ベスト16第2戦第1日

ユヴェントス 2−1 ブレーメン
 [得点] 13分:ミクー(ブ)、65分:トレゼゲ、88分:エメルソン
2試合合計4−4 アウェイゴールルール適用でユヴェントス

信じられん。ヴィーゼの神が宿ったかのようなスーパーセーブ連発で、ほぼ勝利を手中に収めていたブレーメン。最後の最後になってそのヴィーゼの痛恨のファンブル。衝撃的すぎて言葉にならない。

とりあえずセリエA最強のユーベ相手に、2戦通じて積極的なサッカーを繰り広げたブレーメンは素晴らしかった。ユーベに勝って勢いに乗れば、数年前のCLでアタッキングサッカーが猛威を振るったレバークーゼンの再来になれたかもしれない。少し前まで4-3-1-2といえばミランだったけど*1、今はブレーメンが世界一完成度の高いチームなんじゃないかな*2

この2試合で日本でもファンが増え、「ブンデス・リーガ=時代遅れのドイツサッカー」みたいな一部で抱かれているイメージも覆せたと思う。ここ最近のブンデスリーガと、斜陽のドイツ代表とは全然違うからね。

前線と中盤の完成度は世界屈指。後はオフサイドトラップ戦術の根幹となるハイラインに対応できる世界屈指の快速CBがいれば更なる躍進が狙える*3。高齢のミクーの後継者候補も欲しいかな。日本も4バック+3ボランチでやるなら、ブレーメンのサッカーを見習って欲しいよ。

ユーベは低質な試合内容。これだけのメンツがいるんだから、カペッロにはもっと積極的なサッカーをして欲しい。ブレーメンの巧みなラインコントロールの前にオフサイド16回、セリエAにはゼーマン以外にこんなライン上げてオフサイドトラップをしてくるチームはいないから、かなり戸惑ったんじゃないだろうか。同じく積極的なラインコントロールの前に完封された数年前のデポル戦を思い出した。まあ、こういう試合内容でも勝ち切るのがユーベらしいといえばそうなんだけど。ただし、今日の内容ではバルサに勝てない。

バルセロナ 1−1 チェルシー
 [得点] 78分:ロナウジーニョ、90+2分PK:ランパード
 2試合合計3−2でバルセロナ

事実上の決勝戦。戦前の注目といえば、「チェルシーがアウェーでビハインドを背負う状況下でどのようのリスクを負って攻めてくるのか」、そして「それにバルセロナがどう迎え撃つのか」という点にあった。
ビハインドを背負ったチェルシーが通常時より攻撃的にいく事は容易に想像がついた。焦点は、バルセロナがあくまでホーム仕様のアタッキング・サッカーを貫くのか、または初戦2-1でリードしている状況を踏まえた現実的なサッカーをするのか。そしてバルセロナは後者を選択し、それが試合展開に大きく反映された。

バルセロナ
ビクトル・バルデス;オレゲール、プジョル■、マルケスファン・ブロンクホルストエジミウソン、モッタ■、デコ、ロナウジーニョエトー、メッシ(25分ラーション

チェルシー
ペトロ・チェフ;パウロ・フェレイラ、リカルド・カルヴァーリョ、テリー、ギャラスマケレレランパード、ダフ(58分グジョンセン)、ジョー・コール■(83分フート)、ロッベンドログバ(58分クレスポ

昨年、第1戦のアドバンテージがあるのにも関らず、アウェーで信念であるアタッキングサッカーを貫いてチェルシーのカウンターに沈んだバルサ。今年はサイドの裏を突かれた昨年の轍は踏まぬよう、攻撃時のSBの上がりを自重し、ラインも通常時より低めで、第一戦の立ち上がり同様に慎重な試合運びを見せた。

アウェーゴールによって、たとえ敗れてもチェルシーに2点以上奪われなければ勝ち抜き確定。そういう状況では過度のリスクを犯す必要は全くなく、相手の攻撃をケアする事が最も重要。バルセロナはそれを見事に遂行した。戦術的な柔軟性のある大人のサッカー。イケイケのアタッキングサッカーだけでなく、こういうサッカーも出来るようになったのは確実に進化と言えるだろう。

サイドのスペースを消されたチェルシーは思うように攻められず、時間が経つに連れて焦りからミスも目立つようになる。一方のバルセロナは、激しい中盤での鍔迫り合いの中にあって最後まで落ち着いてた。プジョルマルケスといった守備陣が相手のお株を奪う堅守を見せ、中盤ではデコが攻守両面に抜群のプレーを見せ、特にカウンターを未然に防ぐ守備面での貢献は抜群だった。

攻撃は前線のアタッカー陣中心に攻め、時折りカウンターで勝機を伺う。特にロナウジーニョの個人技は際立っており、単独で相手守備陣を引き付けていた。圧巻は単独ドリブルでチェルシー守備に割って入り、あのテリーを突き放しての先制ゴール。これで実質勝負が決したと思う。メッシの負傷後に急遽投入されたラーションの奮闘も目立った。

