30雑感

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/pride/live/200510/23/index.html
予想以上にイマイチの興行でしたな。実力差が明白なカードが多かったので勝敗予想は全て的中。

戦闘竜 (1R レフェリーストップ) ズール○

ズールでかすぎ。ストップ早すぎ。でも再戦が見たいと問われれば別に…。ズールはPRIDEより谷川Pの方がうまく使ってくれそう。サップ、チェ・ホンマン、曙さんあたりのビッグガイ同士の対戦は映える。PRIDEに必要かどうか疑問だけど、ジャイアント・シウバみたいなものか。

ムリーロ・ニンジャ (1R ヒールホールド) ムラド・チュンカエフ●

他に比べると動きのある試合になり、けっこうおもしろかった。でも2人とも絞って-83kgでやった方が良いかと。ニンジャは絞ればかなり強いと思うんだけどね。

ジェームス・トンプソン (1R TKO) アレクサンドル・ルング●

グダグダの殴り合いの末トンプソンが打ち勝った。2人ともスタミナ切れが早すぎ。巨体のルングも谷川Pの方が巧く使ってくれそう。トンプソンはキャラが浸透してきたのかけっこう受けが良い。

横井宏考 (1R KO) クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン

横井がガードポジションからのオモプラッタでスイープに成功したのは巧かった。ただランペイジはパワーで難なく返してしまう。最後は上になったジャクソンがハリト−ノフのような片腕をロックした体勢からのパウンドでKO。
ランペイジは復帰戦を快勝で飾った。ただ横井からオモプラッタで下を取られるようでは、この先もトップファイター相手にグラウンドで苦労するかもしれない。パワーは魅力的。
横井は連敗で厳しくなってきた。プロレスに専念しちゃうのかな。PRIDEトップファイターとやらず、日本人との対戦ならまだまだやれると思うけど。

セルゲイ・ハリトーノフ (判定 2-1) ファブリシオ・ヴェウドゥム

グラウンドを避けてスタンドで勝負したいハリトーノフと、スタンドは避けてグラウンドで勝負したいヴェウムド。両者の思惑が噛み合わないまま塩判定に。両者とも評価を下げてしまった試合。
ヴェウムドはトップを目指すならスタンド全般を磨かないと苦しい。ノゲイラのようなボクテクや、自らグラウンドに持ち込めるテイクダウン技術が必要。あのタックルではスタンド維持に長けた相手をテイクダウン出来ない。タックルを切られて引き込むだけではどうにも印象が悪すぎる。
勝利したハリトーノフも、打倒ヒョードルにはあまり期待を持てない出来だった。ノゲイラ戦もそうだったように、ガードワークが巧い相手には得意のパウンドも効果的に打てず。得意のはずのスタンドでも圧倒できず、ヴェウムドの下手なタックルにテイクダウンを取られる場面さえあった。テイクダウンを恐れてか打撃も中途半端に。少し底が見えてしまったか。

瀧本誠 (判定 3-0) ユン・ドンシク

両者とも柔道家というバックボーンは同じで、実力は微妙な位置で拮抗。そのためなのか思ったよりはおもしろい内容になった。
でも2人ともまだまだ総合格闘家としては中途半端。投げの攻防ではレベルが高いんだろうけど、総合は綺麗に投げても試合は終わらない。両者とも相手を仕留める決め手に欠ける。打撃と寝技両面を磨かないと、まだまだトップ・ファイター相手には試合にならなそう。
金メダリストの肩書きのある瀧本はDSEにプッシュされと思うので、暫くは組みし易い相手との試合になるんですかね。中途半端な相手との試合は誰も見たくないと思うが。会場のブーイングがDSEに伝わればいいのだけど、お茶の間のことを考えれば必要悪なのかも。

