エル・クラシコ

バルセロナ 3-0 レアル・マドリー

バルセロナ
ビクトル・バルデスベレッチ(73分ダミア)、プジョル、オレゲール、ファン・ブロンクホルストマルケス、シャビ(87分シウビーニョ)、デコ;ラーション(72分イニエスタ)、ロナウジーニョエトー

レアル・マドリード
カシージャス;ミチェル・サルガド、サムエル、パボン、ロベルト・カルロスベッカム(54分オーウェン)、グティフィーゴジダン(79分セラデス)、ラウール(83分ソラーリ);ロナウド

昨シーズンのカンプノウでの白熱した試合の再来とはいかず。レアル・マドリーは完膚なきまでに叩きのめされた。両クラブの間には予想以上の力の差、3-0というスコア以上の差が存在した。

戦前に展望したように、バルサは前線からの激しい追い込み、全体をコンパクトに保っての強烈なプレッシング。それに対してマドリーは成す術もなかった。両クラブのチーム全体の守備力には雲泥の差がある。マドリーの個人技中心攻撃を押さえる術がバルサにはあっても、バルサのパスワークを止める術はマドリーには存在せず。チーム全体の守備力に差がありすぎ。

バルサは攻守の切り替えが非常に速く、ボールを失ったらすぐにチェイスをかけてパスコースを限定。帰陣も非常に速い。マドリーがなんとか一つ前に繋げても、その時にはそこは既に狙われているためカットの餌食。バルサの非常に組織立ったプレスのせいで、ボールをキープして繋げることが不得意なマドリーのDFラインやピボーテはボールを失う事が非常に多かった。高い位置でボールを奪取したら、相手DFラインが整う前にカウンター。お手本のようなプレスからの速攻で度々決定機を演出した。

前線の選手の守備意識一つとっても差は歴然。エトーラーションなどの労を惜しまないチェイスに比べて、ロナウドはただ立ち尽くすだけ。両クラブのプレスをかける位置そのものが大違い。マドリーはセンターライン付近までノンプレッシャーできてくれるため、バルサは後ろから自由に攻撃を組み立てられたけど、マドリーは自陣でもバルサの厳しいチェックに晒されて、中盤までボールを繋ぐ事さえも容易に出来ない。

たとえキック精度が世界一高くても、ベッカムでは激しいプレスの中で判断よくボールを散す事は出来ない。両クラブのボールを引き出すためのフリーランニングの質の差も歴然。頼みのジダンフィーゴも時折際立った個人技を披露するだけで、点に絡む決定的なプレーはほとんど出来なかった。バルサのミスが目立った時間帯は攻撃に絡めたけど、フリーの状況で貰えるケースは極僅か。点取りやのロナウドプジョルのディフェンスの餌食に。

前半29分、ロナウジーニョの長すぎるパスを諦めずに追ったことからエトーの先制ゴールが生まれる。これはロベカルとカシジャスの単純なミスなんだけど、ゴールを呼び込んだエトーの献身的な姿勢が、両チームの守備意識の差を象徴的に表していたシーンだった。

前半43分のロナウジーニョ、デコ、ジオの2点目の流れは最高。ドリブルと思わせておいて非常に狭いコースに鋭いパスを出したロナウジーニョ(それまでの鋭いドリブル突破が伏線に)、シュートを打つと思いきや絶妙なタイミングでジオにパスを送るデコ、それを呼び込む動きをしたジオの正確なシュート(なぜそこにSBがいる!)。選手の持つイメージを見事に連鎖させた素晴らしいゴール。
前半終了を待たず、この時点で試合の行方はほとんど決まってしまった印象。マドリーに追いつける気配なし。後半のマドリーは大量失点を免れる事に苦心するしかなかった印象。まさか負けているのに自陣に引きこもるマドリーが見れるとはね。レモン監督のジダンに代えてセラーデス投入は、得点を狙うというより更なる失点を嫌がっていたようにしか見えなかった。

今日はエトーの日かな。流石マドリー・キラーらしく古巣相手にイキイキとしていた。相変わらず前にスペースを与えたら簡単には止められない。速すぎ。チームを助ける献身的な姿勢も兼ね備えているし、周りを使う動きやパス出しも意外と巧い。何故こんな好選手をマドリーは放出してしまうかね。でもまだまだポテンシャルを発揮していないと思う。プレーの取捨選択の判断力と決定力(得点数は多いけど決定機はよく外す)がさらに備わってくれば凄い選手になると思う。

バルサは他にも皆良かった。シャビとデコの中盤製圧力も凄まじく、プジョルの危機回避能力は驚異的ですらある。今日のロナウジーニョは笑顔で楽しくプレーする姿が印象的。

まあなんていうか、おもしろかったけど期待以上とはいかなかったです。優勝を争う強豪クラブが中堅クラブをあしらう典型的な試合というか。少なくとも“クラシコ”と呼ぶに相応しい白熱した試合ではなかった。バルサファンの方には最高だったと思いますが、第三者としてはもっと拮抗した熱戦が見たかったところ。

今日のバルサは、良さを消されかけたCLのミラン戦とは全く別物。底力を出すまでもなかった。例えば、サイドのスペースが消されてSBのサイド攻撃が機能しなかった(深く抉らず高い位置からボールを上げても跳ね返されるだけ)ミラン戦と比べて、マドリーにはSBが上がった後に的確なカバーする選手が皆無。そのためバルサはサイドから抉って何度も決定機を演出していた。レアル・マドリーはもう根本的な改革をするしかないでしょう。

もはや周知の事実で今さら言う事ではないけど、グティベッカムのドブレピボーテは強豪チーム相手には通用しないと思う。危険なスペースを埋める事、相手のバイタルエリアへの進入を防ぐ事、攻撃参加したSBをカバーする事、激しいプレスの中で的確にボールを散す事。どれも中途半端。今まで何度も欠陥を露呈してきた。

バルサは高い位置に上がってくるSBがパスコースを増やしていたけど、それはDFラインの前にフィルター役としてマルケスという守備に優れた選手を置いているから。マドリーの中盤に守備が得意な選手は存在しない。唯一FWのラウールが驚異的な活動量で空いたスペースをカバーするのみ。そんな役割をエースに背負わせていたら得点を量産できないのも致しかたないさ。

それに比べてバルサの選手はほぼ全員が献身的で守備をサボらない。中盤での守備力不足は、全てDFラインに跳ね返ってくる。いくらサムエルが名DFでも限界がある。スーパーセーブを連発するも失点数の減らないカシージャスも可哀想。あの憎たらしいほど華麗なレアル・マドリーは一体どこへ?

バルサは強いです。昨シーズン後半から本当に素晴らしいサッカーを展開している。例年のリーガ4強が軒並み調子を崩す中、1チームだけ進化を遂げている印象。不安要因を挙げるとすれば怪我人ですかね。

今日はラーションが負傷。自から膝を押さえて倒れ込むという嫌な怪我の仕方だった。もしもラーションが重症なら、フィルター役のMF(エジミウソンとモッタ)に続いてFWも補強ポイントになってしまう。過密日程の中を固定メンバーで戦うと、好調なチームであっても時に信じられないくらい低調になるものだしね。去シーズンののマドリーがその典型パターン。それでも現時点ではリーガ制覇に向けてバルサに死角ないといった感じです。おかしいくらい守備が堅いチームがいるCLだとまた違うと思うけど。
追記。
ラーションは全治6週間。これは苦しいね。FWの控えがいなくなってしまった。それに右ウイングのジュリも怪我が多い選手。ただCLで既に勝ち点10を獲得しているので致命的ではない。