改訂版

すてきなせいかつさんの企画

1.「オメガトライブ玉井雪雄
 引きこもりが新人類になり、手に入れた能力でクーデターを起こそうとする無茶苦茶な漫画。作者が伝えたいテーマや思想性を抜きにしても単純に面白かった。各人の能力をうまく生かした展開がテンポよくて爽快感がある。
 特に今年は暴走族の梶君のキャラに尽きる。手に入れた能力で国会議事堂に落書きしたり、モーニング娘もどきとの酒池肉林に利用してしまう梶君。果たして彼は日本初の暴走族出身の総理大臣になれるのだろうか。
2.「G戦場ヘヴンズドア日本橋ヨヲコ
 
 「戦友」というテーマを背景に、漫画家を目指す対称的な二人の青年の成長を描いている。漫画を通して徐々に惹かれあう二人。嫉妬、そして決定的な出来事からすれ違っていくなか、ラストに向かって収束していく2人の想いに感動した。
 一歩間違えたら、寒くなってしまうような青臭い台詞は相変らず。ツッコミどころや惜しいシーンは多々あるのだけれど、それを全て吹き飛ばしていくパワーがこの作品にはある。

 以下激しくネタバレのため注意。
 この物語は町蔵の成長物語としての側面が大きい。道に迷っていた町蔵は、様々な人と触れ合い、色々な出来事を通して成長していく。他人と比較して自分が主人公にはなれないと悩んでいた彼が、悩む久美子に「お前は誰かのものじゃない、お前自身になれ。俺もなるから。」と言えるようになるまで成長する。
 そんな彼が、全てを失いどん底に落ちた鉄男に手を差し伸べるシーンは圧巻。漫画の世界へ足を踏み入れる決意をした町蔵が鉄男に発した「もしお前がもう一度オレを震えさせてくれるのなら、この世界で、一緒に汚れてやる」というセリフをここで再び引用してくる演出が素晴らしい。
 そして最終話、再び道に迷った町蔵に今度は鉄男が手を差し伸べる。町蔵は結局は他人と比較した主人公にはなれなかったけれど、久美子に言った通りの、誰のものでもない自分自身になれたんだと思う。終わりよければ全てよしというが、それに違わぬ見事なラストシーンだった。
3.「最強伝説 黒沢」福本伸行
 今までのシリアスな作品と同じ様な独特の表現やはったりを、凄く小さなスケールの話でやっているギャップがおもしろい。そしてその凄く小さなスケールのことを、主人公の黒沢自身は常に大袈裟で真剣に取り組んでいて、その全てが空回りしているのが笑える。ただ笑えるのではなく少し考えさせられもする。これから黒沢が「最強」になっていく成り上がりの物語になるのだろうか。
4.「エアマスター柴田ヨクサル
 全キャラ総出演のバトルロイヤルが盛り上がっている。誰が勝つかというより、次に誰と誰がが戦うかさえ予測のできないストーリー展開。主人公を中心に進むのではなく、まだ戦っていない好敵手同士が主人公より先に戦ってしまう。そしてその全てが名勝負。毎号ヒキが強く、単純に楽しませてもらいました。
5「HUNTER×HUNTER富樫義博
 有名すぎておもしろくないけど、今年に限ればこれは外せない。これほど次週が楽しみなジャンプ連載漫画は久しくなかった。
 少年誌の予定調和を一切排除した先の読めない展開。味方に都合よく進んでいくご都合主義ではなく、敵側の都合も踏まえているからこそ生まれるシビアな結末。そしてそこから生まれる緊張感。来年もこの作者に騙され続けたい。

その他におもしろかった漫画20作品。

シガテラ古谷実
日常に潜む毒。ヤングマガジン連載。
ホムンクルス山本英夫
トレパネーションとヤクザとロボット。ビッグコミックスピリッツ連載。
「NANASE」筒井康隆山崎さやか
リアリティーのある超能力。別冊ヤングマガジン連載。 
バジリスク 甲賀忍法帖山田風太郎+せがわまさき
忍術大戦。ヤングマガジンUppers連載。
「ギラギラ」滝直毅+土田世紀
ホストの生き様。ビックコミックスペリオール連載。
「甘い水」松本剛
どうにもならない悲劇。別冊ヤングマガジン連載。
20世紀少年浦沢直樹
滅亡への道。ビッグコミックスピリッツ連載。 
狂四郎2030徳弘正也
陰謀渦巻く騙しあい。スーパージャンプ連載。
GANTZ奥浩哉
新宿大量殺人。 ヤングジャンプ連載。
暁星記菅原雅雪
底が見えないSF大作。 モーニング連載。
アイシールド21稲垣理一郎村田雄介
道スポ根。少年ジャンプ連載。
鋼の錬金術師荒川弘
生命の尊さ。少年ガンガン連載。
サトラレ佐藤マコト
葛藤。イブニング連載。  
「GOLD」山本隆一郎
夢と約束。ヤングキング連載。
「フリージア」松本次郎
狂気。IKKI連載。
ドロヘドロ林田球
ワニ男と魔法使いと餃子。IKKI連載。
「SUGAR」新井英樹
ナジーム・ハメド再来。ヤングマガジンUppers連載。
「ASCENE/BSCENE」武富智
恋。ヤングジャンプ他。
「リアル」井上雄彦
車椅子バスケヤングジャンプ連載。
花とみつばち安野モヨコ
もてたい。ヤングマガジン連載。