無差別級グランプリ2006 1回戦


興行は中盤までの素晴らしさから一転、金魚マッチが組まれていた後半は尻つぼみになってしまった。まあ一回戦だから仕方がないのかな。2回戦以降は凄まじいレベルのカードが期待出来そうだ。

とりあえずの収穫は、中村の解説悪くないじゃん。高田より全然良い。これに専念してくれるとありがたいんだが。

ギルバート・アイブル vs ローマン・ゼンツォフ

止めるの遅すぎですな。もしヒョードルの怪我が治らなかったら、2回戦にはゼンフォツが繰り上がったりするんだろうか。それは嫌だ。

▼A・オーフレイム vs ファブリシオ・ヴェウドゥム

やっぱりアリスターのスタミナ面の課題は相変わらず。それさえ克服されればかなり強いと思うんだが。スタンドでは上回っているんだから、わざわざテイクダウンしてグラウンドに持ち込まなくてもいいと思ったけど、ばてていたから休みたかったんだろうか。ヴェウドゥムの土俵に自ら入り込み、下から極められてしまった。勿体無い。
ヴェウムドゥの寝技は流石だけど、やはりスタンド技術全般に課題がある。打撃もそうだし、テイクダウン力もあまりない。これでは優勝する可能性は低い。吉田、藤田、ハントには勝てそうだけど、それ以外は厳しい。
ファブリ塩と称されるヴェウムドゥの勝ち上がりは、興行面で良いのか悪いのか。ノゲイラとやった場合、珠玉の寝技戦になる可能性もあるけど、恐ろしい塩漬け大会になる可能性もある。お互いの寝技技術で大差がはないだろうから、案外スタンド打撃戦になるかもしれないけど。そうなるとボクテクの高いノゲイラ有利か。

高阪剛 vs マーク・ハント

高阪の生き様を感じた。これぞ魂の戦い。豪腕ハント相手に、ここまで果敢に打ち合いを挑んだのは素晴らしい。ただ玉砕したわけではなく、グラウンドでもバックやサイドも奪って、十分勝機はあった。ただ体重差とハントの適応力の高させいで極めきれず。
この戦いっぷりは盟友・吉田に爪の垢でも飲ませてあげたいよ。高阪なら西島とやっても打ち合って盛り上げたでしょうな。他の日本人ファイターも今日の高阪の姿勢を見習って欲しい。もう少し早くPRIDEが出来ていて、高阪がそこに参戦できる環境にあったのなら、もっと名を残す選手になったでしょうね。一時期は日本人ヘビー最強だったわけだし。本当にご苦労様でした。
ハントはやはりグランドに課題。凌いだ事は立派だけど、極めの強いヘビー級トップのグラップラーに通用するとは思えない。ミルコとは相性的に良いだろうけど、打・投・極の強いトータルファイターには厳しいでしょう。もっと腰の強さを生かして、スタンド維持戦法に専念して欲しい。下手にグラウンドで上になってパウンドに行くと、スイープされたり腕を獲られる可能性大。一発のある打撃は魅力だけど、高阪を仕留める切れなかった所を見ると、ヒョードル相手には厳しいんじゃないだろうか。

