ドイツ代表メンバー雑感

大会最弱とも思えた前回大会でのグループリーグ最下位、自国開催の06WCでの3位躍進を経て、予選でも好調を維持し、優勝候補筆頭との評価を得て大会の臨むドイツ。それにしては、不安も多いようように見受けられるが。

ゴールキーパー
1 イェンス・レーマン*1
12 ロベルト・エンケ
23 レネ・アドラー

正GKのレーマン、今シーズンはアーセナルでのミス連発で控えに降格し、試合勘に不安が残る。後継者候補筆頭と目されていたヒルデブラントも、崩壊中のバレンシアで精彩を欠いた。エンケ、新星アトラーには国際経験が圧倒的に不足している。CL経験を積んで一回り大きくなった若手のノイアー、そしてバイエルンで有終の美を飾ったカーンら、落選メンバーの充実が目立つくらいだ。

ディフェンダー
2 マルセル・ヤンセン
3 アルネ・フリードリヒ
4 クレメンス・フリッツ
5 ハイコ・ベスターマン
16 フィリップ・ラーム
17 ペル・メルテザッカー
21 クリストフ・メッツェルダー

実は世界屈指のSB王国ドイツ、やはりSBの充実が目立つ。これまでは左に比べて右の攻撃力に問題があったが、左SBヤンゼンの成長により、ラームを右SBにコンバートする余裕が生まれた。ヴェスターマン、フリートリヒといったSB・CBを兼任できるマルチロールの存在も大きな強みだ。

ただしセンターには若干の不安も。ドイツWCでもコンビを組んだメツェルダーメルテザッカーは健在だが、怪我明けのメツェルダーはコンディションと試合勘に問題を抱えている。またDFラインを高く押し上げる傾向が強い割りに、DF陣のスピードは不足している。自国開催のWCのようにイケイケにいければいいが、そうでないと思わぬしっぺ返しを受ける事になりそうだ。

ミッドフィルダー
6 シモン・ロルフェス
7 バスティアン・シュバインシュタイガー
8 トルステン・フリンクス
13 ミヒャエル・バラック
14 ピオトル・トロコフスキ
15 トーマス・ヒツルスペルガー
18 ティム・ボロウスキ

バラックフリンクスの中盤センターは大会屈指。チェルシーで新境地を開拓した大黒柱バラックの充実は大きい。ロルフェスの成長でバックアッパーも充実。所属のバイエルンでスランプに陥ったシュバインシュタイガーが不動の左サイドは気がかりだが、ドイツ代表での実績からも計算は立つし、バックアッパーにトロホウスキやヒツルスベルガーといった彼に続く有望な若手も台頭してきた。
とにかく痛いのは右SHシュナイダーの離脱。ドイツ代表で最も周囲を活かす能力に長けたチャンスメイカーの離脱は、得点力に大きな影響を及ぼしそう*2。右サイドを本来SBのフリッツ、スピード馬鹿のオドンコールに頼らざるを得ないのは大きな不安。充実している左SHや、FWで居場所のないポドルスキのコンバートも一考の余地が残される。

フォワード
9 マリオ・ゴメス
10 オリバー・ノイビル
11 ミロスラフ・クローゼ
19 ダビト・オドンコール
20 ルーカス・ポドルスキ
22 ケビン・クラニ

近年のドイツ代表で最も充実した構成となった。エースのクローゼ、復活したクラーニ、そして超新星ゴメツの存在。スペインとドイツのハーフであるゴメツは、高さや強靭フィジカルを活かしたコンタクトプレーからゴールを狙うだけでなく、スピードや足元のテクニックにも定評のある新世代の大型CF。初の国際舞台で大ブレイクが期待される。これでバイエルンで不振を極めたポドルスキが復活すれば完璧だ。



監督は代わったがアシスタントコーチの昇格であり、システム、戦術、レギュラーの殆どをWCドイツ大会から継続している強みがあり、それぞれがより経験を積んで逞しくなっている。死のC組勢と決勝まで当たらない組み分けにも恵まれた。

確かに優勝候補筆頭に押されるのも分かるが、そういう立場に相応しくない穴も散見される。EURO2000前のフランス代表とは明らかに違い、本命国不在ゆえの本命の色が強い。まあでも、4年前の惨状からよくここまで持ち直したものだよ。これがサッカー大国の底力か。

