3月号

爆音列島高橋ツトム
 初体験話。初体験済ませた後の編集の注釈みたいなのが「おいきなさい」だって。スゲー笑った。漫画間違えてるよ。気分はスカイハイだったのかな。
おおきく振りかぶってひぐちアサ
 作者独特の危うい心理描写が日常を舞台にした漫画だとどうも青臭すぎたんだけど、スポーツに打ち込む少年達には割とはまっている。過小評価している敵チームのバッター達。それに対し、相手ピッチャーがどうしても三橋を打ち崩してくれと味方に懇願するシーンがいい。二度と三橋には負けたくないという相手ピッチャーの想いが伝わってきた。野球を研究している姿勢もいいね。これは単に、自分が野球に疎いからそう感じるだけかもしれないけど。少し説明が多いのが難点だな。
無限の住人沙村広明
 組織票をネタにする人気投票は初めて見た。あの枚数送らなくても1位になったのに。まあはがきの束に書いた絵が貰えたから満足でしょう。
ヒストリエ岩明均
 これは強すぎるだろ。たった一人でバッタバタ殺戮していく元奴隷。一方、無機質に死んでいく兵士達。死のコントラストの見せ方がうまい。人質に捕らえられて次週へ。ヒキもこなれているな。
あじさいの花」佐俣ユミ
 最近の四季賞の中でもかなりおもしろかった。ある少女が余命3か月の母親の療養のため転校してきたことで、退屈な主人公の世界が一変する。
 転校生はファンタジー小説をファンタジーが現実にないと認めるようなものとし、むしろ何気ない日常にファンタジーは溢れていると説く。徐々に転校生に惹かれていく主人公。
 夢の中で、空なんか簡単に飛べると水溜りに飛び込むシーンは秀逸。そこは水が空中にあり、魚は空を飛び、鳥は水の中を泳いでいる。この幻想的なシーンの絵のみずみずしさが素晴らしかった。そしてそれは夢のなかだけではない。現実にも飛び魚は存在しているし、水を巻き上げるような木も存在する。
 その後にある雨のシーンのタイミングもうまい。日常によくある雨でさえも、考えてみれば空から水が降ってくるという不思議な現象だ。日常は退屈なものなんかではない。
 幻想的な描写を絡めた転校生との触れ合いの中で、主人公の日常への認識が変わっていく様を見事に描ききった。次回作も期待したい。