準々決勝

3-0というスコアほど、両チームの差は感じられなかった。デンマークはペースを握っていた前半の内に点を取れなかったのが痛い。前半を見る限り、チェコに点が入る雰囲気はあまりなかったのに、後半早々にセットプレーからコラーのヘッド。でかすぎ。点が入る時は呆気なく入るもので、これで流れが変わってしまった。


前半はポゼションで圧倒して攻め込んでいたデンマークだったけど、最後までグループリーグの時の流れるような攻撃の形を作れなかった。

それにはトップのサンド不在が大きかったと思う。今日はトマソンの1トップだったけど、彼は1.5列目の位置から動き回るシャドー役として生きるタイプ。サンドが最前線で体を張ってボールをキープしたり、トマソンの動きやすいスペースを作ったりすることで、トマソンが自由に動けていた。

サンドはFWとして得点力で物足りない部分もあるけれど、このチームの骨格を担う大切な存在。しかしこの試合ではトマソンにその役割が求められてしまい、彼本来の持ち味は出にくい状況だった。最前線でボールを受けてもDFの厳しいプレッシャーでボールを失うことが多かったし、トップ下のC・イェンセンとの連動した動きも見られずじまい。DFが待ち構えている最前線では、トマソンが自由に動くためのスペースは残念ながら存在しなかった。バロシュにコラーがいるチェコとは対照的。

個人技で優位に立てなかったのも痛い。デンマークは何も組織だけで相手を崩しているわけでなく、欧州トップリーグのクラブで中心となって活躍している選手の個人能力による所も大きい。その個人技と組織力とが融合して見事なサイド攻撃を展開していた。

しかしこの試合では、得意のドリブル突破でサイドから何度もチャンスを演出していたグロンキアの調子がイマイチ。波の激しい彼の確変が遂に終わってしまった。サイドからドリブル突破を何度も試みるも、どうも良い時の切れ味が見られない。逆サイドのヨルゲンセンと何度かポジションチェンジして攻めようとする工夫はあったけど、相手の対応も良くてうまく押さえ込まれてしまった。

グロンキアののサイドから崩すことに固執せず、もっとヨルゲンセンを有効活用した方が良かったと思う。早いタイミングでロンメダールに代えるのも一つの手だった。

デンマークはグループリーグ3戦で最も良質なサッカーをやっていたチームだと思うけれど、そのサッカーをやるには多くの運動量を要する。そのため試合終盤にペースが落ちてしまうことが多い。チェコはそれを見越して前半は抑え意味に試合を進めて、後半に勝負をかけて攻めに出てきた。その策が見事にはまった。

チェコがこんなに老獪なサッカーをやるとは、これまでのどこか青かった姿からは想像もつかない。追いつくために相手が攻めてきたらきっちりカウンター。2点3点と畳み掛け、安全圏に入ったらバテタ相手を尻目にウルチカパス。その試合巧者振りは改めてチェコ強しを印象付けた。