ヘビー級GP感想

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/pride/live/200404/25/index.html

<第1試合>
ヒース・ヒーリング(KO)高橋義生

スタンド打撃合戦から、義生がうまくがぶって膝も、うまく立たれる。フロントチョークを狙うが、ヒーリングがうまく凌いでガードに戻し、最後はインサイドからのパウンド連打でKO。
やっぱり15kg以上の体重差というのは厳しい。打撃でのKOも難しいし、テイクダウンを取るのも容易ではない。タックルをがぶった時にすぐに立たれた事からもパワー差が相当あった。下になったら義生には勝ち目がありません。パウンドも良く見ていたけど、リーチ差がここまであると避け切れない。でも見せ場もあったし良く頑張ったと思う。
完勝したヒーリング。ヘビー級の中でもトップファイターだと思うけど、ノゲイラヒョードル相手では厳しいと思う。打撃、パウンド、関節技のどれも飛び抜けたものがない。優勝への期待は持てないかな。



<第2試合>
セルゲイ・ハリトーノフ(KO)ムリーロ・ニンジャ

ニンジャは増量失敗か動きが鈍い。何とハリトーノフがスタンド打撃で優位に立ち、ボディと顔面をうまく打ち分けKO勝ち。ハリトーノフが勝つとしたらパウンドだと思ってたので驚き。
ニンジャの増量は失敗だったのでは。彼らしさは全然見られなかった。長所の一つであるスタミナが相手より先に切れるようでは厳しい。体重差覚悟の上で、93㎏で戦った方がまだよかったと思う。残念。
一方のハリトーノフは評価を上げた。腰の重いニンジャを払い腰で投げ飛ばすテイクダウンの強さは予想以上。テイクダウンからパウンドで勝負するだけでなく、打撃にも対応できるのは強み。決定打を貰わない事では定評があるニンジャをパンチでKOするとは。ただしリーチとパワーの差に助けられた面もあり、打撃の回転力と防御に課題はある。打撃に一発がある選手相手だと一抹の不安も。2回戦までの成長力に期待。



<第3試合>
ジャイアント・シルバ(アームロック)戦闘竜

テイクダウンを取って上になったのは戦闘竜。しかし身長差のためパンチが顔面に届かない。パスして攻めようとするも、なんとシルバが下からのアームロック。
シルバがベスト8か。次は誰が相手でも厳しいでしょう。体格差的にランデルマンが面白そうだけど、ベスト4には物足りない。興行的に小川でしょうがないのかな。




<第4試合>
セーム・シュルト(腕十字)ガン・マッギー

簡単にテイクダウンしてサイドからマウントを取るマッギーだけど、ここから攻め手がない。むしろ下から殴られガードに戻される。シュルトはそこからうまく十字葬。
シュルトの下からの対応は見事だったけど、マッギーがここまで上になって何も出来ないとは思わなかった。やっぱきっちり一本取ったジョシュは凄かったという事か。シュルトはこのテイクダウンのされ易さでトップクラ相手に勝ち抜いていくのは厳しそう。K-1の方が向いてるかもな。面白みのないファイトスタイルだけど。



<第5試合>
小川直也(肩固め)ステファン・レコ

小川が如何にレコに組み付いてテイクダウンできるかが焦点。開始直後は打撃戦。なんと小川がパンチでダウンを奪い、そのままグラウンドへ。そうなると総合初挑戦のキックボクサーでは成す術もない。パスして簡単にマウントを奪うと、十字、アームロック狙いと畳み掛けて、最後は肩固めでフィニッシュ。
テイクダウン後のグラウンドコントロールは予想の範疇。意外だったのは打撃戦。ダウン直前、レコはテンプルにパンチ貰っていた。何故K-1トップクラスのボクテクを持つレコが小川に打ち負けたのか。やっぱK-1ルールと総合では同じスタンド打撃でも勝手が違ったのかな。単に打撃だけを警戒していれば良いK-1と違い、総合は組み付きやタックルにも気を配らなくてはいけない。そういう意味で踏み込みや相手の打撃に対する反応が甘くなった。小川の打撃テクが一流ということではないと思う。レコに総合初挑戦で普段通りの打撃をやれって言うのは酷かな。小川が強いというより、レコが弱く見えた。体格的にもミドル級でやった方が吉。予想外のしょっぱさだったけど、ヘルニアの影響もありそう。
逆に小川は、楽な相手といえども総合経験を積んでいたのがアドバンテージになった。以前よりは明らかに落ち着きもあったし、伊原ジムに通ってしっかり練習していたのか、割とスムーズに打撃を出せている様だった。10kg以上ある体格差も有利に働いたかな。
見事な勝利だったけど、総合初挑戦のキックボクサー相手に勝利したに過ぎず、これで一躍優勝候補に踊り出たというのはまだ早いと思う。新宿スポーツセンター伝説(寝技世界一を決めるアブダビコンバット優勝の菊田早苗などの現グラバカ中心メンバーがまだ新宿スポーツセンターを借りて練習していた当時、偶々そこに練習にきた小川に寝技で子ども扱いされたという伝説)があるとはいえ、総合で実績のあるトップグラップラー相手にグラウンドで優位に立るかは疑問。マウントからの腕十字の失敗はすぐにカバーできたけど、トップクラス相手なら立たれていた。合間のプロレス参戦もコンディション調整に影響が出るかもしれない。楽しみなの間違いないので、ハッスルで怪我をして棄権なんて止めてくれよ。