桜庭和志 (1R KO) ケン・シャムロック

桜庭がスタンド打撃で打ち勝って、早めのレフェリーストップもあって見事KO勝利。
桜庭完全復活…というには相手が弱かった。ケンシャムに以前の面影なし。最近の戦績を見る限り、桜庭はもう少し苦戦するかと思ったけど、今日は相当体調が悪かったんだろうか。身体も絞れてなかったし、動きに切れがなかった。
桜庭はシュートボクセ効果なのか、スタンド打撃に向上の跡が見えた。でもそれが即ミドル級トップ・ファイターに通用するかというと疑問が残る。今後はどういう路線を進むつもりなんだろう。やはり1階級落としてウェルター級でやるのが一番と思うが。軽量では92kgほどあったけど、体がだぶついていて明らかにオーバーウェイト気味だった。
やはり桜庭には日本人対決をしてもらたいのだが。マニア間では評価が低そうだけど、まだまだ日本人の中に入れば十分強い方だと思う。田村戦はもう賞味期限切れなので無理にやらなくて良いと思う。

ミルコ・クロコップ (判定 3-0) ジョシュ・バーネット

スタンドでのミルコの圧力に下がっては駄目という格言通り、ジュシュはスタンドでの距離の詰め方が巧みで、ミルコの凶悪な一撃を喰らわずほぼ互角に渡り合っていた。ただし距離を詰めてからテイクダウンを思うように奪えなかったのが誤算か。上になっったチャンスにも、ミルコのグラウンドの成長もあって思うように攻めれなかった。
逆にミルコが上になって、ジュシュが下から凌ぐという予想外の展開も。ミルコはポジショニングやトップキープに格段の進化が伺えるも、下から返そうと狙うジュシュに対して、上から決定打を繰り出す事は出来ず。それでもグラウンドで上になったことは判定に大きな影響を与えた。
試合自体は期待した好勝負にはならなかったけど、両者ともそこまで評価を落とすというわけではないと思う。
ブランク明けにもかかわらず、ミルコの圧力にけして守勢にならずに、巧みに距離を詰めてスタンドで決定打を貰わなかったジュシュの動きは評価できる。ただしミルコのスタンド・レスリングの強さや、ヒョードルの攻撃を凌ぎきったグラウンドの進化は予想を越えていたはず。一年くらい前ならジュシュにも勝ち目はあったと思うけど、ミルコはスタンド命のストライカーから高レベルのトータルファイターへと成長を遂げていた。
ミルコもKO勝ちで再起を飾れはしなかったけど、難敵ジュシュに手堅く勝利したのは先に繋がるはず。ただスタミナの不安は相変わらずだったし、スタンドでの接近戦にも課題を残した。中長距離でのストレートやミドル・ハイキックだけでなく、接近戦でのアッパーやフックも巧く使いたい。打倒ヒョードルにはまだまだ課題があることは確か。ただヒョードルに勝てるとしたら一撃必倒の打撃を有するミルコしか見当たらない。
2人とも次はハリトーノフ辺りとの試合が見てみたいところ。地力を証明したジュシュはPRIDEヘビー級戦線を盛り上げられそうなので、試合が噛み合いそうな相手とぶつけるのも良いかも知れない。

  • 総括

晦日への繋ぎといった印象の興行で、内容はかなりイマイチだった。打倒ヒョードル一番手だったハリトーノフが思わぬ苦戦で評価を落としてしまい、PRIDEではまだフレッシュなジュシュも敗北。ミルコも圧勝で完全復活とは行かなかったし、ヒョードルとの再戦はまだ時期尚早。
ヒョードルの磐石の強さ、そしてノゲイラの強さが相対的に目立った興行だった。でもノゲイラでは相性的にヒョードルには勝てない。これからヘビー級戦線をどう盛り上げていくんだろう。ヒョードルのように傑出した存在は、興行を考えると邪魔な部分もあるのかもしれない。
桜庭が勝って会場もファンも盛り上がったっぽいのが唯一の収穫ですかね。