ジョシュ・バーネット vs E・アレキサンダー

一般層への知名度の低い強豪同士の潰しあい。試合のレベルが他とは桁外れだった。お互いスーパーヘビー級なのに、中量級並のスピード感のある試合。1Rの総合モードのスタンドでの攻防は珠玉。緊張感が凄かった。
明暗は分けたのは見ての通りスタミナでしょうね。総合のレベルは打・投・極とも凄く上がっていて、お互い拮抗したレベルの試合だと、勝敗を分けるのはスタミナになってくる。ジュシュはそういう意味でもトップクラスのトータル・ファイターでしょう。
1回戦で一番厄介な相手とぶつけられ、その障害を見事飛び越えたジュシュは素晴らしかった。1Rは打撃の攻防で渡り合い、2Rスタミナ切れしたところで見事テイクダウンに成功し、グラウンドでは押さえ込みの巧さと極めの強さを如何なく発揮した。打倒ヒョードルは厳しいとは思うけど、相性的にはノゲイラよりも可能性はあると思う。
とにかく次戦が楽しみですな。ノゲイラヒョードルとの初対決も面白そうだし、ミルコとも以前の病み上がりのデブモードでなく万全の状態でリベンジ戦が見てみたい。個人的にはプロレスラーとして吉田を潰して欲しいけど、DSEはそんなカードは組まないでしょう。恐らく弟の敵討ちいう事で、いきなりヒョードル戦なのかな。今日のジュシュを見ると、中々おもしろい試合が期待出来そう。


藤田和之 vs ジェームス・トンプソン

総合の進化、時代の流れを感じる試合でしたな。片足タックルだけは一流だった藤田、そのタックルでさえもはや通用しない域にPRODEのレベルは進化している。
トンプソン如きにこの苦戦では……という意見もあるだろうけど、個人的には対格が一回り上の相手に等身大の強さを見せ、劇的なKO勝利を飾った藤田を評価したい。トンプソンは色物みたいな扱いされてるけど、それなりに実力のあるスパーヘビー級の総合格闘家

今日はいつものゴング&ラッシュを捨てて今日は勝負に徹してきた。藤田のタックルを切ってのスタンド勝負。相手の苦手分野で勝負する、これがATTでの練習成果かな。この戦法は正解だったと思うし、現に序盤は圧倒していた。ただスタミナ面に差があったのと、ワンパンで効かされた後に本能的に打ち合いに出てしまったのが裏目に出た。藤田は上になっても決め手はないのだから、グラウンドに逃げて休んだ方が得策だったと思う。でもその積極性のおかげで試合は好勝負になった。お互いの実力差が拮抗していたが故の好勝負。レベル的には高くないんだろうけど、金魚マッチより余程面白い。

藤田はあのままHERO'Sでのぬるい総合マッチと、プロレスの二束の草鞋を履いていれば安泰だったろうに、ヘビー級のレベルが世界最高のPRIDEに戻ってきて、よくトンプソンみたいな美味しくない*1相手との試合を受けたと思う。この試合で下手打てば評価はがた落ちだったはず。
序盤の劣勢でも試合を諦めずに、ワンチャンスをモノにした精神力の強さが光ったと思う。あんまり好きな選手じゃなかったけど、今日はかなり見直した。総合素人の金魚相手につまらない勝ち方で楽をした吉田とは違う。
藤田の次ラウンドは日本人対決が濃厚なのかな。優勝は無理だろうけど、PRIDEのプロテクト対象である吉田には何とか勝って欲しいね。他に勝てる可能性があるのはテイクダウンして押さえ込めそうなハントくらいか。ハントとは相性良さそうだ。

ミルコ・クロコップ vs 美濃輪育久

ミルコ完全復活……というには生易しすぎる相手でしたな。適正体重の-83kgでさえ世界トップに程遠い美濃輪が、ヘビー級世界トップクラスのミルコに勝てるわけがない。実力差が明白に現れた妥当な試合内容だったと思う。足関節が極まればもしやというのもあったけど、グラウンドも修行した今のミルコが美濃輪に極められるくらいなら、まだ未熟だった時期に桜庭戦などでとっくにやられてたでしょう。ビバ結果論。
ミルコは間違いなく優勝候補の一角でしょうね。打撃の威力とスピード感が桁外れ。パウンドの威力の強さも目立った。今さら吉田と藤田に不覚をとる事はないだろうし、スタンド維持戦法でノゲイラやジュシュとも互角以上に渡り合える。一撃必倒の打撃があるから、ヒョードル相手に番狂わせを起こす可能性もある。とりあえず外人選手相手なら誰と当たっても面白そうだけど、元練習仲間のヴェウムドゥとはやらないのかな。