<第6試合>
ミルコ・クロコップ(KO)ケビン・ランデルマン

開始直後ランデルマンが組み付くもブレイク。スタンド再開後、ランデルマンのフックでミルコがまさかのダウン。ランデルマンはすぐに追い打ち。インサイドから強烈なパウンドを落としてミルコが失神。レフェリーストップ。
レコが打撃を貰ったのは総合初挑戦だという理由が見当たるけど、ミルコに関しては総合経験が豊富で打撃の攻防も心得ているはず。ストライカーであるボブチャンチン戦も完璧だった。そう考えたからこそ、パンチに優れるランデルマン相手でも打撃で苦しめられる事はないと思っていたし、まさかダウンまで取られるとは想像もつかなかった。最後のパウンドはランデルマンがうまかったわけではなく、ミルコが既に意識朦朧で防ぎきれなかったんだろう。
これまでの相手と違ったのは、打撃だけではなく素早いタックルも兼ね備えている点であろうか。タックルを警戒して下に意識を集中させるあまり、顔面のガードが疎かになった。ランデルマンのタックルに気を散らせておいての顔面パンチ狙いは見事。コールマン達と一緒になって随分研究したんだろう。左キックを出すときに、右手のガードが下がることを読んでいたとか。それを見越しての見事の左フック。ランデルマンがミルコの圧力に負けなかったのも勝利の一因か。打撃を恐れて下がってしまえばミルコの思う壺。自分から積極的にプレッシャーをかけ続けたのが功を奏した。
無理やりもう一つ言うなら、しっかりクラッチしていたのにも関わらず、島田(DSE)にすぐブレイクされたランデルマンに、格闘技の神様が微笑んでくれたということかな。あのままブレイクしなければ、いずれランデルマンの方からスタミナ切れを起こした可能性が高かったのに。
ミルコはK-1で格下マクドナルドにKOされたように、格下相手に集中力の切れから脆いところがあるのは承知していたけど、このタイミングでこの結果とは全くの予想外だった。
ワンマッチならこの大番狂わせを楽しめたところだけど、先のあるトーナメントでやられると多少の興醒めも。勝った選手の実力が未知の存在だったら期待が持てるんだけど、ランデルマンは既に手の内が知られている。ミルコvsヒョードルが一番の楽しみだった人も多いはず。一回戦でミルコが消えるのは正直寂しい。今後のミルコはどうしよう。トーナメント以外なら吉田戦が話題性的にもいいんじゃないだろうか。



<第7試合>
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ(スピニングチョーク)横井宏考

横井の予想以上の頑張りも、最後は自力の差が出たかな。グラウンドでは見事な対応を見せてくれたけど、打撃勝負をされると厳しい。経験不足からスタミナ配分も間違えたか。柔道のバックボーンを生かした投げによるテイクダウン能力は流石だった。若い内から純プロレスに専念しないで、総合格闘技だけに専念していればもっと強くなったと思うと惜しい気もする。リングス時代を見てるだけに、純プロレス参戦は歯痒かった。自分はプロレスも好きだけど、横井のプロレスはそこまでおもしろいと思わない。大谷、田中より明らかに下に見えてしまう。これを機に格闘技興行にも定期参戦してもらいたい。
ノゲイラの4点ポジションから裏返したフロントチョークは見事。あれに似たのをどこかで見たなあ。寝技で極められないと見るや、すぐにスタンド勝負に移行できるのもノゲイラの強み。ただしスタンドレスリングがそれほど強くないのでそれだけに徹しきれない。
ノゲイラはスタンド打撃を磨いているようだけど、一撃でKOするよう打撃ではないのでヒョードルの牙城を切り崩すのは難しいか。ヒョードルからテイクダウンを奪えるようなスタレスの更なる向上が欲しい。横井に下からの攻撃を凌がれただけでなく、上になった時も極められないのは、横井がうまかったのかノゲイラが研究されてきたのか。下からの攻撃を凌がれるのは仕方がないとして、上を取ったらワンチャンスで極めたいヒョードルから上を取れるチャンスなんて一度あるかないかだけに厳しい。



<第8試合>
エメリヤーエンコ・ヒョードル(腕十字)マーク・コールマン

コールマンがテイクダウン取、マウント、バックを奪いチョーク狙い。ヒョードルは凌いで立ち上がる。またもテイクダウンを取るが、最後は下からの腕十字でヒョードル勝利。
両者の持ち味が出た好試合。コールマンは期待通りの仕事をしてくれた。見事なタックルでテイクダウン。下になり、バックまで取られたヒョードルが見れた。さすがMMAレジェンドのコールマン。そこでヒョードルは危なげなく対応。下からの見事な十字まで見せてくれた。磐石です。
ヒョードルに勝つのは残りのメンバーでは難しいかな。スタンド打撃の防御に穴があると思うので、一発入れば何が起こるかは分らないけど。グラウンドでのバランスに優れ、強力なパウンドを持つヒョードルに勝つには、スタンドレスリングの攻防に勝てるのが前提条件。その上で、ヒョードルよりスタンド打撃で優れているか、グラウンドで効果的に攻められる選手じゃないと厳しいのではないだろうか。ノゲイラはスタンド打撃で優ったとしても、スタンドレスリングの攻防で勝てないだろうから厳しい。下になったらパウンドを凌ぐのは難しそう。


雑感
予想外におもしろかったけど、最高レベルとまでいかなかった。生観戦だったらまた違っていたかも。高レベルで実力が拮抗した両者の噛み合った試合がなかったという点が不満。それは準決勝以降の楽しみか。コンパクトにまとまったいい興行だった。
マークハントが参戦するようだけどあまり興味なし。あの打たれ強さは打撃ルールでこそ生きるけれど、極められれば意味がない。腰の強さといっても本職相手には厳しいでしょう。スピードがないからミルコのようには交わせなさそうだし。サップとのK-1ルールでの怪獣対決の方が観たかった。それよりもこれから起こるであろう引き抜き合戦が心配。