*1:レギュラー候補

*2:ミドルシュートや中盤のプレスといったトレンド面では参加国屈指ながら、攻撃の変化に乏しいというドイツの欠点は、シュナイダーの離脱でさらに深刻になった

スイスvsチェコ

[得点] 71分:スヴェルコシュ


どちらもが組織的な堅守を持ち味とし、初戦ということもあって慎重な試合運びを選択したため、静かな開幕戦となった。

チェコ:4-1-4-1
GK:P・チェフ
DF:ヤンクロフスキロゼフナルウイファルシグリゲラ
MF:プラシル、ポラーク、ガラーセク、ヤロリーム(87分コヴァーチ)、シオンコ(84分ヴルチェク)
FW:コラー(56分スヴェルコシュ)

チェコは、ロシツキーの負傷、ネドベド、ポボルスキの代表引退などで、間違いなくチーム力は下がっていて、特に長所だった中盤の構成力の低下は致命的なのだが、代わって入る中盤の労働者達によるハードワークでは優っている面もある。中盤の創造者達を失った名将ブルックナーが、WCでは戦術的キーマンの負傷後も理想に殉じて美しく散ったチームを率いた彼が、最後の大舞台で理想を捨ててリアリスティックなチームを作り上げてきた。ラインの高さ、プレス位置、攻撃に掛ける人数など、以前のチェコの特徴とは明らかに違っている。

序盤はスイスの得意とするハイプレスをかわすためにコラーへのロングボールを多用してリスク回避*1、後半に勝ち点3の欲しい開催国が前掛りになってきた所で、コラーに代えて裏を狙えるスベルコスを投入。そのスベルコスがワンチャンスを生かして決勝点と、采配が見事に当たった。

予選で僅か5失点のチェコの守備組織は完成されていて、特にリード後のリトリートによるスペースを消した守備は隙がなかった。守護神チェフも相変わらず安定。以前より守備的にいく分、1トップが孤立する傾向が強く、以前のような低い位置からの巧みなビルドアップ*2もなく、守から攻の切り替えの速さを活かして次々と選手が飛び出してくるリスクをかけた速攻もなく、以前のように試合の主導権を掌握して攻めるのは難しいため、如何に先制して守り切るかが鍵となるだろう。

スイス:4-4-2→4-2-3-1
GK:ベナッリョ
DF:リヒトシュタイナー(75分フォンランテン■)、ミュラーセンデロス、マニャン■
MF:ベーラミ(85分デルディヨク)、インレル、G・フェルナンデス、バルネッタ
FW:フライ(46分ヤキン)、シュトレラー

スイスは堅固な守備組織を持つ好チームだが、攻撃面での課題は相変わらず。引いたチェコ相手にミドルはよく打てたが、チェフの堅守は崩せず、数少ないこぼれ球の決定機も活かせなかった。元々引いた相手を崩すのは苦手とするため、得意とする組織的なハイプレスから相手守備陣形が整う前に速攻を仕掛けたかったはずが、チェコが中盤でのビルドアップを半ば放棄して、中盤を飛ばしてコラーの頭にロングボールを多く合わせてきたため、ゲームプランが崩れてしまった印象がある。

後半はヤキンを中心に攻撃を組み立て、サイドからのクロスでチャンスをつくったが、シュートは枠に行かず。終盤に相手のミスから決定機を掴むも、フォンランテンがそれを生かせず。ワンチャンスを生かしたチェコとは対照的。攻撃の中心のSHバルネッタが負傷明けのため本調子には程遠く、唯一得点力の高いエースFWフレイも負傷交代、ハンドを見逃されるなど運もなかった。

前半の4-4-2より、創造性のあるヤキンをトップ下に入れた4-2-3-1の方が攻撃の可能性は感じられたので、次からは守備やスタミナ面で不安があっても彼をスタメンで起用した方が良いかもしれない。彼を起点にサイドに散して、SHとSBの連動でクロスを上げていくのが良作か。ただ1トップを務めるCFがポルトガル以上に頼りないのだよな。ホスト国は早くも追い詰められている。

*1:この試合のコラーは攻撃面で思うように起点になれなかったが、リスク回避戦法が取れるという点で彼の存在は大きい

*2:4-1-4-1は1トップが孤立する傾向の強いシステムで、そのためには後方から丁寧にビルドアップして全体を押し上げていく事が重要だが(同システムのスペインならこれが出来る)、今のチェコの中盤では難しい。ブルックナーは始めからそれを放棄して、中盤を飛ばしてコラーの頭を狙うロングボールを多用。

