第4節

昨日、書けなかった分。他の試合も順次追記予定。

浦和レッズ 3−0 セレッソ大阪
[得点]47分:小野伸二、57分:ワシントン、79分:闘莉王

試合はレッズの完勝。試合評ではなく不調のセレッソとレンタル中の河村について。

セレッソは優勝争いに最後まで加わった昨年から一転、今年は泥沼の4連敗。単純なミスが多いとか、選手個々の気持ちが不十分という基本的な問題もあるんだけど、戦力的な観点でいえばファビーニョと久藤の抜けた穴が大きすぎ。加えて経験豊富なバックアップの布部も放出してしまった。そしてその代わりとして獲得したピンゴと河村がほとんど機能していない。

       西澤
     森島 古橋
カルロス        河村
    下村 ピンゴ
  藤本 ブルーノ 前田
       吉田

セレッソは1トップ2シャドーの3-4-2-1。攻撃の中継点になれるトップ下を置かないシステムなので前線が孤立する傾向がある。そして中盤でタメを作って攻撃に変化をつけれる司令塔タイプの選手や、独力で局面打開できる傑出した個人技を持った選手もいないので、全体を押し上げてコンパクトにしないと攻撃は巧く行かない。昨シーズンは西澤の高い位置でのキープ力で全体が押し上げられて、シャドー役の2枚も常に1トップをフォローするような位置関係が機能していた。

そして攻撃が前線の3枚だけでなく、ボランチファビーニョや右サイドの久藤の絡みが重要だった。特にファビーニョは自らボール奪取して西澤に楔のパスを当て、その後に一気にサイドのスペースや、サイドに開いたシャドーのスペースを狙って中に上がってくる等、ボランチとしての守備だけでなく攻撃面での貢献も凄まじかった*1。攻撃には右サイドの久藤も良く絡んでいた。

今シーズンは開幕から河村がボランチ、サイドがピンゴ、この試合ではピンゴがボランチ、河村が右サイドだったけど、前線の3枚をフォローする効果的な押し上げがほとんどない。そのため前線の3枚が孤立してしまって、攻撃に厚みが全然なくなっている。西澤、森島、古橋の3人は優れた選手だけど、独力で局面打開するような個人技のある選手ではないので、チーム全体が巧く行かないと光らない。

そして西澤のプレーエリアの問題。今年は徹底したマークにあっているし、チームの攻撃の組み立てがうまくいっていないので、キープ力のある西澤が中盤まで下がらざるを得ないことが多い。これだと最前線の深い位置でタメを作って、そこから効果的な楔を落としていた昨シーズンのようなサッカーは出来ない。西澤がトップ下のような位置まで下がってボールを捌いても前線に怖さはほとんどない。


ジュビロからレンタル中の河村については、開幕から出場した計3試合をチェックしたけど、プレースタイルは良くも悪くも変化がない。予想通りのプレー。ボランチでも右サイドでも、バランスを気にしすぎながら空いたスペースを埋めて、ボールを受けたら横パスかバックパス主体。縦への楔のパスや、自分の持ち場を離れるようなオーバーラップ、サイドでのドリブル勝負など、リスクの高いプレーをほとんど選択しない。守備面ではそれなりの働きはしているけど、大事なところでボールを追わない悪癖も散見される。

今日は右サイド起用だったけど、ボールを引き出す縦への動きや、サイドで一対一の場面で勝負するようなプレーはほとんどなかった。こうなると右サイド攻撃は死んだも同然。というか元々サイドの選手ではない。酒本とか苔口を使った方が良い。

どうやらファビーニョの穴を埋めていない河村は叩かれているようだけど、そもそもプレースタイルが違いすぎるので代わりをやるのは無理。彼をボランチで使うなら、コンビを組む選手は前への推進力のある攻撃的ボランチが妥当。そういう選手とのバランスを考えたプレーならある程度の計算は出来る。下村は良い選手だけど、基本的には守備から入ってパスで展開していって、機を見て攻撃参加するタイプ。ファビーニョとの相性は良くても、河村とはあまり良くないし、逆に下村のやらなくてはならない仕事が多くなりすぎて彼自身のパフォーマンスにも悪影響を与えている。ピンゴにしてもファビーニョのようなダイナミズムのある選手ではない。

セレッソは連敗で監督解任の話が出ているけど、チームの低迷はフロントの補強政策の失敗が大きいと思う。帰国願望のあったファビーニョは仕方なかったとしても、久藤は給与をケチらず残留させるべきだった。たぶん監督を変えてもいきなり良化はしない。まあ刺激によってチームが活性化する可能性は0ではないけど、それは一か八かの賭けのようなものですな。まあ他人事ですけど。

