第6節

まあ雑感。

大分トリニータ 1 - 2 ジュビロ磐田
得点者:'56 菊地直哉(磐田)、'78 高松大樹(大分)、'89 成岡翔(磐田)


何とか勝ったけど、試合内容はこれまでと大差なし、1トップの孤立とか、中盤以降の失速とかの課題は相変わらずなので試合内容はスルー。

良かった点は、菊地、成岡、太田というシーズン当初山本監督の構想外だった若手陣の活躍。主力の怪我で出番が来て活躍したのは去年と全く一緒。

新潟戦でゴールを決めて初勝利の立役者になった後もベンチスタートが続いた成岡は、僅かな出場時間で見事に結果を出した。いつの間にベンチが定位置になっていた太田も、アシストや豊富な運動量で貢献。久し振りの先発でまだまだ本調子とは言い難いけど、ぜひ西との共存の道を探って欲しい*1

なにより2ゴールに絡んで守備にも奮闘していた菊地は素晴らしかった。先制点は、自分でサイドの太田に展開した後、そこからオーバーラップして太田のクロスに自ら合わせたもの。今のジュビロの主な攻撃パターンであるサイドのクロスに対し、1トップのカレンはクロスに合わせるプレーが苦手で、トップ下の名波はゴール前にほとんど絡んでこない*2ので、ボランチからの攻撃参加がないとゴール前に人が足りず点が取れない。欠場の福西の代役を見事にこなした。

右の太田からのクロスに対しては、カレンがニアに走り菊地がファーに飛び込むという約束事を選手間で試合前から話し合っていたらしい。適切な攻撃の約束事を何一つ指示出来ていない監督から自立してのゴールは素晴らしいと思う。今の監督である限り、選手が積極的に今の陣容に合った攻撃パターンを話し合って確立しないと攻撃の形はつくれない。今後も各自で個人戦術・グループ戦術を磨いていって欲しい。これはまともなチーム戦術を確立できる監督が来てからも絶対必要だし、日本人の永遠の課題でもある。代表とかもろにこれ。

交代の成岡がいい所で得点を決めてくれて、次につながる大きな勝利だと思います。(中略)
本当にタフなゲームだったと思うのですが、こういう勝ちを次につなげていけるようにしたいと思います。今まで積み上げてきた成果が、間違っていなかったという確信を選手ももったと思います。
http://www.jubilo-iwata.co.jp/live/2006/J060402_723.php

今日の試合な御馴染みの「次に繋がる」発言も不適切ではない。ただ結果を出した菊地、成岡、太田が次からまたベンチスタートでは、この試合は何も繋がっていない事になってしまう。その辺を注視していきたい。
「積み上げた結果が間違いではない」という確信もまだ持てない。たとえこれから積み上げていったとしても、またいつものようにリセットしてしまうんじゃないか、そういう懸念は常にある。なんせ昨シーズンと開幕キャンプの積み上げを、開幕1試合でリセットしてしまった監督ですからねね*3
これで練習試合でゴールを決めた前田が復帰したら、今現在継続中のものに組み込むのではなく、また1から新たなテストが始まる、そんな事はないでしょうね。中盤ダイヤの2トップにするとか言ってるけど、付け焼刃の試みが通用するはずない。一貫性と計画性をもってやってください。

清水エスパルス 2 - 3 ガンバ大阪
得点者:'22 家長昭博(G大阪)、'44 兵働昭弘(清水)、'44 矢島卓郎(清水)、'71 フェルナンジーニョ(G大阪)、'86 マグノアウベス(G大阪)

今節のベストゲーム。大味な試合が苦手でないなら必見。今週は週末から海外まで色々見たけど、エンタメ性ではこの試合が一番だった。

監督の采配や得点経過ごとに試合の流れが一変する、こういう動きの多い試合はおもしろい。本当は試合展開を詳細にレビューしようと思ったけど、時間がなくてまた放置したままになりそうなので、プレーの印象だけを雑に書いておく。

  • ガンバ
  • 家長

序盤は左SB、前半途中からボランチという不慣れな位置で出場。圧巻は先制弾、サイドで森岡を嘲笑うかのような股抜きパスを二川に通し、リターンを受けにゴール前に侵入して(パス出し地蔵になるのではなく、パス&ゴーでゴール前に侵入するイメージがある事が素晴らしい)、狭い局面でワントラップ目をシュートを打てる位置にボールを置き、左足を振りぬいて豪快にゴールに突き刺した。そんじょそこらのサイドアタッカーよりアタッカーらしいSB。半面、守備での不安も目立つ。もっと攻撃的資質を活かせるポジションで見てみたい存在。ルマン松井のような左WGが適所なのでは。

小気味良いドリブルで攻撃の中心に君臨。ゴール付近の狭いスペースで類稀なアイディアを発揮し、何度も決定機を演出した。彼の執拗な中央突破で清水が中央に寄せられ、得点に繋がったサイドからの崩しに好影響を及ぼした。悪癖であるドリブルをこね回すシーンも目立たず。即戦力としてだけでなく、来日してから年々成長しているところが恐ろしい。