ポルトガル代表メンバー雑感

GK
 リカルド・ペレイラベティス)★*1
 キム・シウヴァ(ベンフィカ
 ルイ・パトリシオスポルティング

守護神のリカルドは、波に乗るとビッグセーブを連発するも、思わぬミスもする面もある。ただし、PK戦を得意とするのはトーナメントにおいて大きな強み。経験も○。

DF
 ミゲウ・モンテイロバレンシア
 ジョゼ・ボシングワポルト)★
 パウロ・フェレイラチェルシー)★
 リカルド・カルヴァーリョチェルシー)★
 フェルナンド・メイラシュトゥットガルト
 ブルーノ・アウヴェスポルト
 ペペ(レアル・マドリー)★
 ジョルジ・リベイロ(ボアヴィスタ

大会最高のCBカルバーリョは不動。アンドラーデの穴は、B・アウベス、ブラジルから帰化したペペの成長で一応の目処は立っている。右はミゲウの他に、チェルシー移籍が内定したボシングワの成長で、懸念の左SBに経験豊富なフェレイラを回す余裕が出来た*2。組織的にも洗礼されており、大会屈指の守備陣といえる。ポゼッションサッカーを志向する上で、ビルドアップに優れている点も見逃せない。

MF
 ラウール・メイレレスポルト
 ジョアン・モウチーニョスポルティング
 デコ(バルセロナ)★
 アルマンド・ペティ(ベンフィカ)★
 ミゲウ・ヴェローゾスポルティング)★

ポルトガルの3センター、前回大会やWCでのデコ、マニシェコスチーニャと比べてスケールダウンしている感は否めない。新鋭ヴェローゾの成長は大きいが、実績のあるマニシェ、チアゴが所属クラブでの不振で落選したのは痛手*3。プレーエリアの広いマニシェがいない分、ダブルボランチに、トップ下のデコという明確に役割を分ける傾向がより強くなるだろう。デコの負担が大きい為、モウチーニョあたりがブレイクすればおもしろいんだが。

FW
 クリスチアーノ・ロナウドマンチェスター・ユナイテッド)★
 シモン・サブロサアトレティコ・マドリー)★
 リカルド・クアレスマポルト
 ヌーノ・ゴメスベンフィカ)★
 ウーゴ・アウメイダブレーメン
 ナニ(マンチェスター・ユナイテッド
 エウデル・ポスティガパナシナイコス

  • サイド

チームの強みは、世界最高峰の充実を誇るサイドアタッカー陣だろう。絶対的な存在としてロナウド、脇を固めクアレスマ、シモン、ナニも強力。それぞれが自サイドを持ち場とするだけでなく、中にカットインしたり、両サイドのポジションチェンジなど、流動性があるのもポルトガルの特長である。

  • CF

ポルトガル最大の問題は、基準点となりうる絶対的なCFの不在だ。ポゼッションで主導権を握ったり、サイドを突破してクロスを上げたりても、最後にゴールにねじ込む選手が役者不足。ビルドアップがうまくいかない時、引いてスペースを消した相手にパワープレーを仕掛けたいときなど、前線にロングボールを放り込むというオプションがないのは苦しい。

FWにEURO2000のヌノゴメス、前回大会イングランド戦のポスティガのようなラッキーボーイが出てこないと、優勝への道程は厳しい。直前でマククラを落選させてまで、不振のポスティガを復帰させたのも、ラッキーボーイ的な部分に期待してだろう。CFに期待が持てないなら、中央にロナウドを据えて、優秀なウインガーを3人同時起用するゼロトップ気味のシステムもオプションとして考えられる。下手なFWよりロナウドの方が空中戦に強いし。




振り返ると、ベテラン、中堅、若手の揃った前回大会のEURO、WCドイツ大会までが黄金時代だったと思う。そこで栄冠を手に出来なかった国が、今大会でそれ以上の成績を手に出来るかどうか。守備や攻撃のビルドアップ、そして監督の采配面は計算できるだけに、決定力が勝敗の鍵となる。困った時のルイ・コスタフィーゴはもういない。

優勝となると、やはりロナウドの爆発次第でしょうな。チームの最大の武器であるロナウドをどう活かすか、これがポルトガル躍進の鍵を握っている。所属のマンUでは、ルーニーテベスが献身的なチェイシングやフリーランで、ロナウドの負担を減らし、自由にプレーさせている。そんなプレーをポルトガルのFW、WG陣に出来るかどうか。もしくはそんなお膳立て役では終わらず、クアレスマあたりが覚醒するのか。期待したい。

