クロアチアvsアルゼンチン
ベストメンバー対決とか報じられているけど、どちらもベストではない。クロアチアはほぼベストだとして、アルゼンチンは明らかに違います。
バビッチ スルナ
トマス トゥドル シミッチ
オーソドックスな3-4-1-2。ほぼベストメンバー。組織的なカウンタサッカーというイメージがあるけど、攻撃陣は個人技もあって、意外と幅の広い攻めも見せてくる。特にダイレクトパス主体の速攻がうまい。スウェーデンと同組の欧州予選を無敗で乗り切った時より、チーム力は上積みされていた。
守備の組織力はかなり高い。DF陣は高さと強さがある反面、スピードやテクニックのある選手に翻弄される場面が目立ち、序盤はアルゼンチンに押し込まれていた。*1。フィードや足下のテクニックもあまりなく、プレッシャーに晒されるとミスが目立つ。この試合ではトマスがメッシのプレッシャーでパスミスを犯し、それがメッシのゴールに繋がってしまった。日本も前線でのチェイシングが重要。ただし、ベストメンバーではシムニッチとロベルト・コバチが入るので、弱点は多少改善されるでしょう。
ボスニアにも苦しめられた日本が苦手とする組織的なプレッシング、クロアチアのそれはボスニアより強烈です。前半は押さえ気味だったけど、後半の激しい前線からのプレスにアルゼンチンはかなり苦しめられていた。トップ下のクラニチャル以外は運動量豊富で、全体の守備意識も高い。
司令塔のクラニチャルはボールスキルやキック精度は高いけど、プレーの波が激しすぎるし、試合中に消える事も多い。ここに往年のボバンのような名トップ下がいたらさらに怖い。初代表の若干20歳の司令塔モドリッチ*2のプレーが代表デビュー戦とは思えないほど良かったので、場合によってはレギュラー奪取するかもしれない。この試合でボバンの後継者の名に相応しかったのはモドリッチの方だった。新たな発見。
攻撃もなかなか。前半に苦しめられたアルゼンチンの強烈なプレス*3を掻い潜るために、後半は素早いダイレクトでのパス回しを多用しペースアップ。ボールと人の連動した素早い攻めでアルゼンチンを押し込んで、FWのプルショやクラスニッチがサイドの裏に流れ、そこに両WBが絡んでくるサイド攻撃。WBはFWの空けたスペースを突いて中にも切れ込んでくる。2点目は、左サイドを突破したFWのプルショが上げたクロスを、中に切れ込んでいたWBのスルナがヘディングで合わせたもの。
以前から書いてきているクロアチアのストロングポイント、両サイドのバビッチとスルナは相変わらず強力。特に後半高い位置取りを取って活躍したスルナは、この試合だけでなく常に安定したプレーを見せている。運動量・突破力・スピードとも水準以上で、セットプレーを任されるほどのキック精度も併せ持つ。日本の対面はサントス。クロアチアの右サイドアタックに要注意。
長身2トップのプルショとクラスニッチは、サイドに流れてのプレーも巧みな万能型FW*4でで、この試合では特にプルショがサイドに流れていた*5。ボランチのモドリッチもサイド攻撃に頻繁に絡み、主にバビッチと連係して左サイドから崩していた。
アルゼンチン1.5軍から3得点を奪っての勝利。日本メディアでは日本、オーストラリアと同格に捉えられているクロアチアだけど、実績・実力とも間違いなく格上です。ただし勝ち点獲得が絶望的な相手でもない。優勝候補からは一段劣るのも事実。親善マッチでアルゼンチンに勝ったからといって、本選でブラジルに勝つのは難しいでしょう。
- アルゼンチン
日本ではなぜかベストメンバーと報じられているけど、主要メンバーからはアジャラ、エインセ、ソリン、サネッティ、マキシらを怪我で欠いています。ブルディッソ、コロッチーニ、ポンシオあたりは数枚落ちる。なので明らかにベストではない。ベストに勝ったと捏造した方がインパクトがあって報じやすいんだろうけどね。
システムは3-3-2-2、またはメッシとテベスがウイング気味の3-3-1-3。ただ相変わらずアルゼンチンの選手は流動的にポジションチェンジを繰り返すので、数字の並びはあまりの意味をなさないです。試合中に4バック気味にもなってたし。
攻撃では収穫があった。何よりメッシとテベスというドリブラーの共演。これが見たかった。先発初共演にしては上出来だったと思う。特にメッシのドリブルは相変わらずキレキレ。テベスへのアシストも実質的にはゴールのようなもので、自らボール奪取してドリブルで持ち込んでからの代表初ゴールも鮮やかだった*6。
問題は守備。CBの安定感がない。特にコロッチーニは鈍足。アジャラ、エインセの復帰が待たれる。GK不足も長年の課題。キック精度は抜群のアボンダンシエリだけど、守備能力は強豪国のゴールマウスに相応しくない*7。1失点目を招いた痛恨のファンブルは致命的。かといって代わりになるようなGKがいないアルゼンチン。WC優勝を目指すためには守備の安定が求められる。カンビアッソ、デミチェリス*8、マスチェラーノと、中盤の底の人材は世界最高峰なのにね。
ペッケルマンはまだ最適なシステムとバランスの良い選手配置を模索している模様。相変わらず首をかしげるような選手起用・配置も目立つ。カンビアッソのサイド起用は宝の持ち腐れ。CBはクラブでも代表でも活躍していないコロッチーニより、ゴンサロ・ロドリゲスなどの新戦力を試すべき。ポンシオの起用も疑問。テスト・モードだったのかな。
今日の3バック・3ボランチ気味で本職サイドプレーヤーのいないシステムでは、サイドの守備が弱いので本番では使えないでしょう。これではオランダのサイド攻撃は耐えられない*9。左にソリン、右にサネッティorルイス・ゴンサレスを配置して、サイドの攻守のバランスを改善すべき。*10。
ただし天才メッシの台頭で、リケルメ頼みのチームからは抜け出しつつある。リケルメだけでなくメッシも最大限活かせるようなサッカー、そして課題の守備が安定してくれば、優勝する力は十分ある。メッシは本当に凄い。アイマールも頑張って。
*1:ただ相手はメッシ、テベスなので、同レベルのドリブラーのいない日本にとってはあまり参考にならない。ブラジル相手にはかなり苦しむだろうけど。
*2:彼がいるからディナモ・ザグレブはあっさりクラニチャルをライバルチームに放出したとか。自国リーグでの活躍度は同じトップ下のクラニチャルより上らしい。
*3:日本は手も足も出なかったね。あの時のアルゼンチンは3軍だったのに。
*4:フィジカルを活かした空中戦の強さは当然、キープ力もあるし、ドリブルも巧い。決定力も水準以上。
*6:こうなると同じセカンドトップ型のサビオラは厳しいな。あとファースト・トップのクレスポの控えには、インテルのクルスも呼ぶべきだと思う。ミリトも悪くないけどね
*7:PKが得意なのはWCでは重要だけど
*8:ヒロミがバイエルンでレギュラー取れるかもと言ってたけど、彼はバイエルン不動のアンカーですから。