決勝戦


ギリシャの完勝。

結局の所、ポルトガルには頼りになるFWがいないので、大会通して流れの中で得点し続けるのは無難しかった。パウレタはチームの戦術上重要な役割を担っているのだけれど、FWとして肝心のゴールするという予感が感じられない。

FWにとって重要な役目は相手の守備陣に脅威を与えること。その脅威の中で最もパーセンテージが高いのがゴール。エースを任されたFWにある程度の脅威がないと、自分に注意を引きつける事が出来ないため、周りの選手の得点力も十分生きてこない。大会通して他の選手の得点力でカバーしてきたけれど、最後の最後で得点力不足という大会前の課題に帰結してしまった。

ポルトガルにとって、効果的なオーバーラップでチャンスを創っていたミゲウ負傷交代は痛かった。彼自身の離脱の影響もあったけど、代りに入ったパウロ・フェレイラがどうこうというより、交代枠が一つ減ってしまった事が痛手。これによってフェリペのゲームプランは変更を余儀なくされたはず。

リードされている場面、フェリペは最後の1手としてパウレタに代えてヌーノ・ゴメスを投入した。

引いたギリシャ相手に早く追いつきたいため、早いタイミングで善戦に放り込む攻撃が主体になってしまったけど、空中戦に対して強くないゴメスの1トップでは放り込む攻撃は機能しない。なぜフェリペはリスクを犯して2トップにしなかったのか。ギリシャのカウンターの脅威があるにしろ、負けているんだからDFの枚数を減らしても良かったはず。

それにパワープレーに出るなら、ゴメスよりポスチガの方が相応しいとも考えられる。準々決勝のイングランド戦では、ポスチガを投入して前線に人数を増やす積極的采配が功を奏したのに、決勝では慎重になりすぎてしまった。交代枠が減っていなければまた違っていたんだろうけど。

ポルトガルは攻撃の中心であるデコが不振、切り込み役のC・ロナウドも完封された。デコはフリーの場面でもミスキックが多く、本来の彼とは明らかに違った。開幕戦で不調のルイ・コスタを切ったように、この試合では逆に不調のデコを切ってルイ投入でも良かったかもしれない。

ロナウドは見せ場であるサイドの一対一でで勝ち切れず。彼をマークしたセイタリディスマンマーク力には目を見張るものがある。後半に中央にポジションを移した時はフリーになる場面もあったけど、焦りもあるのか決定的な仕事は出来なかった。サイドで個人突破できないとポルトガルの攻撃は機能しない。

ルイ・コスタのプレーは全盛期の匂いを仄かに感じさせたけど、周りとの連動性がイマイチ。有終の美は飾れず。

乱入してフィーゴにちょっかい出したバルサ野郎は最悪だった。あの直後に独力でシュートまで持ち込んだフィーゴが決めていれば男になれたんだけど。フィーゴ自身は良い動きでチャンスを創っていたけど、ギリシャDFはゴールに直結させるようなプレーだけは阻みきった。

ギリシャは強かった。戦前に書いたようなマンマークが見事に機能してポルトガルの攻撃を見事に完封。セットプレーで点を取って守りきるという効率の良さは憎たらしいほど。ギリシャについてはいずれまた書くかもしれない。

個人的に期待以上の決勝戦にはならなかった。これは単に自分がポルトガルを応援していて、ルイ・コスタに有終の美を飾って欲しかったから。リードされて状況で満を持してルイ・コスタ登場と、これ以上ないドラマチックな舞台が用意されたけど、ギリシャの気迫のこもった守備がそれを許さない。まあ、振り返ってみると見所の多い面白い決勝戦でもある。

このギリシャのようなサッカーがこれから一時的に流行るかもしれないけど、このような相手の光を消すことを最優先するサッカーばかりになったらおもしろくない((こういうものを否定しているわけではなくて、主流にはなって欲しくないということ。マイノリティーとして存在する分には存在価値がある)。

このような勝利至上主義の守備的サッカーを打ち破るような攻撃的サッカーの登場を希望したい。そしてそれを封じ込めるようなサッカーもまた出てくると。この繰り返しがサッカーの面白いところ。サッカーが進化していく上で、つまらないだ退屈だといわれようが、相手の光を消して押さえ込むサッカーは必要だとも思う。ただ最終的には攻撃サッカーに凱歌が上がって欲しいものである。