*1:スタメン候補

*2:これによりバレンシアでぱっとしなかったカネイラは落選

*3:彼らは所属クラブの採用していた2センターでは活きないが、ポルトガル代表の3センターでは見違えるタイプの選手だけに、メンバー入りの余地はあると思えたが。特にマニシェのダイナミズムを失ったのは大きな痛手だ

いやー、いよいよEURO開幕ですね。楽しみすぎて更新再開してしまった。もはや誰も見ていないと思うけど、またよろしくお願いします。好き勝手サッカーについて書いてくブログです。たまに格闘技なんかも。
4年前のEUROみたいに、試合をライブ放送で見てすぐに雑感というのは無理だけど、週一くらいは更新したいね。その分、総括なんかは頑張るんで。

とりあえずポルトガル、ドイツ、イタリア、フランス、オランダ、スペインといった列強についてメンバーの雑感をそれぞれの試合前にでも。他の国には時間と、詳細な知識が足りないので省略。試合を見てからだね。

サウジ戦

日本 3-1 サウジアラビア

日本:
川口能活阿部勇樹田中マルクス闘莉王今野泰幸加地亮鈴木啓太駒野友一中村憲剛三都主アレサンドロ(65分山岸智)、巻誠一郎(87分羽生直剛)、我那覇和樹(74分高松大樹


ここ最近年代別代表の試合が集中していて、似たような欠陥を抱えていて不満だったのだけれど、この日はフル代表らしくアンダー世代の代表との違いを見せてくれたと思う。サウジの弱さも差し引かねばならないけれど、目標となるとなるフル代表が内容でも結果でも勝利した喜ばしいね。そしてこの内容でも課題はあったわけで、そこをオシム監督も選手も浮かれず反省している所は安心できる*1


  • 追い越しのフォローの有効性


前半16分、川口の素早いキャッチリリースから、加地、中村と繋いで、中村のダイレクトの楔を受けた巻が見事なサイドチェンジを駒野へ、このとき左サイドでボールホルダーの駒野の外をサントスが追い越した事で、駒野が余裕を持ってアーリークロスを上げられた。ダイレクト中心の素早い組み立てで、サウジにマークを付く暇を与えなかった。惜しくもDFに防がれたけれど、素晴らしい攻撃展開だったと思う。


この辺りから完全に日本ペースに。その後にCKから巻のヘッドのこぼれをトゥーリオが詰めて先制。良い時間帯に先制できた事で、試合展開がかなり楽になった。


前半29分、左サイドの阿部が前にボールを運んでからの大きなサイドチェンジ、それを右サイドで受けた加地がタメて、加地の外を右CBの今野が追い越し、そこからボールを受けた今野の外を今度は加地が追い越す。これによりマーカーの注意が加地に引き寄せられ、フリーの今野が中に切れ込んでクロス、我那覇がヘッドで決めて2点目。


前半16分のチャンス、そして29分の2点目と、ボールホルダーの外を他の選手が追い越す動き、俗にいうウェーブの動きが非常に効果的に機能していた。外を追い越すのはアウトサイドの選手だけではなく、状況に応じて全てのフィールドプレーヤー全員が自分がボールを受ける為、またはボールホルダーを助ける為に、ボールホルダーを追い越し、パスコースやフリーの選手を増やす事。これがオシムの目指すサッカーでは必要とされている。この試合を見ても、試合を重ねるにつれて徐々に洗練されてきたといえる。




後半4分、バックラインから楔を交えて右から左に丁寧に組み立てて、今野からの縦のフィードに抜け出した駒野が左サイドからグラウンダーのクロス、これを右アウトサイドの加地がエリア内に飛び込んで潰れて、そこを通過していったボールを我那覇が確実に決めて3点目。左サイドからのクロスにニアに飛び込んだのが、右アウトサイドの加地というのがこれまでとは異質。


前半24分にも、トゥーリオの右へのフィードを深い位置で受けた加地がファーへクロス、これを左サイドの駒野がフリーでシュートするシーンがあった。惜しくもシュートは外れたけれど、決定的なチャンスだった。


アウトサイドの選手のクロスに、逆のアウトサイドの選手が長い距離を走って絡んでくる。このようなシーンが散見された。両アウトサイドがサイドに張り付いてプレーするのではなく、積極的に中に進出してプレーに関与する事で、数的優位を作ってボックス内で優位に事を運ぶ。両アウトサイドに代表されるように、選手がポジションに拘らない流動的なサッカーが見れた。ここもオシムの狙いが徐々に具現化されているように感じた。


