PRIDE GP 2005

今さらながら。

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/pride/live/200508/28/index.html

ミドル級トーナメント・リザーブマッチ

ボブチャンチンが自らテイクダウンに持ち込む展開が意外というか、墓穴を掘ったというか。中村はタックルが下手だし、スタンドでの総合力ではボブの方が上なんだから、タックルを切ってもグラウンドに行かず、スタンドに徹していれば良かったと思う。でもなぜか得意ではないグラウンドで戦おうとして、上をとってもリバースされて、終始下になって中村ペースで戦う事に。中村もせっかく自分の土俵で戦っているんだから、きっちり一本とって欲しかったところ。
これで実績的にも中村が-93㎏日本人最強ということか。でも、ボブチャンチンに勝ったのにこの盛り上がりのなさが中村の限界だと思った。

ミドル級GP準決勝

絶対王者シウバ陥落。日本人受けを狙った桜庭パフォーマンスの成果は出ず。

アローナが待ちに徹して自分のペースで戦った事が大きかったと思う。シウバも基本的には相手を見てカウンターを狙っていくタイプなので、自分からは仕掛けてこないアローナはやりにくかったはず。
アローナは打撃戦でも致命傷を喰らわないように飛び込まず、けして自分からタックルを仕掛けるようなリスク*1も犯さず、シウバがローや膝でバランスを崩したところを狙って得意のグラウンドに持っていった。
グラウンドで上になったらトップ柔術家であるアローナの方が一枚上手。シウバは上からの攻撃を凌ぐ事は出来ても、下からの効果的な攻めや、めくって下から逃れるような事までは出来なかった。下からコツコツパンチを出すのみで、主導権は終始アローナにあった。
スタンドでは終盤もお見合い状態が長く続いて、アローナの思う壺だった。シウバはスタンド打撃では上回っているのだから、もっとガンガン攻めていく必要があった。ただアローナにはカウンターのタックルがあるので、シウバにしてもテイクダウンを恐れて不用意に打撃で攻めれなかったということか。スタンドでの圧力で勝って何ぼのシウバ、そういう意味でも敗北は必然だったのかも。
このレベルまで来ると、シウバの打撃やグラウンドの粗が目立ったという印象。スタンドで唯一効果的だったローをもっと有効的に使えていれば良かったんだが。最後まで慎重な塩ーナ・モードに入ったアローナを崩す事は出来なかった。こういう戦い方をすればアローナは固い。

序盤は予想外のアリスターペース。打撃でもスタンド・レスリングでもショーグン相手に優位に立って、膝で主導権を握ってテイクダウンを許さない。がぶってのフロントチョークや4点膝などが有効で、このままいけばアリスター勝利は固いと思われたが。
数分経つといつものようにアリスターは失速。これまではスタレスの局面で優位に立っていたのに、次第にテイクダウンを許すようになる。対するショーグンのスタミナは無尽蔵。上から怒涛の打撃ラッシュ。下から攻撃を防いで反撃する手立てはアリスターにはなかった。
リデル戦やホジェリオ戦もそうだったし、アリスターにはスタミナ面にいまだ課題がある。諦めの早いオランダ人特有の精神面の脆さも影響したか。このまま決勝に行ってもアローナに押さえ込まれていたと思うので、この辺が限界だったのかな。3分1ラウンドならミドル級最強かもしれない。まだまだ若いので、課題を克服すれば期待が出来る。

スペシャルワンマッチ

これは実力差がありすぎたか。グラウンドでの技術差は歴然だった。どうせミルコvsヒョードルの前哨戦にするなら、ヴェウムドvsヒョードル弟にして欲しかったところ。
ヴェウムドの実力はまだまだ未知数。強い事は間違いないけど、打撃とスタレスが強い相手をどう得意のグラウンドに持ち込めるかというところ。同じ柔術家のノゲイラよりスタンドの技術は劣ると思う。次はジュシュ、ハリトーノフあたりで。吉田でもいいや。

吉田がアボット相手に予想外の苦戦。でもまあアボットの新の実力なんて興味ない人のほうが多いだろうし、結果的には一本勝ちしたわけだから最低限の役目は果たしたのかな。己の肉体以外の武器である柔道着を使うというのに拒否反応を示す人も多そうだけど。

ヘビー級挑戦を表明した吉田、アボット相手にこの試合内容では、へビー級の猛者を相手にするには厳しいと思う。3強は当然として、ハリトーノフヒョードル弟、ヴェウムドあたりにも勝つのは厳しいと思う。GPとかどうするんだろう。またジャイアント・シウバやキモなんか出番ですかな。そういうのは興醒めするので辞めてもらいたいが、DSEに日本人プロテクトをするなというのは無駄かもしれない。

ヘビー級タイトルマッチ

待望のタイトルマッチ。前評判では、スタンド打撃ならミルコ、グラウンドならヒョードル、スタンド・レスリングで優位に立った方が勝者に近づくという感じだったかな。ヒョードルがテイクダウンに成功すればヒョードルペース、ミルコがテイクダウンを防げばミルコペース。どちらにしろスタンドでの攻防が勝敗の鍵を握る。

