エル・クラシコ

レアル・マドリー 0-3 バルセロナ
得点:エトー14’、ロナウジーニョ59’、ロナウジーニョ77’

レアル・マドリー>4-1-3-2
カシージャス、サルガド、セルヒオ・ラモスエルゲラロベルト・カルロスベッカム、パブロ・ガルシア(→バチスタ・66分)、ジダン、ラウル(→グティ・58分)、ロビーニョロナウド

バルセロナ>4-1-2-3
ビクトル・バルデス、オレゲール、マルケスプジョール、ジオ、チャビ、エジミウソン、デコ、ロナウジーニョ、メッシー(→イニエスタ・69分)、エトー

サンチャゴ・ベルナベウでのエル・クラシコで、ここまで完膚なきまでに叩きのめされたレアル・マドリーは記憶にない。昨年の11月のクラシコも酷かったけど、あれはカンプ・ノウだったからね。両チームの間には3-0というスコア以上の差が存在し、クラシコにしては期待外れの試合だった。

  • 試合展開

拮抗した展開の予感があったのは試合開始直後だけ。マドリーはバルサの華麗なパスワークについていけない。試合を通して押し込まれ、どちらがホームか分からない展開が続いた。

前半14分、メッシが前を向いての高速ドリブルでマドリー陣内に進入し、スイッチしたエトーが先制ゴールを決める。これはベッカムのスルーパスをカットしたジオからのカウンターだった。メッシの前を向いてのドリブルにラインをズルズルと下げるばかりで、早めに潰せなかったのが失点の要因。

その後もバルサが圧倒する展開。ロナウジーニョ、メッシ、エトーの強力トリデンテが、持ち前のスピードとテクニックでマドリーの守備陣を翻弄。ジダンロビーニョが厳しいマークでボールをもてないのに対して、バルサロナウジーニョやメッシは自由自在。カシージャスの好セーブがなければ、前半だけで大差が付いておかしくなかった。

前半通して圧倒されたマドリー、ルシェはなんと選手交代をせずに後半スタート。あれだけ中盤守備がボロボロなんだから、昨シーズン復調の立役者であるグラベセンを入れるべきだと思ったが*1。この内容では、もう打つ手なしといったところか。

後半もバルサペース。後半14分、左サイドでボールを持ったロナウジーニョが、セルヒオ・ラモス*2エルゲラをいとも簡単に抜き去り、ゴール左隅にシュートを決め2-0。

何としてでもゴールが欲しいマドリーは、中盤唯一の守備職人のあるパブロ・ガルシアを下げバプティスタを投入。なり振り構わぬ攻めで攻勢モードに出ようとする。マドリーが前がかりになると、ロナウジーニョの前には広大なスペースが広がっていた。バルサのカウンターが火を吹く。

後半32分、ロナウジーニョがまたも左サイドでセルヒオ・ラモスを一瞬で抜き去り独走、カシージャスとの1対1でシュート決め3-0で勝負あり。そのロナウジーニョに対し、サンティアゴ・ベルナベウのスタンドからはまさかのスタンディングオベーション。マドリーの選手達にとってはブーイング以上に屈辱的だったでしょう。

  • 明暗を分けた守備組織の差

マドリーのスタメンを見ると、本職のCBが一人もいず*3、中盤はパブロ・ガルシアのワンボランチジダンロナウドに守備意識はなく、前線からのチェイスはラウール頼み。守備組織もいまだ整備されておらず、プレスがかからずラインをズルズルと下げてしまう。これでバルセロナと真っ向勝負するというのは無茶というもの。

対するバルサは、エトーやメッシが前線からのチェイスを精力的にこなし、中盤の守備網も整備されている。ボールホルダーに連動したプレッシャーをかけて、ラインを高く維持してオフサイドトラップ、それにより全体をコンパクトに保っての強烈なプレッシングも効果倍増。その守備組織に対して、マドリーの個人技頼みの攻撃では成す術なし。

両クラブのチーム全体の守備組織には雲泥の差がある。バルサの連動したパスワークを止める術はマドリーには存在せず、中盤で自由にパスをまわされてしまった。対するバルサには、マドリーの個人に依存した攻撃を押さえる術がある。攻守の切り替えも非常に速く、ボールを失ったらすぐにプレスをかけてパスコースを限定。守備時の帰陣も非常に速い。

バルサの非常に組織立ったプレッシングのせいで、マドリーは攻撃の組み立てがうまくいかず、ゴール付近に辿り着く前にボールを失う事が非常に多かった。そして高い位置でボールを奪取したら、相手の守備陣が整う前にカウンター。教科書通りのプレッシング&速攻で度々決定機を演出した。

  • マドリーの今後

マドリーはジダンロナウドが病み明けでコンディション不良なのも大きかったけど、それがなくても埋めがたい実力差があった。いつまでたっても一部の選手の調子に左右されるチーム力に問題がある。個の不足をカバーする組織力が皆無。昨シーズンは快速オーウェンを重用した守備的なカウンターサッカーへの転換で復調したのに、今シーズンは新たにチームの作りかえで、結局何も進歩していない。

マドリーはバルサを相手にした時だけでなく、欧州の強豪相手にはかなり苦労しそう。現にリーガでもバレンシアやデポルには負けている。リーガとCL合わせて6連勝して、一時期復活とか報道されて炊けど、あれは相手が弱かったに過ぎない。今後も主力のコンディション次第のチームで、波の激しさに苦労する事でしょう。冬の補強は必須か。

バルサは理想的な試合運びが出来た。ただ相手が弱すぎたので、まだまだ最強とは言えないと思う。強力な守備組織と電光石火のカウンターを有するチェルシーのような相手に、今日のような試合運びはまず無理。ロナウジーニョやメッシも、今日のような広大なスペースは与えてもらえないはず
リーガでは、スペースを消すために引いて守り、攻め上がったサイドの裏をカウンターで狙ってくる中堅クラブには苦労している。より強力なアタッカー陣によるカウンターを得意とする強豪ビッグクラブが、鉄壁の守備網を引いて守ってきた時に、どうカウンターにケアしながら攻め崩していくのか。CLではそこが問われてくる。リーガでは過密日程以外の敵が見当たらない。

*1:というか最初からガルシアとグラベセンの守備的なダブルボランチで守り抜くしか勝機はなかったと思う

*2:ラモスはサイドでの一対一がかなり強い選手なのに、今日絶好調のロナウジーニョのドリブルの前では無力だった。持ち前のボールを奪いにいく積極的守備が裏目

*3:エルゲラはDH、セルヒオ・ラモスはSB