磐田vs名古屋

ジュビロ磐田 2 - 2 名古屋グランパス
得点者:'18 楢崎→山口慶(名古屋)、'31 ファブリシオ(磐田)、'66 茶野→前田遼一(磐田)、'76 本田圭佑(名古屋)


ガンバのACL日程のおかげで休養十分のジュビロと、中2日の名古屋の試合。11試合で8得点というJ1最低の得点率、そしてDFがFWをやってるチームに2失点。負けに等しいドローでしょうね。


序盤は長身DFW古賀をターゲットにした放り込みに対応できず、こぼれ球を尽く拾われ名古屋ペースに。本来DFの古賀をFWに起用する苦し紛れの奇策は、明確なターゲット役が前線に不在だった名古屋に思いの外マッチしていて、前節マリノス戦からある程度の機能性を見せている。試合中に突然古賀を上げたマリノス戦はともかく、この試合では十分予想できた策のわけで、もう少しうまく対処してもらいたかった所*1

古賀が最前線でターゲットになったおかげで、これまで1トップで苦しんでいた玉田が前を向いてプレーできるようになり、左ウイングのような位置取りからのドリブル突破や、スピードを活かした2列目からの飛び出しでジュビロに脅威を与えた。ただしシュート精度はとても日本代表とは思えないレベルで、結果的に彼の決定力不足にジュビロは助けられた*2


対するジュビロは1トップの前田に楔が入らないと攻撃を機能しないわけだけど、その前田に向けて序盤は単調なロングボールを蹴るばかり。前田は空中戦に特別強いわけではないし、名古屋のDF陣は高さ・強さだけはあるから、同じようにハイボールを放り込んでも機能するはずがない。案の定、秋田に高さで潰され、前線中央ではほとんど起点を作れず。


そんな名古屋ペースで迎えた前半18分、川口とマコの代表守備陣の連係ミスで失点。まず楢崎のゴールキックに中途半端な対処をしたマコのミス、そしてお見合いをしてしまった二人のミス。プロとしてやってはいけない致命的なミス。要反省。


失点されてようやくエンジンがかかった来たのか、試合は徐々に磐田ペースに。前線中央で潰されていた前田が、下がってボールを受けたり、サイドにうまく流れる事で前線で起点を作り出した。単純なハイボールは跳ね返していた名古屋も、前田の広範囲に渡るフリー・ランニングにはなかなか付き切れず。前田の作ったスペースを、他のアタッカー陣も巧く使い出す。


その前田のポストプレーが起点となった攻撃からファウルを奪い、前半31分にファブリシオがやり直しの直接FKを決め同点。2度とも壁を超えて枠に入れるファブリのキック精度は本物。これでチーム得点王。今後も直接FKは全てファブリに蹴らせるべき。


後半は明らかなジュビロペース。その主要因として、中一週間のジュビロと中2日の名古屋では消耗度が大きく違ったため、運動量で圧倒して押し込めた。それに加え、右サイドの主導権争いで完全に優った事が大きい。


名古屋はポストのできるFWがいなく、前線でボールが収まらないから、放り込み以外にサイドから起点を作って攻めるサッカーをしている。そのキーマンは、高卒2年目ながら強靭なフィジカルと正確な左足を武器に左サイドからゲームを組み立てる本田。その本田を対面の太田が驚異的な運動量で押し込んで、苦手の守備に忙殺させてしまった*3。持ち場である右サイドだけでなく、ピッチ上を縦横無尽に動き回る太田の運動量は今日も驚異的*4で、攻撃に効果的なアクセントを与えていた。決定機を確実に決めてれば文句なしだったんだけど。


後半21分、その太田が右サイドで相手を引き付け、秀人バリのオーバーラップで外を駆け上がった茶野*5へパス。茶野が中へグラウンダーのクロスを上げると*6、相手を振り切った前田がニアで合わせて逆転。3人が連動した素晴らしいゴールだった*7


これで前田は2試合連続ゴール。得点場面以外にも、前を向いて相手に突っかけて、独力でシュートコースを作ってから強烈な低空ミドルという得意パターンを披露してくれた。惜しくもポストに直撃としたけど、前節にも似たようなポスト直撃の惜しいシーンがあったし、かなり調子は戻ってきている。でもこれが決まらなかった事が後に響いた。


その後もジュビロが攻め続けるけど、決定機を決めきれず相手を突き放せない。こういう時に怖いのがセットプレー。後半31分、ゴール前で安易なファウルを与えてしまい、前節のマリノス戦と同様に本田の左足が火を吹いて同点*8。距離はかなりあったけど、壁の作りが甘かったのと、本田のキックが素晴らしすぎた。あれだけ対面の太田に消耗されながら、ここぞの場面での集中力と技術。やはりこの男は何かを持っている*9


それでも両チームのコンディション差を考えると、ジュビロが再び逆転する可能性は十分あったのに、その後は中山が一対一の決定機を楢崎がファインセーブしたり、山本監督お得意とする迷采配が炸裂したりして、結局試合はドローに終わった。


ジュビロが勝ち切れなかった要因は、失点に直結する致命的なミスと、決定機をモノに出来なかった決定力不足でしょう。そして引き分けを狙いに行ったとしか思えない監督の采配。過密日程の中位力相手にドローで良しとするチームではないと思うんだが。


