グループE 第2節

裏・死のグループですね。4チームの実力が拮抗しているので、試合の内容ではこのグループが一番面白い。4試合とも当たり。そして大混戦。ガチンコマッチとなるイタリアvsチェコが今から楽しみだ。

チェコ 0−2 ガーナ
[得点]2分:アサモア・ギャン、82分:ムンターリ

順当に強豪が決勝トーナメント進出を決める中、今大会で初めての番狂わせになった。お互いリスク覚悟で攻め合う熱い試合だった。

チェコ
P・チェフ;グリゲラロゼフナルウイファルシ(66分退場)、ヤンクロフスキポボルスキー(55分シュタイネル)、ガラーセク(46分ポラーク)、ロシツキープラシル(68分シオンコ)、ネドヴェド、ロクヴェンツ

ガーナ:
キングストン;パインスティル、メンサー、モハメドイリアス、エッシエン、アッピアームンタリ、O・アッド(46分ボアテング)、ギャン(85分ピンポン)、アモアー(80分E・アッド)

開始早々の2分、コーナーキックの崩れでチェコのマークがずれた所を、セカンドボールを拾ったアッピアーがクロス。これをチェコのDFがクリアをスカり、ギャンが胸トラップからのシュートで先制ゴール。

その後は一進一退の攻防。お互いに攻守の切り替えが早く、オープンに攻め合う白熱した展開に。ただコラーの不在で、彼のポストプレーから始まるチェコのパスワークは影を潜める。ロシツキーの高速ラン・ウィズ・ザ・ボールなどは流石だったけれど、攻撃は単発的な物が多かった。

65分、アモアがウイファルシに倒されてPK。その上、ウイファルシが抗議して退場。ばか。チェコは数的不利で1点ビハインド、そしてPKという絶体絶命の状況。しかしこのPKをアモアが外してしまい、チェコは何とか首の皮一枚つながった。ただこの退場劇がチェコにとって致命傷になったと思う。

退場で10人。それでも強気なブルックナー。CBが退場したのに、代わりのDFを入れようとはせず、そのままの布陣で戦う。後半開始からアンカーのガラセクも下げていたので、フィールドプレーヤーで守備的なのはCBのロゼフナルくらい。でもブルックナーはこういう強気な采配で何度も奇跡を起こしてきた。

案の定、守備が薄くなりすぎて、カウンターを喰らいくる。チェコはスタミナ切れで足が止まり、逆にガーナは疲れる気配がない。何度もDFラインの裏を突かれ、ガーナの決定機の連続。

それでもGKチェフの神懸かり的なスーパーセーブの連発で何とか耐え抜き、カウンターから何度かチャンスを作る。ここで追いつけていればブルックナーの采配は大当たりだったんだが、シュートが決まらない。結局、守備がGKチェフだけでは耐え切れず、82分、ムンターリが決定的な2点目を許してしまった。

最後もチェコのセットプレーから決定的なヘッドが2回あったけど、ガーナのGKキングストンがスーパーセーブ。そのまま2-0で試合終了。

  • ガーナ

イタリアと決定力以外では互角に渡り合う時間帯も多かったので、強い事はわかっていた。でもまさかチェコをここまで凌駕するとはね。あの暑さの中で最後まで尽きない運動量は大きなアドバンテージ。エッシェンムンタリアッピアーを擁する中盤はパワフル。
ただイタリア戦同様、決定力が低すぎる。前線の選手の身体能力は凄いけれど、シュート精度が低すぎて、数多くのチェンスがゴールに直結しない。そこが課題。今日の勝利は見事だったけれど、難敵アメリカ戦を前にまだ楽観視は出来ない。

4-1-4-1
           ロクベンツ
プラシル  ネドベド       ポボルスキ
             ロシツキー
           ガラセク
ヤンクロフスキ          グリゲラ
      ウィファルシ ロゼーナル
            チェフ

最前線のコラーの正確なポストプレーから始まる攻撃は、コラー不在でいつもの機能性を失った。代役のロクベンツにボールが収まらず、2列目からの飛び出しが連鎖する波状攻撃が繰り出せない。人もボールも動くパスワークが発揮できず、攻撃はいつもより個人プレーが目立った。それでも何度かチャンスを作ったのは流石だったけれど、この試合では決定力を欠いてしまった。その上、退場して10人では厳しすぎる。ブルックナーの采配も今日は当たらなかったけど、この展開では仕方ないでしょうね。チェフのおかげで2点差で済んだと前向きに考えるしかない。

左SHのスミチェルが怪我で帰国し、バロシュとコラーの2トップが怪我、小国チェコにとって代えの利かない主力3人が試合に出れないのは痛すぎる。特にコラーの不在は致命的。次のイタリア戦は、コラーの代役のロクベンツ、DFリーダーのウィファルシが出場停止。崖っぷち。でもガチンコマッチとなるイタリア戦は楽しみ。コラーが何とか復帰してくれないかな。


イタリア 1−1 アメリ
[得点]23分:ジラルディーノ、27分OG:ザッカルド(ア)

これも熱かった。

イタリア
ブッフォンザッカルド(54分デル・ピエロ)、ネスタ、F・カンナヴァロザンブロッタ■、ペッロッタピルロデ・ロッシ(28分退場)、トッティ(35分ガットゥーゾ)、トーニ(61分ヤクインタ)、ジラルディーノ

