ファンタジスタ最後の大舞台

ファンタジスタ。抜群の技術を誇り、想像もつかないプレーで観るものを楽しませる反面、戦術的束縛を嫌い、現代サッカーでの必要性は狭まるばかり。

稀代のファンタジスタであるルイ・コスタが決勝戦での代表引退を表明。かつてヴィオラに所属していた思い入れのある選手なので有終の美を飾って欲しい。ただし最後の晴れ舞台に出場できるとは限らない。
ポルトガルのトップ下のポジションは一つ。そこにはCL優勝チームの司令塔デコが居座る。開幕戦でブレーキだったルイからレギュラーを奪った。ルイにも勝るとも劣らないテクニックを誇り、プレーエリアの広さと運動量では凌駕する。その後の活躍からしてスタメンにデコは当然の人選でしょう。
控えに回ったルイ・コスタ。しかしただのベンチウォーマーのままでは終わらず、点が欲しい状況でのスーパーサブとして大活躍。イングランド戦での自ら持ち込んでの決勝ゴールは絶品。決勝戦でもどうしても点が欲しい状況になったら出番はやってくると思う。抜群のキープ力とキラーパスで攻撃に変化をつけてくれるでしょう。


そしてギリシャにも知られざるファンタジスタがいる。“左足の魔術師”という異名を持つツァルタス。攻撃に関する全てのテクニックに優れていて、特に敵陣を切り裂く左足のキックは絶品。その分フィジカル的に難があって、天才タイプらしい守備意識の低さや波の激しさがあるため、監督からしたら使いにくいタイプ。予選ではエースとして活躍。迎えた年齢的に最後といえる大舞台。しかしEURO本戦では守備的な戦術のためスタメンからまさかの落選。勝ち進んできたギリシャ代表の戦い振りを見る限り、監督のこの決断は正解だった。

しかしこちらもただのベンチウォーマーでは終わらず。終始リードしていた初戦のポルトガル戦では出番はなかったけど、その後は途中出場で攻撃の起点として活躍。リードされていたスペイン戦では、針の穴を通すようなロングパスで同点ゴールをアシスト。攻め手が少ないこのチームに彼が加わると、中盤での展開力が増して、攻撃に彩りが加わる。プレスキック精度も抜群で、セットプレーでは正確なキックで相手チームに脅威を与える。チェコ戦でのデラスに合わせた鋭いコーナーキックは記憶に新しいところ。



2人を投入するタイミングは試合の流れを変えたい状況(リードしていない状況)に限られる。両チームともこの2選手の出番がない試合展開にしたいはず。個人的にはこの2人のファンタジスタがピッチに並んで、両チームとも攻撃し合うような展開も見てみたい。両監督がどういうタイミングで、ある意味扱いにくい部分もある切り札を切ってくるのか注目したい。