「医龍」原案:永井明 作:乃木坂太郎 

これはおもしろかった。
かつてNGOキャンプで救命医療チームの指揮をとっていた天才外科医・朝田龍太郎が主人公。彼の元へ明真大学助教授の加藤晶がやってくる。彼女はバチスタ手術(肥大した心臓の左室を三分の一ほど切り取り形を整え縫合することによって心室を収縮させる超高難度手術)の成功症例を集めることによって地位を上げ、教授になることによって腐った大学病院の実情を変えようとしている。そのための切り札として朝田を大学病院に誘う。
大学病院の実情や現代医療の問題点をデフォルメして伝えるなど、同じ医療漫画である「ブラックジャックによろしく」との共通点は多い。ただ「ブラックジャックによろしく」が現代医療の問題提起をしておいて、それに対する明確な答えは出さないのに対して、こちらは主人公の天才的技術と確固たる信念で日本医療の腐敗を切って捨て、作者なりの答えをだす。
主人公とは対照的な、医局の腐った現実に苦しむ研修医・伊集院を置いたのもおもしろい。彼は「ブラックジャックによろしく」の齊藤のように苦しみ悩むが、朝田の医者としての信念・行動力に影響されて成長していくので読者にとって爽快感がある。それにより朝田の魅力も一層引き立つ。
作者の高い画力のため、手術シーンにも迫力はある。次々に緊急事態が発生し、それを朝田が天才的な腕で解決していく様は気持ちいい。
「外科医は死なせた患者の数だけ成長する!」などの名台詞も多く、漫画として楽しめる医療漫画です。