか。一昨年・昨年のCLのデポルやリバプールにも何度もオフサイドを取られたし、GKのワンミスのおかげで勝てた一回戦のブレーメン戦もそう。セリエAでは組織化されたラインコントロールオフサイドトラップを多用してくるチームはほとんどいないけど、多様なサッカースタイルの集まったCLだとそうはいかない。それに審判にオフサイドを見逃してもらえるセリエAと、ユーベの権力の及ばないCLは事情が全く違う。組織化されたラインコントロールを打ち破る変化のある攻撃が身に付かないと、いつまでたってもCLでは勝てないでしょう。
近年の欧州サッカー最先端の潮流は、主導権を握って主体的に崩すポゼッションサッカーと、守備を固めてカウンターを狙えるサッカー、そのどちらにも対応可能な戦術的柔軟性をもったチームが強い。守備でも、プレッシングで高い位置でのボール奪取も可能なら、相手を引き込んでスペースを突くことを狙ったリトリート主体の両方。現に今年のバルサは、去年までの攻撃的なポゼッションサッカー一辺倒から、引いてカウンター狙いのサッカーもするようになった。アーセナルもそうだし、ミランは安定感はともかく元々そういうサッカーをいち早く志向していたチームの一つ*1。ユーベはそれに対応出来ていない。

とりあえずリアクション的なショートカウンターだけでなく、相手が引いたときに、主体的な攻めが構築できる人材が必要。左のネドベドが衰えて*2、右のカモラネージも不振なので*3、攻撃に彩りを加えられるMFの補強は至上命題でしょう。デル・ピエロも年齢的に厳しくなってくるし、ズラタンがこのまま絶不調*4ならFWの補強も必要。そしてキエッリーニやゼビナなどが頼りない両SB*5ザンブロッタが復帰すれば片方をやるとして、もう片方のSBは補強が必須。出来れば若手CBも。これらがユーベの補強ポイントでしょうね。

アーセナルは初のCLベスト4進出。第1戦の時に書いたように、懸念だった守備の安定が大きい。凡ミスを多発していたレーマンの安定と、センデロスとエブエの急成長、コールの穴を埋めたフラミニのユーティリティ性、今や欧州屈指のCBとなったトゥレの存在感。この4人がこの試合のようなラインコントロールをするとは、今シーズン開幕前は想像も付かなかった。そしてチーム全体の守備意識も素晴らしい。プレッシングとラインコントロールに連動性がある。

シーズン通して苦しめられたヴィエラの穴も、セスクの成長*6で目処がついたし、アンリが1トップの4-5-1という新システム、全体がリトリートしてカウンターを狙う新戦術も噛み合っている。ポゼッションとカウンター両方を使い分けられる戦術的柔軟性を身に付けつつあるのは大きな強み。そして欧州でも際立つ主力選手の平均年齢の若さ。この大会だけでなく、数年後の未来はさらに明るい。アンリ残留前提で。

ただこのチームの今シーズンの成功は、CL出場権を獲得するかに懸かっている。すなわちCL制覇、もしくはプレミア4位以内。CL出場権を逃してしまうと、アンリやアシュリー・コールら主力選手が移籍してしまいそうだし、CLテレビ放映権が貰えず財政的にも苦しくなって、せっかく世代交代が成功しつつあるチームを、また作り直さなくてはならない。最近のプレミアでは宿敵マンU*7では敗れ、格下ポーツマス戦では痛恨のドローと、若いチームだけにまだ安定感はない。CLだけでなく、プレミアシップの動向にも注目だ。

バルセロナ 2−0 ベンフィカ
[得点]19分:ロナウジーニョ、89分:エトー
2試合合計2−0でバルセロナが準決勝進出

アウェーゴールルールがあるので、バルサの2点目が入るまで緊張感のある試合だった。PKを外すという悪い流れの中、それでも突き放して勝利したバルサは確実に強い。ベンフィカリバプールに勝ったのはフロックではない、なかなかの堅守を誇る好チームだった。
昨シーズンまでのイケイケな姿勢とは一変して、今年のバルサは慎重な試合運びを身につけている。ポゼッションとカウンター、プレッシングとリトリートの両方を使い分けられる戦術的柔軟性を身に付けつつあるのは大きな強み。
その変化がミラン相手に吉と出るか凶と出るか。昨シーズンのCLグループステージでの2戦は、攻めるバルサと守るミランの構図が明確な好ゲームだった。特にロナウジーニョネスタエラシコで振り切ってミドルシュートを決めた2戦目。準決勝はそれに匹敵する名勝負を期待したい。