序盤はそのスタンドでミルコが主導権を握った。鋭いジャブやミドルキックでヒョードルを苦しめ、接近されても巧く突き放して容易にはテイクダウンを許さなかった。1ラウンド終盤でテイクダウンを許すも、下になってもガードワークを駆使してしてパウンドで圧倒される事なく、足を突き上げたりとヒョードルにペースを握らせない。1ラウンド終了してこれは政権交代もあるかと予感させた。

でもそれ以降はなぜかミルコがスタミナ切れ。本来はスタミナに欠点を抱える選手ではないんだが。慣れない実戦でのグラウンドの局面で予想以上に疲れたというのと、ヒョードルの圧力が他の選手とは段違いだったという事かな。次第に打撃の手数がなくなり、優位になっていたスタンド打撃合戦でヒョードルに押される場面も。テイクダウンも簡単に許すようになり、グラウンドでは防戦一方だった。ヒョードルは最後までペースを落とすことなく、ミルコ相手に多くの局面で優位に立っていた。

ヒョードルの強さには脱帽。まさしく世界最強の名に相応しい。不安視されていたスタンド打撃でも2R以降は互角以上に渡り合っていたし、テイクダウンの攻防やグラウンドでは完全にミルコを上回っていた。なにより一撃必殺のハイキックを持つミルコ相手に、前へ前へと臆せず攻めていける気持ちが凄いと思う。もしもスタンドでミルコの圧力に負けて下がっていたらやられていたはず。そして基本ともいうべきスタミナの差。これを考えと、ホドリゴ・ノゲイラのスタミナは凄いな。

ミルコも立派だった。テイクダウンの攻防に負けてグラウンドに持ち込まれたら、パウンドで圧殺されるという見方が大きかったけど、ガードワークを駆使して最後まで致命傷を受ける事はなかった。ヒョードル相手に見せたグラウンドの技術を見ても、もう確実に総合格闘家でしょうな。キックボクサーの面影は見えない。スタミナさえ途切れなかったらヒョードル超えしていたかもしれないわけで、まだまだミルコには期待出来る。相性的に考えても、ヒョードルノゲイラの間にある差よりも、ヒョードルのミルコの差の方が小さいと感じた。

この試合は緊張感が半端ではなかった。名勝負を見せてくれた二人に感謝。

ミドル級GP決勝

序盤にアローナが、スピンキックを繰り出したショーグンの隙を突いてテイクダウンに成功。隙を狙ってテイクダウンしてから上から押さえ込みと、アローナはシウバ戦と同じ固い戦い方を狙っていたと思うけど、なんとショーグンがオモプラッタを駆使して下からポジションを返してしまった。同じシュートボクセのシウバが打開できなかった下のポジションを、弟弟子のショーグンはいとも簡単に脱出。
そこからは圧倒的なショーグンペース。スタンドではシウバよりも遥かに積極果敢に仕掛けて、オアンチや膝で的確にアローナにダメージを与える。テイクダウンされかけても重い腰で許さず、逆にテイクダウンを奪い返していた。グラウンドでもパスして打撃を繰り出す。踏み付けを交わされても、すかさず鉄槌と容赦なかった。グラウンドでの鉄槌で柔術家のアローナをKOしたのも見事。

同じくアローナと戦ったシュートボクセのシウバと比べて、スタンドでもグラウンドでもショーグンの積極性が目立った。アローナ得意のグラウンドの局面であっても、下から返して攻めにいける技術は圧巻。終始、攻めまくって主導権を握り、アローナに固い戦い方を許さなかった。まだまだ粗いところはあるし、相性の問題もあって一概には言えないけど、既に兄弟子シウバ越えを果たしているかもしれない。

桜庭をボコボコにして、固い戦法でシウバを下したヒール・アローナを、新世代の旗手ショーグンが兄弟子シウバの敵を討ってミドル級GP優勝。良い終り方だったんではないでしょうか。

総括

へビー級とミドル級のトップが決まり、PRIDE戦線も一旦は一区切りついた。ただ今後の展開がイマイチ見えてこない。

ヘビー級はヒョードル最強が確定。3強内での序列も付けてしまって、もう比肩する対戦相手が見つからない。いまだ成長途上にあって底がうかがえないハリトーノフくらいか。彼に勝ったらもう相手がいない。ノゲでは相性的に勝ち目がないし、まだまだハントやヴェウムドあたりに負けるとも思えない。待望論のあったシウバのヘビー級挑戦もGP敗戦で白紙になると思われる。ミルコが王者になればノゲやジュシュとの再戦などで盛り上がっただろうに。更なるミルコの進化と復活に期待したい。

それに比べたら新世代がGP制覇したミドル級の方がまだ見所はあるか。ただトップのショーグンは、既にGPでミドル級トップファイターのジャクソン、ホジェリオ、アリスター、アローナに勝ってしまっている。シウバとの同門対決もワンマッチでは実現性が薄い。日本人エースも中村では華がなさすぎる。

どちらにしろ日本人の出る幕はもう残っていない。それほどPRIDE重量級のレベルは上がってしまった。特に身体能力の差は歴然。これから日本人なしでどう盛り上げていくのか、DSEのお手並み拝見。

*1:タックルを切られてがぶられての攻めを受けたくなかったと思う