ジュビロ磐田 1 - 1 京都サンガ 
得点者:'54 西紀寛(磐田)、'89 パウリーニョ(京都)

この試合の京都に勝てなかったら、J1で勝てる相手はいません。選手個々の能力では明らかに上回っているのに、チームとして差が付かない、試合結果として現れない理由。フロントはしっかり考えた方が良いよ。


DFラインの裏のスペースを突かれまくって開幕2試合で大量失点中の京都。守備陣の組織・個ともJ1水準に達していなく、攻撃陣で際立っているのもパウリーニョだけ、優勝を目指すチームなら快勝が義務付けられた相手。

京都は立ち上がりから極端に慎重で、前線からのプレスにもあまり来ず、ラインも下げてのリトリート主体の守備。攻撃はスピードのあるパウリーニョをスペースに走らせるロングボール頼みで、怖さは全くなかった。大量失点での連敗も納得のチーム力。

運動量豊富なプレッシングを苦手とするジュビロだけど、この試合は中盤に時間とスペースがあったので、中盤でのパス回しは開幕2試合より遥かに巧くいった。相変わらず得点の匂いの感じないパス回しだけど、相手を深くまで押し込んでポゼッションできたおかげで、こちらも全体が押し上げることが出来た。クリアボールも良く拾えて、積極的なラインコントロールオフサイドも何度も取るなど、カウンターへのケアもそこそこ出来ていた。

そういう良い時間帯に得点を決められない。というかボールは回せても、決定的なシュートチャンスほとんど作れない。チーム全体で連動した攻撃、選手個々の意思疎通がまるで感じられない。

相変わらず1トップのカレンは孤立するし、そのカレンがサイドに流れてボールを受けようとしても、空いたスペースの侵入してくる選手がほとんどいないから*1、ペナ内に人がほとんどいない状況が多々あった。

4-2-3-1はSBとSHが2枚いるサイドで数的有利が作れるので、一般的にサイド攻撃に向いたシステム。ポゼッションでリズムを作れたおかげで、開幕2試合よりはSBとSHが絡んでサイドからのクロスを上げる形が出来ていた。そんなサイド攻撃主体のチームスタイルなのに、1トップはクロスを合わせるのを苦手とするカレン。そして前述したペナ中に人が少ない状況がほとんどだから、せっかくサイドからクロスを放り込んでも、数的不利の中で跳ね返されるだけ。チームの志向するスタイルと、人選配置が噛み合っていない。

それでも先制点の形は良かった。SB服部とSH村井が絡んで左サイドを崩し、その村井のクロスが1トップのカレンを飛び越えて、逆サイドからファーに侵入した西がペナ内で合わせてのゴール。サイドで数的有利を作って上げたクロスに、FWの後方に逆サイドから選手が飛び込んで決めるのは、FWが1人しかいない4-2-3-1の必須パターン。こういう形をもっと増やすべきだし、逆に右で崩した時は、左の村井がもっとエリア内に飛び込んでくる事は必要*2。ゴール前にカレン一人だけという状況を少なくすべき。1トップにより生じたスペースを有効活用しないのでは、1トップにする意味がほとんどない。

リスク回避を第一にしたゲームプランの守備的なカウンター型チームに、ポゼッション型のジュビロが先制点を取れたのは理想的な展開。これで前に来る相手を引き出して戦えるのでチャンスはさらに増えるはず。でもこの後も決定機をあまり作れないし、数少ないチャンスにも決めきれない。

試合終盤は全く評価出来ない。1トップのカレンがばて始めて前線のチェイシングが減退し、中盤は攻撃的な選手を途中投入しすぎたおかげで守備のフィルターが全く掛からず、DFラインもズルズルと下がり始めてしまう。プレスがほとんどかからず、スペースの空いた中盤を京都に支配されて、こぼれ球も拾えず、何度も決定機を作られる。それでも相手の決定力のなさや、川口の好セーブに助けられていたけど、ロスタイムにパウリーニョに決められて痛恨のドロー。あれだけ攻められたら決められるのも当然。強豪チーム相手だったら大量失点していてもおかしくなかった。川口が切れるのも仕方ない。