前任者アラウージョほどの局面打開力はないにしろ、ワンタッチでシンプルに叩いてから素早くゴール前に侵入するプレーが秀逸。ゴール前の密集地の中、シュートフェイントで間合を外してから、恐ろしい振りの速さでゴールに突き刺した逆転弾は彼の真骨頂。

  • 播戸

献身的な裏へのフリーランで清水のラインコントロールを苦しめ、ガンバの攻撃に深さを与えた。得点こそなかったものの、途中出場のFWとしてとして及第点の出来。ベンチに彼がいるのはガンバにとって大きい。

  • 橋本

攻撃志向が以上に強いチームにあって、その献身的な守備への姿勢が目を見張る。今日はパートナーの明神不在でさらに際立っていた。

ルーキーにいいようにやられた。宮本も4バックでは微妙だし、ガンバが今後も4バックでやるとしたら、高さ・強さ・速さを兼ね備えたCBが必要だと思う。数年後にそうなりそうな若手CBが相手チームにいたが。


この試合でゴールシーン以外で唸らせられたのが、フェルナンジーニョの同点弾が決まる直前、GKからの素早いパントキックを、サイドに流れたマグノがダイレクトでフォローに入っていたフェルナンジーニョに落としたシーン。惜しくも伊東の素早いチェックにあって潰されてしまったけど、このシーンのガンバの早送りのような連動性は素晴らしかった。マグノの落しは彼の技術の高さが集約されている。これで一気に流れがガンバに行って、直後の同点弾に繋がったと思う。

  • 清水

いつのまに若手王国。

  • 矢島

でかくて強くて速い、日本人には珍しいタイプのFW。1点目の起点になったゴール前での突破、シジクレイを振り切ったゴールシーンがハイライト。それだけでなく、豊富な運動量でチェイシングやスペースメイクなど攻守に貢献していた。前半での負傷退場が悔やまれる。プレー精度が安定してくれれば今後に期待の持てるルーキー。清水⇔早稲田の大榎ルートは今後も脅威になるかも。

  • 兵働

ルーキー藤本ばかりに注目が集まるが、2年目のこのレフティもなかなかの逸材。左足でゴール左隅に巻いたシュートは見事だった。静岡ダービーでもやられたし、シュートはかなり巧いね。

  • 藤本

正確な左足のキックだけでなく、タメを作って相手と味方を動かすかのような、先を見据えたプレーが出来るセンスが素晴らしい。終盤は疲れで軽率なプレーが目立った。ところで高校時代はプロからオファーなかったのかしら。大学4年間でもの凄く成長したのか、プロのスカウトに見る目がなかったのか、どちらだろう。

  • 伊東

危険地帯のスペースを埋めるカバーリング、相手の攻撃の芽を摘み取るプレーが素晴らしい。チームを影で支える献身性は際立っていた。

  • 枝村

ミスも目立ったが、攻守にダイナミックな動きを見せた。オフ・ザ・ボールでの意識が強く、パス出し地蔵タイプの多い日本の中央MF陣の中では異質の存在。北京五輪代表の有力なCH候補。

  • 青山

北京世代の若手CBでは個人的にかなり評価している選手。今日も持ち前の対人での強さを見せるも、ガンバの外人コンビには手を焼いた。ただし2年目でこれくらい出来るCBはまずいない。AYやWYは不選出だっただけに、早く国際舞台を経験させたい。



3失点で負けたとはいえ清水も悪くなかった。コンパクトな布陣を維持し、全員が豊富な運動量で動き回り、組織的なプレッシング、サイドを大きく使った攻めで序盤は圧倒。スペースを埋めるカバー、ボールホルダーへのサポートの意識が素晴らしい。前半終了間際の同点後の畳み掛けも若さゆえの勢いがあった。終盤は疲れで動きが止まり、集中力の欠如からガンバに逆転を許し3連敗となるも、悲観するような試合ではなかったと思う。今日はガンバの攻撃陣の決定力が一枚上手だった。これなら昨年のように残留争いはしないと思うけど、運動量豊富なサッカーをシーズン通して続けられるのかという点、そして薄い選手層が気にはなる。

*1:右が90分走れる太田で、トップ下は名波より成岡or西の方が良いと思うんだが。FWとしても西野だったら西のほうを評価する。1トップは無理だが。名波はゲームを落ち着ける役目として後半投入で良いと思う。先発ならボランチで。

*2:というか名波はボールサイドによって組み立てに関与するのを好む選手で、ゴール前に飛び込むタイプの選手ではない。1トップ下には適さない。左サイドの村井も似たような課題がある。

*3:別の確固たる方向性があって4-2-3-1に変更するのは問題ないけど、シーズン前に何も準備しないで即本番でテストするのは異常。