ACミラン 3−1 リヨン
 [得点] 25分:インザーギ、31分:ディアラ(リ)、88分:インザーギ、90+3分:シェフチェンコ
2試合合計3−1でミランが準決勝進出

試合終了間際まで、流れは確実にリヨンのものだった。それを打破したシェフチェンコピッポというストライカーの個の力。特に怪我から復帰後のスーペル・ピッポの神通力は凄まじい。アズーリ復帰も確実でしょう。これで選ばなかったらリッピは信用できん。
第1戦の序盤と第2戦の試合終了間際以外の大半の時間はリヨンペースだったのに、それでも勝者になってしまうミランの勝負強さは流石。これがCL上位常連の力か。今シーズン通してけして好調とはいえないミランだけど、これで勢いに乗ってしまった感はある。
次のバルサ戦は楽しみすぎ。どちらが勝っても良いけど、名勝負を期待したい。バルサは怪我人が多発しているので、ミランにも付け入る隙があるはず。

  • リヨン

リヨンは素晴らしかった。初戦はジュニーニョ、第2戦目はチアゴと、中盤の核を欠きながら、CL上位常連のミラン相手に互角以上の勝負。世界中に敗れてなお強しを印象付けたと思う。試合終了間際のハイボールの処理ミスが痛かった。それを逃さなかったミランを褒めるべきかもしれないが。

この試合ではチアゴを欠いてペドレッティの出来が鍵を握ると思ったけど、ウリエは3センターではなく2センターの4-4-2を選択。2トップはヴィルトールフレッジより少し下がり目で、守備面ではミランの中盤の底でタクトを振るうピルロをケアする形。試合前は少し心配になったけど、ペドレッティは第1戦イマイチだったし、ヴィルトールを下がり目FWにして*8相手の核であるピルロをチェックするという意味でも、このシステム変更は悪くなかったと思う。内容では間違いなくミランを上回っていた。

シーズン当初はル・グエンに代わったウリエの采配が懸念されていたけど、シーズン通してル・グエンの遺産を最大限活用・維持しながら、攻撃で前線の流動性を無くしたぶん守備の安定を図った*9チーム作りは、十分成功の部類に入るものだった。ウリエもチームと同様に株を上げた。かなり見直したというか、過小評価したのは軽率でしたな。
来シーズンは主力の残留に成功さえすればかなり期待出来る。昨シーズンのエッシェンの離脱はチアゴで埋められたけど、今の主力の代えになるような人材は中々いない。特に中盤の底のディアッラは、アンカー役としてビッグクラブから引く手数多。何とか引き止めたい。
主力残留に成功し、効果的な補強も出来たのなら*10、来シーズンは優勝候補となってもおかしくない。それくらいこのチームの完成度は高い。何気に将来有望な若手も多いし。

ビジャレアル 1−0 インテル
 [得点] 58分:アルアバレナ
2試合合計2−2、アウェイゴールルール適用でビジャレアルが準決勝進出

これは実力通りの結果でしょうね。第1戦のビジャレアルは怪我人や出場停止者多発で1.5軍、その状況でインテルはホームで大勝しておく必要があった。第1戦試合開始直後のビジャレアルのゴールが、今考えると大きなものだった。インテルは2点で良しとせず、攻めるべきだったと思う。
リケルメというチーム一の個を最大限活かす組織サッカーでチームとして機能しているビジャレアル。欧州屈指のタレントを数多く有していても、その個をチームの中に最大限に組み込めておらず、個の寄せ集めという印象が強いインテル。そしてビジャレアルリケルメは好調、インテル頼みのアドリアーノは不調。こうなると両チームの差は歴然だった。
第1戦を勝利して迎えて、あからさまに守備的サッカーを志向したマンチーニアウェーゴールに泣いたのは必然でしょう。選手のモチベーションの低さも気になった。