ロスタイムのPKはご愛嬌。この試合のスコアはドローに終わったが、トータルではバルセロナの完勝というイメージでリベンジ成功*4。見事準々決勝に進出した。



チェルシーはトップにドログバを置き、左にダフ、右にJ・コール、真ん中にロッベン、ダブルボランチランパードマケレレという、通常時の4-3-3より攻撃的選手を一人増やした4-2-3-1。第1戦の結果を受けて攻撃的布陣を選択したモウリーニョだが、結果的にこれは機能しなかった。

この試合ではいつもの3センターではなく、ダブルボランチの一角に起用されたランパードの守備の負担が大きく、効果的に攻撃に絡む事ができなかった。普通の相手ならこれでも何も問題ないけど、相手はホームのバルセロナボランチとしてまずは守備に気を使わねばならず、本来の攻撃的資質を発揮できなかった。トップ下がロッベンではなく万能型のグジョンセンだったら、彼が状況に応じて守備に下がり、ランパードの攻撃参加をもっと促せたと思う。

また、ロッベンを本来のサイドではなく中央で使ってしまったことにより、前にスペースを得てスピードを発揮するロッベン自身の資質も生きず、バルサの穴であるサイドを効果的に突くことが出来なかった*5

攻撃的な4-2-3-1にするなら、トップ下はウインガーロッベンではなく、狭いスペースでも巧みな技術でビルドアップをスムーズにでき、中盤で攻守両面に貢献できるグジョンセンを使って、状況に応じてランパードとポジションチェンジさせた方が良かったと思う。名将モウリーニョにしては、珍しく策が成功しなかったといえよう。


  • 明暗を分けた第1戦の結果

やはり明暗を分けたのは第1戦の結果だろう。もし第1戦の結果が逆だったなら、バルサはリスクを負ってまで攻撃的に行かざるを得なく、チェルシーのカウンターの脅威に晒されたはずだし、チェルシーはホームで敗れてさえなければ、アウェーの定石通りに守備を固めて得意のカウンターを狙うゲームプランで挑む事ができ、攻めにくるバルサの裏を突く攻撃を披露できたはず。やはりバルセロナが第1戦アウェーでリードした事により、お互いにとって有利・不利が生じてしまい、それが今日の試合内容・結果に現れたように思う。

特にカウンターを得意とするチェルシーにとって、ホームで敗れた第1戦の結果は思いのほか大きかった。チェルシーにとっての今後の大きな課題は、相手に守りを固められてカウンターが効力を発揮しない状況で、どうのように相手の守備を主体的に崩していくか。終盤の切り札が、パワープレー要員としてのフート投入ではどうにも厳しい。資金力には全く問題がないので、モウリーニョはそれを解決するための攻撃的なタレントを獲得し、チームに新たな攻撃的パターンを植え付けてくるんじゃないだろうか。けしてこのままでは終わらないだろう。シーズン・オフは要注目だ。





昨年のような派手な試合展開にはならなかったが、極めてレベルの高い好ゲームだったと思う。両チームを称えたい。

*1:最近のミランは個人技中心で勝っている印象で、組織的な連動性がなくなってきている。FWの裏への抜け出しへのピルロの縦への展開と、カカーの縦への打開力頼み。前線にサイドアタッカーのいない4-3-1-2のサイド攻撃を担うはずのSBも、カフーマルディーニがいないためあまり機能していない。左のセルジーニョは攻守のバランス悪すぎだし、ヤンクロフスキも一向にフィットしない。前線はストライカー型のCFばかりでバランスが悪く、攻撃にバリエーションが少ない。安易なトマソン放出が惜しまれる。ヴィエリとかほとんど意味なかったし。でも個々の能力が圧倒的なので強い事は強い。最近はピッポが凄いし。でもDFラインの若返りは急務だ。このまま放置しておくとマンネリズムで大変な事になるよ。

*2:3センターのバランスがいいし、ボロウスキの積極的な攻撃参加など効果的なポジションチェンジも多くて流動的。DFラインを高く維持してのプレッシングも完成度が高い。前線にサイドアタッカーのいない4-3-1-2のサイド攻撃を担うSBも、右のオボモイェラ、左のシュルツと若いながら素晴らしい(二人とも近いうちにビッグクラブに引き抜かれそう)。トップ下のアシスト王・ミクーの閃き、2トップのクラスニッチとクローゼのバランスも良い。金持ちクラブでないため主力選手の引き抜きが心配だ。

*3:アトレチコペレアとか。それにしてもバイエルンにイスマエル、シャルケにクルスタイッチを獲られたのは痛い。

*4:ただし、第1戦の結果を受けてこういう展開になっただけで(後述する)、両チームの実力差はそこまで思う。

*5:まあ、バルサが巧くサイドのスペースを消していた影響も大きいけど