優勝候補インプレッション

現段階では何とも言えないが、なんとなく優勝争いを展望してみる。これから列強の様相はいくらでも変化してきますが。

  • ◎ ブラジル

選手層は世界1。ロナウジーニョ、カカ、ロナウドアドリアーノを擁す攻撃力は間違いなく大会ナンバー1。前線ではロビーニョ、中盤では世界一のプレスキッカーであるジュニーニョが控えに回る贅沢。グループリーグの組み分けにも恵まれたため、消耗度が少ないままトーナメントを迎えられる。
ただ、過剰な前ががりの姿勢が、カウンターの餌食になりやすい弱点を抱える。ロベカルカフーの自慢の両翼も、全盛期と比べると衰えは否めない。ルッシオ以外のDF陣も安定感がない。ヨーロッパで開かれる大会というのも南米のチームにとってはネック。
だが、そんな不安を吹き飛ばす圧倒的破壊力を、今のブラジルは秘めている。個人技依存という声もあるが、生半可な組織力では太刀打ちできないでしょう。

  • ○ アルゼンチン

南米予選で一勝一敗、実力的にはブラジルと遜色ない。攻撃力では若干劣るも、アジャラやサムエルを擁すCBの質や、チーム全体の運動量豊富な守備意識はブラジルを上回る。神出鬼没のソリンを代表とする流動的な攻撃も相手にとって対応しづらい。
ただ司令塔リケルメを中心に試合を組み立てるため、彼が不調だったりハードマークで消されるとチームが機能不全に陥る。ペッケルマンがテクニカルなOMFをリケルメ1人に頑なに拘るため、アイマールとの共存も課題のまま。そして死のグループでの消耗度も気になる。
好材料として新星メッシの成長力は驚異的で、ブラジルで好調のテベスも怖い。ブラジル以外のポゼッションサッカーのチームに対しては、それを上回る圧倒的なポゼッションと、中盤での強烈なプレッシングは相性が良い。引かれるのは苦手だが、それをこじ開ける高速コンビネーションも魅力。優勝候補一角に異論はないでしょう。


はっきりいって現状では優勝に程遠い。エリクソンの構想は二転三転していて、一向にチームにとって最高の形が見つからない。組み分けに恵まれた予選でも大苦戦。特にポゼッション型の強豪チームとの相性は最悪*1
ただチームのポテンシャルではブラジルやアルゼンチンを上回る可能性を秘めている。3センターなのか、4-4-2のフラットなのか、ランパード、ジェラード、ベッカムアンタッチャブルを、どのような形で共存させるのかが今後の課題。中盤センターの質は世界最高峰、テリーやリオを擁す守備は間違いなく堅固で、ストライカーの決定力も水準以上。そしてヨーロッパ開催のアドバンテージ。
グループリーグは厳しい組み分けだが、1位突破すればトーナメント初戦で最弱A組の2位と当たれるのは運が良い。このままだと難しいが、残り半年でチームの完成度を高められれば栄冠は十分ありえる。

  • △ イタリア

異様に前評判が低いのが気になる。前回大会、そして2年前のEUROを優勝候補として向かえながら、無様に早期敗退してしまったのが影響しているのか。イタリアを救ってきた大舞台で神懸り的な勝負強さを発揮するファンタジスタももういない*2
ただしリッピ就任でチームは生まれ変わりつつある。ネスタカンナバーロブッフォンを擁す守備陣は堅固。世界最高のレジスタであるピルロを軸とした組み立ては、カテナチオからファンタジスタの一撃に賭けていたこれまでのイタリアとは異なる。ジラルディーノやトーニの成長で、ストライカーの手駒も豊富。
グループリーグの組み分けには恵まれなかったが、1位突破すれば数段落ちるF組2位と初戦で当たれる。96年U-21ヨーロッパ選手権を制覇した黄金世代のメンバーが迎える最後の大会。ロッシのような救世主が現れればあるいは。

  • ▲ ドイツ

自国開催の圧倒的アドバンテージ。そして組み分けにも一番恵まれた。勝ち進めば国と一体となって波に乗る可能性がある。ただ選手個々の能力、そしてチーム力自体は大した事ない。特に経験不足のCB陣が不安定。守護神カーンの衰えも否めない。不安要素は大きく、早期敗退も十分ありえるが、優勝もまたありえる。それがドイツ。

EUROで最も良い内容の試合をしていたポルトガルチェコは、イタリア、イングランド、ドイツに勝って躍進する可能性はあっても、優勝となると難しいと思う。逆にドイツはベスト8で負ける可能性も十分あるが、優勝する可能性も僅かながらある。
オランダも優勝は難しいと見る。華麗な攻撃サッカーで大会最高のチームになる可能性はあるが、それで最後まで勝ち切れるかとなると厳しい。それが可能なら、大会最高のチームだった98WCや00EUROで優勝していたはず。あくまで美しく散る、それがオランダ。
主力高齢化で下降曲線をたどるフランス、大舞台で勝負弱いスペインも厳しいでしょう。それ以外のアウトサイダーも、優勝というのはまず無理。94WCのスウェーデンブルガリア、98WCのクロアチア、02WCのトルコと韓国のように、ベスト4に躍進する中堅国もいるかもしれないが、そこまでが限界。やはり優勝経験国が覇権を争う展開になると思う。

*1:自分達がやりたいはずのパスワークで相手の主導権を握られ、高い位置でボールが奪えず、ラインがズルズルと下がってしまう

*2:トッティは大舞台では頼りなく、全盛期を過ぎたデル・ピエロはユーベで控え、カッサーノはローマと契約問題で揉めていて出場機会がほとんどない。