アメリカ:
ケラー;チェルンドロ、オニェウ、ポープ(47分退場)、ボカネグラ、マストロエーニ(45分退場)、デンプシー(62分ビーズリー)、C・レイナ、コンヴェイ(51分コンラッド)、ドノヴァン、マクブライド

多くの時間帯で、アメリカはラインを高く保って、全体をコンパクトに保ち、中盤での素早いプレスでイタリアを自由にさせない。イタリアは攻撃の中心であるピルロトッティが良い位置でボールを持てるシーンは少なく、裏へのボールもオフサイドにされてしまった。

イタリアは全体的にラインが低めで、厳しいプレスの前にパスも繋がらない。そんなアメリカペースの中、イタリアはセットプレーからジラルディーノのヘッドで先制。この辺は試合巧者イタリアらしかったけれど、5分後にザッガルド*1オウンゴールで同点弾を謙譲。そして直後にデ・ロッシが悪質な肘打ちで退場と、中々ペースを握る事が出来ない。

1人少なくなったイタリアは、不調のトッティに代えて運動量豊富なガットゥーゾを投入。中盤の守備力を維持して、数的不利を感じさせない。

アメリカは数的優位の状況でゴールが奪えない。逆に2人も退場してしまい、後半は数的不利になってしまう。後半はイタリアが攻める時間が多くなり、アメリカはカウンターで対抗するも、どちらも決定機を決められない。両者痛み分けのドロー。

内容的にはアメリカの健闘が光る試合だった。イタリアはビーズリーのゴールが疑惑のオフサイドで取り消された事に助けられた。あれが普通にゴールだったら負けていたな。

  • イタリア

4-3-1-2
     ジラルディーノ  トーニ

           トッティ

    デ・ロッシ      ペッロッタ
           ピルロ

ザンブロッタ               ザッガルド
        ネスタ  カンナバーロ

           ブッフォン

ガーナ戦では攻撃的なモデルチェンジに成功しつつあるイタリアが見て取れたけれど、この試合ではアメリカの厳しいプレスの前に、目指す攻撃サッカーはイマイチ機能しなかった。数的有利となった後半はイタリアが攻め込む時間帯が多かったけれど、オフサイドの罠に簡単に引っ掛る単調な攻撃が目立ち、アメリカの鋭いカウンターの脅威にも晒されてしまった。

後半も9人の相手に攻めあぐねるシーンが目立った。途中出場のデル・ピエロはチャンスに絡んだものの、相変わらずWCでは決定機にシュートを決められない。イタリアにとって、トッティデルピエロの2人のファンタジスタが決定的仕事をしていないのは気になる。特に怪我明けのトッティは本調子に程遠い。トップ下スタメンの彼が復調しないと厳しい。好調ピロル以外に起点が作れれば、イタリアの攻撃はさらに活性化されると思う。

数的不利でガットゥーゾを投入して中盤守備を修正した采配は見事だったけれど、後半は数的有利だったのに、チームで一番得点力のあるトニを下げてしまったり、点が欲しい勝負の場面で切り札インザーギを投入しない*2リッピの采配にも疑問が残った。スペースが空いていたサイドから攻めるというなら、運動量豊富でドリブルのできるカモラネージという手もあった。デル・ピエロへの信頼が吉と出るか凶と出るか。アレが男になるには今大会がラストチャンスだろう。

ドローという結果は最高ではないけれど、D組トップの勝ち点4でトーナメント進出には一歩前進した。ただし優勝候補という前提で見ると、ガーナ戦での好内容から一転、イタリアの評価を下げる試合だったと思う。最後の所の守備は流石だったけれど、ガーナ戦で見せたような攻守の連動性は最後まで見れなかった。

積極的にラインを上げ、中盤での激しいプレッシング、フォアチェックからのショートカウンターで、イタリア相手に自分達のペースで戦った。しかし、相手の退場で数的優位の状況になりながら、不用意なファウルで逆に2人も退場してしまうなど、自滅してしまった感がある。ゴールが取り消されてしまった判定にも泣いた。数的不利の後半での選手の頑張りは見事だったけれど、展開的には勝てた試合だっただけに勿体無い。

ただし、数的不利で押し込まれようと、安易にラインを下げず、鋭いカウンターで脅威を与えるなど、最後までイタリアと渡り合ったのは立派だった。あそこでベタ引きしてしまったら勝ち越されてしまったと思う。運動量でも気持ちでもイタリアを凌駕していた。

アメリカはこのドローで、最終戦にトーナメント進出の望みを残した。チェコ戦の惨敗で評価を下げたけれど、完成された組織力はやはり侮れない。プレスとラインコントロールの連動性は見事。ガーナに勝てば勝ち点6。チェコに3点差で負けているだけに、得失点差がどう影響するか。


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希望はチェコが1位通過、イタリアが2位通過。そして1回戦でイタリアvsブラジルの大勝負が見たい。でも希望通りにはいかないだろうな。やはり主力に負傷者続出のチェコが相手では、イタリアの1位通過が濃厚だと思う。とにかく名勝負製造機のチェコさえ通過してれれば。イタリアもアンチ・スペクタクル志向ではない今大会は応援したいけどね。ガーナvsアメリカ戦の経過次第では空気を呼んで、仲良く2チームとも通過してくれ。

*1:次はザンブロ右で、グロッソ左がいいんじゃないかな。ザッガルドでは攻撃に絡めない。

*2:イヤキンタはDFとの駆け引きに負け、多くのオフサイドを獲られていた。狡猾なインザーギならオフサイドとラップを掻い潜ったと思うが。