河村はこのままだとシーズン終了後には清水で通用しなかった西野のように出戻ってきそう。

鹿島アントラーズ 3−1 ヴァンフォーレ甲府
[得点]26分:内田篤人、56分:アレックス・ミネイロ、72分:オウンゴール(甲)、76分:アレックス・ミネイロ

高校年代№1右SBだったルーキー内田が大活躍。ハイライトで見ただけだけど、自ら右サイド深い位置でスライディングでボールを奪って、その後にDFを抜いてシュートを打って決めたゴールは見事。名良橋の後継者たる右SBに悩んでいた鹿島としては、争奪戦を制しての内田の獲得はこの上なく大きい。

Q:内田選手の出来は?
「選手個人に対するコメントはなるべく避けているのだが、彼を開幕からスタメンで使うのは宮崎キャンプの時から決めていた。彼は守備もいいし、クロスの精度もあるし、運動量もある。そして、1対1で勝負することができるのが大きなポイントだ。それは今日の試合でも表れていた。日本人は年齢を気にする風潮があるが、我々南米の人間は実力や能力を重視する。彼は信頼するに値するプレーができているから、安心してピッチに送り出せる。彼の存在は今後の日本サッカーにも明るい光だろう。しかし今後は注目されるようになってくるだろうから、その時、いかに献身的に謙虚にできるかが大事になってくる。そんな状況になったらクラブ関係者とともに彼に対していいアドバイスを与えていきたい。
http://www.jsgoal.jp/news/00030000/00030840.html

世界タイトルを制した監督にお墨付きを貰ったのも凄いな。

清水エスパルス 1−2 ジェフ千葉
[得点]29分:阿部勇樹、33分:マルキーニョス(清)、87分:羽生直剛

今シーズン好調の清水のついては、4連勝したらピックアップしようと思ってたけど、バックパスミスを突かれて負けちゃった。
まあプレシーズンの静岡ダービーでも内容が良かったので、この躍進はある程度予想がついた。昨シーズン中盤までの引き篭もり放り込みサッカーからは全く予想できなかったけど、良くここまで立て直してきたものだ。戦術の浸透もあるけど、若手の成長が大きすぎ。
好調の要因として昨年の静岡ダービー第2戦あたりが分岐点だったと思う。あの前の試合までベテランDFラインは低すぎだったし、伊藤と高木のダブルボランチは攻撃面の貢献がほとんどなく、サイドも組み立て能力がないなど、攻撃はサイドからのロングボール頼みで、これは余裕で勝てるかと思っていたら、突然2CBが青山*2+高木になってラインを高く維持してきたし、J1初先発のCH枝村*3が豊富な動きで攻守に貢献するサプライズがあって、サイドのルーキー兵働も正確な左足で組み立てに貢献してゴールまで決めた。こちらはいきなり好調・太田から河村の右サイド起用という弱気策で自滅に近いドロー。思い出したくもない。清水はダービー後にこの路線を継続して天皇杯準優勝、そして今シーズン好調の道をたどっている。
昨年はイルレタ時代のデポルを目指すとか言っていたけど、今は4-4のコンパクトな2ラインできっちり守って、傑出した外人2トップへの素早いダイレクト攻撃と、いつも間にかクーペルのようなリアリズム溢れるサッカーになっている。前の二人にある程度ボールが納まるから、ルーキー藤本に象徴されるように若い中盤が伸び伸びと攻撃に絡んでこれる。守備組織はかなりのもので、中盤はプレッシングがきつくて中々パスを繋がせないし、CBは高くて強いから単純なロングボールは跳ね返してしまう。一旦リードするとさらに堅牢さを増す。こういうサッカーは中々崩れんよ。でも外人FWが怪我したら昨年のような得点力不足で悩むと思う。

大分トリニータ 1−2 横浜Fマリノス
[得点]03分:栗原勇蔵、30分:清水範久、78分:柴小屋雄一(大)

マリノス4連勝。この試合はまだ見てないけど、開幕から3試合見る限り、左サイドでのマルケスマグロンドゥトラのブラジリアン・トライアングルが恐ろしい。守備は元々強いから、攻撃が巧く回りだすと手が付けられなくなる。特に左に流れてからの選択肢の多いマルケスを止めるのはかなり厄介。ドリブルからアシストやシュートと、なんつーかマルケジーニョといった感じだ。
そのトライングル以外の変更点、個人的にけっこう評価しているハユマが控えなのは当初何でだろうと思ってたけど、試合を見ると、左で組み立てる分、右には典型的なサイドプレーヤーのハユマより、中への切れ込みやゴール前でのプレーに幅のある吉田を攻撃に絡ませるという判断ですな。それに伴なって松田の右ストッパー起用も攻撃面を考えての事か。結果がどうあれ狙いが分かる選手起用は羨ましい。ハユマが途中で出てきて走るのも厄介だし。
次節の優勝候補筆頭決定戦といった趣のレッズ戦は注目。これはレビューするよ。レッズも今のマリノスのプレッシングと左サイドの崩しにはかなり苦労しそう。

