GP 2004 2nd ROUND

桜庭和志(判定)ニーノ"エルビス"シェンブリ●
 リベンジ戦。ニーノに多少の成長はあったけど、相変わらずスタンドレスリングと打撃に弱点がある。こういうタイプだと桜庭には勝てない。テイクダウンを取れずに打撃でいたぶられて、ガードへ引き込むしか手はなくなってしまう。
 とはいえ桜庭も怪我の影響なのか衰えたのか、得意の相手に以前のような一方的な展開に出来なかった。引き込まれると防戦一方だし、得意の猪木アリ状態でも膝への牽制蹴りの前にいつもの冴えがない。スタンドではいい打撃も入ってたけど、バックに回られてジャーマン気味に投げられる始末。お世辞にもうまいとはいえないニーノの胴タックルも耐え切れず。柔術家相手には簡単に下にならないのが強みだったのに、ニーノレベルに上を取られてしまった。体勢を入れ替える際も打撃を貰いそうで危なっかしい。それでもニーノにも決め手はなく、スタンド打撃で優位にたった分で桜庭判定勝利。
 有効だったミドルキックとパウンドをもう少し積極的に打っても良かったんじゃないか。ガードの中での攻防は相変わらず進歩なし。ラバーガードには苦しめられていた。でも最後にストンピングを見せるサービス精神は評価したい。もうシウバやジャクソンの相手は当然無理、その下のトップレベル相手にも難しそうだから、同体格の身の丈にあった相手とやって欲しい。-93kgはもうやめとけ。日本人の中ではまだまだ好試合を期待できる選手なんで頑張って欲しい。柔術家相手ではグダグダ判定が目に見えてるんで、極めの強さを発揮できる相手がいいと思う。そろそろ日本人対決が観たい。
〇クイントン"ランペイジ"ジャクソン(KO)ヒカルド・アローナ
 パワーヘッドバッドボム凄すぎ。三角締めを持ち上げて落とすのは良く見るんだけど、あそこまで破壊的で綺麗なパワーボムはそうない。アローナは手を離して受身に専念した方が良かったのかも。アローナ得意の高速タックルからの押さえ込みも、打撃の圧力とスタレスに長けているジャクソンには通じなかったのか。でも引き込んで積極的にガードから攻める姿勢は今までとは違って面白かった。次は柔道家とやって欲しいかな。ランペイジはシウバvs近藤の勝者とタイトル戦。近藤はシウバに勝ってもこんな化け物と戦うのか。
セルゲイ・ハリトーノフ(TKO)セーム・シュルト
 ハリトーノフは本物だった。ここまでだとは思ってなかったよ。一回目のマウントを力づくで跳ね返されても、次はきっちり修正してくる辺りに対応力を感じさせる。あの被マウントからの対応のうまいシュルトを、片腕を膝で固定する変則マウントポジションで押さえ込むのは見事だった。しかも膝で固めた方以外の腕も手首を掴んで自由にさせない。これではシュルト得意の手首を掴んで相手の攻撃を限定させることも、下から強烈なパンチを打つことも出来なくなってしまった。そこからの目を狙った戦慄のパウンドでTKO。
 いまだ底が見えない強さ。ヒョードルノゲイラとの試合が楽しみすぎる。打撃への対応に少し不安があるんでヒョードル相手では流石に厳しそうだけど、決勝ラウンドまでの2ヶ月の間に成長してきそうで怖い。シュルトは良く頑張った。ストライカーらしく立ち技に固執した方が良かったかも。
小川直也(KO)ジャイアント・シルバ
 この盛り上がりが分からない。自分の周りでもシルバは不思議なほど評判がいい。規格外の巨人というのは分かりやすいんだな。
 鮫と金魚の前評判を裏切らない試合展開。倒されてあっさチョークと思ったけど、シルバは予想した以上に粘った。小川も少し手間取ったけど、グラウンドでコントロールしきってマウントパンチ。小川の真の実力はまだ見えてこない。怪我だけはしないでくれ。ヒョードル以外ならそこそこ頑張れそうな気もする。勝つのは厳しいだろうけど。
吉田秀彦(腕十字)マーク・ハント
