堕ちた天使
ラファエル・ファン・デル・ファールトは27日夜、推定550万ユーロ(約7億4,300万円)ほどの移籍金で、ハンブルガーSVと5年契約を交わした。
http://jp.uefa.com/footballcentral/news/Kind=2/newsId=305486.html
もう10年前にもなる欧州制覇の後、セードルフ、クライファート、ダービッツ、デ・ブール兄弟、リトマネンという主力メンバーが次々に引き抜かれた結果、名門アヤックスはかつてない低迷を続けていた。
そんな斜陽を迎えたチームにおいて、00-01シーズンにユースから昇格してきた久し振りの超逸材の鮮烈なプレーは、アヤックスだけでなくオランダ代表においても未来への希望の象徴として期待し続けられてきた。その期待通りに驚異的な得点率でアヤックスを引っ張り、チームをエールディヴィジ制覇に導くと共に、CLでも大躍進の一翼を担った。特に重傷を負うまで開幕17試合で14ゴールを奪った01-02シーズンは圧巻。
そんな活躍から、数年前までは移籍するなら欧州有数のビッグクラブに間違いないと予想されていたが*1、ガラスの膝の影響で度重なる怪我を繰り返していく内に、その輝きはどんどん薄れてしまった。夜遊びを繰り返した結果*2、体脂肪もEUROの時からありえないほどあったらしい。
オランダ代表の中心選手として期待されていたEURO2004でも救世主たる活躍は出来ず、今シーズンはアヤックスでもレギュラーを失っい、スタジアムではファンからブーイングを浴びせられるどん底に陥った。そして今オフ、ドイツの中堅クラブHSVに、約7億円*3で安売りされてしまった。
ただし、シーズン終盤は復調傾向で、アヤックス最終戦となるエールディヴィジ最終節でもゴールを決めるという役者ぶり。今シーズンは覇気のないプレーにブーイングを喰らう事が多かったが、最後は万雷とスタンディング・オベーションの拍手の元チームに見送られた。
彼の魅力は持ち前の華麗なテクニックで周りを生かすことだけはなくて、本質は同じレフティーであるラウールのような得点能力にあると思う。低い位置からエリア内に飛び出してのゴール嗅覚、そして無理な体勢からのアクロバテッィクなゴールには凄みがあった。アヤックスで残した記録を見ても、中盤の選手としては驚異的な得点能力を誇っている。何とかかつて輝きを取り戻して欲しいところ。
これで高原枠であるハンブルガーSVの放映の楽しみも増えましたな。
それにしても、ラフィ、ズラタン、キブ、ファン・デル・メイデといった02-03シーズンCLベスト8の立役者達が、これでアヤックスから概ね去った事になるのか。バレンシア、アーセナル、ASローマと同居した「死の組」を突破し、準々決勝でCL覇者となったミランを最も苦しめた大会ベストチームの一つ。トマソンのロスタイムゴールがなければ、あの若さ溢れる勢いのまま突っ走ってしまったかもしれない。
これからのアヤックスは、以前のチャンピオンズ・カップ制覇後の様に暫くは苦しむんでしょうね。それは資金的に恵まれないクラブがCLベスト8に躍進した時から、半ば決まっていた粗筋のようなものだが。
ただし、欧州最高峰の下部組織を備えるチームのことだから、ユース出身者がまた救世主のように現れてチームを救うことでしょう。それはかつてのラフィのように。現に今シーズンはバベル、マドゥーロといったユース出身の新星たちが続々と出現し、オランダ代表デビューも果たしている。
サッカーの有名な格言に、「試合終了のホイッスルは試合開始の合図だ」というのがある。始まりの終わりは、また新たな始まり。躍進から主力引き抜きという負の歴史が繰り替えされるとすれば、栄光への道もいずれまた繰り返されるのだろう。