川崎フロンターレ 2−2 FC東京
[得点]39分:谷口博之、63分:ジャーン(F)、74分:川口信男(F)、85分:中村憲剛

川口が移籍後初ゴール。ジュビロ出身のFWらしい豊富なサイド裏への抜け出しで、見事に途中交代して流れを変えた。ジュビロでは適正の合わない右WB起用で可哀想な面もあったけど、FWで使われればこれ位のプレーが出来るのは妥当。ただ流石にあのゴール前でDFとGKをかわしてゴールを決めた落ち着きと決定力には驚いたけど。クロス精度も向上している。河村とは違いサポにもかなり評価されているようだ。

川口のゴールで2-1でリードして迎えた終了間際、ガーロが増島を投入して3バックというか実質5バックとあからさまに守りにいった。その増島が前に走ったジュニーニョのマークを外してしまい、ワンツーから中村*4に決められた。東京は勝ちゲームを落とした格好。増島は新潟戦では失点を招くミスをしたし、最近のパフォーマンスでは五輪代表レギュラー争いはかなり厳しそう。


東京は昨シーズンから最も変化したチームの一つ。昨年までのプレッシングからダイレクトで素早くサイドを狙うリアクション色の強いカウンター型サッカーから、ガーロ新監督の就任した今年はパスを細かく繋いで能動的に崩していくポゼッションサッカーに転換中。高い位置にサイドアタッカーを置いた4-2-3-1でSBとSHの2枚でサイド攻撃を重視したヒロミと違い、ガーロは中盤ダイヤの4-3-1-2でサイド攻撃はSBのオーバーラップ主体。ルシェンブルゴの直弟子らしいサッカー。攻撃の出発点であるDFラインのビルドアップの仕方を見ても、昨年はボール奪取後に素早く縦へ展開していたのに対し、今年はDFラインからGKを交えて丹念にパスをまわしていくなど、ヒロミとガーロでは監督としてのフィロソフィーが全く違う。どちらが良い悪いではなく。

ここまで昨年までと対照的なサッカースタイルを志向するとなると、フィットするまでにかなりの時間がかかると思う。チームとしてヒロミ路線を継続するなら、スペインからイルレタ系列の監督を呼ぶのが妥当だったと思うけど、ブラジルからガーロを呼ぶとはかなりの賭けに出ましたな。この新しいサッカーがフィットするまで、選手か監督を信じてプレーできるのか、フロントやサポーターが我慢できるかが一つの鍵を握るでしょう。

新生FC東京についてはいずれピックアップしたい。ジュビロにとってはやりやすくなったかな。昨年までのプレッシングからのショートカウンターとサイド攻撃重視の方がジュビロにとっては厄介だったし、ポゼション勝負ならこちらに分がある。
DFラインからの丹念なパス回しを狙ってガンガンチェイシングするのが効果的。DFのビルドアップ能力は高くないし、中盤や前線のポゼッションサッカーをする上でのボールの引き出し方がまだまだ未成熟。攻撃時はポジション変更して間もない左SBの鈴木を狙うのが良さそう。4-3-1-2にありがちなSBの前のサイドのスペースもけっこう空いている。守備時にはボールサイドに人を集めて数的優位を保とうとするから、CBがサイドのボール保持者に対応して、逆サイドがかなり中に絞って守るので、サイドで基点を作ってからのサイドチェンジがかなり有効。というか他チームもこういう対策をしてくるだろう。組織的なプレシングをしてくる先節の清水との相性は最悪だった。

アビスパ福岡 0−1 名古屋グランパス
[得点]35分:玉田圭司

アビスパは良いサッカーしてるようだけど中々結果に出てこないですな。開幕戦で最悪に近かったジュビロにも勝ち切れなかった位なので、良い内容ながら勝ちきれないという展開が続くかもしれない。アジアでいえばオマーンバーレーンのような。

*1:他にも相手DFを引き出すミドルも有している

*2:この2年目のCBは数年後に代表に入ってくるのは間違いない逸材。高さ・強さ・速さと三拍子揃った4バックのCBに向いた選手。カバーリングや足下・ビルドアップが巧くなれば即代表には入れる力がある。というかファンバステンクリンスマンのような若手好きなら呼んでいると思う。北京五輪代表はこの青山と大分の福本で真ん中を組めばかなり強力。WYの時のCBコンビより遥かにバージョンアップしている。これまで中軸だった増島はかなり頑張らないとやばいな。

*3:日本には珍しいプレミア風味のセンターハーフ。攻守に豊富な活動量で貢献が出来て、ゴール前への飛び出しやシュートへの積極性も高い。この千葉戦は怪我で先発を譲っていたけど、2年目で杉山からレギュラー奪取するのは相当なもの。この2人もそうだし、北京五輪世代は有望なMFがかなり多い。センターが2枚だとして誰を使うかかなり悩む。

*4:この選手は知名度低いけどかなり良い。パスが長短とも正確だしスペースを見つけるのが巧い。痩せ身なパサータイプの一般的イメージに似合わず、豊富なクロスオーバーなどかなり走るし。この得点の場面でも積極的な前への進出が実を結んだ。昨シーズンから良かったけど、さらに成長している。