  • バックラインの安定とビルドアップ


2点目は阿部のサイドチェンジ、そして3点目はバックラインを経由しての組み立て後の今野の縦のフィードから展開が始まったことに象徴されるように、バックラインからのビルドアップがかなり効力を発揮していた。リベロトゥーリオも、後方からのフィードだけでなく、積極的に前に出て数的優位を作り、攻撃の組み立てに絡んでいた。バックラインからの攻撃構成に苦しみ、安易に放り込んでボールロストしていたU-19、U-21との違いは明白。


マークを付かれにくいDFが前に出て積極的にビルドアップに貢献したり、長い距離を走ってボールホルダーを追い越したりとフォローする事で、他の選手のマークが引き剥がされるなど、相乗効果が発揮される。オシムボランチの選手をCB起用するメリットが良く見て取れた。本職CBはここを磨かないと試合には出れないんでしょう。若手の青山、水本には所属クラブでビルドアップ向上に積極的に取り組んで欲しい、


また、ビルドアップだけではなく、本業の守備面の安定も良かった。中盤でボールロストもあり、ワンボランチの鈴木以外のMFと両SBまで攻撃参加して、疲れから守備への戻りが遅くなった中盤以降は、中盤の守備がかなりルーズになったシーンもあったのだけれど、2トップのマーキングを任された2ストッパーがエリア内で仕事をさせなかった事が守備での安定に繋がった。マンマークの守備組織を形成する上で、CBの充実は見逃せない。


  • ダブルポストの機能性


この試合では、我那覇と巻のダブルポストという形で前線を形成していて、これまでより前でボールが収まった。特に我那覇が下がって楔を受けて時間を作り、他の選手が前を向いてボールを受けられる事で、攻撃展開がスムーズに運んだし、全体を押し上げる事ができた。巻も前線でターゲットなり身体を張るなど、2トップの縦の関係がうまく出来ていた。


阿部の正確なロングフィードを受けた巻のバックヘッドから、前でボールを受けた我那覇が仕掛けて強烈ミドルという良い攻撃シーンもあった。放り込みといえばそうなんだけど、長身に空中戦に強い巻だからこそ競り勝てた。その意味では特長を活かした攻撃構成。縦の位置取りでボールを受けて、その後に積極的にドリブルで仕掛けてミドルを打った我那覇の勝負する姿勢も良かった。


ポストプレーの苦手なカレンの1トップにして、空中戦が苦手なのにひたすら放り込んで、前線で全くボールが納まらず、押上げや追い越しが殆ど見られなかった先日のU-21代表とは対照的だった。反町監督はよく勉強するように。オシムなら絶対にカレンの1トップなんてやらない。1トップやるならその人選は重要よ。


2トップというとポスト型+シャドー型の組み合わせが一般的だけれど、オシムが率いたジェフの2トップは、巻とハースというポストプレーの得意な選手同士の組み合わせが多い。後方から次々と選手が飛び出してくるサッカーをする上で、その時間を作るために前線でボールが収まる事は必須。そういう意味でダブルポストは理に適っている。


似たタイプの選手が2トップを形成すると、プレーエリアやプレースタイルが被ってしまい、補完性の薄いデメリットが生じてしまうものだけれど、巻と我那覇オシム体制になってから継続的に呼ばれている2人で、お互いが被らないように工夫していて、コンビネーションが出来上がっていた。巻が前線で身体を張って、より足下の巧みな我那覇が楔を受けに下がってくる事が多く、これが中々嵌っていた。


後半に我那覇が高松に交代して、巻と高松の2トップになると、余り機能性がなかった。これはタイプ的に被りすぎるし、初めての組み合わせで相互理解もないため仕方ないだろう。2人とも前線で身体を張るタイプなので、どうせなら先発2トップをそのまま初召集の高松と前田に代えて欲しかった。この組み合わせの方が、前に張る高松と下がって受ける前田という様に役割分担が明確だし、初招集の選手を同時に試せる面でも良かったと思う。


  • 中盤の問題


バックラインの安定、とりわけFWへのマンマークが機能した事もあり、エリア内では殆ど仕事をさせなかったけれど、その前の中盤の守備はルーズなシーンも散見された。


中盤以降に選手の運動量が減ったり、後方から積極的に攻撃参加した後だと、ワンボランチの鈴木の両脇がかなり開いてしまう。ボールを奪った後は後方からどんどん飛び出していくサッカーを志向しているので、そこでミスをしてしまうと、一気にカウンターからピンチになってしまう恐れが高い。一対一で潰せるサウジレベルでは良くても、世界レベルの相手ではそうは行かないはず。修正が必要。


