アルゼンチン五輪代表

相変わらず物足りなさのあるオリンピックサッカーですが、アルゼンチン代表だけは別次元の強さ。予選3試合だけで言えばオリンピック史上屈指のチームなんじゃないですか(アトランタより前は知らない)。メンツの凄さならアトランタのブラジルやアルゼンチンも凄かったけど、チームとしての完成度ではこちらが遥かに上回る。ビエルサ監督の元、南米予選・コパとほぼ同一メンバーで一貫した組織熟成が図られている。

       テベス

デルガド         ロサレス

     ダレッサンドロ

 キリ          ルーチョ

     マスチェラーノ


 エインセ アジャラ コロッチーニ


       ルクス

今大会の基本システムは3-4-3。相手の出方に応じて4バックに変えることもある。コパからサネッティとソリンが抜けたので3バックに戻した模様。
前線は非常に流動的。ポジションチェンジをしながら自由に攻めを見せる。テベスは中盤まで戻って組み立てに参加し、ダレサンドロも自由気ままに様々な場所に顔を出す。サイドでは、ウイングとサイドハーフの2枚を中心に常に数的有利を保って攻めていく。サネッティとソリン不在で面子が変わったサイドハーフは、右のルイス・ゴンサレスが中寄りでバランスを取って、左のキリが攻め上がることが多い。
相変わらず非常に組織的に優れた素晴らしいサッカー。一人がボールを持ったら、他の選手はパスコースとスペースを作るために猛ダッシュ、味方が空けたスペースには必ず別の選手が進入してくる。選手のパス精度と判断力も秀逸で、人もボールもどんどん動いていく。こうなると容易に相手は捕まえ切れない。そしてゴール前では抜群のアイディアとテクニック。攻守の切り替えも恐ろしく速い。
確固たる組織をベースに、選手個々の圧倒的な個人能力、そこから生まれるポゼッション。守備時のプレスもしっかり出来ていて、相手がボールを持った瞬間に2人3人と囲んでボール奪取。CBも堅固で相手の攻撃を跳ね返し続ける。安易な放り込みは通用しない。フル代表やクラブチームを含めても、ここまで洗礼されたチームは少ないです。

難点は、ボールをキープして、サイドをいくら崩しても、最後の詰めが甘くてゴールに繋がらない試合が多々ある事。フル代表でも圧倒的に試合を支配するも、決めきれずに負けてしまったりする。
悪い時はテベスやダレサンドロを筆頭にコネすぎる事も目立つ。綺麗に崩そうと手数を掛けする嫌いもある。前線はチビ揃いで、空中戦には期待できない。FWも戻って組み立てに参加するので、速攻時にゴール前に人数が足りなくなる事もよくある。遅攻時には前線に後ろから上がってくる選手が多すぎてスペースがなくなってしまう弊害もある。DFの集中力も偶に切れる。
ただし、U-23クラスで負ける要素は少ないし、負けることも許されない。南米予選でブラジルに敗れ、コパでもブラジルを攻守に圧倒するもPK負け*1、準優勝*2と結果を残せなかった。
ビエルサはまさに背水の陣。金メダル以外だったら即解任の可能性が高い。でもこのチームで文句が出るアルゼンチン国民は贅沢。サビオラを先発で起用しない批判も、テベスが好調なんだから仕方がない。無理にCFタイプを2人以上起用してもチームの機能が落ちるのは周知の事実だし、コパ決勝での敗戦*3なんて監督のせいではない。

このアルゼンチン五輪代表はそのまま2006WC、それどころか2010WCに出てきてもおかしくない陣容*4。レギュラーメンバーに割って入れるのは、コパメンバー以外ではアイマールとサムエルくらい。テベス、ルーチョ、マスケラーノといった若手の台頭で、ベロンもクレスポカンビアッソも立場は微妙。リケルメビエルサッカーにはフィットしない。
日本敗退で盛り上がりに欠けるオリンピックサッカーですけど、アルゼンチンは観ておいて損はないと思う。サッカー自体も攻撃的で楽しいし、選手の個人技も世界トップクラス。楽しめますよ。

*1:延長なしなので実質的には引き分け

*2:大会通じての内容は圧倒的

*3:前後半ロスタイムに怪物アドリアーノに2失点

*4:アジャラとキリは無理だけど