セリエA

コッパ・イタリアとプレーアウトも終わり、全日程が終了したセリエA
今年は上位陣中心だけでなく、ゼーマンが就任したレッチェと昇格したヴィオラのおかげでセリエAのテレビ観戦試合数が一気に増加した。超攻撃的なレッチェに比べて、迷走するヴィオラを見るのは楽しくなかったけど。
先日のプレミアに続いて、セリエAベストイレブンと各賞を発表。評価基準はチーム成績と出場試合数を重視。あくまで主観です。残りはリーガ。

GK ジャンルイジ・ブッフォンユベントス

最後尾で抜群の安定感を誇り、ユーベのスクデット獲得に大貢献。元パルマ勢で固められたセンターラインの連係も抜群。

次点は、驚異的な反応速度が今シーズンも健在のジーダACミラン)。

CB ファビオ・カンナバーロユベントス
CB テュラムユベントス

セリエA最小失点でスクデットに貢献したことを評価し、ユーベのCBコンビを選出。カンナバーロは怪我も言えて随所に身体能力を活かしたプレーを発揮。テュラムもCBへのコンバートで輝きを取り戻した。かつてパルマで鳴らしたコンビネーションは抜群だった。
次点は、マルディーニACミラン)、ネスタACミラン)、コルドバインテル)。

LSB ジャンルカ・ザンブロッタユベントス

飛びぬけた印象はないが、フルシーズン継続した活躍で優勝に貢献。サイドならどこでもこなすユーティリティ性も魅力。
次点は、強烈な左足で6ゴールを上げたパリージ(メッシーナ)。クロスも正確。左SBでの出場試合数はそれほどでもないが、大ベテランのマルディーニも良かった。

RSB カフーACミラン

SBながらウインガーのような攻撃参加。中央突破に偏るミランの重要なアクセント。年齢からすると信じられないようなスタミナを保持。
次点は、積極的な攻撃参加が光ったカセッティ(レッチェ)。ゼーマンサッカーに相応しいウインガー然とした攻撃的SB。

DH エステバン・カンビアッソインテル

開幕前は懐疑的な目が大半だったが、インテルの分厚いCH陣の中でレギュラー定着。マドリー時代に見せたテクニカルなプレーだけでなく、不安視されていた守備面で多大な貢献。なぜレアル・マドリーは無料で放出してしまったんだろう。
次点は、今シーズンも走りに走りまくったガットゥーゾACミラン)。

レジスタ アンドレア・ピルロACミラン
レジスタ エメルソン(ユベントス

前者はミランの司令塔として抜群の存在感。守備面でも年々成長。ピルロ不在時のミランを見ると、改めて強烈な存在感が浮き彫りになった。
後者は攻守の切り替えの速さを武器にユーベの攻守の要に君臨。確実な繋ぎを評価してレジスタに分類したけど、潰し屋としての貢献も高い万能型のCMF。
次点は、持ち前のゲームメイクが冴え渡ったピサロウディネーゼ)、高精度のミドルパスを武器に見事復活したヴェーロン(インテル)。

SH マウロ・カモラネージユベントス

豊富な活動量で攻守に多大な貢献。得意のドリブルも冴えていた。活動区域はサイドだけに留まらず、中に絞ってのプレーも的確にこなした。
SH不利の3センター全盛の時代にあっても、カモラネージや、ベッカムゼ・ロベルト、ソリン、ゼンデン、ベルガーなど、CH起用時も機能しながら攻撃においてサイドに厚みを持たせられるSHタイプは今後も重宝されていきそう。
次点は、左サイドで好プレー見せたヤンクロフスキー(ウディネーゼ)、万能型のスタンコビッチインテル)。ただし二人とも安定感に欠けた。

トップ下 カカー(ACミラン

衝撃的な活躍をした昨シーズンほどでないにしろ、ミランの決定機を多く作り出した。カウンターの際のボールを運ぶ縦への速さは圧巻。得点は7と昨シーズンより減ったが、ラストパスの精度は上昇した印象。
次点はトッティ。相変わらずゴールに直結する無駄の少ないプレーで得点に多く絡むも、昨シーズンと比べると12ゴールは物足りなさが残る。精神的未熟も相変わらず。攻撃的MFとカテゴライズするとネドベド(ユーベ)も候補。怪我による離脱時期があったのがマイナス。