誰しもが突っ込む所だけど、それでも書いておく。


今シーズンのジュビロの攻撃の中心で、この試合でも活躍していた前田と太田を、同点になってから下げてしまうのは一体なぜ何でしょう。怪我明けの前田はともかく、チームで一番最後まで走れる太田を、勝ち越したい状況で船谷と変えるのは意味不明。船谷の右SHなんて実戦で一度も見たことがないし、練習でも試してないはず。それに船谷は前節で出来が悪かった。またテストですか*10
駄目押しはロスタイムの選手交代による時間稼ぎ。増川の負傷により名古屋は10人で戦う時間帯が試合終盤にあったんだから、先手を打ってもっと早くカードを切ってください。


  • 名古屋

名古屋は最前線でターゲットとなれて、決定力も兼ね備えた長身ポストプレーヤーの獲得が急務でしょう。古賀は慣れないFW起用で頑張っていたけど、ラインコントロールを掻い潜る狡猾さは当然なく、簡単にオフサイド・トラップの餌食となっていた。相手は高さだけに対処すればいいわけだから、慣れれば対応しやすい。玉田の特性を相互補完するためにも、ハイポストのできる本職FWが必要。


それとまともな本職の左サイドを獲得して、本田を中盤の中央付近で使った方が良い。本田はフィジカルとキック精度の高さで何とかこなしているけど、サイドをアップダウンする走力はないので、SBでは彼本来の良さがスポイルされてしまう。中盤右の中村直志が不調のようなので、彼の所に本田か藤田を使った方が良いのでは。


この二つを中断期間に補強すればそれなりに戦えるんじゃないかな。1つしかないポジションに2人もいる代表クラスのGKを一人売ってでも*11、この二つのポジションは補強すべきと思う。


  • 中断までの軽い総括

これでリーグ戦は一時中断。序盤の監督の迷走振りは酷すぎた。自ら「覇権奪回」「スタートダッシュ」と言っておきながら、4勝4分3敗・勝ち点16で11位。この結果にも当然満足いかないけど、それ以前に過程が酷すぎる。中位低迷という結果だけならここまでの不満はない。


昨シーズンとキャンプ中に培った事を放棄して、開幕戦後にいきなりクラブ初の4-2-3-1にシステム変更。新システムの各ポションに必要とされる資質*12と各選手の特徴を見極められず、適正ポジションを無視した選手起用に固執*13。当然選手はすぐに対応できず、開幕から数試合はJ最低レベルのサッカー。広島戦辺りから新システム・戦術に選手が慣れ始め、選手も適材適所に配置され力を発揮できるようになり、ようやく調子は上向きになってきた。


最近の好調で監督を賞賛する向きもあるようだけど、低迷→復調はただの自作自演でしょ。キャンプ開始前からしっかり一貫性を持っていれば、シーズン序盤の迷走はなかったはず。西が怪我するまで太田を干していた事や、試合中の采配にも不満はあるけど、それ以前にチームマネジメントが最低レベル。やっぱ才能ないよ。


就任して以降、クラブ史に残る補強費用を使って自分の希望をフロントに叶えて貰っているのに、3年目になっても結果的に中位低迷では非難されて当然。費用対効果はJ1最低レベルだと思う。サッカークラブの経営は慈善事業じゃないんだから、費用対効果というのは無視できるものではない。選手層や資金力がJリーグ上位のクラブだから何とかなってるけど、そうじゃなかったらとっくに解任されていると思う。それかクラブが破産危機。甲府だったら潰れとる。


監督の希望を叶える為、今度はスカウトがブラジルへ選手を探しに行ってるみたいだけど、大金かけて補強すべきは一流監督ですから。早くシャムスカのような名将を連れて来て欲しい。現実的に中断明けからは無理だから、来シーズンの始動からは新体制が見たい。今の内からリストアップ頼みます。


中断期間の補強案についてはまた後日。

*1:ちなみにDFW古賀はジュビロのパスコースを切るチェイシングの巧さも抜群だった。

*2:これではWCでゴールできるとは思えない。

*3:相手の長所を、守る事で消すのではなく、攻める事により消した。

*4:そしてこの縦横無尽なプレーが、守備時の担当ゾーンを気にする山本監督に信用されていない理由だと思う。試合中に「右に張ってろ」とか指示してたし。アホか。

*5:本職CBの茶野は、まだサイドのCBというイメージで攻撃面に難があるけど、このシーンはSBらしかった。

*6:これまではハイクロスを上げる選手の方が多かったけど、前田の特性を考えるとグラウンダーの方が良いと思う。カレンもそう。中山なら頭狙いでも良いけど。

*7:こういう右サイド攻撃は得意の攻撃パターンになりつつある。これを左でも出来るようになれば。本職左SBが欲しい。

*8:前節はアシスト、今節は直接。

*9:同年代で同じ左利きの司令塔タイプでも、船谷は随分差をつけられたよ。五輪代表でレギュラー争いするには彼を超えないと難しい。

*10:あそこで勝つための采配としては、スタミナと集中力の切れで凡ミス連発していた服部outで、攻撃的選手inが妥当だったと思う。あと本職・左SBの補強は必須。ガーロ体制では控えみたいだから、FC東京の金沢を希望。

*11:川島の事を考えたら常時プレーさせた方が良いし。

*12:4バックだと3バックにはないSBがある。同じサイドでもSHとWB、同じFWでも2トップと1トップでは必要とされる特性も違う。

*13:カレンの1トップ、名波の1トップ下など。SBも本職がいないのでコンバートするしかなかった。秀人は成功したけど、他はまだ完全にフィットしていない。