 総合素人のハント相手にあっさり吉田が勝つと思ったけど、ハントが予想以上に頑張った。腰の強さを発揮したし、吉田のタックルの拙さにも助けられて簡単にテイクダウンを奪われない。吉田の投げを切り替えして上を取ったシーンには驚かされた。そこからパウンドを落とそうとするも簡単に腕を取られかけるのは素人なんでしょうがない。その後も吉田のテイクダウンを潰して上になるも、効果的なパウンドが使えないから攻めあぐねてしまう。結局不用意なパウンドで腕を取られてジエンド。
 ハントは総合での可能性を感じさせた。上になった時に膝で吉田の顔面を固定して対応したシーンを見ると、そこからの展開をしっかり練習していればダメージを与えられたかもしれない。現時点ではグラウンドでは攻め切れないんだから一か八かのスタンド打撃に徹するべきだったのに、なぜかグラウンドで殴りに行ってしまうのは経験不足なのか本能なのか。次はしっかり練習して挑んで欲しい。
 逆に吉田は総合素人相手に少し不甲斐なかった。でもそのおかげで試合はエキサイティングしたので結果オーライかな。これから誰と当てていくんだろう。金魚は勘弁。ジャクソンやアローナのようなトップファイターとの試合も見たいけど、勝てる見込みは薄いんでDSEも組めない。日本人、特に因縁の小川との対決が興味深いかな。グレイシーとやるんだったらまずはダニエル辺りとやれ。
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ(スピニングチョーク)ヒース・ヒーリング
 再戦。試合を見ての通り素晴らしいグラウンドでの攻防だった。スタンドの攻防でも両者の打撃スキルが前戦より向上していて、見ていて小気味いい展開。最後は開幕戦の再現とも言える技でジエンド。ヒーリングは安易にタックルに行き過ぎたかな。
 ノゲイラは強い。グラウンドは勿論、スタンド打撃の技術向上も著しい。でもグラウンドで相手をコントロールしても実力者相手には極めきれないというのは相変わらずで、ヒーリング相手には攻めを凌がれて下になっても危なげないけど、強力なパウンドを持つヒョードル相手には厳しそう。打撃とテイクダウンを連動して仕掛けてくるヒョードル相手に、今日のように上を取るのも至難の業だと思うし。スタンド打撃だけではヒョードルにも遅れをとっていないと思うけど、そこにテイクダウンの攻防を含めるとスタンドの攻防でも不利。打撃も一発があるわけでもないし、やはりグラウンドに勝機を見出すしかないのかな。スピニングチョークのような隠し球が出せれば勝機はあるのかも。柔術の奥の深さに期待したい。
エメリヤーエンコ・ヒョードル(アームロック)ケビン・ランデルマン
 ランデルマンの殺人バックドロップには驚いた。積極的に仕掛ける姿勢には好感が持てる。しかしヒョードルは急角度で頭から落とされていたのにも関わらず、少しもダメージを受けた素振りは見せない。上を取られても落ち着いて対処して、一瞬にして体を入れ替えるうまさも見せ付けた。ランデルマンは上を取られたら万事休す、呆気なくアームロック葬。
 ランデルマンは見せ場を作ったけど、相手が何枚も上だった。スタンド打撃に勝機を見出したかったところか。ヒョードルは磐石。不意の打撃くらいしか負けるシーンは想像できない。残った相手にストライカーはいないんで安泰かな。何が起こるかはわからないが。

――トーナメントの4選手の対戦カードは抽選で行うのですか

 まずはファンの声を聞きたい。ロシア人同士が決勝というのは嫌だと思うので。ここまで来ているのでパッと決めるのもいいと思いますが、ファンの希望に少し耳を傾けたいと思っています
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/pride/live/200406/20/az02.html

GPは3人のシャークと1人のチキンが残った。誰と誰が当たっても興味深い組み合わせ。コメントを真に受けるなら、小川vsノゲイラヒョードルvsハリトーノフかな。