FW ズラタン・イブラヒモビッチユベントス
FW アルベルト・ジラルディーノパルマ

前者は、驚異的な足下のテクニックとフィジカルの強さを武器に、セリエA初シーズンとは思えない大活躍。決定機を多く外した印象は強いが、それでもチーム最多の16ゴール。前線で張ってのポストプレーや、トップ下の位置に下がってのチャンスメイク、サイドに流れてのドリブル突破と、オールラウンドな能力を如何なく発揮。従来の大型FWの器には全く当てはまらない新世代のアタッカー。
後者は、ボロボロのチーム状況の中で孤軍奮闘。DFを背負った状態から素早く反転してのシュートは絶品。ノーマークだった昨シーズンとは違い、今シーズンは他チームから厳しいマークを受けたのにも関わらず、昨シーズン同様の23ゴールは立派。ボローニャとの降格をかけたプレーアウトでも値千金の追加点。ビッグクラブへの移籍は確実。
次点は、得点王のルカレッリリボルノ)、終盤の怪我が惜しまれるシェフチェンコミラン)、復活したモンテッラ(ローマ)。得点王のルカレッリを外したのは、ジラルディーノの方が能力的に上だと思うから。リボルノの試合もそこまでチェックしてないし。前半戦限定ならアドリアーノ
FWというよりウインガーだが、スピードとスペースへの侵入を武器に16得点を上げたエスポージト(カリアリ)も入れておきたい。

4-3-1-2 

     ジラルディーノ
             ズラタン

          カカー
 
    カンビアッソ   エメルソン
          ピルロ

ザンブロッタ              カフー
       テュラム カンナバーロ


         ブッフォン

首位ユーベから6人、2位ミランから3人、3位インテルから1人、それ以外から1人。うーん、ユーベ+ミラン連合軍という面白味のないメンツになってしまった。それだけこの2チームが突出していたということ。誰が選んでも似たようなメンツになるでしょう。
ピルロとエメルソンはどちらも入れておきたかったので、最優秀SHのカモラネージは惜しくも選出外に。

    • 各賞発表

最優秀選手賞 カンナバーロ(ユーベ)

新加入ながらDFの要に君臨し、全38試合に全てフル出場したことを評価。近年の不振を覆す完全復活を遂げ、低条件で放出したインテルを見返した。抜群の身体能力を活かした一対一の強さや高さは健在。
次点は、新加入ながらユーベの攻撃の中心に君臨したイブラヒモビッチ、ユーベの攻守の軸となったエメルソン。前者はラフプレーでの出場停止、後者は股関節痛でのパフォーマンス低下時期があった点がマイナス。

実質セリエA初シーズンの二十歳以下で、シーズン通して活躍した選手となると意外と少ない。ボジノフヴチニッチは資格外選手。
となると、CL圏内に入ったウディネーゼで、28試合に先発して安定した守備を見せたCBのフェリペが妥当なところ。ブラジルでストリートサッカーをやっているところをウディネーゼがスカウトしたらしい。流石。センシーニの後継者に納まるどころか、いずれビッグクラブへ巣立っていきそうな逸材。
次点は左サイドからパワフルな突破を見せたLSBのキエッリーニヴィオラ)。プレーに安定感がないことと、チーム順位が悪いのがマイナス。終盤はローマのレギュラーGKに定着した19歳のクルチも期待の存在。

インパクト大賞 アドリアーノインテル

後半戦は調子を崩してしまったが、序盤に見せた怪物的なパフォーマンスには絶大なインパクトがあった。驚異的なフィジカルと破壊的な左足のシュート力は圧巻。大柄な体躯に似合わずスピードとテクニックも高レベルで兼備。プレーが安定すれば末恐ろしすぎる。チームがアドリアーノ頼みになってしまい、酷使せざるを得ないのが辛いところか。
次点はゼーマンサッカーの下で猛威を振るったFWのボジノフヴィオラ移籍後に怪我による長期離脱と、チームの不調に引きずられてパフォーマンスを落としてしまったのが残念。突然、得点力が向上したディ・ミケーレウディネーゼ)も印象的。相変わらず何度か決定機でシュートふかしてたけど。

