ベスト8雑感

  • 守備的にも色々

バルセロナアーセナルレアル・マドリー(このチームは程遠いと思うが)というスペクタクル志向のチームが敗れ、ベスト8にはリアリズム志向のチームが多く勝ち残った。なにやら「守備偏重チームばかりが残ったことで、サッカーから楽しみが奪われた」ような風評を聞くけど、果たしてそうだろうか。
個人的には攻撃的サッカーの方が好みだし、バルセロナの早期敗退は残念。ただCLに楽しみがなくなったわけではない。
バルサなどに比べると、チェルシーバイエルン、ユーベはお世辞にも「攻撃的サッカー」とは呼べない。でも一昔前の引きこもりカテナチオとだいぶ趣が違う。
第2戦、どのチームも多少のリスクを恐れず積極的にプレッシングを仕掛け、ボール奪取後の攻めから得点を奪うような意図が感じられた。リードしてアウェーでの戦いを迎えたバイエルンでさえ、引き篭もる事なく序盤から積極的なプレッシャーをかけてきた。逆にレアル・マドリーは積極的なプレッシングもなく、引き気味に試合を進めるという“らしく”ない弱気なサッカーに終始し、結果敗れた。
ようするに、守備的な(便宜上)サッカーといえども、積極果敢なプレスや、カウンターからの鋭い攻めを擁していなければ、欧州戦線は勝ち抜けなくなってきたということでしょう。攻撃的か守備的かに関わらず、中盤でのボール奪取力は必須項目。中盤でフィルターが効かないと、高いの守備力を有していても失点は必至。高い位置でボールを奪わなければ、攻めもままならない。
マドリーのようにスター選手の調子・閃きに頼ったサッカーもはや時代遅れ。主力のコンディションが悪いだけでチームが瓦解してしまう。マイボール時だけでなく、ボールのない状況でも、全選手が勝利に向かって仕事をこなさなくては勝ち抜けない。
また、一戦目のドログバ退場後のチェルシー然り(これは退場者が出たという状況的に仕方なかったけど)、攻めの意思が全くなく、引きこもって守るだけでも勝ち抜けないでしょう。リード時でもカウンターの脅威がある程度なければ、相手に好き勝手攻め入られてしまう。

  • 戦術的選択肢の必要性

攻撃的にも守備的にも戦える戦術的柔軟性、ホーム・アウェーやスコア差によるゲームプランの的確な選択、そういったモノを“持たざる者”が勝つのは難しくなってきている。守備一辺倒でも勝てないように、攻撃一辺倒でも勝てない。
バルサ、マドリー、アーセナルなどは、良くも悪くも攻め勝つしか出来ない。カウンターの鋭さはあるけど、相手の攻撃を耐え忍んで、引き気味にワンチャンスを狙って戦う事は得意とはしていない。リードした状況でリスク低減を念頭に、落ち着いた試合運びをする面が欠けている。
その点ミランチェルシーは戦術的な選択肢が豊富。リードした状況では無理に攻める事をせず、ポゼッションを軸にリスクを極力排除してゲームを進められる。攻こまれても鉄壁の守備で凌ぎきり、隙を見てカウンター。点が欲しい状況で強引に奪いにいく事も出来る。
とはいっても攻撃的なチームが悪いわけではなく、それはそれで凄く魅力的なんだけど、自分達でゲームを落ち着かせられ、そして動かせるチーム、あらゆる状況に対応できるチームの方がトーナメントで有利なのは確か。
スタンフォードブリッジの死闘でも、チェルシーが仕掛けてきた時間帯で激しくゲームは動き、チェルシーがペースダウンをしたらゲームは割と落ち着いていた(それをロナウジーニョが個人技で破壊したシーンもあったが)。
状況に応じたリスク管理を得意としていて、強烈なプレッシングからの鋭いカウンターを主武器とするチームが「つまらないサッカー」といわれればそれまでだけど、ベスト8に一昔前の引きこもりサッカーを標榜するチームがいないのは確か。得にチェルシーミランは攻めの選択肢も豊富。
引き気味にゲームを進めるにしても、無闇やたらに前へロングボールを蹴りこむなんて事はなく、理詰めのカウンターで意図的に点を奪いにいける組織的な攻撃力、それを得点に結び付けられる個力も有している。チェルシーのダイレクトプレーを基調としたカウンターには美しさを感じるし。
勝ち残ったクラブが、リスクを恐れて下手に消極的になったりしなければ、まだまだCLも楽しめると思います。そして消極的になりすぎたクラブは敗れる運命にあると思う。それにリヨンとか普通に攻撃的で面白いと思うし。


そういえばバルサ、マドリー、マンUアーセナルと、スペインとイングランドを代表するビッグクラブがCL早期敗退。この4つクラブの来シーズンまでに必要な戦力について書いてみるとするか。今度ね。