バルセロナ 2-1 チェルシー

似たようなシステムを採用して、ここまで志向するサッカーに違いがあるのも面白い。
ポゼッションはバルサ68%、チェルシー32%。シュート数はバルサが34本、チェルシー2本。勝ったチームもバルサ。数字だけ見たら一方的な力の差が存在する両者の試合。セカンドレグを待つまでもなく結果は見えているようだけど、全然そんなことはない。バルサ有利とは思うけど、カウンターで1-0勝利して、アウェーゴールで上回って8強進出とか十分ありえる。チェルシー恐るべき。ロッベンがいたら最強だったかも。
バルサにとっては苦い勝利。チェルシー相手にカウンターを恐れることなく、得点を量産できるチャンスなんて今日以外に存在しない。セカンド・レグを見越して、もっと点差を広げる必要があった。スタンフォード・ブリッジでの再戦、アウェーゴールは重くのしかかりそう。
試合は予想通りバルサが一方的に攻める展開。チャンスを次々と作り出し、先制は時間の問題と思ったけど、紙一重のところでバルサの攻撃を凌いでいく内に、チェルシーはどんどん守備が安定してくる。序盤の猛攻を凌ぐと、安全圏でバルサにボールを持たせて、ゴール前にきたボールを跳ね返す。
低く設定した最終ラインと、ゴール前に人数をかけた守備。マケレレを中心にした3センターの守備意識も高く、バイタルエリアに危機を呼び込むスペースは存在しない。攻守の切り替えの速く、とりわけ帰陣の速さは凄まじい。ボール奪取したら即カウンターに移行その後にも備えて攻めには人数を余りかけず、SBの上がりも控えてサイドに封をする。アウェイの定石通り極力リスクをかけない試合運び。
そうこうする内に、チェルシーが電光石火のカウンターで先制。ランパードの見事なロングフィードに、怪我で出場は微妙とされていたダフがオフサイドぎりぎりで抜け出す。最高のトラップからライン際まで独走して折り返し。それをクリアーしようとしたベレッチが痛恨のオウンゴール。ただボールに触らなかったらフリーの相手に渡って結局は失点だった。仕方がない失点。ランパードへのチェイス不足と、高く設定したDFラインの悪い面が出てしまったという事。
その後は序盤にも増して一方的な展開。バルサがひたすら攻めて、チェルシーが凌いでカウンター。先制直後、ドログバがカウンターで抜け出してGKと一対一になるも、シュートミスで追加点ならず。これを確実に決めていたら勝負は決していたな。それ位チェルシーの守備は素晴らしく、あのバルサでさえ得点の匂いが感じられなかった。前半から後半の退場劇まではチェルシーのゲームプラン通り。バルサモウリーニョの術中に嵌ってしまったと思われたが。なんかEUROのギリシャの試合を思い出したよ。
チェルシーペースから一転、後半のドログバの退場劇を呼び水として雲行きが変わる。数的有利でカウンターのリスクがなくなったバルサに徐々に追い風が。攻めの脅威なき守備は崩壊する流れは今年も続くのか。そして冬のマーケットで新加入したマキシ・ロペスの投入が流れを一気に変えた。
3トップの右サイドに位置するスペースキラーのジュリは、チェルシーのうまくスペースを消す守備の前で輝けず。そんな彼と交代したマキシが、ジュリにはない高さとフィジカルを生かしたポストプレーで前線の起点に。ライカールトの采配が大的中。大型CFは、今シーズンのバルサにはなかった新たなオプション。引いた相手にスペースを消される状況の多いバルサにとって、これからも役に立つでしょう。当初は将来に向けての投資の側面が大きいと思ったけど、現時点で使える目処が立ったのは今後に向けてかなり大きい。
マキシが大柄な体躯からは予想もつかない身のこなしから値千金の同点ゴールを決めると、バルサはもうイケイケ。前半の停滞感が嘘のようにシュートを雨あられロナウジーニョの個人技も、ドリブル、ノールックパスと輝きを増してくる。数分後、マキシのシュートに反応してエトーが押し込み逆転。これが狙ったパスだったらマキシは神だけど、流石にそれはないだろう。あのシュート性のボールに反応して追いついたエトーの反応速度が凄すぎだ。
その後もバルサが一方的に攻めまくるけど、追加点は中々奪えない。チェルシーの気持ちのこもった守備は凄い。最後まで諦めずに球際で粘り、シュートには身を投げ出して何とか凌ぐ。カウンターの急先鋒であるドログバを失って攻めることも出来ず、バルサの攻撃をひたすら凌ぐだけ。普通のチームだったら集中力を切らして大敗してるだろうけど、チェルシーはあれだけ攻められながら2失点で凌ぎきった。ゴールマウスを守ったチェヒは、改めて世界最高峰のGKと実感。同じプレミア勢のCL出場チームのGK、レーマン、キャロル、デュデクとは器が違う。特に今節のパフォーマンスは対照的。DFラインの目に陣取るマケレレも化け物だな。
チェルシードログバが決定機を外して、退場までしたのが本当に痛かった。そしてマキシの投入にも対処しきれず。この3点が勝負を分けましたな。ただしアウェーゴールを奪っての最小得失点差での勝利は第2戦に繋がるはず。数的同数なら、あの守備からのカウンターは依然脅威。今日は運がなかった。
一方的な試合のようで、中々見るべきところも多かったかと。かなりおもしろかった。ただ退屈に感じる人も多いかも。一緒に見ていたバルサファンの友人は前半で飽きて寝てしまったよ。チェルシーはけして派手なチームではないけど、相手を封じるあの守備組織は凄いわ。バルサファンにバルサの試合を退屈に感じさせるとはね。今節のCL、同じプレミアでもアーセナルの守備とは対照的。後半を見ずに寝たバルサファンは後悔するように。