美濃輪は今後どうするんだろう。ウェルター級で等身大の選手とやっていくのか、ジャイアント・シルバ戦のような色物路線でやっていくのか。実力的にウェルター級GPで勝ち抜けるとは思えない。彼もキャラクター的にHERO'S向きの選手だと思う。でもPRIDEのファンには愛されているようだし、既に上がりの選手なのかもしれない。負けても花道での「オーオー」で盛り上がっていたらしいし。BTTに武者修行に行ってる辺りまでは大好きだったけど、最近は乗れなくなってきたなあ。でも好きな選手なので頑張って欲しい。

アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ vs ズール

これもあからさまな金魚マッチ。ノゲイラの相手は直前まで決まっていなかったようだから、この扱いも仕方ないかもしれない。2回戦以降に期待しよう。
ノゲイラの実力は当然世界トップクラスでしょう。ただ相性的にヒョードルに勝つのは厳しそうだし、試合展開も予想がつく。ジュシュとの初対決、ミルコの名勝負再びが見てみたい。

吉田秀彦 vs 西島洋介

中堅総合格闘家vs総合素人の対戦。しかも体重差も10kg以上ある。
まあ結果は大方の予想通りなんだけど、吉田がこんなつまらない勝ち方をするとはね。事前に殴り合いに行くとか煽っていたし、盟友・高阪の熱い試合があったから、もっと盛り上げる試合を選択するかと思ってた。実力差的にもそれが可能な相手だったし。

西島のハント戦での善戦は打撃しか出来ない同士という相性的なものが大きいし、やはりまだ総合格闘家ですらない。ただ商品価値は高い。年齢的に急成長は期待出来ないだろうし、今後もある程度プロテクトしてあげる必要があるでしょうな。ハントのような立ち技格闘家と総合マッチを組むしかない。もう少しスタンド維持が巧くなればおもしろそうなんだけど。腰が軽すぎる。

終盤の金魚マッチを見ていたら、アレキやアリスターが可哀想になってきた。実績・実力ともトップのミルコやノゲイラがシード扱いなのは分かるけど、吉田がこの扱いはねえ。まあ吉田の価値は十分すぎるほど分かってますけど。PRIDEが興行である限り、やはり日本人スターは必要。でももう少し歯応えのある相手とやって欲しかった所。

吉田の今後はどうだろう。柔道着を着ている限り、柔術家のノゲイラファブリシオには勝てそうもない。脱げば決め手がなくなる。実力的にジョシュやヒョードルに勝つのも難しいでしょう。ストライカーのミルコとハントなら極める可能性があるかもしれない。でも吉田はDSEにとって一番プロテクト対象だろうから、2回戦は一番勝てる可能性の高い藤田が濃厚なのかな。日本人は最低一人準決勝に残したいだろうし。

  • 2回戦展望

吉田vs藤田
ヒョードルvsハント
ノゲイラvsジョシュ
ミルコvsファブリシオ

まず準決勝に日本人を一人残す為の日本人対決。そして3強同士は当たらない。そう仮定するとこの4つが面白そう。でもミルコとヴェウドゥムは元練習仲間だから対戦は無理なのかな。
個人的にはジュシュvsノゲイラorヒョードルが見たい。ノゲイラvsミルコ、ヒョードルvsミルコの黄金カードも見たいけど、これは準々決勝では勿体無いか。日本人対決を組まないならもっとカードの可能性は広がるけど。

吉田vsミルコ
ヒョードルvsファブリシオ
ノゲイラvsジョシュ
藤田vsハント

勝負論的にはこうなったら面白いかも。今大会で一番楽をした吉田には次は楽させないで欲しい。藤田かハント以外の相手を希望。

ヒョードルが怪我の未完治で欠場したら盛り下がるなあ。

*1:色物というパブリックイメージに比べてそれなりに実力がある。サップなんかより遥かに強い。