また、鈴木と他の選手の距離も離れる事があって、彼の展開力不足が目立ってしまうパスミスもあった。鈴木がサイドに引き出され、バイタルエリアが空いてしまうシーンも散見された。


失点の直前、鈴木が中盤でミスパスをして、それを取り返そうとアタックしている間に、空いた中央から攻め入られたことが、PKに繋がった側面もあったと思う。まあ、攻撃を遅らせる事は出来ていたし、あのPK判定は怪しかったけど、強豪国なら普通に失点していた可能性もあるから、注意するに越した事はない。


中盤の高めのトップ下気味に位置した中村だけれど、2点リードした後はあえて下がって、鈴木の近くに並んで、彼を守備面でも攻撃面でもフォローしながら、DFラインの前からボールを捌いていった方が良かったと思う。川崎ではダブルボランチを組む谷口の近くで、彼の展開力不足を補完しているし、状況に応じて谷口より下がって守備のバランスを取るプレーも得意としているので、けしてできない事ではないと思う。



上述したように、時間が経つに連れて選手に疲れが見えて、ワンボランチの鈴木の両脇のスペースがかなり空き出してしまう。また攻撃のフォローも遅れる。とにかく運動量がベースとなるサッカーをしているので、走れなくなってしまうと機能性は一気に減退してしまう。ジェフも選手のコンディションが悪くて走れなくなると、一気にサッカーの質が低下してしまっている。


前半の15分過ぎから2点リードするまでのサッカーを90分間やれれば理想的だけれど、現実的にそれは難しい。今日のような空調の効いたドーム内の好環境でも終盤はバテたのだから、アジアカップやアジア予選でのアウェーの猛暑ではさらに厳しい。


2点リードした後も、それ以前と同じようなサッカーを展開していた点は気になった。特に後半に2点リードした後は、ゲームを意図的に落ち着かせてしまっても良かったと思う。無理に縦に急いでミスするシーンも多かった。トゥーリオも2点リードで相手エリア内まで頻繁に上がる必要はない。


常に同じようなペースで試合を進めるのではなく、状況に応じてチーム全体でゲームをコントロールする必要がある。個人としても緩急を付けるべきだし、チームとしても意識していきたい。相手を引き出すようなボール回しをして、カウンターを狙っていく様な駆け引きも欲しい。


  • 今後


今年最後の代表戦。かなり良い占めになったと思う。今後に希望が持てる試合だった。ベースは今年のメンバーとの事だけれど、オシムなら来シーズンもJリーグで結果を出した選手は試すだろうし、不調の選手は外すでしょうね。特に結果が明確な数字として出るFWは。ジェフとそれ以外の選手ももっと平等になってくれば尚良いかな。まあ、その部分は仕方ないと思いますけど。


来年はまだ見ぬ欧州や中南米の中堅以上との試合が見てみたい。特に平面ではなく、高さで勝負をしてくる国。地上戦でのマーキング力のある選手をオシムはストッパーに好んで使っているけれど、高さを相手にしたときにどうするのか。今年はガーナ、サウジ、インド、イエメン、T・Tと、高さが武器の相手とはまだ一度も試合をしていない。


中盤の構成力の攻防を無視して、始めから割り切ってロングボールを放り込んでくる国。年代別代表みたいに不適格なサッカーではなく、しっかり選手の特長を生かした放り込みをやってくる国。こういう国を日本は一番苦手にしているので、早めに対しておきたいところ。特にJリーグで傑出した存在感を見せているヨンセンでさえ当落線上のノルウェーは、日本が苦手とする国だと思う。トルシエ時代も完敗したし。


後は駆け引き上手のメキシコとか、技術力のあるコロンビアとか。強豪国とは言わないから、アジアレベル以上の国との試合が見てみたいね。スイス、オーストリア共済のEUROプレ大会に参加するという話があるらしいけど、それはかなり良いと思う。スイスのスペース消去のうまいゾーン守備相手に、スペースに飛び出すサッカーがどこまで通用するのか。見てみたいね。


  • 選手評

*1:先日のU-21韓国戦なんて、あの内容で何で監督が手応えを得ているのか分からん。世間の論調も2軍で良く頑張った的なのも謎。韓国だってベストじゃないじゃん。ジュビロのジンギュがいなかったしね。

続きを読む