  • もはやデフォとなった珍采配

監督の采配は相変わらず謎だ。負けている試合でDF同士を交代したり、FWを途中投入しなかったりと思えば、勝ってる試合でFWの藤井、OMFの船谷と成岡など、中盤に次々と攻撃的選手を投入。逃げ切りたい試合終了間際に、中盤で守備が得意な選手がファブリシオ1人。負けている時に守備的な選手を入れるくせに、勝っている時に攻撃的選手を入れるのは何故だろう。失敗した采配であっても意図を感じることは可能なんだけど、彼の采配は本当に理解不能だ。勿論この一試合だけで判断してるわけでなく。長いことサッカー見ているけど、ここまで理解できない監督も珍しい*3

特に右サイドにFWの藤井を入れた意図は不明。彼がJ1相手にサイドで機能した試合を見たことありません。西が疲れている右サイドに選手を入れたいならなら、そこは素直に本職の太田でしょ*4。監督は守備面の問題で太田を評価していないようだけど、リードしている状況で太田以上に守備力のないFWの藤井にサイドで何を期待したのか。FWの藤井を入れるなら疲れの見えた1トップのカレンと変えて、前線の活性化を促すべきだった。

まあ、悪かったのは監督だけでなく、終盤に集中力を欠いた選手もなんだけど、根本的にチーム自体が機能し続けていない責任を負うのは監督でしょ。

全体的には選手のパフォーマンスはすごくよかったと思う。流れのいい時に取りきれないというのが、こういう結果になった最大の要因。システムも、中盤の構成も、立ち上がりから守備の意識も高く、組織的なプレーはよかったと思う。これをしっかりと2-0、3-0まで持っていくだけの決定力、得点力を上げていくことが最大の課題。選手のパフォーマンス全体的には、僕自身としては満足している。今週のトレーニングで取り組んできた成果もよく出た試合だったし、これを次につなげていくことが大事だと思う。
http://www.jubilo-iwata.co.jp/live/2006/J060318_720.php

この試合内容で「凄く良かった」とか「満足している」なんていうセリフが出てくること自体おかしい。もうこれ以上は上積み要素がないということなのか。考えられんよ。そしてお決まりの「次に繋がる」。繋がった事があったっけ。
昨年に良い試合内容をしていた時期もあったけど、全く違った特色のサッカーのトライしている今年、昨年の流れは既にリセットされてしまった。新たにテストしている4-2-3-1が機能するようになるのはいつなのか。そして機能し始めてもまたリセット、そしてテストの繰り返しになるんじゃないのか*5
ポゼッションとダイレクトの融合だとか、状況に応じた3バックと4バックの併用だとか、それらが出来れば理想的だけど、どちらも不十分なのにいきなり両立させる事なんて夢物語。山本監督は自らの理想を夢見ているだけで、現実を見据える事が全く出来ていない。それがこの監督に一番足りないところ。「世界基準」だなんだといって先を見据える前に、目の前の国内の相手に勝つことを最優先して欲しい。WC中断前までは我慢するから。

*1:トップ下の名波はボールを受けて捌く典型的な司令塔タイプ、左の村井はサイドライン際でのプレーがほとんど、ポジションを崩して中に飛び込んで来るのは右の西くらい。

*2:トップ下も積極的にエリア内に侵入すべき

*3:リスクを犯した積極的な采配が出来ない監督をチキンとか揶揄するけど、彼はそういうレベルではない勝っているのにリスクを犯すんだから。

*4:太田はこのまま干され続けたら、確実にレンタル移籍すると思う。昨シーズンあれだけ活躍していたから、右サイドに困っているクラブからは即オファー来るでしょう。WBで1シーズン7得点取れる日本人選手は希少だし、あれだけ走れる右の選手はハユマと加地くらい。

*5:攻撃パターンの少なかった五輪でも、長身FW平山へのロングボール+大久保&達也の快速2シャドーの絡みの3-4-2-1という唯一の形があったのに、本番直前で小野をトップ下に入れて対照的なポゼッションサッカーに方向転換。挙句の果てにぶっつけ4バック。