カムバック大賞 モンテッラASローマ

久々に高性能小型飛行機が故障なしでフルシーズンを飛び終えた。エリア内での俊敏な動きとゴール嗅覚は世界屈指。トッティカッサーノとのテクニカルな3トップはスペクタクルだった。
次点は、3トップの真ん中*1で高速カウンター攻撃を演出したゾラ(カリアリ)。久し振りのセリエAで類稀な技術が錆付いていないことを証明。
来シーズンは中田がこの賞にノミネートすることを期待したい。

ワースト選手賞 フィオレンティーナの大半

単に悪かったというより、期待外れの選手といえばヴィオラの面々が思い浮かぶ。特に高給・移籍金で期待されて迎い入れられた、レギュラーながら低調なプレーの終始したマレスカ、怪我に苦しんだ中田英ヨルゲンセン。ただし最も駄目だったのは、場当たり的なチーム強化にあたったフロント。このままいくとインテルの縮小版になりますよ。

最優秀監督賞 ファビオ・カペッロユベントス

優勝請負人の本領発揮。あくまで勝利に拘る路線に隙なし。特別好みではないけどね。
次点はウディネーゼはCL圏内に導いたスパレッティ。サッカーの内容も好感度。

特別賞 ズデネク・ゼーマンレッチェ

リスクを恐れぬ超攻撃的サッカーを守備重視のイタリアでやり抜く異色の存在。
極度に高いライン、ペース配分を無視した激しいプレッシング、ゴール目掛けて一気呵成の追い越し、明日の事など何も考えないかのような特攻精神。4ゴールを上げて大勝したかと思えば、5ゴールぶち込まれて大敗。スペクタクルなサッカーで躍進したかと思えば、疲れが溜まる後半戦は失速。そして内容の割りに振るわない最終順位。
かつて猛威を振るったゼーマンサッカーは、この守備重視の時代でも何ら変わっていなかった。かつては時代遅れと揶揄され続けた4-3-3は、時を越えいつの間にか欧州最先端モードへ。トップ下とサイドウインガーを使わないのも共通点。
ボジノフヴチニッチ、ジャコマッツィ、レデズマ、ダッラボーナ・・・。ゼーマンの下で若手が軒並みブレイクしたのも相変わらず。かつてはトッティを育て上げた名伯楽、若手を育成する事にかけてはいまだ天下一品。成長にはリスクチャレンジが重要ということですな。どこかのユース監督に教えてあげてください。マジで日本に来て欲しい。オシムとの対決が見てみたい。

  • 今シーズンブレイクした選手達

         ヴチニッチ
    マキンワ       エスポージト

         ブリエンツァ


   ジャコマッツィ    シンプリシオ
          ムンタリ

 パリージ              カセッティ
          フェリペ  

          クルチ

おまけです。こっちの方が新鮮味があっておもしろい。人選上CBが1人の3バックになってしまったけど、そこはご愛嬌。他にはランジェッラ、キエッリーニも期待以上の活躍。

ちなみに昨シーズンは、FWでジラルディーノマルティンス、ファーバ、ボジノフ、カラッチョロ、MFでカカ、マンシーニ、タッディ、サンターナ、レデズマ、DFでキブ、クロルドルップ、ナターリあたりがブレイクした。今シーズンの明暗くっきり。好調を維持するのは難しく、継続して活躍した者にこそ一流選手への道が開ける。

今シーズンも昨シーズン同様の大活躍をしたカカとジラルディーノは素晴らしい。着々とフォーリクラッセへの道を歩み始めている。若干18歳で13ゴールのボジノフを筆頭に、驚異的なスピードを武器に11ゴールを上げたマルティンスレッチェの超攻撃的サッカーのタクトを振るったレデズマ、バッジョなしでも12ゴールのカラッチョロも順調に成長したと言える。

モントリーヴォアタランタ)やメグニ(ボローニャ)といった期待のファンタジスタ候補達は、仄かな輝きを垣間見せたもののブレイクするまでには至らず。
ジダンの後継者と期待されているメグニは万年ブレイク候補。ユーベ戦などは凄く良かったのに、怪我が多いなど継続性に欠けていた。ボローニャが降格したためどこに旅立つのだろうか。ビッグクラブより、リーグ・アンで一からやり直すのがいいと思う。

*1:CFが下がり目でワイドに開いた両翼を活かす斬新なカリアリのシステム