インテルはどこを補強すれば強くなるとかは思い浮かばない。戦力的には先発も控えも欧州最高峰。それなのにセリエAでもCLでも結果が出ないのは、チームとして何か欠陥があるから。組織力を高めなければ、いくらタレントを集めたところで勝てないでしょう。それは過去のインテルの歴史が証明している。
色々噂がでてるけど、マンチーニを首にしても、不調のアドリアーノを放出して、マドリーからモラッティの恋人ロナウドを復帰させても、南米から逸材を高値で買ってきても*11、それこそモラッティがチームを売却しても、そう簡単に事態は好変しないと思うよ。

ビジャレアルはなんといってもリケルメでしょうね。数人に囲まれても物怖じしないキープ力は圧巻。そしてリケルメを最大限活かす為の組織力を有しているのが強み。全体がリケルメの欠陥をよくフォローしている。リケルメという癖のある選手を置きながら、ここまでチームを機能させるペレグリーニの手腕は秀逸。
JFAベンゲルとか金銭的にも実現性でも高嶺の花を追い求めないで、ペレグリーニ(ビジャレアル)、スパレッティ(ローマ)、トーマス・シャーフ(ブレーメン)、リカルド・ゴメス(ボルドー)、ハビエル・アギーレオサスナ)、ラルフ・ラングニック(元シャルケ)、ハビエル・イルレタ(元デポル)、デシャン(元モナコ)など欧州の各クラブで好成績を残した実績のある監督を狙えばいいのに。ベンゲルが駄目なら日本人監督というのは納得が行かない。ベンゲル以外にも優秀な監督は世界中に探せばいるはずだし、早めに唾をつけておかないと次の居所が決まってしまう。レンジャーズ監督に就任したル・グエンのように。



不当に勝利したチームはいない充実したベスト4の面子。嫌いなチームはいないので、決勝カードはバルサvsビジャレアルのスペイン勢対決以外なら何でも良い。バルサvsビジャは毎年のようにやるし、もうすぐリーガでも見れるので、CL決勝でもう一度やらなくても良いかなと。とにかく名勝負に期待したい。

*1:ピルロを軸にしたポゼッションで主導権を握れるけど、得点はアタッカー陣のスピードを活かしたカウンター主体。

*2:この試合のレッドカードは軽率すぎ。最近は全盛期からは信じられないプレーが多い。後継者が欲しいけど、代わりになる人材はそういないのが痛いところ。

*3:ここは獲得内定のマルキオンニとの競争になるのかな

*4:放出は勿体無い。ズラタンは決定力さえ付けば世界最高峰のFWになれる。好調時の足下巧みな懐の深いポストは魅力。アーセナルとかベルカンプの後任に欲しいと思うよ。

*5:キエはまだ若いから上積みが期待出来るとしても、ゼビナの代わりは確実に必要。キエの代わりにパスクワル狙ってるらしいけど、2年連続でヴィオラから左SB奪うのは止めてください。確かにキエト比較にならないパスクの正確なクロスはトレゼゲと相性良さそうだけど。

*6:後方で支えるジウベルトの復調も大きい

*7:これ良い試合だったね。マンUもCL敗退した数ヶ月前より復調しつつある。特にルーニーの充実が凄まじい。解任論のあったファギーもこれで続投決定かな。ここ2年はチェルシー1強体制が続いたけど、アーセナルマンUの復調で、来シーズンのプレミアはかなりおもしろそうだ。リバプールも得点力のあるFWが獲れればおもしろい。スパーズの台頭も著しい。後はニューカッスルが復活すれば良いんだけど。個人的にボルトンはあまり評価していない。戦力を考えると今の成績の素晴らしさは認めるけど、あの放り込みクオリティーは好みでない。

*8:なおかつCFフレッジの起用と、サイドアタッカー2枚を維持する

*9:簡単に書くと、流動的な攻撃は相手にとってマークしにくい利点もあるけど、担当ゾーンを大きく離れて攻撃に加わるので守備、特にカウンターには脆さを見せる。昨シーズンよりリヨンの攻撃に迫力はなくなったけど、その分守備は安定していた。昨シーズンのヴィルトール1トップなら流動性が命だけど、新戦力のフレッジという典型的なボックス型フィニッシャーを活かすにも今の方が合っている。個人的にはル・グエンの方が好みだけど、ウリエの方も悪くなかった。

*10:ハイボールに強いワールドクラスのCBとか

*11:アグエロ、ラファエル・ソビス、ガゴなんていう噂がある